凍てる足
「…えっと、こ、これが、へ、へれ、へれ、」
「…嗚呼、いかにも。われわは第2宇宙惑星
この姿は色々訳があってな。
うわあ、子供になってる。
『これどういう原理?』
「しるか。お前に聞きたいくらいじゃわ。」
「貴方が戻って来てから彼女達が幼いお姿に変わられましてね。」
なんでしたら、続々と変わってる最中でして。
わぁ異様。
「まぁ廻廊を進めたからこそ、身体が戻っていっていると思うんでしょうが。」
「それにしてもこんな小さくて可愛らしいお姿があったとは〜〜〜!!」
「…こっちを見るな。」
そう言ったシャンパにそれは出来かねますねぇと嬉しそうに笑ってヴァドスが抱き上げる。
こうしてみると小さい頃から肉付きが良かったのかと思っていると声に出ていたらしい。
いや案外そうでもないとシャンパが訂正を入れた後ビルスが話を続けた。
「僕達兄弟だけど元々一卵性双生児だからね。」
「えっ、お前ら見た目違うのに!?!?」
「小さい頃は瓜二つでどっちかの区別がつかなくてね。」
「そうそう、ビルスとタッグ組んでよく悪さしてたよな。」
「あの時はまだ色々騙せれたからねぇ〜〜〜。」
その当時からは年齢が経った状態らしく、
ビルス曰くシャンパが食に目覚めたが故の今に至るらしい。
ははー成程。そう言う事があったのか。
「運動をすれば僕みたいに戻る可能性だって充分あるけどね。
識別が出来ないくらいには見分けつかなくなるからってこと。」
「はーーー考えられないけどな。」
「人間で言う処の大体8から10歳児程度じゃない?」
気も一応出せるけど、心もとないくらいだし。
そう言って破壊の球を出すも、その威力は破壊出来ると言っても速度が異常に遅い。
シンが創り出した歪なボールの様な岩を浮かばせて破壊の球を付ければだ。
普段であれば即消えたのだが、浮遊したままひたすら維持する。
よくよくみればかろうじて消えていっているのがみえるも、
その速度の遅さにはため息をついても変わらない程度であってだな。
「これでは戦闘のお荷物にしかならん。」
「その状態で鍛えてもたかが知れていますからね。」
「いやというか、お前達志村とか何とか云ってたけど、知り合いだったのか?」
『ん?嗚呼志村の件はコルン様からお聞きしたまでです。』
「コルンが?なんでお前が逆に知ってるんだ???」
そう聞いたのはリキールだ。コルンの下で立って聞く
彼は四足歩行すればそこら辺の狐と瓜二つ程度の大きさにも見える。
下を見ながらもコルンが説明をする。
「私はかつて彼女の廻廊に介入してしまった者達ですのでね。
念には念を入れて彼女が通われている者達の情報は頭に叩き込んでいるんですよ。」
「か、かほご…」
「なんとでもいいなさい。情報を持っていて損はなかったでしょうが。」
『まぁ事実だしね。下手したら此処にいる全員が水面高校の人間だったりして。』
「怖いことを仰らないで下さい。」
水面高校。メルがかつて通っていた高校の名前だ。
正確にはミュラリスが、というものではあるのだが…???
「あ?都佑ってお前一つしたの双子だろ?」
『は?????』
「えっ知らない?」
知らないも何も、
『コルン様』
「…ええ、私も存じ上げません。」
「…ああ〜〜おとうちゃんが隠したんかな。
先生から事情聞いてたんだけどよ。」
どうやら彼女、小学生どころか保育園からの付き合いの人間らしく
私と其処迄遊んでいなかったからメルからの面識はなかったらしい。
「二卵性の双子で小さい頃に母親に引き取られたらしくてな。」
『…そうだったんだ。』
でも、それは物語の、エフェメラルが持つ者であって。
私かどうかは、定かではないものであって。
「旧姓は星野だったから、星野都佑って子がいただろ?」
『…嗚呼、確か二つ隣に居たような???』
「そうそう!そいつだよ!!フルートに居た子!!」
一応アタシ面倒みてたけどな。
そうだったの!?!?!?
