君を支えるための肩




前回のあらすじ

サワアから貰った花冠を無くしました。
そして溶けて消えた世界からまたコルン様達に出会って
なんならコルン様のお弟子さんにまた再加入出来ましたやったね!!


『んん!!よくない!!!全くよくない!!!!』
「何がですか。何処か間違えました?」

いいえまったく!!!

『でもここがわかっ、ら、ないのですが』
「…嗚呼此処ですか。確かに知らないと言い回しに苦戦しますね。」

いや近い。

「おや、近いですか?ですが手を握っていないと
会話もままならないではないですか。」
『…恥ずかしくなったりしないので?』
「いいえ?全く。寧ろ椅子に座ってぎこちない処を
見るよりもこうして居ればきょろきょろする頭も
場所を確認する腕も疲れないでしょう?」


後、確認する手も止まりにくいですし。
それはそうですが…!!!

『いっ、いしき、しちゃ、い、そう…な、の、で、その』
「…別に、しても。構いませんよ?」
『〜〜〜!??!?!?!!?』
「ふふ、本当に飽きませんね…貴方と居ると割と時間を忘れてしまいます。」
『あっもういっちゃうの?』
「……貴方は誘っているのか突き放したいのかイマイチ分かりませんね。」
『さっ?!?!?!あ゛っ!??!?!?』

ふふ、大丈夫ですよ。

「いずれにせよまた明日。此方にお伺い致します。」
『お願いします。』
「ええ、ゆっくり休むのですよ?
余り詰めると後がきつくなりますのでね。」
『はあい!お気をつけて帰って下さいね!!』
「…ええ、お気遣い感謝します。」

そう言って今度こそ手を離して帰って行くコルン。
この世界が溶け消え、彼等と出会って早くも二週間の月日が流れた。
あの日から、サワアとは一度たりとも会ってない。

会うのが怖いと思う。色々あったからな。

溶ける前の時なんて、ヘレスと
できちゃってたのがトラウマなのか。
いや間違いなくそうだろうな。

だからコルンらにも話を聞いてみれずになっている。

怖いのだ。また、同じ様に手を伸ばしてしまえば。
だから、あの花冠ではないといけない。
あの人が笑ってくれた、あれではないと、嗚呼そうか。

私が好きになったのは、あの幼い日に出会ってくれた
彼だからこそ、好きになったというものであって。

この世界の彼を好きになっても、
それは、彼を侮辱するに等しいものではなかろうか。
嗚呼だから、嫌なのだ。彼ばかり先に行く感じが。

置いてかれる感じがして、怖いのだろう。


『嗚呼そっか、待ってるんだ、私。』

ぽろりと涙が零れ落ちる。
あの日に捧げたあの力。
あれは多分、膨大な知識があったからこそ使えたも同然だろう。
これからまた血みどろに塗れながらも勉強し続けねばならないのか。

まじかよ。それは思い出したくなかった話だ。
まぁでも、努力して実るだけマシだと思えばいい。
この世の中には理不尽に捨てられるものも多くいるだろうし。

そう考えたら、私の努力は無駄にならないというものだな。
そうだ、この世界の彼ではなく、あの人が良いのだ。
そうと決まればやるっきゃない。

ーまた、僕を好きになってくれるのでしょう?

『無理だよ、そんなこと。』

だって、溶ける前の、貴方だから。私は好きになったというのに。
どんな世界でも、貴方に巡り廻って、好きになったとしても。
今までの中で、私は貴方のことが、一番好きだった。

