ようこそアリス




触れるはずだった、その手の先。
絡み合って、肌の温度が一定になって、溶けあってしまう筈だった、午後の夜。

もう、大丈夫。そう言ってすやり笑って目を閉じ眠れる筈だった、真夜中の時間。

そんな日は、二度と来ることはなくて。

メルは目を覚まし、身体を起こした。
本日も毎日のごとく、起床をし、朝食を取り、出勤する。
家でも職場があり、其処で書類を纏め、報告に大神官の元へと出て行った。

連絡やら通話などはもっぱら杖頼り。
会話はテレパシーで全て終わらせる。

「では、今日の分をお渡しいたしますね。」
『(お願いします)』

世界が灰色に、色等見えないこの場所。
昨日の風は何処へやら、だ。
あんなにも色鮮やかに見えたのは、
きっと彼の力だけだったのだろう。

『(彼等は元気ですか?)』
「ええ、元気ですよ。」
『(ならいいです)』

それだけで、もう、いいのだ。
そう思っていると杖から赤い点滅信号が入る。
その光には大神官も目を丸めた。

『(っ!!では私これで!!!)』
「え?あ、ああ、送りま」
『(構いません、それでは!!!)』
「…行ってしまわれましたね。」
「大神官、お呼びでしょうか。」

ええ、その予定だったんですがね。

「逃げられちゃいました。」
「逃げられ…?まさか彼女がいたというのですか?」
「ええ。どうやら貴方達と会わない様に
結構念入りに工夫されているようでしてね。
先程貴方が来る直前に杖から信号が入っていましたので。」

ひょっとしたら杖にでも細工されているんじゃないんですかねえ。
いやそんなまさか、我々彼女に会ったことないですよ。

「いえいえ。一応あるんですよ?一応は、ね。」
「はぁ、」
「ほんの、瞬き程度の時間ですが。」
「それってどれ程の時間です?」
「そうですねぇ〜〜〜合計で本当に大体ですが、
約三年間程ではないでしょうか?」
「ほんとうに瞬きの間ではないですか。」

そんな一瞬なんてよく覚えていますね?
そりゃああれ程濃い時間を過ごせば覚えていますよ。

「それで?レポートはどちらに?」
「此方です。」
「ありがとうございます。明日彼女に手渡しておきましょう。」
「…それにしても、よろしかったので?」
「何がです?」
「彼女の件についてです。模倣ではないと、言わなくて。」
「あんな事実を聞かされたらこっちも手を打つというものです。」

我が子達が愛した可愛らしいあの兄のお子が、
心の底では嫌がりつつも、その理に浄化され、
我が子達が知らぬ間に消えて無くなるというならば。

こっちとて待つことはしないでいいというものだ。

「私は無理矢理引き千切って解き切れましたが、
私ですらかなり一苦労しましたからね。」
「そんなにですか。」
「ええ。軽く104億年は。」
「ひゃ?!?!?!?」
「ちなみに現在はその十倍程度の長さが経過していますよ?」

さっさと引き千切らないと、あの子本当に消えますが。
…彼女が望んでいるならそれがいいのでは?

「あの子は寂しがり屋さんで泣き虫さんですからね。
本当は貴方達の記憶なんて消したくなんぞなかったでしょうが。」
「なら何故消されたのでしょう?」
「次の破壊神に仕える時、自分が死んだ状態に付きっ切りでいないように。」

ただ、それだけのことですよ。

「さ、早く帰って修行の相手でもなさっておいてください。
何方にせよ今回の破壊神らには大変、期待しておりますので。」
「…あの方が、生きていた者達が今の破壊神らだと?」
「ええ。そして、あの目どころか、あの気の光が
もっともっと、とんでもなく澄んでいたといえば?」
「末恐ろしいですね。流石と言えるべきかと。」

貴方がそれ程迄手を焼いている気持ちが少しわかります。
おや、そうですか。

「お師匠だからこそ、ですかね?随分とまぁ、
身体に染みわたっているようで……ねぇ?コルンさん。」
「冗談は止して下さい、大神官さま。」

そう困るコルンに、大神官はクスクスと笑う。

「それにしても、あの方が私の弟子ですか…?」
「おや、納得がいかないと?」
「ええ、少々想像に欠けます。」
「…まぁ、それもそうでしょうね。貴方はとても頭を悩ませておりましたし。」

