泡沫のぬくもり





ああもう、何しているんですか。

「ほら、口を見せなさい。」

もう、貴方と言う方は本当に食べるのがへっっったくそですね。
そう言わなくてもいいじゃん!??!?!

「私が居なくても大丈夫な様に食べなさいよ。」
『えーやだ。』
「なんで拒絶するんですか。全くもう。」



『だって食べたって味がしないもの。しても、嫌だから。』


ねぇ、私ね、皆好きじゃなかったんだよ。
本当は、貴方すらも、ねぇ、サワア?

皆が繋げた、この想いを。
私が台無しにして、どうするというのだろうか。


『(……お願い、……お願い。お願い、お願い、お願いお願い)』



お願い

どうか、彼等の願いを、束ねさせて。



『……ゼロはゼロ。何もない。
虚空ですらない、満たされない。
それでも生きてる此処にいる。
音にも成れない花にも居れない。
ならば何処、私の居場所。』
「っめ、る?」
「…漸く覚悟が決まりましたか。」

長かったとため息を吐く中、メルは前に歩き
タクトを創り出して静かに声を続ける。


『探してみても、何処にもないよ。
…だって此処に、あるのだから。』

そう、そうだよね?だって此処に、生きている。
私が覚えて活かしてる。だから大丈夫。もう、大丈夫。


『約束果たせし今此処で。邂逅の終焉、エピローグ。』


指揮者だって、作った者だって。
今此処で、この音を、楽譜を、見ている貴方その者だって。
その時間に微睡み憂い、狂って差し上げましょう。

私はエフェメラル。春の時間しか生きれない、瞬く間の者。真の者。


それでは、どうか、お聴きください。

交響曲第4番「真昼間の白昼夢」
第一楽章第零番



『【いつか終わるその日まで】』


花冠を、捧げましょう?


そう言ってメルは青い花と白い花、
そして黄色の華を創り出す…いや、取り出したのだ。
あの時、サワアの元に飛んで行ったのは
メルその者。創り出した固体だったのだ。

だから此処に在る。ちゃんと、戻してくれたのだ。
…嗚呼、戻さなくて良いのに、大神官様の様に、
何かを願い停止していれば、死ぬことなどないだろうに。

仮に全王様が消えて無くなったとしても
停止状態のあの形はどんな状態でも時に身を置く。
その為肉体という概念等存在しない場所に重きを置く為
大神官が死ぬことは無いというもの。混沌の海に吞まれても尚、だ。

勿論時間が進めばどうなるかくらいは、想像がつくものだが…。

さて、フィナーレを捧げにいくとしよう。


『…光華に続きし、樹々じゅじゅの間に。草木に埋もれし華の輝きよ。
混沌秘めし、螺旋に留まる誓いの者よ。
暁よりも青き者、清冷せいれいよりも尚清き者。』

永劫極めし煌めきの、金色纏いし永久の支配者レクトル
我が血に眠りし、金色なりし華の源。約束果たせしこの末路にて。

『泡沫見紛うその水面に、映せし数多の欠片達よ!
今こそ我に汝の救うその一滴と、ならんことを…!!!』

ねぇ、音って綺麗なんだよ。水みたいに、澄んでいるの。
嗚呼、私ね、大きなお願いなんてしたくないの。
だって叶わないってわかり切ってるから。

皆なんでそんな大きな願い事するのかなって。
浅はかだなぁって思ってたりしたんだ。
でも、私が一番浅はかだったよ。

だって、私も、大きなお願いしてたんだ。

もう二度と、叶わないであろう、お願いを。


ねぇ、花冠を……捧げましょう?

貴方と、二人で、なんて。そんな嘘を、ついたばかりに。

こんな世界に、来てしまったのだから。


嗚呼どうか、夢なら醒めて。いや、醒めないで。
醒めてしまえば、貴方のことすら、忘れてしまう。
そうなるくらいならば、それならいっそのこと、醒めないで。

貴方と共に、愛させて。この音をこの華をこの感情を。

煌めきを。


沢山沢山、覚えてきたんだ。
嗚呼、いつか、いつかでいいよ。


『…ねぇ、綺麗な、おはな。渡しても、いいのかなぁ?』

私の大好きな、かけがえのない。
たった一つだけの、綺麗な華弁を。
大好きで止まない、音の続く、貴方のその手に。

渡すことを、どうか、どうか。許して欲しいの。

嗚呼!これはきっと…!


