君のための僕でありたい
前回のあらすじ
前大神官様から勝ち貰いましたけど
前全王様からタブー持ち掛けられました。
以上
『(…さて、問題は此処から、か。)』
彼女らが答えてくれるかどうか不安だが、やってみるしかない。
これが通常の魔法とかなら問答無用で使い込むんだが、
なんだったら隠していた魔法関係までサラッと禁止されているのだ。
さてはてどうしたものか。
何から使うかによっては彼の手も分からない以上タクトを出すのも難しいが…
組手すら禁止というそれ以前の問題になりつつあるのだが。
其処ら辺どう説明してくれ嗚呼ないんですねわかりました。
しますします。したらいいんでしょうがしたらさ。
待ってこれ仲直り回なの???私それいやだけど。
喧嘩待ったなしだよ?そんなんしたら怒るよ私が。
物のように扱いたくない。それは大前提である。
でも使えば使うほど、彼女らが物に見えて
仕方が無くなるのも、また当然なのだ。
だって物から出ているんだから、使うという点では同じ。
それが嫌なのだ。だとしても、人を外に維持するなんて難しすぎる。
まだ肉体があれば、依り代があればいいのだが、そういう訳にもいかない。
というのも、彼女ら自らが拒絶しているのだ。依り代など必要ないと。
音に嫌われ世に嫌われ。そうして辿り着いた場所は、ただの幻想見紛う幻の時間。
はっ、笑ってしまうしかない。だって最初から、人に縋るつもりが無かったというもの。
虚像の中に愛を叫び落ちる者に、救いなど、必要すらないというのだから。
「ほっほ、防御は攻撃然り。いずれ崩れるのに手を打たんのか?」
『っ…!!!』
相手の言う通り。はじめの合図すら聞こえなかったくらいには頭の中がごちゃ混ぜになっている。
何だ、何を言えばあの子達は分かってくれる。
ごめんなさいって願えば出てくれる?違う、彼女らが望んでいるのは違うのだ。
…私が、望んでいない場所に、あの子達の答えがある事態が、嫌なのだ。
此処は、幻、鏡の世界。偽物は、いくら作ったって偽物でしかないというのに。
それでも、彼等は彼女らは。本物だと願ってやまない。信じないものが、何を言う。
神はいないから、神になる?願いが叶わないから神はいない?
笑わせてくれる。神は常に、人が成し得ないことを
いともたやすく成し得るモノたちの総称でしかない。
なら、此処にいる全員が神様であり、私もまた、彼等もまた、神様であるという者。
もうこうなったらやけくそだ。全員地にひれ伏せ抗うがいい。
『どうなっても知らんぞ。』
「…威勢がいいことはいいことじゃ。」
お願い。この一度だけでいい。大事な瞬間すらも、もう、存在しないなら。
ねえ、サワア。一体何処に居るの?私ずっと、ずっと待ってるのに。
ジワリと涙が浮かび上がり、零れ落ちる。嗚呼感情がずっと渦を巻き続けてる。
貴方の顔が、見えないの。何度作っても、
触れようとしても、するりと消えるし見えなくなるの。
あの日の時間が、ずっとずっと、消えずに止まらず、続いてる。
『…お願い。もう一度、なんて…狡いよね。』
ごめんね。ごめん。今の知識をぶつけたって敵わない。
ならば、この…嗚呼、貴方に会える一つだけ。方法見つけて、永久を知る。
風が止む、木々は止まり、人の音さえ、聞こえない。
此処にいる此処でいる。生きているのに死んでいる。
心臓の音は、いつの間にか、聞こえなくなっているのに。
気付いていても、見て見ぬふりして、笑ってしまうわ。バカバカしい。
嗚呼どうか、代償与えてお願い聞いて。
この代償は、泡沫に、溶けるはずだった貴方の時間。
古都葉の時間。その想い。たった二文字。されど二文字。
タクトを召喚し、詠唱する。どうかお願い。
物として扱っていないこと、分かってる。
だから手を貸してくれてること、分かってる。
貴方達の願いを叶えずに、私だけ叶えるなんて烏滸がましい。
それでもいいと、分かっていても言わないで居てくれる。
優しい優しい貴方達に、今度こそ、未来を見せてしまいたい。
此処で完成。してしまおう。
メルは覚悟を決め、手に力を入れ息を吸った。
『”華よ神よ魔の者在りとしする者よ。
華片の願いを束ねし許せし愛塗れし星々よ。
今こそ、我が力我が魂を解き放ち
約束果たせし末路を導け。”』
青い宝玉が黄緑色の光を解き放ち始める。
相対する者は、恐らく今まで出会ってきた中で一二を争う程の強敵。
お師匠が良く言ってる。幾ら強い攻撃だとしても、当たらなければただのガラクタ。
ならば、当てればよかろう何度でも。
生憎、私は執着執念深いお子なので。
絶対に、この戦い。勝ちに行く!!!!