でも、あの時以上に貴方が嬉しそうな姿を私は見たことがありませんよ。
そうなのですか。

「ええ。貴方だけではなく、皆が
…ただその場で輝いているように見えましたから。」

温かな陽だまり。春だけにしか、咲いていない幻の華。
黄色から白へ、白から青へ、青から樹木へとその華を育て上げた子。
その子は幼子からいつの間にか、りっぱな女性にへと姿を変え
この地でひと時だけ息をしていたのだという大神官に、
本当に彼は彼女を見ていたのだなとコルンは思った。

自分の中を、何処まで探しても見当たらないその記憶に、
少しだけ、本当に少しだけ、羨ましいと思ってしまった。

あの日、エフェメラルと呼ばれた
彼女の目は姿はまるで夢の様な別人の姿をしていた。

どす黒く、神とはとてもではないが言えない程に
朽ち果て、恨みや妬みでしみ込ませたかのようにも見える
その気配に神々も殺気を立て、警戒の目を向けていたのだが

大神官がそれを良しとせず、寧ろこっちの警戒に怒りを見せたことで
神々もそれ以上警戒を見せることはなくなった。

そうすれば、一体どういうことだろうか。

彼女は兄であるサワアに近寄り「会いたい」と嘆きをぼやいて涙を流し始めたではないか。
流石の兄でもたじろぎ、慌てふためいた姿は鮮明に思い起こせる程に印象が強かった。

嗚呼、これは夢だ。これは幻だ。これは架空の存在だ。

彼女の言う言葉は、まるで言い聞かせるようにも聞こえた。

いや、言い聞かせていたのだろう。

そうでなければ、辛い現実を目の当たりにしてしまいそうで。
その瞬間から、彼女は息をすることを止めてしまいそうで。
いっそのこと、彼を責め立てればどれ程楽だっただろうか。

愛していたのに、裏切ってしまった。
思ってくれていたのに、
壊してしまったのは、一体何方だ。


認めたくない、分かりたくない。



だって認めてしまえば、もう、戻らないから。
貴方が、此処に、居てくれないと分かる日なんて。
気付いてしまったら、最後だ。

もう、知らない日になんて戻れない。

そんなもの、死ぬことよりも、怖いから、
だから敢えて言い聞かせていたのだろう。




そんなもの、まるで


「コルンさんはリキールに仕えてどれ程経ちましたかね?」

そう言えばと言う様に話しを変えてくる大神官
まるでそれ以上考えるなと言わんばかりの内容に、
コルンは止めようと思い、話を切り替える。

「…そうですね、大体、130億年程度でしょうか。」
「貴方方はかなり早い段階で巡り合いましたからね。」
「大神官様は彼女の味方なのか敵なのかどちらなのですか。」
「どちらかと言えば敵でしょうか。」
「彼女、泣きません?」

ふふ、泣くかもしれませんね。

「この際泣けるだけ泣かせておけばいいでしょう。
元々泣き虫だったんですからね。」
「そうだったのですか。」
「ええ。初めて会わせたのはクスさんですが、
余りにも泣き虫な彼女をみて
呆れてため息を吐いていましたからね。」
「…ひょっとして、兄弟順に会わせてたりしたのですか?」

いいえ。

「サワアさんで一度切りましたよ。
…正確には、貴方に出会う前に
あの子は下界に突き落とされる
羽目になったというべきでしょうか。」
「突き落とされる?彼女は一体何をしたというのですか。
事と次第によってはこの地に居るべき存在ではないのでは。」
「何もしていませんよ。」
「え?」
「何も、していません。だからこそ、
帰って来た時は温かく迎え入れたんですがね。」

貴方達も、ゆっくりとではありますが、
迎え入れてくれたんですよ。
そうだったのですか…

「なんだか申し訳ないですね。」
「そうですか?」
「ええ…彼女だけが覚えていて、
我々が忘れている等、
そんな罪深きことをしているとは。」
「……それでも、あの子はこの状況下ですら、
心の底から喜んでいますがね。」
「え?」
「なんでもありません。」

