浴衣に隠した青い金魚
第11宇宙、惑星ノワギス
此処に来るのは割と初めてと言えば初めてだろう。
紫色の空が逢魔が時の色を思い出させてくれる。
記憶はない。でも、あるようにみえる。
『…何処だろう。』
彼女らが居るとしたら、すぐにわかるのだが。
ウロウロしていると、あのと声がかかる。
「待って、親方空から天使の子が。」
++++++++++
「すいません、私の名前はみや、けほっごほっ。
……ティナと言います!!!」
『まちんしゃい。今宮間って言おうとしたでしょうが。』
ひゅっと息を引いてそんなことないですよと
片言でカタカタ身震いしながら言う彼女に
メルは自分も嘘が下手だが、彼女も大概だなと
自分を見る様に冷ややかな目で引きながら見る。
『…千代木古都って言ったらわかる?』
「っこっちゃん?!?!!?」
『うわっ!!!』
「いったた…ああごめーん!!ちこっちゃあん。」
私の愛称それなんか。ちよりぎ、こと。
だから略してちこっちゃん。
多分ひよっちゃんとか他にあってそれが悪いから変わったんだろうな。うん。
『いやいいというか、君なんで前の記憶引き継いでるの?』
「ん?なんか君が泣いて困ってるの助けて走ってたら迷子なって。」
嗚呼、ギリアと同じ様な状態なのか。
すると他の子達も同じ感じになりそうだな。
『ねぇ他の子って覚えてる?』
「ん?嗚呼覚えてるし遊びにいったことあるよ!!」
『えっマジ?多分なんだけどその子達集めててさ。
今弓枝さんと志村』
「しむらああ?!?!?!?まじ?!?!?!?」
あかねちゃんいるの!!うわやたーーー!!!
そう驚く彼女にまぁまぁとどうどうさせる。
どうやら私達三人は同学年らしい。
他に居た子を聞けばまぁ答えが出てくる出てくる驚くわ。
「へーー!!それならとうちゃんとかが居るってことは。
まぁこまちゃんとか辺りならわかるかな。」
『こまちゃん?』
「
あの子達仲が良い筈だったんだけど…飛べないのかーそっかー。」
『多分あんたがこの世界に生まれ直した特殊能力のせいだよそれ。』
因みにとうちゃんというのはお父さんではなく
弓枝橙花(ゆみえだとうか)という木間さんの同年代である。
彼女らは友人で良く遊んでいたからと聞いているらしい。
いや情報網何処から引っ張って来てるんだこいつ。
メルが言うのはこの惑星に住む者達の特殊能力だ。
記憶を閉じ込めることが可能な種族。
生きていた記憶さえあれば、相手の気関係なく
どの宇宙でも同じ時間に飛ぶことが可能。
所謂ただの瞬間移動である。
そうとなれば話が早い。今割と切羽詰まっているんだ。
事情を軽く触り程度で説明すればそれは大変だと答えてくれる。
ううん、やっぱり記憶はないんだけどね。良い子なんだね。ほんと。
詐欺に騙され貶され連れ去られていないことが奇跡だよこの子。
いやこの場合拉致か?いやどうでもいい。
『ひとまず飛べるなら急いで飛ぼうっとはう!!』
「びゃ!!!」
「まあ、そうはさせませんよねえ?」
『っ…!!!トレース!!!』
おや、口の利き方が悪くなりました?
それとも、誰かの差し金?
っぐ。
『…私は抗うよ。何度だって。』
「ソレが現実ではないとしても?」
『…だとしても!!物語でも、エンドは選べる!!!』
「物語だからこそですよ。…今この手を取れば貴方の望む全てを差し上げましょう。」
それは、本当に?違うでしょう?
