君の傍に行くための足
そうして外に出て来れました。全王宮。
現在メルは大神官の手を取ってふわふわと
身体を浮遊させながら引っ張られる形で移動していた。
周りと見渡せば見渡す程、世界が見える見える。見えまくる。
花の欠片が自分に吸い寄せられ、此処でも沢山お話をしていたのが分かる。
「…随分と我々は彼女に熱を入れていたんですね。」
「そうですね。痛い程に目に入ってくる処そういうことでしょうね。」
彼女が、何よりも誰よりも、愛おしい存在であったのだと。
…まぁ全王様という立ち位置と同等ならば、
彼女の言う事をもう少し聞いてやっても
良かったのではないのだろうかと思う節はあるが、
其処ら辺気にしてはいけないのだろうな。
「付きました。全王様、エフェメラルさんです。」
「よくきたね!」
「ね!ね!!」
『わわ、お二人もいる〜〜!!!』
ふわりと浮いて来てくれた全王様にメルは驚きつつも身体がこわばる。
身体は大神官の力によって浮遊させて貰えているので
現在進行形で気分は宇宙の中に居る感覚である。
『あ、そうだ。ねぇ全王様聞きたいことがあるんですけれども。』
「なになに?」
「どうしたの?」
『全王様……この世界が溶ける前からいるでしょ。』
そう目を変えたメルに、
対して先程まで笑って居た顔が真顔になる。
流石に肝が冷える思いをするのは嫌なのだが、
こればかりは割り切っておかねばならない。
「…それがどうしたの?」
『いやどうしたもこうしたも』
「溶けちゃった方がよかった?僕も居なくなった方が良かった?」
『ええああいやそういう話じゃなくて』
あれでも、全王様はこの宇宙を創るお人だし、
悪い奴とか余り良くない因子は消滅出来る筈であって。
それはあくまでも定理者の管轄の元であって、
でも、あの呪文を唱えた時
確かに皆溶けて居なくなっていったはずで。
『…あれ?でも、』
「きっとまだ寝ぼけてるんだね。」
『え?』
「そうそう。メルってお寝坊さんだから。」
『いやそんな私ちゃんと起きれるからね????』
あと寝ぼけてるのとお寝坊って色々違うくない??
あれまって私話流されてる??ソレは流石にまずい。
「沢山言葉覚えれたんだね!凄い凄い!!」
『ちょ、だから違って!ねぇ話聞いて!?』
「早くあそぼ〜!ずっとずっと!」
ーだから早く思い出して、僕と遊んでね。
そう誰かに言われた気がして。首を傾げたメルにどうしたの?と二人の手が少し強くなる。
まるでこっちだよと言われている感じがして。よそ見なんてしないでと。
全王様はまだまだ子供なのだ。
だから、傍に居てやらねばならなくて。
だってそうだろう?子供は親が傍に居てやらないと分からないから。
嗚呼でも、似ているんだろうな。
きっと寂しいのだろう。親が傍に居てくれないから。
甘えられることもできずに、そのまま大人になっていくから。
これで良いのかな。あの主人公ならどんな選択をしたんだろうか。
都から落ちた天使も、同じ様に想ったって、
いいのかなとメルはふと先程見ていた
記憶を思い出しながら彼等を見つめていたのだった。
++++++++++
「もうねむい?」
『…え?あ、ああ…ごめんなさい。』
「いいよいいよ、今日はもう終わろっか。」
「そうだね。沢山遊べたし。」
割と遊んだ。カードゲームではあるのだが。
神経衰弱とかも教えてやったりしたよ。
私くそ弱かったけどね。うるせぇ記憶を保持するのに
どれ程努力することかお前ら分からないだろう。
どうやらこの体力の無さは家の中に居るから
というだけでもなさそうらしい。
んだが。
「ではお送りしていきますので、コルンさん。」
「わかりました。」
『あっ!ちょ、一人で歩けますって!!!』
「お疲れでしょうし、そのまま寝て下さっても構いませんよ。」
うつらうつらしていただけであり
まだ歩ける余裕だってあるのに
気付いた大神官の言葉にコルンはそっとメルの身体を持って
全王様に軽く一礼してから後にする。
勿論向かう先は全王様の背後にあるさらに最奥、華樹神の神殿内部。
別に眠くなんて無いと言っていたが、う抱かれる位置を変えられると
無理にでも胸に身体を押し付けられ、その衝撃で目を一度閉じる。
『…あれ』
「沢山力を使っていましたし、疲れるのも無理はないです。」
急激に眠さがかけ走って来た。何なら飛びついて来たくらい。
別に寝なくてもいいのに、なんて思っていると瞼が重さを増してくる。
リズムが一定だからこそか、それとも、コルンだから大丈夫だと思っているのだろうか。
メルはそのまま瞼を閉じ、眠りについたのだった。
「…寝ちゃいました?」
「ええ。」
「あれ程の力を使ってしまえばそりゃあこうもなるでしょうね。」
「天使と人間のハーフなら寝て回復も出来るでしょうし。」
寧ろ私は此処まで気を許されていることに驚きが隠せないのですが。
ふふ、それはそれで役得なのでは?
