君にときめくための心臓
「音が聞こえなくなっちゃったんでしょ?先生から聞いたよ。」
『………は、』
「本当は言うかどうか迷ってたんだけどなって先生苦し紛れに本番前言ってくれたんだよ。」
私達が余りにも不甲斐ない音を出すから。ブチ切れちゃってさ。
本番前になんで萎れるんだ。お前らは植物じゃねぇだろうがって。
もうあれパワハラ越えた何かだよね。
「古都葉が居なくなったのはお父さんの仕事の都合でもなければ
私達と音楽をしたくなくなったからでもなかった。」
「家庭内暴力による精神的なストレスからくる一種の精神病。」
『…い、や、なんで。』
「最初聞いた時はいや今言いますって感じでしたけどね。」
「先生言ってたんです。」
もし私達と本当に音楽がしたくなくなったら
あの日あの場所で指揮をとらずにお別れの挨拶なんてしなかったって。
「本当に心の底から、私達が貴方の役に立てたのならば。
…今度は貴方に恩返しをすべきではって。」
『萌ちゃん…』
「…千代木先輩が指揮を取る姿が余りにも楽しそうで、僕もその場所を見たいと思って志願したんですよ。」
『漣君まで…』
「音を何よりも愛して、何よりも楽しんで。まるで楽譜の音が今生きている友人のように接している貴方が。
何故あの日あの場所で居なかったのか、どうしてもっともっと、頼ってくれなかったんだろうかって。」
嗚呼、この子達は、本当に優しい子なんだろうな。
萌ちゃんの背中を漣君が優しくさすってコッチを見て話してくれる。
悲鳴を上げているのだ。どうして、もっと早く気付いてやれなかったのかって。
嬉しそうに笑って居るその姿は、全部全部、自分達を守る為の仮面だったのだって。
「こうなったら演奏会終わったら全員で金賞取れたの
千代木先輩のおかげですよってかちこみに行こうかと
バスの中でたくらみ話してたくらいなんです。」
『いやそんな今すぐ行く泥棒の良い方せんでも。』
「ま。そんなことは出来なかったけどね。」
「あの日あの時あの場所で。私達は不思議と死を共にした。」
7月31日午後5時15分
水面高校吹奏楽部が岐路に付くハズだったバスはジャックされ
そのまま移動して以降、家族の元に辿り着いた子は全員ではなかった。
寧ろ負傷していない子が奇跡的なレベルくらいであって。
「私達はって…え、待って。お前いなかったよな?」
「ええ。私も一度海外に留学が決まってその日旅だったんだよ。」
飛行機は墜落したけどね。
…っそんな!!!
「ねえ、エフェメラル様。貴方もその日、何かあったんでしょう?
流石に幾ら何でも何もないって、おかしすぎない?嗚呼それともなに?」
この場所に、言いたくない人でも居る?
っ、
「図星、ね。」
『……近所の子供が遊びに来てたんだよ。』
とってもいい子でね。皆知識もあって私よりずっと未来がある子だった。
もうこの家ともおさらばかなって思って、最後にとパーティーする予定だったの。
皆の演奏を無視して酷いことをしてるなって。
…古都葉、お前。
『だから罰が当たった。あの日あの時、私の家に不審者入って来てね。』
「っえ?!?!!」
「…割とカチコミに行こうとしたのは間違ってなかった?????」
「ちょっと漣君?!?!?」
『とある子を人質にとられちゃって身動き取れなくなっちゃったんだよね。』
周りの子は、小さい兄弟に手も足も出なくて。
話しを聞くに、どうやら子供をどうにかして
単独で捕らえて身代金をと思っていたけど、
中々一人にならないので探ってたら
私との接触を知り、犯行に及ぶということでね。
不審者それも二人居たから尚更手も足も出なくて。
隙を突いた時に私が前に出ていったのが悪かった。
『周りを見ないで走ったから。腹に入った刃物に気付いた時は遅かったけどね。』
子供達は無事で、ホッとしてたら上の子達が犯人二人共に取り押さえてると
警察が入って来てくれたからかな。もう安堵しちゃったら血が止まってくれなくて。
『女の警察官が子供達を連れて来てくれて。お別れ言ったんだよ。』
メンタル的に可哀想かと思ったけど
メルの死を察知した女警察官に気付いた
男の年配警察官が顔をしかめた後辛そうにも
肩を叩いてやったりしてたのを今でも覚えている。
メルは必死になって笑って大丈夫?怖くなかった?