「嗚呼。お前とは違って滅茶苦茶理系のいい子だったがな。」
『なにそれ私が馬鹿丸出しの文系みたいな言い方しなくてもいいじゃん。』
「事実だったんだものなーーーーー」
うるせえな。
「ま、水面高校の人間が関係しているなら話が変わってくる。
ひょっとしたらあのバスジャック原因も掴めるかもしれねぇし。」
「…バスジャック?」
「嗚呼気にすんな。」
聞き捨てならない言葉に、コルンが眉間に皺を寄せたが
手をひらひらとさせてその場はそのまま解散することになった。
流れる様に話しを流されたからだった。
++++++++++
今現在風呂場です。
ええ、風呂場です。
『…ねえ、志村。』
「あ?」
『バスジャックって、あの、バスジャックだよね。』
「…そういう記憶は残ってるのか。」
正確には、うろ覚えだけれども。
7月31日、午後5時15分頃。
○○市の○○ホールから帰る中、バスジャックに会い
そのままバスは近くのトラックと激突。
大人を含め、子供達数十人が死を遂げたとされる、
大規模な悲しい末路の話だ。
「魔女になった奴から聞けば全く関係性はない。が」
『が?』
「何人か魔女以外の人間が怪しいと答えていたんだよ。」
吹奏楽って、音を奏でる子達の総称なの?
なら、私夢で見たことがあるの。
「エリーゼとアルカネットが証言している。
あの感じからして後輩と先輩な気がするがな。」
『え?でも私達高校三年生のバスジャックで死んだんだよね?』
「それはあくまでも死んだ時だ。…忘れているなら、そのままでいい。」
『あかねちゃん?』
「…ことは、流れてそのままに。」
それは、私の、名前?
そう言うメルに、さあなと困ったように笑う。
『ねぇあかねちゃ』
「それは優しい狭間の時間。ひと時の、うたた寝した時間。」
『え?』
「演奏会、本当はお前と共に、音を奏でたかったよ。」
お前の居ない、あんなホールでなんて。
「アタシ達は金賞を取ってもなんら嬉しくなんてなかったんだから。」
『あかねちゃん……』
「ほら、湯船からあがらないのか?」
向こうはお呼びだそうだが?
…いい。
『私、貴方ともっとお話ししたい。』
「エフェメラル…お前、」
『ねぇ、高校二年生って何をしてたの?』
私は何を、望んで前を見ていたの?
「…それを知ってどうする。彼等を救うか?
シナリオを作って、救済して、なんになる?誰が笑う?誰が望む?」
『それは』
「そんなの、ただの、エゴなんだよ…エフェメラル。」
えご、それは、あまり、よろしくないこと。
メルはしょげて肩を落とす。
傷付けるわけではなかった。ただ、分かって欲しいと朱音は応える。
「お前が私に言った様に、そっくり返してやれるんだよ。」
『なにを?』
「此処は全員が、お前を望んでいる。
お前はソレを分かった上で、捨て去り元の場所に、戻れるのか?」
『そ、れは』
「現実かどうかもわからないなら、もういっそのことこっちが現実に」
『それはだめ。』
そうぴたりと肌に触れそうになった指が止まる。
メルは凛とした声で、応えたのだ。駄目だと。
『此処は…夢だよ。』
だから、貴方達の事を、救いたいのだと。
「…なら、尚更、駄目じゃないか。」
『あかね?』
「それは知らなくていい。」
なにも、知らなくていい。
『アリスが連れてってくれたから?』
「…それは、」
『ねぇ、私お花を沢山咲かせて天使に渡してるんだよ。』
私考えたの。なんで三つなのかって。
…メル
『サワアとコルン、あとコニックって子に渡したの。
彼等の持つ宇宙の数ってね、2と8と4なんだよ。』
全部偶数なのに、なんで6にしなかったんだろうって思ってた。
なのに、分かったの。分かってしまったの。
『全部合わせたら12になる。時になる。音になる。
ねぇ、12楽章もあった曲、あったよね?』
「メル」
『全部自由曲で作ってた、あれ、確か未完成の』
「もうあがろう。」
ざぶりと音を立てて引っ張り上げる朱音に、メルはうんと頷きつつも続ける。
まるで壊れたビデオカメラの様に、映像を何度も繰り返し、言葉も続ける。
繰り返す、それは、まるで、呪われたかのように。
「…後言っておくが12じゃなくて14だからな?」
『……あれぇ?』
++++++++++
「失礼。夜分遅くに。」
「…いえ、どうぞ。」
そう言ってコルンがドアを開ける。
如何せん彼女らが此方に来るのは
まぁ自分が教えたからだと言えば話が分かるが。
それにしてもコソコソするのが好きなのか、
そういう習性ではないかと思い始めた今日この頃。
流石に夜が遅いのでミルクでも?と聞けば構わないと答えられた。
「それで、ご用件は?」
「彼女にどれ程の、記憶を渡している?」
「…それは貴方の知る全て、ということでしょうか?それとも」
彼女に知られたくない、酷なことでしょうか?
