白い手を放れたかざぐるま
時が少し巻き戻り、メルがアルトリアを蹴り飛ばした直後。
『仮に私を依り代にして、どうするの。
意味が分かっていないと依り代になんてなれないですよ?』
「そうですね、それもそうです。
それでは貴方が理解出来るまで少しお話をしましょうか。」
『(ちょっとした時間稼ぎも今は最善のこと。出来るだけ伸ばすしかない。)』
そう言ってトベラが手を止め話をする。
詳細を纏めたら話はこうだ。
この世界が始まる時、全ては清らかな水しかなかったそうだ。
誰もを映せる存在で、どんなものにもなれる綺麗な状態。
自分が何者かすら分からない程に透き通っている水から
一つの種が産まれ、それは大樹となり実りを得た。
其処から神々が産まれ、水からは天使らの様な生命体とは違う者が産まれたというのだ。
でも、私はそう思わない。
「では貴方はどう思うのです?お聞かせ願えますか?」
『…この世界が始まる時の部分は同意見。
清らかな水に種が植えられ其処から大樹が産まれた。』
「ほぉ?ではその後が原因だと?」
『全ての華樹はその大樹から実った。
種の先は力が無いので今の人間と同等の存在。
でも、それは実らないだけであって、
時間が掛かれば元の大樹に戻るものもいる。』
それが今の、華神だと?
ええ。
「ならば問います。何故華樹神は華神らを栄養として回すのです?
それを許容している貴方自体、此方側だと思わないのですか?」
『っそれは…』
「仮にそうだとして、天使らの様な者達をどう説明するのです。
葉先が違ったとでも豪語するというのですか。」
ううん、それには同意見である。
でも、種自体が、違ったら?
『そもそも華樹以外にものがあったら?』
「というと?」
『華樹を守る守護者の人間が居たってことだよ。』
そのものが、天使らである存在だった。いや、違う。
『華樹が願い守護者を出し、
守護者が天使らを与え、
華樹が人や生命を生み続け出した。』
でも、それには時間もかかる上に、生産性がなさ過ぎた。
だから人同士で力をつけ与える機会を作った。
その為には、住む場所が必要で、
誰もが安心して暮らせる様な場所が欲しかった。
そこが、かつてあった、楽園であったところだろう。
黄金の草木に囲まれて、誰もが安心して暮らせていた。
神も人も悪魔さえも。全員が笑って絶え間なく生きていられた。
でも、増えれば増える程、世界が壊れていく。
『源はやがて枯れ果て、一滴すらも無くなってしまう。
流石にそれは不味いと思って、でも華樹が生き残るには水が必要。
だから水を使って取り出した神の力を持った華神らを元に戻す。』
でもそのままなんて到底難しい。なら介入仲介役があればいい。
「そこで華樹神ですか。確かにその説は濃厚そうですね。」
『でしょ?』
「なら何故我々が貴方を依り代にしているのか分かりますか?」
『普通に考えて、本来の大樹である華樹が生き返り、
そこから生まれる者を選別して
新たなる力をもたらすつもりじゃないの?』
「大方あってますね。そうです、
基盤をひっくり返すに等しいですからね。
その為一度華樹に通じてこの世界を
まっさらにする必要性があるのですよ。」
いやだとしても、だ。
『もしそうだとして、既に海は枯れ果てている。
現にあの場所は何もなかった。』
「あの地の上にあるとすれば?」
『(想像していたのは何も私だけではなかったと。)』
そういうことらしい。
『…一度華神らを全員元に戻し、
神々すらも栄養素にすると言っているが、
そうしたら私達諸共消えるけど?』
「それで構わないのですよ。」
『消えることが恐ろしくないの?』
「ええ。私達は産まれた者です。
帰るべき場所に帰るもの。ただそれだけですから。」
『はっ、そうして押し付けて可哀想だよね。海の者も。』
「…なんですって?」
手に力が入る。彼等が何かをしてくれているのだろう。
消えては出てくる。循環してくれているのだ。
向こうで何かしら呪文か何かを唱えたな?
いいぞでかした。よくやった。
あと出来ればその言葉ちょっと今すぐ此処に来て教えてくれない?