私は大丈夫だよ。ちょっと生理が重いだけだからって言って
割と汚い洒落にならない冗談は止して下さいと子供にすら
冷静に突っ込まれてソレに笑って顔をしかめてしまったけれども。
『
「…お前、まさか」
『
嗚呼でも、あの子だけは、弱音はいちゃったんだよ。』
『お花の冠で。もっともっと、遊びたかったなあって。』
「っ、」
『嗚呼もっと生きたいって思った。ずっとずっと、皆と居たいって。
そしたらその子達もいれるようにお願いするからって必死になってくれて。』
嗚呼寒いなあって思ってたら、周りが騒がしくなるのに音は聞こえなくなる始末で。
何を言っているのか分からなかったのに、大丈夫の声は聞こえたんだよ。
『次目を覚ました時は、また会いましょうって。』
そうして、私は何度も廻っていることを今知った。
貴方の事を、何度望めば気が済むのやら、もう分からない。
『その時間から更に遡ること数千年。同じ世界で曲に足を踏み入れた。』
それが、アイリス・シュミットである者だった。
『貴族階級でも演奏する者は当時限られている上に演奏の幅は数も限られていた。
上辺だけの音なんて聞こえない方がずっとずっとマシだなんて思ったよ。』
まぁ、その後ちゃんと聞こえなくなったけどね。
奇しくも、次の転生した時には。
…エフェメラル様
『その時や〜〜〜〜けに狙われてさ。
いや演奏する前貴族交流会で色々あってから
音に縋るなんてしない方が良いって思って
都から逃げる様に出て行った先でだよ。』
「嗚呼そのときだったんだ。」
『誰が四六時中観察されてしまいには
裏庭の窓ガラスド真ん前で立ち尽くせと言った。』
「ぶっ」
「…いやだって。あの時アンタ、滅茶苦茶拒絶してたじゃん。」
『普通それを追いかけるかね。それも相手は女だぞ。』
「男装してたくせに。」
え、まさかそっちの。
違いますーーーーー
『あの人と一緒にしないで下さいーーーーー』
「あら、喧嘩売ってる????」
『あっすいませんでした。』
「早い速いはやい早い。」
『話を戻して。』
はやいはやいはやいはやい
『もう音に呑まれるなんてしたくなかった。でも誰も知らない場所で誰も私と言う私を見ないこの時間ならば。』
せめて自由に、息が出来ればいいなって思って。
だから作曲は止めなかったんだよ。
『もうあの時既に音がほぼ聞こえなかったけどね。』
「…だから物音を立てても無視されてたんですか。」
『声聞こえなかったからね。一定方向なら聞こえるんだけど。』
でも、そんな時間も長く持たなかった。
周りの噂が隣町から入ってきたのだ。
貴族から抜け出した愚か者を処罰すると。
『嗚呼もう夢も現も居場所がないなら、次に託してしまえればと思った。
本当はね。最後に書いた曲の題名、書こうとしてたんだよ。』
でも書かなかった。
『私の心の中に留めてしまえばいいと思った。
”交響曲第4番「真昼間の白昼夢」第一楽章第十三番”』
「あ」
『【花冠を、送りましょう。いつか来る、
『いつか終わるその日には、花冠を、捧げましょう。
希望を犠牲にしたとしても、雨は気まぐれに降り注ぐ。
永久に願っても喜びなんて叶わない。だって私が望んでいないから。』
これは天罰。理脱した私の罪。
『死んでも離れぬこの想いが。悲哀に塗れ、朽ち果てることすら知らぬまま。