『ゆめなんだなぁ』


綺麗に澄み切った中で。
胸に一つ針を突き刺した。
血の匂いがする。いい匂い。華の匂い。

声なんて聞こえない。音なんて取れなくなったから。
言葉なんて知らない。もう捧げてしまったのだから。

嗚呼、願わくば。貴方ともう一度、華を













ガラガラと落ちる。世界が崩れ落ちていくのだ。
白い世界が、外の紺色に見紛う黒一色に染まり続ける。

素晴らしいと声が上がる。このまま綺麗に、皆揃って溶けて無くなってしまえと。
もうおしまいだと叫ぶ周りに、大丈夫ですよと声が上がる。


「嗚呼もうだめだああ……あああ????」
「あれ?身体が…徐々にって!!!」
「…こ、こは」
「お兄様あああああ」
「ふぐっ!!!」

これ、生きかえったのを殺すつもりですか。マルカリータさん。
だっだ、だっでえええ

「…これは一体、いや私は確かに停止していたはずでは。」
「完成させたんでしょうね。いや、したんですよ。」
「お父様!?!?」
「まさかあの子の方が、私の願いより上回ってしまうとは…ま、計算通りですが。」
「一体これは…」
「見なさい。貴方が育てた弟子が、華を咲かせた末路を。」

そう言って前を向く大神官に、ゆっくりと身体を起こし、その先を見つめた。

其処には、深く青い髪色を染めた者が、トベラの前で浮遊していたではないか。
何かを説明していると見えたが、手を前に出せば、彼の首が吹っ飛んだ。

「っな!?!?!?!?」
「呼んだのですよ。正確には…もう、エフェメラルさんは。」
「っそんな!!彼女が死ぬだなんてそんな」
「エフェメラル?」

誰それ?


「……は?な、なにを、って」
「そんな子いた?」
「いや確か、に…はて。」

いましたっけ、そんな、子供は。


++++++++++

清らかに、のびやかに、住んだ時間。優しい子。


『(…愚かな、私を復活させる為に、
あの子がお前を望んだわけではないと、
お前は分かっていて、依り代としたのか?)』

それならば、愚かも愚かで。もう何と言って良いか分からない。
今目の前では彼等も含めて自分らを溶かし消してしまえと言うのだ。

誰の分際で、この私に、指示をしろと言ったのだろうか。
綺麗に首を跳ね飛ばしてしまえば、綺麗に消えて無くなっていく。
…この者と同じ様に、記憶も消えて無くなっていくだろう。

各場所に散らばった記憶の欠片も徐々に消えて無くなっていくことだろう。
…もっとも、この子の願った代償でのコレとは。なんとも哀れなものだな。

さて、仕事をしよう。

この子が、願った様に。この物語を、終わらせに行けばいい。
バトンは渡された。それを全うして、今度はまた彼女に還してやればいい。

なぁに。そんなの容易いもの。だってこの私は、混沌の海の主であるのだから。

まぁそれに、私がしなくても、彼等も切り札があったようだが…
そんなことは杞憂なことだろうな。


何かしら話している奴の首まで綺麗に飛ばしてやる。
なんかトレースだのトベラだのなんかごちゃついていたが、
そんなことをしているとぶわりと華樹から人が出てきたではないか。

流石に驚いてぎょっとしていると、見知った者が現れた。


「…っ、れ、くとる。お、まえ、なのか?」
『…久しいな。我が旧友よ。』
「そ、うか。」
「メル?なぁ、メルだよな!!」

返事してよと叫ぶ子達にコレはと言えば彼女が答えてくれる。
華樹である、アコマリが。

「…華樹神であり定理者であるヴァイスの子達じゃ。
そいつ狂い咲きで少々歯車から逸脱しておってな。」
『まぁ君が望んで私の水面に漬け込んだらそらそうなるよ。』
「つっえ?」
「みっえ?」

一体どういうことか、ご説明出来ますか?