「え?」
「愛弟子が出来た。いや帰って来たと思えば、ねぇ?」
「っおとうさ」
「しーーー」
流石に声を荒げれば折角疲れ寝ている彼女を起こしかねない。
失礼しましたというコルンにクスリと大神官は笑っていえいえと答えた。
「それにしてもよく帰って来ましたね?まだ修行の途中だったのでは?」
「ルトラール様が気配を察知してくれましてね。中断してきたんですよ。」
そしたらまぁ記憶から何からとんでもないお方ではないですか。
ふふ、そうでしょうね。
「あの方のお子ですから。」
「…ほんと、こっちも頭がおかしくなってしまいますよ。」
我々はこの世界に生まれ落ちただけ。
彼女はこの世界よりも前から取り残されただけ。
「ただそれだけの関係性だけなのですから。」
++++++++++
目を覚ます。えらい暗いのだが、どうやら本当にコルンの腕の中で寝落ちしたらしい。
いつの間にこんな真っ暗闇になっているのか分からなかったが。
夢も何も見ずに熟睡するだなんて久しぶり過ぎて何時からか思い出せないくらいだ。
『…やらかした。後で礼にクッキーか何かでも焼いてお詫びしよ。』
流石に申し訳ない。仮にも師弟関係。恋人でもないのだから。
迷惑をかけた以上は礼儀を通すまでだ。え?律儀だって?煩い。
ひとまず風呂は入ってしまおうと思い、軽く済ませてから
食事をとキッチンに入った処でおっと声が上がった。
「おや、お目覚めでしたか。」
『ヴァドスさんにウイスさんじゃないですか…!お二人共またどうして。』
「御用があったんですが疲れて寝入られていると知って寝ている間に
お食事をと準備していたらお姉様が来られましてね。」
『嗚呼それで二人で準備してくれてたんですか?』
「ええ。お湯加減は如何でしたか?」
あっそうメルはタオルを肩に被せていたのを掴んで回るのに
クスクスとヴァドスがそのままで構いませんよと笑って近づいて来た。
軽く杖を振れば髪の毛がふわっふわに乾いたではないか。
それには驚き、ありがとうと礼を言えばどういたしましてと返してくれる。
嗚呼、なんだか昔に戻ったみたいで嬉しくなって笑いが混みあがってくる。
でもそれは失礼なことなのだ。
だって彼女らはあの人達ではないのだから。例えとけ切らなかったとしても。
完全に溶け切らなかったとしても、それは違う人であって。
サワア達天使らであれば跡形もなく消え去り生まれ変わっていることだろうから。
それにしても、今瀬も同じ天使とは、運命も可哀想なことをするもんだな。
そう思いながらメルは席に付き、食事を共にする。
こうやって食事を食べるのは久しぶりだと思う。
私は彼等の事を知っているから結構フレンドリーに話せるが
彼等はそうはいかないだろう。だから、そっと距離を置いて話をする。
それに気付いたウイスがいつも通りになさって構いませんよと声を掛けてくれた。
『え?でも』
「そう距離を置かれると我々もどうしていいかわかりませんので。」
『…そう?』
「ええ。」
『…ふふ、なら、いつも通りにするね。』
そう、いつも通りが、どうしていたのか忘れてしまったのだけれども。
何だかんだ言って全ての記憶を覚えている訳ではない。
いや違う。覚えているから、見ないふりをしているのだ。
だって見れば見る程、辛くてたまらなくなるのだから。
この世界は綺麗に溶け切った末路の世界であるのだから。
勿論二人くらいは溶けれなかったというものではあるが。
それにしても、天使らの話をするのも余り宜しくない上に
全王様のあの感じ…ひょっとしてまさか。
『誰かが願って全王様自体生き残るように仕立て上げた?』
「何の話です?」