『…誰が友人も曲も全て貴方に手渡すと言った?』
「……ほぉ?」
「っひ」
『(まずい分が悪い。コルンらを連れてくるのも考えたが、
彼女らを連れ戻すことに急いだ私も悪かったか?)』
だが、此処は勝ちに行くしかない。
何も戦って勝とうと思わなくて良いのだ。
使えるものは全部使う。
『…悪いね、トレース。私もう半分切ったんだよ。』
「なにをっ!!!」
メルは杖を取り出し華を魔よ全てを統べる存在よと叫びをあげた。
『”我が名ヴァイス・ミア・エフェメラルの名に置いて
華の者環の者真なる者を呼び覚ませ”』
解除と叫んだメルの手には、青い宝玉のある、
「っな!?!?」
「た、タクトになった?!?!」
『”交響曲第4番「真昼間の白昼夢」第一楽章”』
【
春に咲く、遅咲きに。思いがけなく出会い、巡り合う。
鳴り響く音が飛び散り切り裂くその最中。
杖から出てきた光に驚き目を一瞬閉じた彼の姿にメルは笑った。
「っまて!!!…ッチ、消えたか。」
クソっと言う奴を放置して、メルはぶわりと華を回しながら身体を地に降ろす。
着地が一名出来ていないが、気にしてはいけないだろう。
メルは急いでと彼女をたたき起こす様に背中を叩いた。
『次は第9!!走るよ!!!』
「えっでも」
『なんだか嫌な予感が…ってわーーーーお。』
パリンと音を立てて中央に飛び出した奴を見た。
…あっこれ、不味いな。
『全員集合ーーーーー!!!!』
「っ何事でってあれは!!!」
「トレース!!!」
『走るよ。』
でもと言う彼女を無視して今度こそ手を取り階段を走り出す。
攻撃を仕掛けられるとそのままメルが杖を使って一振りすれば
半円型の青いドームが攻撃を防いでくれたではないか。
「っな!!!???」
「あれは!?」
「…使えるとは、想定外だな。」
『嗚呼そうだろう?私の手持ちは良いんだよ。
(子供騙しに近い悟られる前に走り切るしかない…!!!)』
癖で笑う。彼等は私が怖い時に笑うと言い聞かせている。
嘘を付いているという認識にはいかないだろうし、
これを嘘とは私も思っていないから好都合だ。
騙してそのまま入るしかない。
この感じ、2つずつで時間の区切りが変わって行っている。
最初は年数、次に月、数が増えるのは恐らく倍数だから。
3の倍数が一定を過ぎれば今度は4の倍数に変わる。
数は多いも、年数が月、日と刻みが小さくなればなる程時間の進みも早くなる。
それ即ち、最後に向かえば向かうほど、入れるまでの時間が短くなるということ。
『(予想が正しければ後3時間も立たずにいける!!)』
突っ走れば間違いなく入れるというものだ。
『…ねぇティナ。』
「ひぃひぃ、な、なに…!?」
『君、今から言う言葉を使っていつもみたいにおちゃらけて奴に投げつけれる?』
「なにを」
『これは夢。夢だよ。』
「…ちこちゃ?」
嗚呼そうだ、夢であるものだ。そう思い込ませればいい。
私はルール。選ばれた者。そう思えば、自然と彼等の動きも鈍くなる。
大丈夫。そう言って走っていた足を止め緩やかに動く彼等とは違って声を掛けた。
『君は良い子。お友達をこれから沢山、この地に戻してしまうだけ。』
「それをして、どうするの?」
『え?』
「貴方はその後、どうなるの?」
それは
「っメル!!避けなさい!!!」
『っ!!!』
大きな声に気付いたメルが時間を進める。
どうやらこの思い込み、長さが決まっている様だ。
急に時間が進めば彼女の間に赤い亀裂が入った。
枝の様な鞭の様なものは綺麗になくなるも、
階段は崩壊して彼女と分断される。
青ざめる彼女に飛びかかろうとするも、攻撃がソレを許してくれない。
同じ様に杖をタクトに変えていたのだ。
流石にソレをされるとまずい…!!!
メルの元に駆け寄ろうとする天使らに対して
杖を一振り擦れば、花を持つ者達が浮かび上がり彼等に攻撃を振るうではないか。
酷い、攻撃の駒にしか使用しないのか。
「…枯れ木も山の賑わいとはよく言うものだな。」
「お下がりなさい。此処は私が請け負います。」
「ほぉ?師匠と弟子の一騎打ちか。あついねぇ?」
「私の躾がなっていなかったのでしょうね。」
貴方がそうなるとは、思わなかった。
そう言ってアニュラスは声を上げる。
「”我が名アニュラス・テッド・クラークの名に置いて
華の者環の者真なる者を呼び覚ませ”」
…第12楽章第10番
そう言った彼の杖が赤い宝玉を示し、
タクトから緑色の髪色をした女性が出てきたではないか。
女性はそのまま草木を創り出しトレースの方を向け
大きな刃を創り出してそのまま突き刺しに行く。
「ほぉ?それならこっちも同じ様にするしかないな!!!」
その言葉と同時に黒い宝玉のタクトから
黄緑色の女性が出て来て、そのまま小さな葉を使って
刃を切り裂いて消していくではないか。
アスペルジュはフランス語でアスパラガスの意味を持つ。
古代ギリシャ語で「細かく裂ける」という意味の「アスパロガス」という処から
彼女の持ち場所は「対象を細かく裂ける」ことを目的とされていたのだろう。
…その裂けるは一体、望んで得たものなのだろうか?