僕分からないんだよ。多分今すぐそれ知ったら多分きっと上手くいく。
あっ駄目そうですね?分かりました。ならばよかろう。戦争だ。
『だから、聞こえなかった?扉作り続けて頭まで扉になった?』
「…しゃらくさい。」
『っ!私を攻撃して壊したらせっかくの依り代が消えて無くなるよ?』
「っぐ、それもそうですね…。」
よしきた。生存ルート確保した。
私は攻撃したいのか防御したいのかイマイチ分からんな。
多分相手も絶対分かってない。もう雲行きが怪しい。
少なくともトベラ様の笑顔が消えてひくついてる。
うわぁ〜〜既視感在ると思ったらコルン様だあれ。
あっいつもこんな面持ちなんですね?分かりました。
これからはもう少し丁寧に頑張ります。
丁寧に頑張るとはこれ如何に。
あと出来るならもう少し最初からやって欲しいですよね。
ああ分かります。でも今気づいたから許してくれめんす〜!
『でもトベラ様、皆さん理なら死ねないって
言ってましたけどどうやっても死なないとか
この理にあるのですか?』
「その感じ、まるで理すらも死ねると言いたそうですね?」
『それこそ、貴方が企んでる
私を依り代にしてだと言っていますけど
…私さっきからずーーーっと考えてるんです。』
「何をですか。」
『貴方のいう、依り代で本来在るべき場所に戻るということ。』
そう言えば彼は会心したんかと言わんばかりに
「ほぉ?」と眉を上げて答える。
上から目線なのは全然こちとら良いんだけれどもさ。
あれ待ってこれ私片足突っ込んでない?怒られない?
「それで、一体何を教えてくれるのですか?
如何せん私も未完成だそうで、
貴方の考えがイマイチ掴めないんですよ。」
そりゃあ時間稼ぎに私も手当たり次第に話してるからね!!!!
そりゃあそうだよ!!私だって困ってるんだわ!!!!!
『もしも仮に貴方が望むことが、
この世界の全てが消えて無くなることだとするでしょう?』
「ええその通りですが、続きをどうぞ?」
『でも理が何をしても死なないなら、それって不可能じゃない?』
「…なんですって?」
『いやだってさ、考えてみてくださいよ。
数多の存在が海から出て来ても、
消えるとなればそれは理が死ぬという意味に繋ぐことであり、
理もまた完ぺきではないということになりますよ?』
不死とかそういう類に寄せればという話だ。
まぁ全王様の様に、この宇宙自体を消し去って
一人だけになるなら話は別だが。
恐らく彼が言いたいことはそういう訳ではないのだろう。
自分自身も全てひっくるめて、となれば話が別になる。
自分で何度も殺そうとして死ねなかったなら、尚更ね。
「…では、貴方は何をもってして死と言いますか?」
『人から忘れ去られること。』
「それは、己すらも、ですか?」
『そう。』
「…成程、生きとし生ける者だからこそ、
生き続けることが最もなる死である証だと。」
ですが、それは甘っちょろい考えでは?
なんですと?
『それは聞き捨てなりませんねえ?
私の価値観が貴方と合わないだけならまだしも。』
「では何故貴方は死ねないのですか。
一度貴方を知る者達は誰一人としていなかった。」
それは、己さえも。
…それは、その。
「まだ理になっていなかったから?ですが理は存在その者です。
理に見られた時点で貴方もまた、存在その者の枠組みに入っていた者。」
『えっじゃあ尚更我々死ねないのでは???存在ごと先に消滅してから
この世界を消し去ったらいいけど、それを阻害されていたら完成しませんよ?』
「……それもそうですね。」
いや丸め込めちゃったよ。いやどうしよう。
メルは焦っていた。こっちが押されて押されて最終的に
危険な状態になったらサワア辺りが救出してくれると思ってたからだ。
そうしたら願いを祈りを増幅させに
させまくって叩きのめそうとしていたのだが、
急激な沈下を喰らって少々的外れもいい処で
終わってしまう。えっマジで???
このままとかありなのそうなの?