そう言って大神官はコルンと別れ、その場を後にする。
そのまま全王様が眠る寝室へと戻ろうと
華樹の神殿の内部へと進めていた足を止めた。


「やはり此方に居ましたか。」


エフェメラルさん



『(なに?わたしはなにも、はなすことなどないですよ?)』
「そう怒らないで下さい。
そんなにも私の子供達を
愛してくれているのは分かりますが、
彼等にとっては苦痛そのものであることを、
貴方であるならば分かる筈です。」

貴方が一番してほしくないことを、
彼らにしていることを。

「もう春が来ますよ。」
『(違う、そんな、気がするの。まだ夏だよ。春なんてもうない。)』


春は過ぎ去ったのだ。
あのエンドロールに身を包んで。
溶けて消え、なくなってしまった。


「まだだというのですか?
人間でいえばもう気が狂う程の
年月が経ったというのに。」
『(もう狂って自分が誰かも分かりませんよ。大神官さま。)』
「エフェメラルさん」
『(私はその子では、ないのです。)』

どす黒い気が身体から溢れ出て、涙を流し始めるメルに
そんなことないと大神官は首を横に振って否定をする。

『(もう、分かりたくないのです。誰かに心を許すなんて。
そうしたら、またあの日の最期になっていくのは、もう、辛い。)』


あの人が、私の目を、見ないことの、辛さが。
あんまりにも、胸を締め付けてくるのだと。





「…これで分かったでしょう?下界がどれ程酷い処か。」

貴方がどれ程、脆い存在か。

そう言うと、メルは涙を零しながらこくこくと頷いて
そのまま大神官の胸に頭を擦りつけ
胸元に手をぎゅっと縮めたことに、
大神官はその小さな身体に、
抱きしめていた腕の力が籠る。

『(もう、下界には降りません。
あの子達がこれ以上悲しむことがあるならば。)』
「ええ、その方が良いでしょうね。」
『(もう、何も、何も要らないのです。
要らないのに…要らなかった、はずなのに。)』


なのに彼等の姿を見たら、また色づくのです。
こんなにも、色が無い世界だというのに。


ずっと、愛していたのだと、分かったその日から。


そう言うメルに、大神官は目を丸くして
メルの顔を覗き込んだ。

よくよくみたら彼女の目は青くも黄緑でもない。
かなりにごった、深い青緑色の目をしていたのだ。


理解する、それ即ち、変わるということで。


「…っ!!エフェメラルさん、
貴方一体何時から色が見えないのですか」
『(植物状態から蘇生してからですので
もう、数百億年程は昔かと思われますね。)』
「思われますねって…貴方、ねぇ
一体何故そのことを今まで黙っていたのです…!!
そこまで経過していると、色を見ることすら
ままならないのではないですか…!?
…彼女達はこのことを知っているのですか?」
『(いいえ。記憶から形状を元に色を選出していたので
ありとあらゆる小道具は色を思い出して
話をしていましたし、まぁそんなこと言っても
ある程度の感覚はありますから。)』

だからと言っても、その状態を維持したら
元に戻りたくても戻れなくなっている筈で…

「…まさか、貴方、戻れないことを既に悟って…?」

彼等の記憶を消す様な形を取っていたというのか?

そう聞くと、メルはこくりと首を縦に振った。



…何故相談をしないのですか。

貴方はどうして、そうやって一人で全部
色んなものを背負い込もうとするのです。
此処には皆が、嗚呼、そうか。

もう、貴方の中には、誰一人として、存在しないのですね。
深い深い、眠りに入って。誰一人、
貴方の味方をしてくれる人なんぞ一人もいないと。


「…貴方の力は感情そのものを使ってのもの。
色が見えないことはそれ即ち感情を断ち切るも同意義。
事実上、理どころか華樹神にすら値しないのですよ…?」
『(だから先程彼らに別れを告げてきました。)』




「は?」





『(壊れてしまったおもちゃはゴミ箱で眠るべきなのです)』

今何を言ったというのだろうか?
彼女は、もう、華樹神ですらない?