『”始まり廻る、
誘われるは、希望の犠牲。雨の気まぐれ輪の摂理、永久の喜びっ、今此処に!!!”』
ぐんと空にタクトを上げて構える。
無防備なことこの上ない形だが、案外こっちの方が楽であるのだ。
周りは何時こっちが動き出すか分からない。
よく戦闘シーンで魔法少女が変身シーンをする時
横やりを入れたら勝てるのに何でしないんだろうと
思っていた時があったし、皆も考えたことがあるだろう。
何故しないのか。それは、相手がどういう動きをするか分からないから。
横やりを入れたら爆発してしまえばどうする。
自分も死んでしまうことになれば、次の一手相手が傷一つない時。
一体どういう状況に持って行くというのだろうか。
要は何が起きるか分からない以上、手出しするのはまずいというもの。
なんなら考えている間変身が終わるというパターンだってあるので
いずれにせよ待っている間肉体の回復に専念した方がいいということだ。
ならそれを存分に使い、この身体に眠り眠っている
全ての力を引き出すしかない…!!!
『…ごめんね。スピス、約束…破っちゃうね。』
「え?」
『”華樹よ華の者統べる華の者よ!!!
架施の発動状態レベル5を提示します!!”』
さぁ!!詠唱続けてしまいましょう!!!
『”
悲哀の心に酔いしれて。公正なる者、神草よ!!
貴方を信じて、微睡んで。間奏交えて咲き散らせ。
……何時か終わる、その日まで。”』
私は貴方を待ち続けましょう。
『”初日の想いを留めた瓶よ、勝ちに見紛う過信に酔い知る泡沫よ。
永劫見紛う価値の高さの伸びしろに、華に似た華片咲き散る時間。
駆ける星々線香花火巡り廻って、どうかお願い、祈りよ届いて。”』
タクトが手から離れる。黄緑色の光が白い光を解き放つ。
嗚呼どんどん色が変わる。私の色が、どんどんと。
そうして、また。戻ってくるのね、その色に。
私がずっと、願い続けた、あの時間に。
『”どうか私を見て誓いを願って、銃弾撃ち込み咲き散らせ…!!
花冠を、送りましょう!何時か来る
花冠を、捧げましょう!!何時か終わるその日まで!!!”』
誰が終わらせるか。誰が眠らせるか。
この想いは、熱情は。私が私だけに、取っていたものだ。
誰にも渡さない。渡せないからこそ、この力は永久に輝きを増す。
『”巡り廻って戻れない。終わらせられない
真昼間微睡む白昼夢。何時か終わるその日になんて、私は貴方に誓わせない。
この手に望むは、貴方の現実。在る者華の者真の者!!!!”』
その瞬間、ふわりと空から白い花弁が舞い落ちる。
青い花弁や、黄色い花弁も見えてきて。
嗚呼、やっと会えたね。廻り巡って、会えたんだ。
ふわりと広げる両手の中に、抱きしめられるよう手を伸ばす。
届かない、届けれない。貴方に会えた、そんな夢。
『”……数多の時間よ巡り廻って咲き散らす。”』
光に反射して、顔が隠れて見えやしない。
でも分かってる気付いているの。知っている。
貴方ではない、幻で。それでも手を、伸ばしたくなるこの想い。
どうか許して、笑ってよ。
『”永久に見紛う瞬きに。花冠を、貰いましょう。”』
貴方ではない。この冠に、意味なんてないというのだけれども。
ねぇ、どうか許してよ。約束破った悪い子に。
どうか天罰下して欲しい。そうしてそうして、私は笑う。
触れたら崩れる、泡沫に塗れに塗れたこの冠を。
嗚呼、この日が二度と、来ないことを。嘲笑う。
『”どうかこの日が、続きますようにと、華をそっと添え終えて。”』
さぁ!!最後の詠唱終わらせよう!!!