「エフェメラルとは一体誰でしょう?」
「いや、何言ってるんだよ。一番好いていた奴の名前を誰が忘れんだ!!」
「ティーナ、」
「だってえ、ふぇめ、…あれ?誰だ?」
『…約束だ。それは果たされて当然のこと。摂理あるものだからな。』
「貴方は…?」
『名はない。何処にも、ね。』

そう微笑みふわりと浮かべば待ってと声がかかる。
この世界が溶けていく。周りの世界に掛かれば
そのまま気が消滅していくのを気付いてか天使らもざわついた。

「果たすんだ。」
『一度はね。…そうして、目覚めたその時には。』

君が、笑えられるかどうかは、知らないが。

嗚呼でも、一つヒントを渡しておかねば。可哀想だからね。

『あの詠唱は一人の存在と引き換えにして私を戻すものだった。
まぁ正直何もなしでよくあそこ迄言えたと思う。最早血か何かの類かと思ったわ。』
「…えっと、なんの、話で」
『一度この世界は崩壊に崩れ去る。でも確かに、この世界は元に戻すと誓おう。』
「わらわらの出番、じゃあな?」
『煩い。さっさといけ。』

いった!!!あーぶったーぶったぶったーせくはらだー
それをいうならぱわはらというやつじゃろうが。

『まったく、幾ら大事な依り代だからといってこうも返されると困るんだわ。』
「元々天使の様な人間が居たらどうなるかなって試しに作ってみただけだしねえ。」
「た、ためして…」
「貴方達は。一体…」
『さあ?だが、お前らもまた、知るべきはずの、者だろうな。』

そうにやりと笑い、指を鳴らせば全員が居なくなる。
…そう、記憶をなくした者達ならば。


「…彼女を返して頂けますでしょうか。」
「お主…記憶が」
「お願いします。まだ、彼女の願いを叶えて上げれていないのです。」
『…ならん。』
「っ」
『そうでなければこの子の努力が泡となる。まぁ文字通り泡となってこの世界が消えゆくのだがな。』
「…っ、そ、うですか。でしたらせめて、その身体だけでもお貸し願えませんでしょうか?」

最期は、共に、か。

『…よかろう。ただし、記憶の欠片であることは見間違うな。』
「っありがとうございます。」
『生前よく尽くしてくれたらしいしな。…それはその礼としよう。』

ええ、それだけでも。

そう言ってサワアは指を鳴らした彼女から同じ形の者を受取る。
白く光る髪色は、きっと、沢山頑張った証だろうから。
命一杯、愛してやらねばならない。

『では。』
「ありがとうございました。」
「じゃあね、天使ちゃん。」

++++++++++

そうして一瞬で消えた二人に対し、
避難しましょうかと身体をう抱いて動くサワアが声を出す。

「沢山頑張りましたね。
私、貴方があんな力を出せるとは思いませんでした。
想像の数倍は軽く超えて来たのに、
なんでいつもああいうことをしないのです?」

ひょっとして、皆さんを貶されておいでで?

「ねぇ、エフェメラル。
どうか目覚めて下さい。
此処が、現実なのですから。」
『…ほ、んと?』
「〜〜〜っ!!…え、え。そうですよ?
ほら、早く起きないと犯しますよ?」
『あっっれえ?!?!?なんで
そんな怖いこというかな?!?!?!』

おきましたねーえらいえらい
あっちょ、子供じゃない!!!

「おはようございます。」
『えへへ、おはよ!ねぇねぇ、私頑張ったでしょ!?偉い?!』
「ええ、とっても。流石、僕の幼馴染ですね。」
『えへへ〜〜!あっ!ねぇねぇ、私このことね、
ととさまやかかさまにも報告したいの!』

喜んでくれるかな?
ええ!