「ではこのままいけば華樹は間違いなく枯れ果ててしまいます。
それはどう説明をするべきですか?」
『普通に消せばいいのでは。』
「…それ、端的にじわじわと消滅しろと
地獄を提案していると同等なのを分かっておいでで?」
『いいえまったく!!!!っうええ!?そうなんっですか?!?!?!?』
あっ頭抱えだしたぞあいつ。
わーいわーい。時間稼ぎすごーい!!!!
「…貴方と会話していると段々頭が痛くなってきます。
これは貴方の術ですか?それとも貴方由来ですか?
後者であれば嘆かわしいことこの上ないのですが。」
『お言葉ですがお兄さんや。後者です。』
「断言をなさらないで下さい。
…全く、次の定理者がこんな子だとは。
だからあれ程人には気を付けろと
彼に言っていたのに。」
あっ多分これアニュラスに対してだな。
最終的に選んだのは彼の次だし。
まぁ私の事はその更に次が選んだことだからな。
あとあの感じ、多分アニュラス様私と似た部類だな???
なんだか可哀想になって来たな。
『それで、どうされます?
このまま私を依り代にしたって水が戻るとは限りませんよ?
それこそ中途半端で止まったらどう落とし前を付けるんですか?
貴方は彼等に拘束されるか、この世界を綺麗にするどころか
汚く真っ赤に染め上げてしまうことになりかねませんよ?』
「そうならなくとも、こういう状況下に陥った以上
遅かれ早かれそうなる可能性はぬぐえませんよ。
…此方の状態も心配なさるとは、
まあ水面に生きてきた者だからこそでしょうかね。」
『ん?どういうことですか。それってまるで、
私がそもそも混沌の海から産まれた存在みたいな言い方、して。』
そう言った後、彼と目が合う。
あっ、さっきから目を合わせて無かったけど、
これ、合わせたらまずいやつだったか。
身体の力が抜け落ち、後ろに下がったまま
落ちそうになった身体が受け止められる。
いつの間に前に居た者が此処にいるのか、分からない。
「…貴方が時間稼ぎをなさっていることくらい此方も分かっていた。
そして、貴方が私に目を合わせることがあることもまた、ね。」
『(なにを、した。何を、しようとしている?)』
「さて、準備は整いました。世界を切り替えましょう。」
そう言って指をならし、第1宇宙から世界が切り替わる。
世界が真っ白に包まれていく。嗚呼此処、元の場所なんだ。
あの時は凄く驚いたな。だって自分が縋り付いていた先の場所が
この世界の存在自体を作り上げた元の場所だったなんて、
一体誰が想像しようものだろうか?
身体の動きがイマイチ掴めない。
あれ、どうやって、身体動かすんだっけ?
「そのままで構いませんよ?エフェメラル。」
『(やめて、その名を、よばな)』
「お眠りなさい。出来れば、声が出ない浅い夢を。」
そう言われて、メルはそっと目を閉じた。
すやりと寝息が聞こえだすと、トベラ様と声が背後でかかる。
「無事ことが終えました。」
「そうですか。此方も順当に。」
「…よく眠らせましたね?」
「彼女が心を開いてくれましたので。時間稼ぎにと企てていましたが、」
「
「それにしても、其方もかなり話が早く終わりましたね?」
「…ええ、それこそ全てをお教えしたら首を出してくれましたからね。」
このままいけば、貴方達が愛して止まない新たな定理者すらも、
破滅に道を踏み外すことになりかねないと。
…おやおや、言い切らなかったのですか。
「貴方も狡いお人ですね。責任を擦り付けると。」
「いえいえ。とんでもない。…まぁですが、
まだ望んでいない者達が居るとは、懲りもしませんね。」
「……彼女を此方に引き渡して頂けませんか?」
いまなら何も致しませんし、このようなことは目を瞑って差し上げましょう。
…一体誰に口を聞いていると?