「そのお顔から察するに後者と受け取って良さそうですね。」
「バスジャック事件のことは知っているか?」
「いいえ。私達は貴方達と離れた以降音沙汰なしでしたからね。
寧ろ私達の事を知っているのですか?」
「嗚呼勿論知っている。あいつの家から子供がポンポンでるから
親戚が多いんだろうなとは踏んでいたけども。」
嗚呼そういう解釈をされていたのか。
それはそれで、好都合というものだが…
「おまちなさい。それだと話が困ります。」
「あ?」
「我々天使らは彼女の廻廊に直接入ったのではないのですから。」
「…どういうことだ。」
「我々は一度入ったことのある彼女の記憶を遡っただけのこと。」
「だが額縁には触れたのだろう?」
「それも壊れた状態ではありますがね。」
…それだからか?いやでも。
何かご存じのようですね?
「詳しいお話をお聞かせ願えますでしょうか。」
「嗚呼、どうやら話を擦り合わせた方が良さそうだからな。
私が知っているのは彼女が二卵性の双子の姉であるというもの。」
「先程申されていたのは妹さんだったのですか。」
嗚呼そうだ。
「時間的にはどっちかもわからん。引き出した順番だろうけどな。
下手したらそっちも逆転している可能性だってある。」
「というと?」
「其処の病院巷で噂の番号すり替え事件多発エリアでな。」
「…それ管理不十分で処罰下っていないのですか?」
そう引き気味に聞くコルンに対してギリアはそれもそうだけどなと答える。
「彼女の名前は千代木古都。ふるいにみやこ、と書いてこと、と呼ぶ。」
「ことさんですか。また可愛らしい名ですね。」
「そうだろ〜〜!現に可愛かったんだよ!!
いや今も普通に可愛らしさはご健在って感じするがな?」
昔っからおっちょこちょいで出来るって言ってるの大抵出来なくてな!
嗚呼それは今でもそうですね。
「私が指導しているのですが、指導内容が如何せんわかりにくいのか
見様見真似でやっても違っていると指摘すれば
泣きそうな顔で此方を見てきますからねぇ。」
「ふふ、あるある。あいつ出来たよやったよ!
って顔して駄目って言ったら
この世の終わりみたいな顔し始めるからな。」
「っくくく、此間それをして
笑ってしまいましてね。
酷く叱られてしまいましたよ。」
「あ〜〜ちゃんと機嫌治ったか?」
「ええ。その後たっぷり甘やかして差し上げましたので。」
其処ら辺は大丈夫ですよ。ご心配なさらずとも。
ならいいか。それならば。
「それで?」
「お前達が来てから、私達は演奏会に行ったよ。
お前達が応援しに来たかは知らないが、
これでも金賞受賞して四国大会出場権限貰ったわ。」
「おや、そうでしたか。陰ながら応援はしていましたが
努力が実ったというものですね。おめでとうございます。」
「…ま、それだけで終われば良かったが。」
「と、いうと?」
その後、バスジャックにあったんだよ。
「噂にはしていたが、日本中各地でとある組織が蔓延っていてな。
その中の手下か何か抜けたからどうのってほざいていたが
止まった運転手がトイレ休憩にと終わって出ようとした時に入って来てね。」
「強盗みたいなものですか。」
「そんな感じだ。」
「それは災難でしたね。」
「嗚呼。その後死んだがな。」
「は?」
サラッと流されて今何を言ったのか、
録画であれば数十秒戻して聞き返すし
文章であればもう一度読み直すくらいには
流されていて困って止まってしまった。
「バスジャックした奴が発狂して一人人質にとってな。
教員の付き添いで一人病気持ちの子が気分悪くして
前に座っていたのが悪かったというかなんというかだな。」
「…では、貴方達はもう、」
「嗚呼。向こう側では死んだ判定になっているだろうな。
時系列がいつかは定かではないが、
青い髪の毛の子が森の中で迷っていてね。」
その子が怖い処に歩くものだから、手を取って導いてやっていたんだけど。
そう言う彼女に、ありがとうございますとコルンが答えるので目を向けた。
それは、何処までも優しい、まるで父親が娘を見る様な目で。
「その節は大変世話になりました。」
「…いや、夢みたいなもんだし。」
「いえ、それは現実問題あったものですから。」
「…どういうことだ。」
「以前廻廊中にメル様が森の中に入ることがありましてね。」
それも二度も。
「話を聞くに制服とやらを着飾った者達が手を取ってくれたと。」
「…うわぁお。現実問題だったのかあれ。
いや妙に現実染みたもんだなぁとは思ってたが。」
「死んだ直後何処に行くかもわからない状態で彼女の事を想えば
必然的に引き寄せられるのも当然と言いますでしょうか。」
それでも遠すぎる導きですが。
ふふ、それはそれで心配だったんだよ。
「ま、そうでしょうね。あれ程気苦労の耐えない子は
未だかつて見たことがありません。
見たとしても私の頭は既にかちわれていることでしょう。」
「ふふ、それくらいに困ってたんだな?」
「ええそりゃあもう、現在進行形で手を焼いてますよ。」
「森の中、何人かで導いた後はそのまま眠る様に寝たら
上から起きろって言われてたたき起こされてな。」
「誰かは分かるのですか?」
「それは分からない。でも来るべき場所に行けとね。」
「…来るべき場所、ですか。」
それもまた不思議な話ですね。
「それ以降はあの場所に生まれ直して現在に至る。
ヘレス様の件は後々知ったけど、まさか遠い親戚だとは。」
「その件は私も驚きました。まさか貴方が彼女の兄の末裔だったとは。」
私も思ったよ。ほんと不思議な縁があったもんだよな。
「メルが誤解してたから事細かく説明したら納得してくれて良かったが。」
「流石にサワアお兄様との子は在り得ませんからねえ。」
「一体何処をどう間違えたらそうなるのやらね。」
「まぁ取られると思ったんでしょうよ。事実取られていることですし。」
「は????」
「おや知らなかったのも当然でしょうか?