「そりゃあとっても。ルトラール様なんて泣いてしまわれるかと。」
『えそんなに!?!?えーそれなら可哀想だしやめたげようかな。』
「おや、そんなこと言わずに、ご報告に行きましょう?」

きっと、お待ちの事ですから。

そう言って身体を降ろせば、ちゃんと歩いてくれる。
手を繋いで、そっと。ゆっくり、少しずつ前を歩く。
歩く先には、我らが宇宙Aの世界。

溶けていく最中、もう変わらない現実を、
メルはぽんぽんと言い続け、
それに対してサワアが頷き答えを返す。

嗚呼もう、貴方に会えない。

涙を流せば、泣かないでと
寂しそうに笑ってメルの涙を拭ってやる。

「大丈夫、きっと会えます。」
『ほんと?また、またあえる?』
「ええ。その時は、忘れてしまっているかもしれません。」

でもそれはそれで、楽しんでしまいましょう。
どうして?

『忘れたら悲しまない?』
「でもまた、僕を愛してくれるのでしょう?」
『…うん!ね、その時は。花冠!交換っこ、しようね!』
「…っ、ええ!勿論、喜んで!」

二人して笑いながら、綺麗に溶けていく中に入る。
世界はわちゃわちゃと騒いでいる中
コルンがサワアを見つけてやっといたとこっちに来た。

「お兄様大変です!何者かがこの世界ごと
崩壊に向かわせて!!ってそちらの女性は?」
「私のツレです。少し御用がありますので、私はこれにて。」
「っちょ、お兄様?!?!」

いいの?
ええ、だって最期の時間は、貴方と過ごしたいと思いましたから。

「…来たか。」
『と、とさま?』
「エフェメラル。よく、頑張ったわね。」
『〜〜〜っ、かかさまああああ!!!』

大きな扉を開いてみれば、
其処には何時しか生きていたであろう、
二人が立ち尽くして待ってくれていたではないか。
大きな華樹は、奥に戻っているところ、
メルの時間から一度離れたのだろう。

「ほら、お話するのではなかったのですか?」
『あっそう!あのねととさま!かかさま!!』
「なんだい?エフェメラル。」
『メル沢山頑張ってきたの!悪魔さんやね、
ああ前に生きていたお友達が華神になってくれてね!!』

そう、そうなのね。

「きっと優しく、いい子で居たから。神様がプレゼントをくれたのね。」
『プレゼント?』
「ええ。瞬く間に消えゆく最中でも。貴方が望んだ、一番を。」
「じゃ、僕らは退散しようか。」
『え?どうして…?』

頭を撫で、抱きしめてから離れる中、メルは前に手を伸ばすも、届かない。

「君が望んだことを、今此処で。成し遂げなさい。」
『…望んだって。まさか。』

サワアがぺこりとお辞儀をすれば、ルトラールらもお辞儀をした。
そして綺麗に華樹の中に入っていなくなってしまえば、
その間にサワアが華樹の樹の下に座ってしまう。

あっまって、それは流石に。

『おいたわしやあ』
「何変なことを言うんですか早くしないと全部終わりますよ。」
『あああすいませんすいませんすいませんすいません』
「はあ…ま、別に構いませんけどね。私は怒っていませんし。」
『え』

なにを?
あなたねえ

「一応これでも喧嘩してたでしょう?ほらあの時。」
『嗚呼してたね?』
「…忘れてるでしょうが。はぁ、まあいいです。
しょうもない子供のお遊びでしたし。」

私も兄として大人げなかったですし。
むっ、私の方がお姉ちゃんだもん。

「ほぉ?では誰が一体証言出来ると?」
『うぐっ』
「それに仮に貴方が姉だとしても、別に大差ないでしょう。誤差の範疇ですよ。」
『…けち。』
「っふふ、それくらいで終わるならケチで結構ですよ。ほら終わった。」
『えっ待ってはやくない!??!?!?』
「逆に何故あれ程華を束ねる貴方が其処迄遅いんですか。」

一応私にも教えていましたよね?
う、うっさいな!!!