「貴方も前に出る様になりましたねぇ?…アニュラスよ。」
「それは此方のセリフですよ。…トベラ様、
いや、トベラ・ヘイズ・アレクサンダー」
そう言った言葉で、世界の色が変化する。
口の利き方には慎みなさいとあれ程言っていましたが。
「どうやらまだ躾が至らぬようですね。」
「…トベラ様は私が請け負います。貴方方はトレースを。」
「加勢します。」
「…助かりますが、貴方方は中立。
そちらで彼等をお守りして頂きたい。」
ならと声を上げる者が前に出た。
「僕らはどうすればいい?」
「び、ビルス様!!!」
「こうやってのんびりするのも飽きちゃってね。
出来れば軽い運動がしたいんだけれども。」
「…軽い、運動。はっ、っくくくく、」
「何か笑わせること言った?」
「笑うも語るに惜しいくらいには、ねぇ?
君ら分かっていないのかい?」
我々は黄金の草木を司れるもの。
そう言って草木を蔓延らせ、
ビルスらの足元にいれれば、彼等の動きが鈍くなる。
「邪魔者はそのまま眠っていればいい。
そうして、この世界が終わるその日まで。」
「…何を言っても聞かない、という処でしょうね。」
「どうしよ〜どうしよ〜」
「ねぇねぇあれって僕消せれないの?」
「それは…」
「多分無理ですよ。全王様。」
「ダリア様…!!」
そう前に出たのはダリアだった。
流石に彼等は定理者の管轄軸。
「ルールに則れば彼等は全王様よりも
上の位置にいる存在その者です。
流石に貴方様の力でどうこうできるとは到底…」
「っ無礼な!!」
「いいよ。いいよ。」
「いいの。いいの。」
そう付き人が前に出ようとすれば、下がれと手を出す全王様。
「じゃあルールを覆せば出来るんだよね?」
「そうだよね?そういうことだよね!」
「は!?いやそれは」
「…いけるかもしれない。なあ、アルトリア。」
「なに?」
「お前あの子と長い時間過ごしていたんだろ?
こういう時ってなんか無かったのか?」
ええ、そう言われても。
そう開幕の火蓋が何時の間に切れたのか、
アニュラスらが戦いだした辺りであっと声が上がる。
「そう言えば、全王様。ねぇ確かエフェメラル様と
昔遊んでいましたよね?それも泣いてた時特に。」
「え?そうなのですか?」
「うん?うーーん。あっ!あったねぇ〜!あったよ!」
「そうなの?」
「うん!メルったらいつも泣いちゃって、でも最後は笑ってくれるんだよ。」
「それって何してました?!」
あっちょ、落ち着いて。
「あの子が話で泣き止むって早々ないんですよ。」
「何かのヒントだと?」
「ええ。」
「全王様、思い出せそうですか?」
「うーーん、うーーあっ!そうだ!!メルに言ってたんだよ!!」
ルール自体を、書き換えてしまえばいい。
「…とんでもないことを仰っていたんですね。あのお方は。」
「聞こえますよ。」
いやだとしても、それしかない。
メルがルールを書き換えらえることが出来るからこそ、
彼等も必死になってまでして、贄にするつもりで捕らえた筈。
そう、つまり…
「…そういえば、貴方方は確かメル様の旧友だとお聞きしていますが、皆さん漫画、とやらはご存知で?」
「何を藪から棒に。そんなこと知っているが、今更なんの」
「ではこういえば分かりますか?”ドラゴンボール”という物語をご存知か、と。」
それはと目を丸めて驚くギリアやアルカネットらにコルンが睨む。
「大神官様。お言葉ですが、私に一つ考えが。」
「…なんでしょう。ヘマをするなら怒りますよ?」
「いえ、これは成功します。必ず。あの子が…いえ、彼女が、エフェメラルであり、千代木古都という存在であるならばこそ、ねえ?」
そうでしょう?