『嗚呼いやこっちの話。』
でも、大神官様は絶対だし。でも何処でそう思ったのかが分からない。
考えようとすると砂嵐が頭を埋め尽くして、気持ち悪さに身体が揺れる。
声が掛かって目を向けば、困っているヴァドスさんが見えた。
嗚呼いけない、大丈夫だと言ってしまえばそうですかと答えてくれる。
引いてくれるのがとても嬉しい。余り関わらないでと思う気持ち反面
前のように笑って遊べる感じに戻りたい気持ちもあるのだ。
そんなこと、私は望んでいやしないのを分かっているのに、だ。
此処は溶け切った先の末路。
そう言えば、魔術が使えるとかどうとか言っていたが。
ひょっとしていやそんなまさか、な。
少なくとも花を戻し、資料を少しでも見れるようにしてからの方が良いだろう。
「美味しいですか?」
そう聞かれて、メルは少し誰かの姿が見えてから、応えた。
『うん。美味しい。』
それは記憶の感情か、それとも。
++++++++++
それから月日は流れて早くも数か月いやもう
この地に何日居るか本当に分からなくなった辺り。
メルは殆ど手を触れずに会話が出来るところまで来ていた。
武術も割と身体が覚えてくれているようで、
此間コルンさんがコニックさんだけでなくウイスさんをはじめ、
モヒイトさんやマルカリータさんを連れて来てくれてだね。
軽くお手合わせとモヒイトさんから前に腕を出され構えられたら
動きだすしかないというもの。
軽く正面から突撃したのを受け止められ
避け流されつつも次の一手を繰り出すこと数十秒。
向こうから仕掛けられたのを流しつつ、
頭で考えずに次を身体で受け流しながら
周りを見て前にもしてたなと思い起こしてしまう。
動きが鈍くなるのではない、彼等の動きが速くて追いつけなくなってきた処でねぇとメルが声を上げた。
『コルン様!』
「…なんです?」
『この戦い、なんでもしていい、って。お兄さん言いましたよね?』
二言ないですね?
…ええ。
『ふっ』
「何ですかその含みのある笑いは。」
『…モヒイトさん。お兄さん天使の中で上から何番目です?』
「それは貴方で言う年齢的なものですか?それとも武術的なものですか?」
『出来れば後者で。』
「そうですねぇ…自分が一番、と言いたいところですが
上から4,いや5番目が妥当かと。」
「おや随分と謙遜しますね。」
そう言うのはコニックだ。モヒイトは単純に考えた限りですがと答える。
『…それだと殺しちゃいかねないなぁ。』
「おや、この私を殺せる程の力が眠っているとでも?」
『うん。』
「…いや断言しますね。貴方この時間が過ぎれば過ぎる程
ご自身の首が締まるということを分かっておいでで?」
一時間何を使っても良いからモヒイトを倒しきるという命令の元動いているメル。
確かにこうやって食っちゃべっている間があればモヒイトの体力を吹き飛ばせばいい話。
でも天使は幾ら動いたって疲れるというものを知らない。そう、普通は知らない。普通は。
だがメルは分かっているのだ。自分がどれ程馬鹿で阿保で飛んでもない奴なのか。
そしてそれに引っ掛かってくれる彼等が甘いことかも。
『架施の再起動を開始します。
我が華樹の名に基づき在る者よ。
統べる我が手に余る彼の者に相応すべし
状態レベルの加筆修正及び処理を行います。』
「…ん?一体何を。」
『難度3段階に設定していたのを解除します。
架施を発動します。堪えて。』
そう言ったメルが手をタンタンと叩いた瞬間
周りの空気が一変したではないか。
人間で言う重力を感じるというものか。
『状態レベル2に変更します。感情の消失を確認しました。
