貸し切り





「それにしても良く気付きましたね。この僕が記憶を保持しているだなんて。」
『いや〜最初は疑心暗鬼だったけどね。触れてすぐに気付いたよ。』

というか、まさか…

『全員カマかけやがったとは知らなんだが。』
「おや、酷い言い草ですね?恩を仇で返すとは。」
『すいませんでした許して下さい。お兄様。』
「ふふ、素直でよろしいのでソレに免じて許して差し上げましょう。」
「…お父様、余り甘やかすのは。」

そう言う貴方も甘やかしていたではないですか。
うっ

「ふふ」
『にしてもどういうことでこうなったので?本来溶け切らなかったと?』
「嗚呼其処に関しましては全王様が。」
『ぜんおうさまが???』
「メル、僕って誰かわかる?」

えっ何急になぞなぞはいった?

そう言うこの場所は。メルがサワアと知ってまた眠って目覚めた場所。
華樹の樹の下にある大きなベットの上での話だ。
未だ地面は草原でも黄金色にも変わらない。
白い場所でもない、水面の姿を映しているが。
いや、この状態こそが、この地の本来在るべき姿なのだろう。

『えっと全王様、ですよね???』
「うん。僕は全王だよ?全王ってなにするかわかる?」
『え?え?え?えっ?????えっと、え?』
「ふふ、思ったままで構いませんよ。」

そう笑って答える大神官にひたすらメルは首を傾げる。
答えは全てを統べるモノと言えばそうだよと答える。

「宇宙なんて一つ握ったら綺麗に消える!」
『あっ頼みますから消さないでね。』
「ふふふ」
「ふふふ」
『ねぇ待って?!?!?怖い笑み浮かべないで!!!』
「まぁ連帯責任として貴方が粗相をすれば宇宙を消すと言う手も」
『お兄様?!?!?!?!?』

冗談ですよと言われるが、いや冗談に聞こえんだが。

「お話戻すね?」
『あっはいすいませんどうぞ。』
「いいよいいよ。それでね?一応全部溶けたんだよ。この世界。」
『…まさか残った????』
「其処に関しては一種の賭けでしたがね。」
『お師匠!!!』

ご無沙汰ですね。と言えばいいですか?
…うう、酷いなあ。

『ずっと記憶あって騙してたって?』
「おや心外ですね?一応忘れ去っていましたよ。貴方に触れるその日までは、ね。」
『…あれ待って、やたらめったら皆触れてきたのってまさか。』
「ええお察しが早くて助かります。貴方が保管してくれていたおかげで
我々も溶け切るその前の記憶を保持した状態に戻ってしまいましたので。」

責任とって下さい。
ひえっ。

「まぁまぁ。」
『待ってあの子達は死んでるの生きてるのどっちなの。』
「嗚呼アタシ達のことか?」
『そうそうティーナにメリアに……え』

ひょっこり樹の中から出てきた身体に、頭を上に上げて固まった。
いや、待って。本当にまって。ひょっこりでてくる場所じゃない。

いいやあと声を上げて後ろに倒れるメルに、何人かは目を逸らした。
一応言っておくが、彼女の姿はほぼレースカーテンよろしいビギニ状態。
中を見たら彼どころか何人の天使に殺されるか分からないのだ。

「ささ、と、いう訳でエフェメラルさ〜ん。
此方のお二方の手を握って頂けますか?」
『え?あっはいどうぞ???』
「っ!!!」
『…ん?えっ待って!!!まさかお二人!!!!!』
「や〜〜ウイスさんが隠すから何かと思ったら。」
「…とんでもないことに巻き込みやがったな。」
「おほほほほ!!!おやおや、心外ですねえ。」

私は彼女が、そして貴方達が望んだからお導きしたものですよ?