4つの花を、咲かせて消える、幼子よ。
++++++++++
「…成程、考えましたね。」
「出来そうですよね?」
「ええ。皆さん聞きましたね?手筈通りに動いて下さい。」
「終わったら絶対遊びまくるぞ。」
「そうだな。コレが終わったら、な。」
そう言って破壊神らがトレースらに向かって走り出す。
何を血迷ってと草木を蔓延らせるも、一向に動きが止まらない。
それに驚いている間、蹴りを顔に腹に入れられそのまま飛んで行く。
「っは!!どうだ!!」
「俺達は彼女の加護の元だからな。」
「っぐ…成程、一度理から綺麗に外し、完璧なる記憶が自我を持ったからこそ。」
この黄金の草木の状態が維持、いや、力が及ばないと。
「なら貴方方の出番です!!!」
「…やっぱり来たか。」
「お前ら!!絶対死ぬなよ?」
「何当たり前のこと言ってるんだ。」
死んだらアイツの頭、撫できれないだろうが。
…それもそうだな。
「頭撫でさせてって顔してたし。コレが終わったら目一杯愛でてやろうか。」
「ついでに犬耳と尻尾もつけるか?」
「嗚呼いいね。恥ずかしそうにしてたし、お灸添えにはうってつけじゃない?」
「それなら幼子の状態に戻してやるのはどうだ?」
「それもいいな。小さい頃に甘えてやれなかったと聞いているし。」
あれがいい、これがいい。
そう言って破壊神らがわいのわいのする。
此処が最後の決戦地だということを忘れてのことか、それとも。
「…随分と楽しそうですね?貴方の仕える破壊神は。」
「それは此方のセリフですよ。そっくりそのままお返しして差し上げます。」
でも、あれがいいんでしょうね。
「これが終わったら、ばあむくーへんとやらを皆で食べましょうか。」
「おや、良いですね。でしたらお紅茶も新調いたしませんか?」
「確か良いミルクが手に入ると聞いていますし、
どうせなら彼女のお好きなカフェオレを
作って差し上げましょうか。」
「おや、明日は槍が降るのでしょうか?
コルンお兄様が弟子を労わる時が来るだなんて。」
「煩いですね。私だって弟子を労わるくらい致しますよ。」
「仮にしても怖がって『え?え?ま?え?のん、え?』…と、
飲んでいいのか、これすらも敵の罠だと勉強なのか疑心暗鬼に陥りそうですけどね。」
ぷっくくくくく、有り得そうですね……!!!
お、お前達…!!!
「まぁいいではないですか。」
「お父様まで」
「痺れ薬まで入れて叫ばせる所まで致しましょう。」
「お父様?!?!?!?!」
そんな堂々とにっこりした笑顔で言うものなのか。
「…これが終わったら俺、結婚するんだ。」
「こら、フラグ立てるな。」
「フラグ?なんですかそれは。」
「死亡フラグですよ。絶対に叶わないことを言うんです。」
「でも、叶わせる。そうでしょう?」
「…嗚呼もう!ほんっっと此処の神様方って
どうしてこうも堂々としているんですか!!!」
いや、堂々もするだろうが。
「だって俺達は神様だ。神が堂々しておらずしてなんという。」
「まぁ例外ありきですがね。」
そうシンを見る他の界王神にそんなことないとプンスコ怒ると
周りもまた笑い始める。嗚呼、本当に、穏やかであれる。
「…不思議ですな、あのお方を想えば想う程、心が静まっていく。」
「まぁあれ程馬鹿な子がいるもんかね。」
「これ!」
「ですが…これが終われば、少しどころか色々聞きたいことがありますし。」
「おや、なんですか?」
「それは秘密です。」
おや、狡いですね。
それほどでも。
そう界王神らが笑う中、ほんと、馬鹿だよなあと声を伸ばす。
「皆して、あいつのことばっか考えてる。」
「そういう朱音ちゃんも、古都のことばっかでしょ?」
「っふふふ、それもそうだな。」
「朱音ちゃっていうよりかは、前のほうじゃないの?」
「あっいうねえ?ひょっとして〜シュヴァルツ・マイン・エテルネルご本人で
尚且つエフェメラルって子が独りぼっちにならない様に転生し直した〜とか!」
あれ?待って???嘘でしょ???
「…嗚呼、その通り。私いや、僕の名前はシュヴァルツ・マイン・エテルネル。
ねぇ?そうでしょう?宮間、いや今はティナと言うべきか。」
ルテ・ラ・マーラー
「ヴァイス・ミア・エフェメラル…いや、アイリス・シュミットのお兄さん。」
「っな!?!?!?」
「…一体何時から?僕けっっっこう騙せてたと思うだけど。」
「作曲家名が出てきた時くらいから。
エフェメラルが僕らの曲を何処かで覚えていたから
その欠片が彼女を助けてくれていたことだろうし。」
嗚呼、あの暴走していた者達ですか。
「ですが眠っていたのはアニュラス様達では」
「それは彼女の勘違いも含まれてるだろうね。
まぁ正確に見なかったからこそ、
お咎め食らえたことで今生きてるって訳。」
「管轄外に入れたからこそ、維持出来ていたと。」
そういうことだ。
「それで、お兄さんどうする?