再起動で巡らせるように再設定して下さい。』
止めるまで、動き続けると。
メルは左手で持っていた杖を右手でかざす。
すると青い宝玉が黄緑色の光りに光始めるではないか。
そう言うとメルが光栄に思いなさいと浮遊しながら
モヒイトに睨み付けるように笑って答える。
『とこしえに、囚われてしまった感情を
今この時を持って私は貴方に注いで差し上げるというのですから。』
「…ええ、どこからでも。」
構えたモヒイトに対しニヤリと笑ったメルが
杖を前に出して腹から声を出し答える。
『華よ神よ魔の者在りとしする者よ。
我が名ヴァイス・ミア・エフェメラルの
名に置いて、華の者環の者真なる者を
今こそ我が華樹導く、導よ呼び覚まさんことよ!!』
その言葉に、杖が小さくなっていくではないか。
黄緑色の光を光らす宝玉に手で握ったメルが
杖をそのまま上に一振りした瞬間だった。
「っ!!モヒイトさんお避けなさい!!!!」
「え?ですが、っ!??!」
一振り。本当に一振りだった。
ギラギラと目を輝かせるメルの手から、
とんでもない濃度の気がモヒイトの肩
擦れ擦れを掠ったのには驚かなかった。
そう、服がチリチリと音を立てて、
綺麗に消え、世界が無くなっている
その場所を見るまでは。
「っ!?!?」
速い。とんでもなく速い動きに変わっている。
杖を棒きれに変えただけでとんでもない速さだ。
先程は本当に前座ですらないと言わせるくらいには。
右へ左へ何とか攻撃を腕ごと受け流すが、
すぐにそれすらもさせなくする。
腕に這って来た蔦に驚き手を外したことで
彼女にこの場の流れを渡してしまったのだ。
ギラギラと光るメルの目は、白く輝き放っている。
依然として髪色は真っ白で、それでもまるで
そう見せない様にも感じて居る自分が何処かに居た。
気が散っているいや散らせてきているのか。
ならばと声を掛けるも、聴く耳を持たない。
『”華よ神よ魔の者在りとしする者よ
華片の願いを束ね許せし愛塗れし星々よ!!
今こそ我が力我が魂を解き放ち
約束果たせし末路を導け!!!”』
「させません!!!」
『っ!!』
杖には杖を、モヒイトは下から上にメルの腕ごと叩き落とすも
笑って居る彼女に嫌な予感を感じ取った。あの杖はあくまでも
彼女の有り余っている気を調整するものであれば?
今自分が振り払ったことで、こっちが不利になるのであれば?
『”始まり廻る、
誘われるは、希望の犠牲。我が主ヴァイス・ミア・エフェメラルの名に基づいて
彼の者破滅の道へと誘わんことを!!!!”』
さぁ!!序曲よ、奏でてごらん。
『…”交響曲第4番「真昼間の白昼夢」第一楽章第一番”』
【希望の犠牲】
その言葉に基づいてか、メルの手から綺麗な若草色の光が蔦と同時に広がり姿を現す。
金色の髪色を広げた者がモヒイトに突っ込んでくるではないか。
その身体を受け止めることもせず、とにかく避けに避け続ける。
「…これはまた、とんでもない者を育てていたとは。」
「アレ、触れるとまずいですよね。」
「ええ。間違いなく不味いからあの子もひたすら避け続けているんでしょうが、それも長く持たない。」
確かに何を使っても良いとは言った。だが此処まで綺麗に格差が在るとは思っていなかったのだ。
大神官が前に「私をも超えることが出来るのに」等ととんでもない冗談を言っていたが、
どうやらあれはあながち間違ってはいなかったことを、今思い知らしてくれている。
コルンやサワア辺りでさえ、大神官と組手をしても互角程ではないくらいで落とされるというのに。
それよりも上に位置するとは、末恐ろしい者を育てているというものであって。
…ん?