「寧ろ礼を言われ、褒められるレベルなんですが。
…ねぇ?悟空さん、そしてベジータさん。」
『ぱわ』
「へへ、あんがとな!ウイスさん!!」
「…ふん。」
「おほほ、いえいえどういたしまして。」

まさか溶け切ったその先で彼等に出会うとは思わなんだ。
というか、これまさか嫌な予感がするんだが。

「ええ、貴方のご想像通り、一応貴方が知り得る者達
全ての者に出会って頂きます。」

待って滅茶苦茶えげつないけど。

++++++++++

そうこうしまして、現在時刻は日本時間でいうとこ午前10時半ごろです。
えー実はですね。あれから悟空さんがですね、悟飯やビーデルもと言って
連れてきやがりましてですね。触れて気付いて抱き着かれてまして。

やっと会えたと言わんばかりに叫んでいます。
なにこれどうすればいいのよこれ。

「っていうかメル貴方とんでもない恰好してるじゃないの!!!」
『あっはい。いやでも気付いたらこうなるんですよお嬢さん。
あとビギニだと思えば割といけるよ?割と。』
「そういうつもりでいたんですか貴方は……。」

通りで恥じらいがないなと思っていましたが。
そう言うコルンはビギニという言葉を本来知らなかったが
メルが昔日本の文化的な話をしていた頃の知識を思い出したとこで嘆いたのだ。

此処にはウイスをはじめとした第7宇宙の面々に加え
コルンやサワア、そして大神官も加わって来ていた。

ティーナ達の管轄はメルが請け負っているらしく、というのもだ。

『えっ編曲したのが功を奏したのか。』
「ええ。貴方が生前作った曲に大曲があったでしょう?アレですよアレ。」
『えっえっえ〜〜〜!!!すご〜〜〜い!!!』

まだ未完成だったのに!!!
まあだからこそでしょうね。

「一応言っておきますが、あくまでも此処は世界が完全に溶け切った先の場所です。
貴方が成し得ていることは、本来であれば処罰ものですが…今回限りは見送ります。」
『あっですよね。えっ?????』
「その代わり、会う方にご挨拶なさってください。」

そう言われ、その相手をし始めています。
こと、数十分。


『【なぜこうなった】』

低い声が我ながら出たことに驚きだが。
メルの状態は、通常時よりも露出は限りなく少ない。
いやすくないけれどもよ。

『なんだろう!あっ分かった!!
これ制服から急に私服に変わって友達と
制服以外で会った時の恥ずかしさだ!!!!
待って恥ずかしいこっち見ないで無理だから!!!』
「何言ってるんですか。つべこべ言わずにいきなさい。」
『ぎゃみっ!!!』

酷いお師匠そりゃないよ!!!!

『というかこれめちゃひらひら〜〜わ〜〜あ〜〜〜ひらひらするうう!!!!』
「なんだかんだ言って手のひらくるっくるですね。」
「…頭が痛いです。」
『ねぇねぇさわあさわあさ〜わあ!!』
「はいはいなんです?」
『可愛い可愛い?』
「ええええ、可愛いですよ。」

やたーと万歳して笑い喜ぶメルにニコニコとした顔で答えてやるサワアに
心なしか冷ややかに見つめるコルンの姿は最早恒例行事のように見える。

紺のロングワンピースを身に纏ったメルは
膝下くらいの長さで留めて着飾っていた。

正面から見れば、左から右にかけ、
下の丈大体膝下あたりから当たりをはじめとし
中央に向かって斜めにカットされた紺色の生地。

とは言ってもカットされた部分は中のワンピースが見えており
その中は白く透き通ることはないものの、
くるくる回れば中がみえそうになる程には浮き上がるので
これむやみやたらに回らないとコルンが叱るのだ。

「目を回して周りのご迷惑になってはいけないでしょうが!!!」
「あっそこなんですね〜〜〜」
「何か?」
「いえいえ。」
「でも本当に何でもよく似合うわね。流石メル。」
「いやビーデルさん、僕達の子ではないですからね?」

首元はカッターシャツになっており、
白いカッターシャツはカクテルグラスのように
Vの字になって腰元で線を止めている。

腰には紺色の紐をリボンのようにして前で垂れ下げて決めている。
肩もVの字のように中の白いワンピース生地がみえているも、
その姿はポンチョのように広がって見える肩部分は横から見れば
脇が見えてしまうので応急処置としてコルンが指を鳴らせば中の衣服が変化した。

緩やかではあるが中の下着が見えないようにしてくれるところ
本当に甘やかしているのを彼は気付いていないのが
また可愛らしいですよねと大神官がニコニコして見守っていた。

「あれで甘やかしてないって言うんですから。」
「そうなんですね。アレだと手を焼く妹を心配するお兄ちゃんみたい。」
「ふふ、割とビーデルさんの勘は当たっているかと思われますよ。」
「え?そうですかね?」
「ええ。実際嗚呼なっていますから。」