…全てを捨てるとでもいうのか。

「…冗談は程々になさい。仮に百歩譲って
彼が私が許したところで、この件を
全王様がお許しになるとお思いですか。」
『(無理でしょうね。)』
「なら一刻も早く訂正しにいきなさい。」
『(……。)』
「できない、と。ならば此方も手を打ちます。」

そう言う彼が杖を取り出し、目の前に差し出してきた。

「今此処で言わねば私はこれから
全天使を此処に呼び出し
彼等の記憶を取り戻させます。」
『っ!!!』
「貴方の作った呪いを今の今まで研究し、
漸く解ける道筋が分かったのでね。
…さて、どうします?
彼等が記憶を思い出せば
一体どれ程悔やむでしょうね?」

そして、どれ程の悩みを抱えるでしょうか。
そう言う大神官に、メルの口が開いて固まる。

それでも、色はもう、見えない。

みえ、なかったのだ。

『(あの人に会った時だけ、色が見えたんです。)』
「…サワアさんですか」
『(……。こんな何もない場所に、色が。
まるであの日の様に見えたんです。)』

だから涙が出た。滲んでいく、
その景色が余りにも綺麗で。


あの日の続きを見ているようで。
夢幻の世界に、涙で視界が滲んでしまった。


綺麗な世界だった。何処までも澄み渡った、青い世界だった。
見えて嬉しかった。白い髪色に、紫の瞳が色を付けている。
綺麗な姿で、その目に映る青が、何よりも、大好きだった。



そう、大好きだったのだ。



『(でも、でもね?さっきね?
ヘレスさんとサワア様が来てくれてたんです。
私には話しておこうって言ってくれて。)』
「なにを」
『……す、き、だっ、て』
「っ」
『ふた、り、とも、だ、い、すき、だっ』
「もういいです。」



もう、もう、良いんですよ。



そうもう一度抱きしめてやると、
ふっふっと息を呑むように泣き出すメルに、
大神官はもういいと答える。


「記憶を戻せば彼女らもすぐにわかります。
彼は貴方のものですよ。
誰にも渡さないと貴方も思っていた筈。」
『でも、い、っ、いい、よ?もう、っもう…!』
「そんな悲しいことを仰らないで下さい。
ならば何故こんな長い月日をかけて待ち続けたというのです。
記憶を無くしても貴方はあの子を好いてくれていたというのに。」

彼は、彼と言う子は、本当に…!!!

「貴方も記憶を無くせばいい。」
『だ、めだ、よ?わた、っしね?
もっ、もう、しねないっ、んだよ?』
「っ」
『もう、ころ、せないの。
もう、もう、もう、てお、れないの。』

ならば、ならばこの心を、あの暗闇にそっと閉じ込めていや
その場所にゆっくりと置いてやるしか術を見いだせないというのだ。

…何故其処迄思ってくれるのですか。


「だから貴方はこんなところに来たのですか。
それは嫌だと言っているのをまだ分からないのですか。」

此処は、貴方が、あの子達と共に暮らしていた
奥地であることをもうお忘れだというのですか。

そう言って抱きしめるその場所は、
かつて暮らしていた二階建ての家屋の裏庭に位置した場所。

サワアやマルカリータと共に昼寝という名の
横に寝転がってメルだけ本気で昼寝してしまったのを
大神官が見つけてしまい、何時もは仲が悪い二人が
息を合わせて大神官からメルに声を掛けるなと
人差し指を立てて笑って居た場所。

『める、いいっ、こ、だった、でしょ?ねぇ、すぴっ、すぴ、すう』
「ええ、いい子です。とてもとても、いい子ですよ。
…ですが手折るくらいなら、私の手を取って下さい。」
『やあ〜だ!』
「っふふふふ、この期に及んで言うのですか。
…本気で食いにかかっても?」
『や〜あ〜だ〜!』
「っふふふふふ、っはははははは」

嗚呼おかしい。ほんとうに、もう、なんて酷い子だ。
こんな笑わせるなんて、貴方くらいしかいないのに。
それでも彼以外貴方は気を許さないというのか。

狡い、狡過ぎる。本当に、狡過ぎる子だ。

『わたし、ね?や、っと、ひと、りに、なれ、たんだ、よ?』
「エフェメラルさん…」
『こ、こで、いて、いい?』
「ええ、貴方が良ければ。是非とも居て下さい。」

理から身を降りると言っても、
恐らくそう簡単に事は進まないだろう。

どうあがいても彼女の心を、
理は見つけてその身体ごと
掬い取ることになるはずだ。


今回は軽い家出程度の気持ちだと思っているだろうし、
一応連絡を取ると同時にメルを中にいれてやる。

二階の寝室に腰を下ろさせ、
そのまま額にキスを落として
強制的に寝かせてやってから
杖を取り出し連絡をとった。


「大神官です。ええ、エフェメラルさんの件について。
ええ、彼女今元々居ました奥の間にいます。
ええ、一応家出という形で引き取っても構いません。
…そうですか。分かりました。では後程。」