ぶわりと両手をもう一度開けば消える。上の者。
嗚呼、この感情を、彼にぶつけ、
そして、終わらせてしまいましょう。
そうして、そうした、その先は?
幸せだって、言い聞かせたい。
『”響くは
タクトを持ち直し、メルはタクトの先に出現した青い光を知りつつ前を向く。
周りには多くの光が背中に肩に胸に感じ続ける。胸が熱くて仕方がない。
この熱が冷めたその時、私は笑っていられるかな?
嗚呼きっと、笑っていられるだろうから。
『”水面の様に清らかに、お空の様に高らかに、感情静かに包み込め。
”僕らの音楽終わらせない。”
「「『”轟け欺け酔い狂え、
声が重なる。タクトも二つ。揃ってくれる。
嗚呼一つになるってこんなにも気持ちが良いんだね。
ぐちゃぐちゃだったものが、ぴんと糸を張ったように揃ってくれる。
『”約束果たせし、その日まで。”』
私は、貴方にずっと、恋をする。
『”一人は二つ、二人は一つ!!僕らは華神。勝つのは僕ら!!
願いは同じ。想いは一つ!!…約束果たしに、いざ
それでは、どうか、ごゆるり拝聴下さい。
『”交響曲第4番「真昼間の白昼夢」第一楽章”』
せ〜のっ!!
『”あじゃあじゃ〜〜〜〜〜?????”』
「「「「「ふぁいてぃ〜〜〜〜〜〜ん!!!!!」」」」」
そんな掛け声の元、メルの作っていた光から一斉に人が飛び出してきたではないか。
それも全員合わせて12名も。くすぶっていたのか、それとも踏みとどまっていたのか。
一斉に出てきた者に、元全王様もちょっとビビッて隙が出る。
その間に入って攻撃を入れつつ、終始彼の元に視点を変え
攻撃を仕掛け続けるではないか。
仮に避けられても追尾があるかのように。
「総大将!!指揮!!!」
『い〜まやってる!!!!!』
あれはあくまでも曲を召喚するための前座に過ぎない。
本番は詠唱を終えたその後だ。
膨大な魔力を、それも今までかつて片手で数える程度しか使っていない
この極大魔力&気の練りを兼ね合わせた状態をひたすら維持したまま
調整繰り返しつつ敵の詮索を常にアップデートし続けるのは
如何せんきついにも程が在って欲しい!!!!
『アシュガ!!!指揮任せる!!!』
「…言われたら、仕方が無いよねえ。ルールに則って。基づいて。」
統べてを葬るその彼方。
「約束果たせしその末路にて、我らの願いは共にある!!!」
「はやく指示しんしゃい!!!」
「うるっっさいわね!!いわずともやるわ!!!
先手部隊突撃いいいいい!!!!」
「それ指示ちゃああああああああう!!!!!」
はいやーーと言ってあいつらは馬か何かかと誰かから突っ込みが入るも、気にしないらしい。
メルはその上でひたすら彼等の状態を維持したまま動きを常に変え、操作する。
ソレを分かっているからこそ、前の全王様が此方に突撃してくるのだ。
勿論妨害は沢山ある。
「はいまったああい!!!」
「っ!!」
「よっはっとっやっ!!!」
突撃してきた処横やりを入れるのは意外にも臆病者のポピーだ。
実はポピー。生前も結構な性格の持ち主であって。
「あいつ本当に音に呑まれると性格逆転するの魂由来なん!?!?」
「あはは!!!臆病が真逆で勝気になってる!!!」
そう、一度楽器を持たせたら性格豹変するのだ。
まぁ正確に言えば合奏中と言えばいいだろうが。
パート練習とかひたすらにお通夜モードである。
嗚呼どうして私はあんなことしたんだろうとか
ひたすらお経のように聞こえてくるので
一つ上の先輩がいた時は良く怒鳴り声が響いていた。
加えて臆病なのに音自体とてもいいのだ。
まぁもっと磨けばプロの道も夢ではないと言われたくらいだったが
そんな私には恐れ多いと卑下していたので、
最後どうなったかは彼女のみぞ知るというもの。
そんな話は置いておいて。本題に戻ろう。
「よそ見は厳禁!!!」
「っほほ!!良い動きじゃな!!…だが甘い!!」
「ひゅぎゅ」
「っわ!!!」
軽く腕を掴まれ下から上げたことでポピーだけでなく
掴まれたギリアも綺麗に吹っ飛ばされるところはウイスの前だ。