どうかこの世界に神が居るなら公正に。その手で罰して欲しかった。』
貴方を信じて微睡んだ。こんな狂った私の元に。
もしも探して来てくれるなら。
『いつか終わるその日まで。私は貴方を待ち続けましょう。』
初恋留めた想いの瓶も。願って散った儚い花火も。
全部全部、淡い一瞬瞬きの時間に生きていたことであって。
無かったことになんて、きっとずっと、出来なくて。
『ならば誓って。どうか願って。祈って望んで手放して。』
銃弾撃ち込み、咲き散らす。その命が、終わるその日まで。
『花冠を、送りましょう。何時か来る、末路には。』
きっと私は、永久の喜びを知ることになるのだろうけれども。
そんな日が来る前に、私はその筆を止め、首を締め上げ身を降ろしたのだ。
『そうして時間は戻り、天使の時間。約束しだした始まりの時間。』
確か彼等は悪魔で、私は天使だった。
天使も悪魔も人間も。みんなみーんな大好きで。
『草冠は未完成の証であって。花冠は愛する人に捧げるもので。』
「…お前、まさか。」
『えへへ。お花の冠作ってたんだよ。…でもね、渡す前にお腹切られちゃったの。』
不思議だよね。繋がってるね。
『この世界に落ちて少ししても、腹を切られて死にかけた。花冠も、渡す前に。』
「っ、」
「…出来過ぎてますね。」
『私の話はここら辺かな。ヴァイス・ミア・エフェメラル。』
それが私の、華樹神としての、名前である者。
「かつて生きていた作曲者として、ですか。」
「また大層な生まれ変わりを遂げ、集まったんですね。」
『嗚呼言っておくけど君らちゃんと私と関わり合ったからね。それも嫌というほど。』
「え?!?!?」
「どこですか!!!話に入っていなかったのでは」
「…ひょっとして
ふふ、流石に気付かれるかとメルはにやりと笑う。
そう、Cの世界では彼等と歳が違えど出会っていたのだ。
流石の事実に周りも驚き声が上がる。
「まさか貴族階級に居たのも彼等とか言うんじゃ。」
『嗚呼流石察し良いですね。そうですよ。なんでしたら婚約までしといて
舞踏会に他の女連れてきて紹介しようとしたどこぞの馬の骨にもね。』
「…私ですか。」
そう言うのはサワアだ。ふんと鼻息を鳴らすも
まぁ今居る彼には関係ない話ではあるのだが。
とんだとばっちりというものである。
「此処まで来ると一種の呪いか何かを感じてしまいますね。」
『そうなんですよ。其処なんですよ。』
「何処なんですよ?」
「此処なんですよ?」
「昼なんですか?」
「夜なんですね?」
『違いますから頼む、だまらっしゃい。』
はーいと呑気に手を上げる華神らにメルは頭を抱える。
あれこんなに呑気だったっけ。あれおかしいな。
++++++++++
自己紹介が終わり、粗方ではあるが
今後の方針がまとまった辺りで解散となった一同。
アルトリア達はメルの杖の内部に住処があるらしく、
ソレを聞いたメルが杖を取り出しタクトに変えると
彼女らが綺麗さっぱり居なくなるではないか。
成程、一度使ったからこそ扉が開いた状態になって居たのか。
これはある程度使いどころを考えないと
気の消耗が酷いことになりそうだ。
そうこうしているうちに気付けばこの場所夜になっており
食事も終わらせ風呂も終わらせはやくも寝ようと床につこう
『ま、そうは終わらないよね。』
まだ何か用?