「モヒイトさん!!そのまま耐え続けなさい!!!!」
「っですがっ!!!」
『”アルトリアそのまま畳みかけて!!!”』
成程そう言う事ですかと笑ったモヒイトにメルは気付くも集中を欠かさず前に向ける。
勢いよく向かったアルトリアと呼ばれた者が、モヒイトの身体を貫こうと切りだしたその瞬間。
ふっと居なくなった彼の場所に、メルが気を抜いた。
『ぐっ』
「っと」
「そこまで!!」
首裏を叩かれ、意識が軽く落ちかけ身体を落としそうになったのをモヒイトが腹ごと片手で抑えて留めつつ下に降りてくれた。くたりとそのまま身体が落ちるメルに、いい線はいきましたがとコルンが答える。
「先ばかり見据えたその力を横から突けば当たる者も当たりませんよ。」
『…うぐ』
「にしても架施とはなんですか。色々聞きたいことが山のようにあるのですが。」
『…嗚呼、そうだった。』
戻さなきゃと言ってふらつきながらも起き上がるメルに
先程戦っていたモヒイトが肩を持ってくれるも、
気にせずにメルは胸に手を当て光を灯す。
『架施の停止を命じます。状態レベル0へと鎮めましょう。塞いで。』
すると胸に咲きだしていた花が音を立てて綺麗に閉じ消え去ったではないか。
『華よ神よ魔の者在りとしする者よ。
我が名ヴァイス・ミア・エフェメラルの
名に置いて、華の者環の者真なる者を
今こそ我が華樹導く導を眠らせ閉じ落ちよ。』
メルは左手で持っていたタクトを右手でかざす。
すると黄緑色の宝玉が青色の光りに戻り始める。
『”
その言葉でタクトが杖に戻り、一瞬で先程の気の練りは何処へやら。
元の何もなさそうなメルの状態に戻った彼女はぱたりと地面に倒れる。
「っメル様?!!?」
「息しかできない、と言った処でしょうか。確かに私は彼を倒せとは言いましたが
諸刃の剣であるようなことをしろとは告げて居ないはずです。」
ま、試し打ちと言った処でしょうが。
「単純に気を急激に消耗したことで
身体が追い付いていないだけでしょうね。
頭にも酸素が回っていないから身体にも影響が強く出ている。」
それくらい考えたらわかることでしょうが。
まぁ今回人が多いですし、
調子に乗って羽目を外してしまったんでしょうね。
そ、そういうものですか?
ええ。
「それにしても見たこと無い術ですね。貴方方の力と言うべきか。」
「あの力、とてもじゃないですが別人が攻撃してきたように思えたんですが。」
「嗚呼それは事実だと思いますよ。」
「サワアお兄様?!?!!?」
お久しぶりですね。そう言って現れたのはサワアと呼ばれた者。
メルは息をしている事しかできず、
目を閉じて少し辛そうに息を吸って吐いている事しかできない。
その姿をみて、外しちゃいましたかとぼそりサワアが呟く。
「はずし?」
「全く、余りお茶目なことをなさらないでと忠告をしてもこうなるんですねぇ。」
「お、お兄様?」
「見知った気を察知して大急ぎでこっちに来ましたが
どうやらもう既に消え去ってしまわれたようですね。」
大神官様に用があって此方へと来ていたんですがね。
そう言ってちらりと外を見れば其処には破壊神であるヘレスが入って来ていた。
「なんじゃ、今のとてつもない気の練りようは。ただ事ではなさそうに見えたが。」
「至って普通の訓練ですよ。」
「いやどう考えても」
「訓練ですよ。ヘレス様。」
「…………余りこういいたくはないが、お前頑固じゃな。」
いえいえ。貴方程ではないです。
…喧嘩売ってるなら買うが。
「そんなこと言っている暇があれば気を渡して差し上げて下さい。」
「ん?お前だけではきかんのか?」
「架施で閉じてはいますが人間で言う危篤状態ですから。」
「っそれをそうと早く言わんか!!!!!」
そう言ってすぐに取り掛かるヘレスに
クスリと笑いつつサワアは彼女と一緒に気を分け与えるも、
ぽろぽろと零れ落ちる処、メル自体が拒絶しているのを見て取れた。