今現在外では我々天使と破壊神を含めた神々が
瓜二つの姿をして統治しているのですよ。」
それもサワアお兄様に限ってはヘレス様を。
は?????
「あんな可愛い子をさておいて???
傷つけて????のうのうと????
掴んで離そうとして????は??????」
「…怒るのは分かりますが鎮まりなさい。」
他の子に迷惑でしょうが。
あっすいません。時間がですね。そうですね。
「我々は彼女の廻廊がとにかく終わる迄協力しています。
彼等は止めようとしているのですが、其処ら辺の情報はないです。」
「成程、廻廊が進んだらどうなる?」
「今現在現実だと言っておられる青い世界に時々旅立ちます。」
最初は元居た場所に戻られていたんですがね。
「白い世界とも、黒い世界とも、また違う青い世界。」
「白いって、そういや前に廻廊で会った時のか。」
「ええ、貴方方でいう12番目ではありますが。」
その時に時々戻られていました。
「まぁ其処はかつてこの世界自体が
作られたであろう中央部分の一部だったとされていますし、
何でしたら我々天使らは何度かこの世界自体が
作られたであろう中央部分に出向いていますからね。」
「ひょっとしてその世界の上だったりしてな。」
「うえ?」
「其処が廃れたといっても元から無かったか、
或いは切り離されていたかの二つじゃないかなって。」
「私が行った所は元々あった場所ではなく、
誰かに切り取られた場所だと?」
でなければ戦争なんかして消え去っても
大きな樹が一つなんておかしなはなしでは?
…まぁそれはそうですが。
「白い場所に一つだけ樹があるだなんて。
地下に水源があれば話が別だが、
偽物の可能性とかは?」
「…考えもしませんでしたね。
あの地は少々特殊で、
我々天使ですら力が伏せられるので。」
「私達もその道を通っていると。」
「でしょうね。貴方方が居た所はCと呼ばれていましたから。」
この世界はAという世界に位置しています。
それだとBもあるんだな。
「ええ。少々こんがらがるかと思いますが、
この世界は元々華を咲かせる華神とやらが統治していました。」
「嗚呼さっき一通り聞いて来た。
願いを捧げた者達の総称だそうだな?」
「話が早くて助かります。
その華神らは本来Bの世界に移動する筈、らしいのですが。」
「…私達は全員Aから来たという。
それも、魔になってすらないものが、だ。」
華樹神の候補者達が、という考えも出来ますと言うコルンが
何人かの名前を出すが、ソレは知らないと首を振るったギリアに
そうですかと軽くこたえた。
「この勢いだと6魔女が居たんだから
6人は吹奏楽部の人間が来るかもな。」
「それがもし事実であるならば大事では。
本来であればそうなることは、ほぼほぼ無い筈。」
「狂っていたとかは?」
「…まさか狂い咲きの影響下が此処に来ているとでも?」
それなら、話が分からなくはない、が。
「だとしても何かしらのアクションがあるはず。
それもなしに…いや、あったのを、知らなかった?」
「可能性はあるだろう?」
「一概には言えませんがね。」
「話を大きく戻すが、私達の長はとある作曲者が好きでお熱でな。
多くの曲を書いていたが、その中でもぴか一の曲があった。」
その中で、3曲私達は演奏をしたんだよ。
「4楽章「スピラエの逡巡」8楽章「ミオマルクの邂逅」
2楽章「オクシスの廻廊」…なぁ、コルン様。」
「なんですか?」
「ミオマルクって華は知らないか?」
「…まさか、貴方」
胸元から取り出した華を見せる。
その華は、やっぱりなと笑って答えたのだ。
「その華はミオマルク。花言葉は私を忘れないで。」
真実の愛と呼ばれた、花であるというのだ。