『サワアさん。』
「…余りその名で呼ばれるとくすぐったいですね。」
『いえいえ。お兄さんこそこんな夜分に
どうされました?担当の天使さんです?』
「ええ。大神官様から伝言で”話していないことが
あれば話しておくべきですよ”だそうです。」
『あはは……やっべばれてら。』
「エフェメラル様?」
嗚呼いやこっちの話。
軽く脅されているのに気付いたメルは
乾いた笑いでサワアに向かって手を横に振った。
「隣失礼しても?」
『どうぞ。そんなことよりお兄さん良いんですか?』
「何がです?」
『破壊神様ほっぽりだして。恋しがってないです?』
「…気色の悪いことを仰らないで下さい。
我々はそう言う間柄では…
まさか前の世界ではそうだったのですか????」
『う〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ん』
「………気にしないで下さい。少なくとも誤解です。」
あらぬ誤解で在って欲しい。
そう頭を抱えるサワアにメルは苦笑いだ。
「そもそも破壊神を好く天使が居てたまりますか。仕事に支障が来ると言うでしょうに。」
『まぁ中立もくそもへったくれもなくなりそうですしねぇ。』
「仰る通りです。それで一体何人が消えっ」
『…やっぱり18人居たんだね。』
しまったと言いたそうな顔に、そっぽを向けられ確信する。
どうやらこの世界は、いや…下手すればあの時から既に居たのだろう。
私の方がいっぱいいっぱいだったから、気付かれずに済んだ、というべきだろうが。
「…はぁ、そうですよ。貴方が落ちてくる前は、少なくともこの世界には全部で18の宇宙が作られていました。」
『クスさんがん?ってなったのに気になってね。』
「かまをかけたと。」
『まさか!でもボロ出してくれて助かりましたよ。サワアさん!』
「っ…何処まで知っておいでで?」
『君ら宇宙が全部で18あるのと、少なくともクスさんよりも上に人が居たという点かな。』
それ以外は知ろうとするとやめろってコニックさんからご忠告が。
…それは良い忠告でしょうね。
「余り探ると痛い目を見ますよ。」
『それは…この私の中に取り込まれるということは?』
「…まさか貴方が」
『いや気になりません?先程の自己紹介。』
水面高校吹奏楽部。
『全部で6名居たんですよ。』
「貴方を含めれば7人では。」
『だとしても華神がこうも半分、時を共にしたことがあるでしょうか。』
私の記憶であれば無かった。正確には、12人同時に別世界で生きているのを目撃くらいはしているが。
余り長く触れ合った形跡はない。まぁぶっちゃけるとBの世界にいたあの例の子達ではある。
『現に過去天使が華神になったこともあります。』
「そんなバカな話が…いや、そう言い切るということはそうなんでしょうね。」
『彼等の話し、してくれますか?』
「貴方が未だ誰にも話していない話をしてくれたら。……手を打ちましょう。」
『あらららあ〜〜〜困ったな。』
墓場まで持って行くつもりだった話の方がいいよね?
ええ。
「寧ろそっちでなければ話しません。」
『…はぁ……ま、君だからってことに免じて許そうか。』
あの人ではない。そう言い聞かせて私ねと答える。
『人でないんだって。』
「…ひとで?」
『うん。此処だけの話だよ?』
誰に言ってもきっとそんなバカなことがと信じてくれないだろうから。
それでいい。それがいい。そうでないと、これは終わらない。
『世界が溶け切る前に、私花冠を交換したんだ。』
それは何よりも幸せな時間だった。
もういっそのこと、この時が止まってしまえばいいとさえ勘違いしそうになった。
嗚呼でも、一瞬だけは、思ってしまった。
透明に近い地面が自分の裸足で波紋が広がっていく。
ふわりと見えた草原の中に居た人を見た瞬間。
目を閉じて、逸らした。
嗚呼狡いのだ。この場所に、彼は息をしている。
胸が張り裂けそうになる想いだ。最早正気ではやってやれないもの。
何度も幾度も貴方に出会って貴方に恋して終わり続けないこの時間。