「も〜駄目じゃないの。そうやって零しちゃったら。
折角会えたと思ったのに、また逆戻りなんて私嫌だからね?」
「え?」
「ほら、ちゃんと呑み込んで。受け止めなさい。」
いつの間に居たのか。金髪の女性が髪を降ろしたまま
メルの身体を起こして叩くではないか。
ぐっと唸った彼女に、
流石にやり過ぎではと思ったが、
手が浮遊して止まる。
『んぐ』
「こらちゃんと広げる」
『いだ』
「ちょ、ちょっと…!!」
「嗚呼ご心配なく。ねぇちょっと!!何処!!!朱音ーーーー!?!?!?あーーーかーーーねーーーーー!!!!!だっ」
「うるっっっっさいわ!!!!そんな大声出さんでも聞こえとるっていうのに!!!!!」
「あんたも充分煩いがな。」
なんだってと怒り心頭の呼ばれた朱音という子が青髪の子を睨むもそっぽを向かれる。
「あちゃーー久しぶりにタクト振ったにしては参ってるな。お前達何してたんだ。」
「え?あ、いえ、その」
「一時間程耐久戦をと私が指示をしていたんですよ。」
「お、お兄様!!!」
言わせなさいと言わんばかりに前に出たコルンが続けて答える。
「彼女の気の消耗がやけに激しそうに見えたのでそちらの棒きれを手放せば摩耗したまま意識を飛ばせると思い彼に指示をしたのですよ。」
まぁ指示をしたのは良くなかったかもしれないがと答えるコルンに
確かに良くなかったなと朱音とやらが答えた。
「む、私の指示が悪かったと。」
「架施は本来在るべき状態を制御するというもの。そうしないと溢れ出る気に周りが狂って消えて居なくなるからな。」
「は?」
「同時に自分も呑まれて現実と夢幻の区別がつかなくなる。
気を幾ら渡しても彼女が夢だと判断すれば無効化するも同然。」
「…つまり今現在彼女はこの状態を夢だと錯覚しておいでで?」
そういうことだ。
「全く、私達は未完成状態でお前に溶け込んだから維持が出来ないんだ。
さっさと完成させて架施も無くして動けるようにせんかこの馬鹿垂れ。」
『ふぐっ』
「ちょ!!!そんな叩かなくたっていいじゃないのよ!!!エフェメラルだって滅茶苦茶頑張ってるんだからね?!?!?」
「え、えっと……」
「ああ?!?!第一こいつがもっと集中すればこんなこたぁならなかったんだよ!!!こっの天然おとぼけやろうが!!」
「ああ?!?!そんなこと言わなくたっていいじゃない!!第一私は女よ!!お・ん・な!!!野郎って貴方穂の方が野郎じゃないの!!!」
「はぁ〜〜〜!??!私は女の子です〜〜〜!!!お前の目は節穴か!!!」
そうメルの身体を抱きかかえる金髪の女性と赤髪の女性が喧嘩を始めたではないか。
いい加減にしなさいとぴしゃり言われて二人がびくりと反応する。
「全くアンタ達はどうして同じ道を共にしてもそう喧嘩できる訳?
それも人様の目の前で。病人の真上で。みっともないったらありゃしないじゃないの。」
「「うう、す、すいません。」」
「よろしい。…ごめんなさいね?あの子達外に出れるの久しぶりだから物凄く喜んじゃってるのよ。」
「は、はぁ。」
ニコリと微笑んで答える男性は、ウイス程か、いやコルン程の高身長と見て取れる。
白い衣服に身を包んでいる彼もまたウイスのように女性寄りに発現しているが…
「まぁ男女の違いは分からなくもないわよ。
私だって生前女性だった頃の癖が未だに抜けきらないんだから。」
「っせいぜ…ん???」
「仕方がないとは言えどさらりと出てくる処もう諦めてるんじゃあないんですか〜〜〜お姉様?」
「あら。可愛らしいことを言ってくれるじゃないの…なに抱かれたい?」
「きゃーーーおそわれるーーーー!!!」
『だあああああれがうちの萌ちゃんたぶらかしとんじゃああああああ!!!!!!』
そう怒鳴り声で起き上がったメルが、あっと声を出して静かになる。
『おやすみーーーーー』
「おっちゃ!!!」
「おやすみちゃうだろうおおおおおおおお!?!??!?!!?」