それはこれからもきっと、変わらない。変わって欲しくないのだから。
だから、水面越しに視えた私と貴方のその姿をみて、泣いてしまったのだ。

嗚呼其処に行きたい。物語を読んで落ちて、狂ってしまったあの場所に。
戻れるのならば、戻りたい。現実か夢かも分からない。あの瞬間に。

もしも、その帰り道が、あの花冠だというならば。
私はこの世界で、生き抜いてしまえばいいと思う。

花冠が手元に戻る、その日まで。
私は生き抜き続けなければいけないと思う。


++++++++++

彼が帰ってからの夜。からの朝。
どうしようもなくなってしまった日差しに
此処が現実だということを思い知って
ベットから出る前に涙がまた出て来てしまった。

嗚呼、ベットがしわくちゃむくちゃだ。
これ私の顔もそうなってないかな。


「…エフェメラル、様?」
『っぐずっ』
「…何処か具合でも悪いのですか?」

違う、違うよ、コニック様。
ホームシックなの。
そうともいえず、ぐずるメルに慌てふためくコニック。
彼は泣いている子をあやしたことがないらしい。

余りに慌てるので面白くなってクスクス笑ってしまいだす。
それには嬉しそうにほっと安堵する。

「貴方は笑って居る方がずっと可愛らしいですから。」
『っ!!』
「ん?どうかされました?」

ーどうか、笑って居て下さい。貴方は笑って居る方が良い。

『(……ううん、なんでもないですよ。
それよりどうして此方に?)』
「コルンお兄様からご伝言でして、
数日間此方にお見えになれないそうです。」

丁度その期間私が空いていましたので、
キテラ様にご報告の後、此方に来たのですよ。

「日を改めようかとも思いましたが、何故でしょうかね。
不思議なことに、泣いておられるお姿を見て、
居ても立っても居られなくなったのですよ。」

それって、あの時に、いやそんなはずはない。

確かに私は見ていたのだ。あの溶けていく時間を。
絵の具の様に、滴っていく、
あの青い世界に、塗れていく時間を。

アレは確かに現実だった。

コニックだって、一度定理者に殺されたようなものだ。
あんなの、もう一度繰り返すようなことになったら、
今度こそ、もう、何も、考えたくなくなってしまう。

はやく、はやく戻らないといけない。
なのに、此処に生きてる。笑ってくれる。

みれてる、触れれる、それだけで、涙が止まらないのだ。

嗚呼ごめんなさい。サワア。私は貴方が大好きなのに。
なのに、彼等に触れれる、見れるだけがいいと思ってた。

話せるって、こんなにも嬉しいんだね。

もう一度、貴方を、この世界の貴方を、愛していいの?


ーええ。


そう言われている。嗚呼、きっと、違うのに。


「…ほら、誰もいませんから、ね?」
『っふ、だめ、っぐずっ、ん、よごれっ、っひあう』
「構いませんよ。ひとしきり泣いてしまわれたらいい。
貴方を支えられる程の肩くらいならば、ね。」

そう背中をさすってくれる。
嗚呼やめて欲しい。手を離そうとしたら離させてくれない。
それは、彼と別れるその時間を想い出しているから。

「謝らなくていいのです。…貴方が沢山、頑張ってくれたおかげで、
私は貴方をお守りすることが出来たのでしょうから。」
『っふ、ごめっ、ごめ、なさあ、こにっ、っく、こにっ……!』
「構いませんよ。…きっと、かつての私も。そう言うと思いますから。」


コルンお兄様の目の前で。

小さな子供の様なお子の様な方と、戦う日々。
最初は何がしたいのか分からず、互いに困って
コルンの顔を見合わせコルンがとても困っていたが、
大体コツを掴んだコニックがメルと一緒に話をして
打ち解けるのも、そう遅い話ではなかった。