それは、花冠を、互いに渡したことで終わったもの。
だから、そう、これは、今此処で生きてるということは。
此処で終わってしまうということなのだ。
天使の時間でも、曲を書いている時間でも、友情に落ちる時間でも
ましてや、天使と人間の狭間に位置する時間でもない。
狂いに狂って、戻ったように見せかけた、場違いの存在。
全て溶け切ったその先の末路にて、この物語は幕を閉じてくれる。
やっと終わる、長い時間が、漸く報われるというのに。
それでも彼は言った。また、僕を愛してくれるならば。それでいいと。
でも、そんなことしなくていい。
してはいけないのだ。
記憶のない、彼の前で。世界が溶け切る前のあの人を映してはいけないから。
だから私は彼の顔を見ないようにしていた。出来るだけ、目を見ない。
視たらきっと、泣いちゃうから。嗚呼やっと会えたんだって思い違ってしまうから。
これは貴方に会えてしまった、邂逅の時間。
酷いくらいに優しい、悪夢の時間。
二度と醒めない、現実の時間なのだと。
思い知らせるには、十二分過ぎたから。
「…花冠を交換して、嬉しかったですか?」
『そりゃあもう!やっと願いが叶ったから!!』
「そうですか。ソレは良かったですね。」
『…うん、良かった。良かった、はずなんだけどね。』
その花冠、無くしちゃったんだ。
おや、それはそれは。
『だから探しに行くの。』
「今からですか?」
『まさか!そんなことしたら、貴方も止めてくれるのでしょう?』
「止めなければいいですか?」
『え?』
「止めずにその冠を完成して、この裏側に戻るというのですか?」
ふと目を見つめてしまった。嗚呼綺麗なアメジスト色だな。
あんなに短くしていた髪の毛も、あんなに長くしていた髪の毛も。
いつの間にか、気付けば彼の長さまで揃ってしまっている。
「誰も貴方を知らない処だからと言って。
貴方はこの場から消え去るというのですか。」
『サワア…っあ』
「ふふ、そうやって私の事を呼んでくれていたのですね。」
あっお兄さん待って待って近い近いちかいですよ。
おや、これくらいではダメですか?
「お話を聞いて興味が湧いた。
とでも言えば、貴方は此方に留まってくれますか?」
『……っ』
「…すみません、泣かせるつもりはなかったのですが。」
違う、彼に謝って貰いたいのではない。
嬉しさと悲しさがごちゃ混ぜになって何を言えばいいかわからないのだ。
貴方らをこれ以上巻き込まなくて良いって気持ちや
この時間がずっとずっと、自分そのものだったのだという気持ちや
誰かではない、この私を。見てくれることにこれ程喜びを持つことに。
そして同時に、この時間が終われば、
もう二度と貴方達とは会えなくなるということにすらも、
気付いてしまっているこの自分ですらも。
どうあがいても報われない。それでいい。それが、ルールなんだろうから。
だから、この一瞬だけ。ひと時だけ、溺れさせて欲しいと縋る。
貴方と共に、夢の様な、幻のひと時を。ともに生きれられたのならば。
嗚呼ごめんなさい。貴方を困らせるつもりはなかったの。
もう一度どころか何度だって貴方に恋して愛してしまう。
これこそ何の執念だろうか。呪いを越えた何者かになるというのか。
『ごめんなさい、急に泣いちゃって。』
「いえいえ、私の方こそすみません。」
お詫びと言っては何ですが、私も提示しましょう。
えっ
『いいのに!』
「いいえ、言いますよ。」
『だって』
「これで、貴方が足を止める、枷になるというならば。」
『っ、』
「ふふ…不思議ですよね。貴方の推察通りならば
私は貴方に惚れた腫れたなんて通用しないはずなんですよ。」
なのに気になって仕方がない。それは興味?それとも期待?
「私達天使は男女ともに9名ずつ生きていました。
それも、私は長男ではない。正確には次男、でしたがね。」
『…じゃあプラティア以外に、』
「残念ながらその子は管轄外です。」
えっでも。
…それは華神らが居た時では?