そう思いにふけっている暇はない。
メルは急いで上に行くためにも杖を使って蔦を出し彼女に括りつける様に指示をする。
自分から降りて空に飛ぶことも考えたが、恐らくこっちの方がまだマシというか
空を飛ぶ力がそもそも無いからこそ、この地で階段を使って動いているのだ。
思い込めば何とかなるだろうが、こういう時に使っていい時ではない。
彼が隙を突いてくれている間にこっちも動く。
準備が出来次第、杖を使って引き揚げたその時だった。
ふわりと浮かんだ彼女の手を取ろうとした時、
風が舞い、手が触れずに遠ざかる。
それはまるで、確かに、あった、瞬間の様で。
脳裏に映像が立ち込めてくる。
ー速報です。午後5時15分頃、○○ホールから帰宅途中だった水面高校のバスがジャックされました。
映像には火が木々に移り、火災が山火事に移り変わっていっている。
ーそのままバスは反対方向にいたトラックに激突し、乗っていた者のうちーー名は救出出来ましたが、
燐と声が聞こえる。いや、凛と。
ー死傷者24名。そのうち亡くなったのは全員で10名です。
現在出火原因であるトラックからの火を消火しつつ、バスの方も。
そう言っていた実況者の声が変わる。バスから火が出てきたのだ。
爆発するぞという声に、周りの声も変わる。
怪我をしていた者がバタバタと倒れていくではないか。
背後から声が聞こえた。
「大丈夫。貴方は悪くないの。」
何が?何を、私は。
『忘れているの?』
「っエフェメラル!!!!」
その声にハッと意識を取り戻し杖を前に十字に切った。
刃がこっちに来ていたのをなんとか切って一息つく。
下からは彼女を抱き上げているコニックがみえる。
どうやら何とかなったらしいが…それにしても、先程の件。
『…この先に、真相があるというの。』
華に狂い、音に酔いしれ、神に愛され、落ちた者達。
この物語の、全てが、最後に眠っている。
物語が終わる、終わってしまう。
嗚呼、だから、この物語の作者も、望んだのか。
この物語が終わって欲しくないから。
終わってしまえば、忘れてしまうから。
音が消えて、忘れて、溶けて、無くなってしまうから。
そんなことはないのに、ないというのに。
忘れ去ることが、ないように。
物語を止めたというならば。
私は、その物語を忘れさせに向かっているというのか。
彼等が、正しいというのだろうか。
音を、華を、駒の様に扱う者達が?
そんなの、許される訳がないというのに…!!!!
「走って!!!!エフェメラル!!!!」
『っ!!!』
そう言われてスタートの音が鳴る。
パァンと、陸上競技場にいるかのようなピストル音にメルは走り出した。
裸足ではなく靴だからこそ駆け上がっても大丈夫なもので。
タクトを握り締め、彼等の動きを読みつつも駆け上がっていく。
光る額縁を見つけて良しと声を上げた。
上を見れば何時の間にこの場所にいたのか残り五分に掛かっていた。
よくよく考えたらこの場所、かなり広く端から端まで下だけでも直径24mはある。
階段は横幅大体4m程度はあるので壁の厚みを含めれば全部で30m程。
緩やかに登っていく螺旋階段の為、
端から端まで上がるのにも一苦労するのを忘れていた。
なんなら道中踊り場もあったりなかったりする。
踊り場があればあるほど上に上がるのは少ない。
これ最上階まで駆け上がるってなったら普通に間に合わなくない!?
「メルいけ!!」
「そうは、っさせるか!!」
そう言ったアニュラスの言葉にトレースが声を上げた。
タクトを振ってメルの横にあった額縁を破壊したのだ。
これでは9番目の場所にいけない。
明らか入って触れたら壊死しそうなものが立ち込めているのだ。
流石に怖くて通り去ろうとすればびちゃりと黒い液体から手が生えて
此方に勢いよくスピードを上げて駆け上がって来た。
『いいいいいいいいやややあああああああ!!!!!!』
流石にキモイキモイキモイキモイきもすぎるうううう!!!!!!