アレが好きだ、コレが嫌いだ。
色んな話をして、色々な戦闘のやり方を興じた。
雨になったり風が起きたりとコロコロ変わる世界。

そんな中、それでも何も文句を一つも垂らさず
なんなら負けを認めないのではなく、
凄いと目を輝かせてこっちに食いついてくる始末で。

失敗を失敗と思わずに、前ばかりを見て、
尊敬の眼差しでみるものだから、
余りにも純粋すぎてこっちの胸が痛くなるばかりだった。


優しい時間。陽だまりの様な、温かな時間。


遠くで、最愛の人が見守っている、酷い時間。
恋焦がれる程に、溶けて無くなれない記憶。


…嗚呼、だから貴方は、そんなにも泣いてくれたのですか。


私が大事に、貴方のお師匠であるコルンお兄様と共に。
仲良くしているのをみて、かけがえのない時間を
共に過ごせたと思っていたのかと、言うのですか。


全く、本当に、


「…お優しいのですね、貴方は、本当に。」



ドンドンと巻き戻っていく時間。

貴方が廻廊で彷徨う中。

水辺でサワアお兄様を見つけてしまい驚いた。
コルンお兄様を創り出したのもまた、然りだ。

それでも、貴方は忘れていて。私達は覚えていて。
そのまま忘れてしまえ続ければいいとさえ思った。

なのに、貴方は忘れなかった。

これがいいと、駄々をこねるように、指を指して。
彼だけを追いかけ続け、そしてその手を取ったのだ。

最終的には天使と天使の鬼ごっこみたいな
割と壮大なお遊びをしていた気がするが
…気のせいと言うことにしておいた方が良いだろう。

泣いている中で、彼女が知っている記憶の自分と出会う。
触れてしまえば自分が思っていたであろう感情が流れ込んできて、
貴方は何処まで、我々のことを守ろうと必死になっていたのか。

そして、自分が何処までこの子を見ていたのかを、思い知らされる。


「(…全く、叶わないことを私も考えるものだな。)」


決まっている方向を、知っていても尚、縋る。
それは似た者同士と言えば、そういうものだろう。

かつて、メルがサワアに手を伸ばし、降ろした時のように。

自分の記憶に在る、切り取った彼等と
共に居れればいいと願った時間の様に。

兄が彼女を愛することが何となくわかった気がした。
だからこそ、この想いは閉じてしまえばいいと。
そう思っていたのに、この子はさせてくれなかった。

全部全部、愛そうとしてくれたのだ。

触れてくれる手が、身体が、愛おしくて堪らなくて。
かつての日々が、つい先日起きたことかのように思う。

…いや、ひょっとしたら、きっと、嗚呼そうだろうな。


「(コルンお兄様とお父様の思惑通りになりましたよ。)」


++++++++++


「は?マジで言ってるのか?」
「ええ。メル様はこのまま詠唱をしてこの世界を終わらせに行きます。
それを逆手に取るんですよ。これはイチかバチかの賭けですがね。」

時間はかなり戻り、コルンが彼等に作戦を説明している中。
コニックは彼の指示を聞いていた。

「とにかく彼等の手助けをしないふりをするのです。
そして敢えてイル様は敵の的になって頂きたい。」
「私がですか。」
「そしたらリキール様が必然的に消え、私が停止状態に変わります。
サワアお兄様はメル様が気付かない程度に移動しつつ彼女の補助を。」
「わかりました」
「っいたのかお前!!!」

しっと指を立てるサワア。彼が着ているのは
かつてメルが下界に降りる時に使用していた
周囲に勘づかれない為のアイテムだったのだ。

その為メルですら気付いていないという状態に
これは使えるとコルンが悟ったのだろう。

「気付かれない程度に近づき、彼女に華を戻して頂きたい。今も其処にあるのでしょう?彼女の華が。」
「…流石にバレちゃいましたか。そうですよ?出迎えてくれた子が本人とは思えなかったので違う方を渡していました。」

そう言って華をちらりと見せれば、其処には光り輝く片喰が片手に握り締められていた。

「流石に気付いた時は驚きましたがね。では次の指示を。
私が停止した後、大神官様は彼女から頂いている樹木の華を喰らって頂きたい。」
「っな!!!」
「理由をお聞きしても?」
「お兄様や私、そしてコニックさんの華は
既にメル様の手元に位置する予定です。
私の華はコニックさんに預かって頂きます。」

適切なタイミングで隙を見て彼女に触れ隠して下さい。

「…分かりました。」
「まあ渡すタイミングとしたらメル様を庇って
彼等の攻撃をもろに受けて貰う形になると思います。」
「っ!!!」
「構いませんね?」
「ええ。」
「よろしい。」

話しを戻しますが、お父様。

「貴方様には彼女が生きていた書庫を
なにがなんでもどんなことがあろうとも
そのまま維持出来るように願って頂きたい。」
「…それだけでいいのですか?」
「ええ。寧ろこっちの方が後々大きな希望の導になるでしょう。」
「…分かりました。やって差し上げましょう。」

貴方方らとは少々長いお別れになるでしょうが。
…お父様、

「安心なさい。ちょっと寝てしまうだけですよ。」
「僕は何をすればいいの?」
「…ご無礼をお許し願えますでしょうか。」

いいよいいよ!