あっ
『…確かに。プラティアが居たのは私が産まれた直前既に居たから。』
「…なら管轄外で当たっていますね。
私が言っているのはその後、
貴方が廻廊を早めに手を出した辺りからですからね。」
彼等もきっと、貴方に気付かれたくなくて色々試行錯誤していたんでしょう。
…その前に私気付きすらしなかったけどね。
『なんで今まで考え付かなかったんだろう。そうじゃん、確かになんでだろう。』
「…何を知りたいかによっては返答が変わります。」
全ては、貴方が教えてくれた。その言葉に相応して。
そう答えるサワアに、じゃあと気にしていたことを聞く。
『13宇宙から18宇宙の天使の名を教えて欲しい。』
「…たったそれだけでいいのですか?」
『うん。相応、そうでしょう?』
だって、これはもう、閉じ込めてしまう感情だから。
貴方だってきっと、辛い筈。もう、二度と会えない人の名前を呼ぶだなんて。
『それも6回も。…流石に全員じゃなくても一人だけだっていい。』
「…そんな謙遜なさらないで下さい。充分に泣かせてしまったんです。」
第13宇宙は、ルシードさんという方が管轄していました。
…ルシード。
「何かきになることでも?」
『…いや、続けて。』
「わかりました。ルシードさんは男性で私の次に産まれた子です。」
『えっ!?!?コルンじゃないの!??!!?』
「おや、そう聞いているんですか?」
あ、でも前に確かサワアが自分以外にも沢山天使が居て
淘汰されてったから何とも言えないって言ってたような。
…良い様にはぐらかしましたね。
「流石私と言いますか。まぁそうできなかったのは
貴方が賢くなったからでしょうが。」
『えへへ〜〜〜…あれ私貶されてる?』
「ふふ、続けますね。」
『あっ否定しないな?????』
「第14宇宙はキャロルお姉様が担当しておりました。」
『お姉様???えっまさか』
「ええ、お察しの通りです。
キャロルお姉様こそ大神官様の第一子のお方。」
まぁ、かなり年齢が離れているので、
貴方が言うプラティアさんという方は
あながち間違っていないのかもしれませんね。
「なんでしたら隠し双子だった
可能性だって無きにしも非ずでしょうし。」
『はわ……』
「それにしてもプラティアさんとはどういうご関係で?」
『あっ元々子供で生まれる子だって聞いているんですが。』
「エフェメラル様と????まさか」
指を指して頷くメルに、サワアは少し頭を抱えた。
プラティアの件は、実は今瀬でも話には聞いている。
なんなら何度かあったこともあれば、話をしているのだ。
…妙に自分に対して話がきついと思っていたら、
成程、彼女のことを知って居てのことだったのか。
だとしてもプラティアも溶け切れずにということになるが……。
一体どれ程の執念があったら溶け切れずに維持できるのだろうか。
あと自分はそれ程まで執念が無かったというのも色々疑問が残るものだ。
「ま、まぁ話を戻しましょう。キャロルお姉様は第14宇宙を管轄していました。」
『そういや嗚呼まあいいや続けて。』
「なんです?」
『嗚呼いや、天使産まれ順に管轄する宇宙違うんだなって。』
「まぁ技量の問題ですし、多少の前後はしますよ。」
例えば最初に私が第10宇宙だとしても、残ったものからまた数を振り直せば各宇宙の番号も変わりますでしょう?
あ、ああまぁ確かに。
「そんなふうに決めていればいずれ元々自分が何処を管轄していたのか分からなくなりますし。」
まぁ皆が皆そういうわけでもないでしょうがね。
「話を戻します。第15宇宙はシャトリューズさん
という方が管轄していました。
確かカンパーリさんの妹だった筈です。」
『えっそうなの。』
「急成長して天使界では最速のガイド天使という異名が付くくらいでしたからね。
…まぁ同時に最速で宇宙が散り、彼女も命を自ら断ったものなんですが。」
『…ねぇまさか全員自分から命立ったとか言わない???』
おや、察しが良いですね。
「そうですよ。だからこそコニックさんは周りに聞くなと忠告を入れたんでしょうね。」
『あ〜〜〜〜成程了解。話題出さないように極力差し控えます。』
「そうして頂けると私としても助かります。」
一応これでも、彼等の兄なんでね。
「幼いながらも周りを見てくれる良い子だったんですがね。
だからこそ、生真面目の子には耐えきれない処はあったでしょう。
周りに聞くタイミングを良く間違える子でしたからね。」
では続けていきますよ。
「第16宇宙は『もういいよ』え?ですが」
『半分でいい。ね?』
「…分かりました。ではこの辺で。」
また秘密提示したら教えてくれる?
ええ、勿論。
「私がお教え出来る範囲内でよろしければ。」
『わかった。ありがとうね、辛かったでしょう?』
「いえいえ。貴方と話しているからかは知りませんが、落ち着いて話が出来てこっちが驚いてしまっているくらいです。」
そう困ったように笑っていうサワアにはメルも笑ってそっかと答えてやった。