アルトリアが来てくれるようで、
話をしてくれるとのことで暫く待っていると
コンコンとノックが入ったのでどうぞと答える。

「失礼します。エフェメラルは」
「ぐっすりと眠っていますよ。」
「寝かせ付けたのでは」
「おや、狡い言い方をしますねえ?まぁ事実ですが。」

色々聞きましたよ。
でしょうね。

「それで?理の皆さんは?」
「一応そんなことは無理だと仰っておりました。」
「まあ当然でしょうね。
これ程の状態を維持出来るのは
今まで見てもこの子以外いませんでしたし。」
「ええ、だとしても華樹神としては余りにも役不足。
そういうことで療養生活というのも含めて
此方で生活をとっても構わないことは
此方で満場一致で可決してきました。」
「おや、傷つけるかもしれないのによく許可が出ましたね?」
「貴方の事を買ってる人たちが大勢いましてね。」

おやおや、そんなもの好きな子達は一体何処の誰でしょうかね?
そう大神官は目を閉じて、かつての子達を思い浮かべる。
赤髪の女性が、にかりとルトラールと共に笑って此方を見てくれていた。

「あと単純に、私達もこの子が笑ってる処を見たいのですよ。」
「呪いを解いてくれるのですか?」
「別に解いても良いですが、彼等が耐えれるとは思えません。」
「おや、生半可に育てた覚えはありませんし、きっと大丈夫でしょう。」
「…貴方ご自身がどうなったのかお忘れで?」

あんなのどうってことないですよ。
嘘つきは泥棒の始まりですよ。死にかけたくせに。

「天使が死ねないのは理の決めたことでは?」
「おや、責任転換とは面白いことしますね?」
「ええそりゃあもう、何処かの誰かさんに感化されましてね。」
「責任とって嫁にこいと。」
「結構本気だったんですがねぇ〜
ことごとくお断りされていまして困っています。」
「まぁ嫁という名の犯人を
様子見していた人からしたら
そりゃそうですよね。」

アレには参りましたよ。
未だにちょっかいかけてくるとか
どんだけ好きなんですかね。

「メルさんは彼等が嬉しそうに笑うのを快く受けようとしています。」
「…あの二人ですか?」
「ご存知だったので?」
「いいえ。無くはないシナリオだということだけは覚悟をしていましたが。」

やはりそうでしたか。

「なおの事酷ですね。この子にとっては。」
「ええ、ですので記憶を消して
私の妻にと迎え入れようと交渉したんですがね。」
「そんなの絶対拒否るに決まってるではないですか。」
「そうなんです、断られちゃいましてね。独り身は辛いですよ。」
「嘘つけ。そんなこと思ってもいない癖に。」
「おや、化けの皮が剝がれましたよ?アルトリアさん。」
「おやおや、コレは失礼。」

だって中々難しくて。
そうですかね、慣れますよ。時期に。
慣れたくないですねえ。

「色が見えないことはご存知で?」
「薄々ってところです。
精神的な崩壊から含めて
在り得る話ではありましたからね。
ですが、それと同時に華樹神としての
効力も地位も剥奪されつつあるとは
ちょっと聞いてませんが。」

「どうされるんです?」
「ひとまず此方で預かって頂けませんか?
何なら天使らをあの日の様に付けても構いません。」
「おや、本当に鬼みたいなことしますね?
一応これでも会わせない様にしていたのでは。」
「話が変わってきますからね。こうなってくると。」

我々華神らも結構苦しんでるんですよ。
なら猶更、ですか。

「掃除やらはこれからしますし、
大神官様は天使らと全王様に
取り繕ってくれませんか?」
「わかりました。手配しましょう。」