「メルが笑ってくれるなら。それでいいよ!」
「…っ!…ご協力、痛み入ります。」

そう言わせてしまえば、この戦。絶対に勝ちに行くしかない。

「と言いましても、全王様はそのままでいて頂きたい。」
「そのまま?それでいいの?」
「ええ。寧ろ、そのままで居なくてはならないのです。」
「…ドラゴンボールの物語上ということか。」
「どういうことですか?」
「お前達の物語がこっちで本になっててな。」
「いい!?!?!?」

初耳なんですが。
そりゃ言ってなかっただろうしな。

「別に言うもんでもないだろうが、
こっちとしては非常に好都合なことになっていてな。」
「どういうことです?」
「あいつはお前達天使らを引き抜くことが出来た筈だ。」

なのにしなかった。それもかたくなに。
ええ、確かに何度も言っていましたね。

「別について行っても構いませんよって言っていたんですがね。」
「なんでしたら全王様のお墨付き頂いちゃっていましたので。」
「っそうなの?!!?」
「ん?そうだよ?だってメルの気持ちは僕の意志でもあるもの!」
「そうそう!華樹神は全王と同等の位置!だから一緒!!」
「それでもしない。何故かって?だってあいつは、
此処を物語の中だと思い込んでいるから。」

そう、架空の世界と思い込んでいるのではない。
ドラゴンボールという物語に位置する彼等の居場所を
自分の力だけでねじ伏せ、書き換えること自体を許していないのだ。

なんなら、どうやって自分と共に一緒に入れられるか。
居れれなければ、どうやって自分を昇華してしまおうかと考えるだろう。

「そこで。皆さんご存知の通り全王様は全てを統べる王です。
このお方が力を振るえばこの宇宙全てが
綺麗さっぱり消え去ることは造作もない。
いともたやすく行われる行為です。」
「そんな当たり前のことを今更何言ってるんだ。」

そう、当たり前。でも、彼女からしたら、当たり前ではないのです。

「自分が人間で在ろうとするのはドラゴンボールという物語と
自分が違う存在だと区別したがっているからか。」
「ええ、まぁ根本的には間違いなく違う存在ではあるんですがね。」

それが人間か神々の頂点であり原点である存在かの違いであるだけだ。

「彼女は全王様がこの世界で一人生き残ると思い込む筈です。
そこで、最初は大神官様を記憶がない状態で作り直して頂きたい。」

出来れば最初にルトラール様を創り出して欲しいのです。

「そして、同じ様に。この宇宙を作り直して頂きたい。」
「それくらいならできるよ〜〜〜!!」
「お願いします。」

どうか、彼女の為に。

「コルン…お前、」
「コレが終わったら彼女にたらふく褒美をむしり取りに行くとしましょう。」
「理不尽って言われるぞ。」
「構わないでしょう。全てが戻ってくると思えば。
それくらいで終わるなら願ったり叶ったりでしょうが。」

それもそうか。
そうでしょう?

「他の者達は適度に殺されても構いませんよ。
恐らく死んでもすぐに生き返ることになるでしょうが。」
「何故其処迄自信がおありで?」
「さあ?ご想像にお任せします。(…と、言っても自信は更々持ち合わせていないのです。)」

そう、コルンも不安でたまらなかった。
所詮は武者震い。負け犬の遠吠えみたいなもの。
絶対に負けるし、彼女がこの世界を
破滅に向かわすことは間違いなかった。

でも、それを止めないのは中立だからというのもあるが

「(あの子が泣いて泣いて、その首を絞め殺し、
苦楽を狂い合わせ始めるくらいならば。)」

この世界が崩壊しても、別にいいとすら思ってしまったのだから。
だから、此方が消えて無くなってしまわないのが不思議で仕方がないのだ。
中立なんてそっちのけ。だってただの私情しか塗れていないのだから。

だが、なんとなく、そうなると思っていた。

溶けても、溶け切れずに残ってしまう遺物達が、希望を繋げてくれることを。
そして、溶け切らずに、敢えて残してくれる、優しい神様の存在を。

コルンは神に祈る様に信じることにしたのだ。

この世界には、願いを叶えてくれる神様なんて、
何処に行ってもいないと分かりきっているくせに、だ。