またばーちゃばちゃばちゃばちゃと水音を鳴り響かせながら
いや良く考えて欲しい。
直径10センチ前後の球から急に左右手が生えて
急にこっちに向かって勢いよく追いかけてくるんだぞ。
普通に怖いからな。普通に。其処ら辺のカエルとか
犬とかに追いかけられる方がまだマシだ。
痛い思いが分かるし、気持ち悪さも分かるからまだいい。
理解が出来るというのが
これ程安堵する者とは思っていなかったくらい。
得体も知れないものが急速度でこっちに向かってくるなんて
こんな混乱と恐怖の入り混じったことあるわけないだろう。
あっだから狂騒とか名前にしとったんか?うそこけ!!!!
『このまま、ななっかいとか、しぬ!!!!』
かと言って他に術がない。もう9は放置する。
彼女が知る者が其処であると願うばかりだ。
上を見れば光が落ちてくる。
恐らく次の廻廊が始まろうとしているのだろう。
流石に1階一時間かかる速度で上がるのはちょっとまずい。
このままなら次の廻廊は一時間と少しで始まる筈。
ぐっと息を呑んでいるとメルと声が上がってくるではないか。
急に手すり越しからばっと飛んで手を掛け入ってきたら誰でも驚くわ。
「走れますか!?」
『がんばるっ!!!』
「その意気です…!!」
『下は!?』
「今アニュラス様を先頭に残党らを弟達が加勢してくれています。
破壊神らは界王神らを守る為に出来るだけ戦闘に加わらない様に維持を。」
ソレは良かった。あの黒い奴をどうにかして欲しい。
嗚呼アレですか。貴方の悲鳴が上がったのは。
「…壊れませんね。」
『なんか大きくいいいいいやああああああ!!!!』
「煩いですよ!!」
『いやむり!!!ほんと!!!まだゴキちゃんの方が万倍マシだよこれ!!!!!』
黒いものがもうモザイクかけて良いレベルまで変な形に変わったではないか。
あれまって、気を吸い取って形を変える系生物では?!?!?
アレだあれ、魔人ブウの気配がしなくもないあれ。
取り込まれたら割と終わりな奴のあれだよ。
あれそれ違う方じゃなかったっけ!?
どっちでもいいわ!!!
とにかく走って追い付かない様にするべきなのに
持久力はあるにはあるが、脱力感が一気に来る。
身体の動きが鈍るとサワアがメルと声を掛ける。
腕を引っ張り上げ、そのまま身体を抱き上げて走り出した。
『(嗚呼これ、タクトの反動か…)』
まだ完成しきってもない状態で振るったというのもあるのだろう。
何とかしてタクトだけは持っておきたい。コレは大事なものだから。
だってやっと、皆に会えた。
私まだ、皆と沢山お話出来てない。
これから全員集まったら、何をしよう。
お歌を歌ったり、曲を披露しあったり、
嗚呼演奏会を開催するのもありだなあ。
私だって、貴方達と演奏したかった。
親の事情とか関係なしに、その場に残りたかった。
でも私は弱くて、意気地なしで。悪い子だった。
だから、時間を押しても行けなかった。
あの時言わなければ良かった。
きっと見に行くだなんていったから、
待ち続けていたなんて、しなかった。
あの子を待っていたから、そう言う声が聞こえる。
嗚呼ごめんなさい。お父さんお母さん。
私が待たせたから、時間を取ったから。
命までも奪ってしまったの。
なら、これはせめて、報いではないのだろうか?
彼女らを、私が、守らねば、なんとしようか。
嗚呼どうか、お願い。
皆に、会わせてよ。そして、音を、奏でさせてよ。
『…あいたい』
その言葉で反応したのか、深い青色が光を放ち、
タクトの手元にあった青色が空色の様な光を込め始めたではないか。
それには後ろから追いかけていた黒いものも悲鳴を上げて下がりだす。
「…メル?」
『……、』
「…大丈夫、次の廻廊に進ませます。」
貴方のご友人の、お望みですからね。
そう言って前を向いて走り出したサワアに対し
メルはそうだねと心の中で答える。
私が望んでいいものではないのに。
嗚呼それでも、いい。この物語の主は、とても、
可哀想な子だったと思い出す様に目を閉じた。
ズシンと地鳴りの音と共に悲鳴が上がることで目を覚ます。
身体の脱力感は多少取り除かれたのでサワアに声を掛けると
降ろして貰えた。本当に色々ありがとうね。助かります。
下をみれば黒い靄が立ち込めているではないか。
周りの木々は腐れ枯れ果て、消えてなくなっていく。
『いかなきゃ』
「メル…」
『例え、死にたくなったとしても。』
彼女らの魂は戻ってこない。願っても、戻らせては、いけないのだ。
ぎゅっと杖を握って小走りに走り出すメルに、サワアがメルと声を掛けて足を止めさせた。
くるりと回って彼を見る。アメジストの綺麗な目が、此方を見てくれていた。
「いってらっしゃい。お気をつけて。」
『…いってきます。そっちもね。』
「ええ。」
そう言ってサワアは杖を取り出しかかって来た
蔦を杖ではじいてメルの後を追わない様に防いだ。
その間にメルは上がり、
ブザーの音が鳴り響く場所に顔を向ける。
丁度反対側に位置している。
すると、身体がふわりと落ちる感覚を覚える。
正確には、身体が引っ張られて、いや、押されて落とされる感じか。
ごめんね。そんな声がした。一体誰が、私を突き落としたのだろうか?