杖を握り締め保護をと構えたが、どうやらそれはしなくて良いらしい。
メルが華を出し、彼女らを包みこんで消し去ったのだ。
ぱっと出したのは酷い。前の全王様トゥット真上である。
いいやああと言いながらもちゃんと攻撃を入れる処素晴らしい。
『ビオラ!!モネア!!!応援!!アルトリア!!!』
「現在対敵の気量は全体の5分の1に削り落とすことが成功。
時間換算で凡そ15分で削り落とすことが可能でしょう。」
「っな!?!?!」
「そんなことまで分かるのですか。」
『5分』
「っしかし」
『ルールに則って。』
「…然るべき、現実を、ですね。」
分かりましたと言って瞬で消える彼女。
アルトリアは一体どこへやら。
というか、多すぎる。人が多すぎて、もう誰が何をしているのか収集が付かないくらいになっている。
『畳みかけろ!!!!』
低い声で怒鳴るように叫んだメルの言葉により彼等の光が変化する。
青やオレンジなどの髪色が一斉に白へと変化したではないか。
加えて、その目の色は、
「…素晴らしい。モノにしたんじゃな。」
青い輝きを灯していたのだ。
「ならば此方も、手をだすもの!!!」
「っ!!」
攻撃を仕掛け、重い一撃に瓦解していく。
広がる波紋に、焦りなど浮かばない。
浮かぶ前に、叩きかけるしか術がないのだ。
アシュガが先陣を切っているギリアらを見つつ
メルの指示の元に操作協力し、連携をさらに深める。
「あと2分!!!!」
急げ急げと声が上がる。アルトリアの
切羽詰まった声に周りが速度をあげだしたのだ。
流石にその量には、前全王様も押され続ける。
この戦い。絶対に勝つ。
どれ程の犠牲が出ているというのだ。
叶ったその時を思い浮かべて笑みが零れる。
焦るトゥット様に、勝つかと言うオレンジ色のフードの者に嫌無理だなとビルスが答える。
「え?でも」
「押される」
『っぐ!!!』
「エフェメラル!!!」
頬に物が当たり、そのまま落ちる中、
周りの力が弱まり淘汰され消え去っていく。
サキョワ!!ビオランテ!!!
そう叫ぶ中、手から離れたタクトの姿に、
嗚呼空が綺麗だなと青くなっていた空に目が向く。
まるで時間が止まっているかのような感覚だ。
そういえば、ビルから飛び降りた時
ある一定の時間過ぎれば人は失神してしまうと聞く。
何度も空から落ちている私が失神なんてするわけもないし、
今して終わったら、ずっとこの時、悔やんで落ちるだろうから。
そんなことにはさせたくない。
メルはありったけの気を取り戻し、
彼等を飛ばして地に足ついては空に飛び戻る。
メルが5分だと言ったのはあくまでも彼の力を削る時間ではない。
「もう時間切れかな?お嬢さん。」
『っまだまだ!!!!』
この詠唱。実際すればわかるが、非常に神経から何から使うのだ。
身体の動き、相手の思考。それら全てを考え続けて繰り出すしかない。
身勝手の極意は身体の力を抜いて動く無意識に身を委ねる行為だが
これはその正反対。身体の力を巡らせ力を意識的に増幅し、
ひたすら敵にフルパワーで飛ばすものなので。
確実に当てれば良いが、当たらなければ
死をもたらす危険極まりないものなのだ。
正直完成形は使うつもりなかったが、場合が場合だ。
仮ならばアシュガらの意志が伴い、どうしても反応しないが
完成形なら意志など関係ない。指揮者の独断と偏見により操作できる。
その仕組みを分かっていたからこそ、メルは使わないと豪語していたのだ。
こんなもののような扱い、したくなんてないのだ。
でも今はつべこべ言っている暇などない。
指揮を振り、彼女らを再度向かわせる。
あと5分の2と叫ぶアルトリアに、周りの子達が綺麗に掻き消えた。
今何が起こった。腹に落ちた痛みに、気付いた時には地面に落とされていた。
嗚呼私負けるの?いやだ。いやだよ。
こんなにもプライド高かったの、私。
それもそれでいやだよ私。いやだよ。
「勝負ありじゃな。」
「…勝者」
『ね。この音、根音。何処にある?』
「っ!!!」
ドンと響く音に、何が起きたのか、コルンらは見えなかった。