『ちょ、ちょっと黙って!!集中するから。』
「…その花冠は駄目なのですか?」
『え?でもいいけど…いいの?』
「ええ。だって貴方が想いを込めて作ったのでしょう?」

それならなんでも。

…なら、そう言ってメルはそっと頭の冠を降ろす。
自分で作って自分で置いて意味が無いと思っていたのだ。

いざ交換すると思って面と向かえば顔に熱が入る。
それににまりと笑みを浮かべる彼になんだよと声が上がる。

「いいえ?べぇつに?」
『〜〜〜!!!』
「いたっいたいですよ!ちょ、加減してください!!!」

これ!!

「全くもう、乱暴なんですから。そう言う処が音にも出てるんですよ。」
『あーけなしたーいけないんだーみんなのことわるくいったー』
「なっ貴方のやり方を言っただけで彼女らはなにも」
『っふふふ』
「っもう、ほんと、やめてくださいよ。」

困った子ですね。

そう言って笑いながらもメルの頭に華を添える。
少し大きく作り過ぎてしまったかと思いきや
案外丁度良い処で落ち着いてくれた。

メルは一度華を外し、先程作っていた
華をまとめ直してからサワアに贈った。
自分の頭よりも大きいのは分かっていたから。


『あれ?これ、まさか。』
「ええ。貴方とおんなじ。お花ですよ。」
『別のにしなかったの?』
「だって貴方にぴったりだったんですもの。」

野に咲く花。片喰。黄色い花の言葉たちは。
「輝く心」「喜び」「貴方と共に」「母の優しさ」

覚醒した華。オキザリス。白い花の言葉たちは。
「決して貴方を捨てません」

春早くから咲いた可憐な青い花。ミオソティス ミオマルク
花言葉は「私を忘れないで!」「真実の愛」

そして、樹木として理として、成したその子。
トサシモツケ。シモツケ自体には「儚さ」
「愛」「努力」「無駄」「無益」という花言葉がある。

トサシモツケ自体には、「整然とした愛」


「螺旋に巡らせ、喜びを。
共に無駄ともいえる程の時を過ごし
分かち合い、私を忘れずに、愛をくれる子儚い子。」
『見捨てないよ。誰よりも、何よりも。
だって、私は、えふぇめらる!』

瞬きだけの、存在だから。
忘れるなんて、させやしない!


『えへへ、くすぐったいよ〜!』
「なにがでしょうねぇ?私はなにも、くすぐったくないですよ。」
『ふふ!ねぇ、さわあ。』
「なんです?」
『ご褒美にね、一緒にねんねしてほしい!!』
「おや。この期に及んでまだですか。」

いいですよ。
やたーーー

『私サワアが起きる前に起きてやる。』
「それ喧嘩売ってます?勝ちますよ?」
『なんで』
「だって私天使ですから。寝ませんよ。」
『げっねぇ瞬きだけ寝てねえお願い。』
「はぁ…尽力は致しましょう。」

そう寝転がりながら言う彼に、やたーと声がまた上がる。
にやにやしつつも、黄色いタオルケットを被せてやると
嬉しそうにまた笑みが浮かんでくるから、こっちにもうつる。

『ねぇ、さわあ。』
「なんです?」
『だぁいすき』
「…私も、貴方の事を好いてますよ?」

嗚呼世界が、溶けてしまう。
その前に、貴方と二人で。こうやって。

『(よかった、ひと時だけでも、一緒に、いれた!)』

おやすみなさい。良い夢を。

そう言われてメルは目を閉じる。
もう、温かい。世界は、微睡み、溶けて、無くなってしまうというのに。

そっと抱きしめられたまま、大丈夫だと気を緩める。
そうすれば本来在るべき姿に戻るという者で。

そのままメルは眠りに落ちる。
まるでもう、醒めないかのように。
固い瞼に、蓋をして。華に埋もれていくのだ。


「…愛していますよ、いつまでも。」


貴方がコレを、渡してくれたこの日からも。