「エフェメラル!!!!とんで!!!!!」
飛ぶってどうするんだっけ?
どうやったら、飛べるんだっけ?
でも人間、飛べないよ?
嗚呼でも、私、人間じゃないのか。
背中に強く念じれば白い翼が光を放ちながら羽ばたいてしまえる。
このままいけば、そう思っていた矢先だった。
すぱっと背中を切られ、痛みを伴い悲鳴を上げる。
ああっと鈍い声を上げるメルに、やめろと声が聞こえる。
痛みでタクトが手元から外れる。
嗚呼駄目だ、あれだけは、手放しちゃ駄目なのに。
もうだめなのか、全部、終わるのか。
そう思っていたその時だった。
「大丈夫。皆みーんな、貴方の味方。」
『え?』
「ほら、掛け声覚えてるでしょ?」
嗚呼、覚えてる。覚えてるよ。私。
そう思ったメルが腹から声を出した。
『っ、みなもおおおおおお!!!!!』
「っ!!!」
「「はああああああああああい!!!!」」
っえ!?と声が上がる各々と、動きが止まるトレースとアニュラス。
いや何をしていると言いたそうな顔に、メルは下を向いて叫ぶ。
『響くは!!
「…あいつ!!!ほんと、覚えていないのかいるのかわかんねぇな!!!」
「っちょ、ギリア様!?」
「水面の様に!清らかに!!高らか静かに包み込め!!」
「
『轟け欺け酔い狂え!!』
『僕らは』
「「「みなも!!!!」」」
『勝つのは』
「「「僕ら!!!!」」」
『願いは』
「「「同じ!!!!」」」
『想いは』
「「「一つ!!!!」」」
『約束果たしに』
「「「いざ行かん!!!!」」」
『あじゃあじゃ〜〜〜〜???』
「「「ふぁいてぃぃぃぃん!!!!!!」」」
その言葉でメルの手放していたタクトが光を放ち
蔦を創り出してメルの手に掴み引き寄せられたではないか。
まるで意志を持ったかのような動きに、メルはにやりと笑って見せる。
「っまずい、このままっ」
「させませんよ…!!!」
「みやまあああああああ!!!!」
「はぁあああああい!!!」
掛け声を出したギリアが声を上げると同時に
気付いたコニックが行きますよと言って
宮間と呼ばれたティナを勢いよく飛ばしたではないか。
それに気付いたティナが片足を出して
まるでバレーのボールを受取るかのように
手を前に出していた手を横にして
トランポリンの役割になったギリアが
上にとティナを飛びあげた。
「いっけえええええ!!!」
「っな?!!?」
「
あの子を絶つ子は許しません!!!っん〜〜〜せいっ!!!」
その言葉で手に力が籠り、
トレースの胸を飛ばしたではないか。
開いた穴から周囲が灰色に変わったと思いきや、
胸は戻り音が鳴りびきながら身体が落ちる。
「やったか!!」
「っいや」
そんなことはない。
そう言ってふわりと降りて行ったアニュラスがビルスの言葉に否定を入れた。
姿が見えなくなったのは元の世界に戻ったというところだと言うのだ。
と、いうか、最後の言葉は要らんだろと声がかかる。
バタバタと落ちるティナをぱっとコニックが受け止めると
楽しかったとブイサインを出す彼女に受け止めたコニックも
周りの者達もひやひやしていたのがホッと安堵と
なんだか気が抜ける感じが混じって変な空気になった。
「そんなことよりメル様は?」
「彼女なら既に第7へと旅立ちました。」
「お兄様…!!ご無事で!!」
「ええ。ちゃんと落ちたのを此方でカバーして飛ばしたので。」
「とばっえ?」
彼女を球の様に飛ばして差し上げました。