まぁ今はお姉さんと言った方が良いのかな?」
「お互い性別が逆転してますからね。」
「うっっわ滅茶苦茶へんっだ!!!」
「…うるさいですよ。私は元々こういう口調だったのです。」
寧ろ貴方が呼び出したんです。責任とって下さい。
えーそんなーーー
「我々は追いかける者。貴方は私を、追いかけてくれないのですか?」
あの子が、私を追いかけてその道に足を踏み入れたように。
「貴方も、私を。見てくれるというのでは?」
「……この人間人たらし悪魔家系め。」
「っくくく、どうとでも仰いなさい。」
「貴方ですか、やけに作法がなっていた原因は。」
「おや心外ですね。努力の賜物ですよ。
外に出たら自分を隠せとしこたま怒っていましたので。」
「…妙に閉じこもってたのはそのせいか。」
食事を怠っていたのは、そもそも食事の躾が厳しかったから。
そりゃあ気分が乗らない時は取りもしなくなるもんだ。
「無駄話は其処までに致しましょう。…今は、目の前の攻撃をなんとかするまで。」
「ねぇねぇお兄さんお姉さんや。」
「なんです?先程コルン様に言われたこともうお忘れですか?」
「ばっ違うけど。」
「それならさらっと図星めいたことをしないで下さい。」
だってああいやそうじゃなくて。
「タクト、取れるよね?」
「…まさか。この私が、取れないとか
言い切る子が何処に居ましょうか?」
「…あの子が男勝りだったの、分かってしまった。
この辛さ、どうしてくれようこの末路。」
「ふふ、その怒りを彼等にぶつけて進ぜたらどうでしょう?」
「報酬」
「アイリスの過去を教えてあげる…そう言っ「交渉成立」
あの、私が言うのもなんですが、貴方少々ちょろすぎません?」
いやいや。
「いいか!二組に分かれて行動する!!こっちが紅組。
チェレステの方が青組だ。」
そう言って指示を出して仕切る朱音に、楽しそうですねと大神官が聞く。
チェレステの笑みは上がり切ったままであるからだ。
「…ええ、そう思われます?」
「ええ。負ける可能性しかない状況下でも、貴方は勝てるとお思いで?」
「ええ、勿論。だってあの子が描いた物語ですからね。」
あんなに身体が弱かったのに。
何度も何度も、転生したって、同じ末路に辿り着く。
それでもいい、どうなったって構いやしない。
音も詩も花さえも、彼女の味方に、なっていく。
「詩?詩なんて何処に…」
「華は4つ。…分かるでしょう?」
そう、メルが輪廻転生を繰り返していたのは4回。
1つはこの世界。
1つはAの世界で2回。近代社会に近い時代と旧時代。
1つはBの世界で1回。近代社会に近い時代で詩を綴っていたのだ。
最初に産まれた時が、原初ではなくて…
水面に産まれた時からを数えれば
「知っているか?人は6回転生すればもう一度人に戻ってくるそうだ。」
「…なにを」
「同じ様に、水面に産まれた者は、6回転生したら、もう一度戻ってくる。」
そう、今、メルは5回目の時間を生きているとでも言うのだろうか?
だとしたら、それは、どうあがいても…彼女の望まない青い世界に戻るというものであって。
「一度還せばいい。そうして、また巡り廻ってしまえばいいよ。」
「…また、春を繰り返せば、ということですね?貴方も本当に悪いですよね。」
「よせやい。全部分かっていて、放置していたんだろう?」
お前も、お前達も。全員が。
さて、何のことでしょうか?
「私は大神官。ルトラール様の弟であり、全王様にお仕えする天使ですよ?」
「…はーーーしらばっくれたな。ほんと、やんなるわあ。」