目を疑ったと言えばいいか。メルが地面に叩き落された直後。
落とした筈の場所から消え、いやそこから飛び上がり背後にのけ反り入って壁に飛ばしたのだ。
『僕こそ根音。……始まりの音。』
ね、さわあ。どうか、ほめてよ。わらってよ。
嗚呼もう、触れられない、その場所に行ってしまうその前に。
どうかお願い。願わくば、もう一度、貴方に会ってその声を。
「メル」
嗚呼、やっと、声が聞こえた。振り返る。
とびっきりの、音で。答えてあげる。
沢山沢山、練習したの、この声を。
『”ずっとずっと、だいすきだよ、さわあ”』
嗚呼やっと、言えたんだ。
其処から記憶が無くなった。
++++++++++
ぼたぼたと涙を流し、振り返って言った
メルの姿を目の当たりにした者達は
末恐ろしいですねと言う声にはっと意識を取り戻した。
「まさか本人と瓜二つ程まで仕上げ創り出すとは
…それも記憶やらなにやらを保管したまま。」
「勝ち、かの。」
「…意識不明により、ですがね。」
「危ない処でしたね?ちょっと長丁場に持ってかれると確実に負ける処で。」
「っえ」
「ふおっふおっ…其処迄でもないわい。」
「おや、そうです?気の量等子供達ですら
見れない程が綺麗さっぱり筒抜けになられていましたが。」
…揶揄っておるな?
いえいえそれ程でも。
「引退した身ですからね。昔のよしみと言う処で手を打って頂けると幸いです。」
「…お前も切れるからの。まぁそういうことにしといてやろう。」
「まぁですが、負けは負けですからね。後で反省させますよ。」
そう言っていた大神官の言葉に、コルンが前に出て落ちたメルの身体をそっと抱き上げてしまう。
気を失って?と聞いた子にええとコルンが答えつつ大神官らの元に戻って来た。
「…透けているんですか?」
「ええ。持った時触れれなかったので、緊急で応用して無理矢理持っています。」
「お、応用…コルンお兄様まさか」
「彼女らが出来ずして我々が出来ない訳もありませんからね。」
ニヤリと笑うコルン。そう、見様見真似で
メルの動きをコルンも研究していたのだ。
かなり歪で尚且つ戦闘には使えないが、
それでもこうやって動かす程度なら出来るようになっている。
「かなり危険な状態です。…如何なさいますか、お父様。」
「…。音になろうとしているんでしょうね。」
「音に?」
「ええ。…其方に向かっても、彼はいませんよ。エフェメラルさん。」
そう言えば目を開け、ぽろりと涙を静かに零すメルに、ふうと息を吐いて頭をそっと撫でてやる。
ボロボロと泣きだす彼女は、顔をゆがめることなく。ただ静かに泣くのだ。
心此処に在らずと言ったような顔つきに、参りましたねえと答える。
「此方とて切り札を出す予定は更々なかったのですが。」
「お呼びですか?大神官様。」
「ええ。すみません、少々手が届かないものでして。」
メル。そう言えばぱっと顔を上げる。まるで此処に来ない筈の親を見つけた子供の様に。
「酷い顔ですね」
ボロボロと泣きだし首を横に振って腕を出して否定する。
こないでと言いたそうにしていて、ちらりと足元を見れば
既に消え溶けて無くなっている処、時間がないと見た。
「其処に行っても僕はいません。水面の裏側にも、鏡の中だって。」
貴方が綴った、その音の中だって。
「僕は此処にいます。…此処にいるんですよ、エフェメラル。」
『ほんと?』
「え?」
『ここに、いるの?』
それは、幼子の様な目だった。酷く怯えた子供の目。
その姿にコルンも抱いていた身体がこわばり落としかけたのをそっと受け止めた。
「ええ。こうやって抱き上げることが出来るでしょう?コレは夢ですか?」
『…ううん。ちがう。』
「なら現実です。此処にいますよ、エフェメラル。」
『…っ、うん。』
そっかと言って彼の頬に手を触れれば、髪色が変わりだしたではないか。
それだけではない。その眼も、青に染まり続け、染まり切ったその時には
そっと目じりに溜まる涙を吸ってやれば、嬉しそうに笑う子の完成だ。
花に溺れ、狂いに狂った神の天使。
それは、その時だけ、狂った時間が戻ったように見えた。