嗚呼と指を指した大神官の目の先は。
ぴょんぴょんと飛び跳ね嬉しそうに
褒めて褒めてと食い込んでいくメルに
この子をどうしろと、と兄であり、
メルの想い人であろうサワアに助けの目を出すも
ニコリと笑って手を出さない。

メルもメルだが兄も兄である。

「ほんと仲良しなんですね〜!」
「ええ、あの子達本当に仲が良いんですよ。」
「(いや仲が良いと言うよりかは…単純に天使の方は
弟の様子を見ては笑って居る気がしなくもないが。)」

そう、ビルスの予想は的中する。
サワアは現在進行形でコルンの様子を見ては内心笑って居たのだ。
自分の想い人が可愛いのは当然であり、
まぁ他の虫がついてしまうのは些か仕方がないくらいだと思う。

「それにしてもメルったら髪の毛切ったりしないの?」
『え?どうして?』
「どうしてって」
「うっとおしそうに頭を横に振るっている処を見るからでは?」
『あ〜〜〜〜これのこと?』

そう言ってメルは顎を上に上げ、髪の毛を背中に押し付ける様に頭を揺らす。
それそれと言ったビーデルにコレは違うよとメルが答える。

『髪の毛擦り付けて遊んでるの。なんだか伸びた感じして楽しいから!』
「へーそうなんだ。でも邪魔とか思わないの?」
『うん。だってサワアとおんな…じ……あっ違う。』
「おや、違うんですか?」
『あうっ!!!』
「ビーデルさんどうされたんです?」
「待って今噛み締めてる。」

主に尊さで。
あはは…
おほほ、メルさんは可愛らしいですからねぇ。

「我々も時々癒される為だけにこっそりお邪魔させて頂いてるくらいですから。」
『えっ私で癒されるの???』
「マイナスイオン絶対出てるでしょ。」
『ふぁ???えっと…じゃあする?』
「何をですか。」

そうメルが両手を前に出してウイスの方を見る。
それにはウイスも首を傾げてみていたが
あれ違う?とメルは困ったように伸ばしていた手を下げてみた。

『ぎゅっしたら嬉しくなるかなって…おも、ったんだけど。』
「…………サワアお兄様。」
「構いませんよ。」

では失礼と言ってウイスは杖を消し去り近づけば
嬉しそうに軽く飛び跳ねメルが抱き着いてしまう。
ポンポンと叩いている処、はぁとため息を吐くウイス。

腰に負担がかかると言って空を飛ぼうとするメルに
それでしたらとウイスがメルの足元を掴み上に上げてしまう。
所謂膝抱きというべきだろうか。腕に腰を置けば後ろに倒れるので
前にとウイスの肩や頭に手を置いてしまえば安心する。

『わ〜〜〜!!高い!!高い高い!!あっお師匠ひっく〜〜い!!!』
「…喧嘩売っていると見ますよ?」
『いいじゃん!!僕の方が上!!!!えっへん!!!!』
「ふふ、仲良しですねえ。」
「師弟が仲良しでいいことあるんですか。」
「おや、私は良いと思いますがねえ。」

可愛らしいではないですか。
…まぁ、可愛げがあるだけならいいんですがね。

「手を出すのはおすすめしませんよ。」
「おや、独り占めするので?」
「…違いますよ。勘違いしないで頂きたい。
私は忠告しているのです。
彼女にはどれ程頭を悩まされることか。」

苦しまないようにですね。
はいはい分かっていますよ。

「ですが本当にお強くなりましたよねぇ。」
『え?そう?』
「これだとビルス様勝てないんじゃないんですか?」
「まぁだろうね。」
『え゛』
「おや。認めるとは意外ですね。」

いや、此処まで来ると無理でしょ。

「君らの親の親が本気出しかけるくらいの
使い手だけですら勝ち目ないって言うのに。
普通の組手くらいなら勝てそうな気がするけど。」

流石にアレは無理でしょ。
まぁ、我々も束になれば無理でしょうから。
じゃあふらないでよ……。

「おほほ!ですが、それ程お強くなられたんですよ。」
『…えへへ〜〜〜お師匠!強くなったって!!偉い?ねぇねぇ!!』
「…ウイスさん。余り調子に乗らさないと何度言えばよろしいのですか。」
「おほほほ。それは失礼。ですが余り負荷をかけすぎるのも毒ですよ?コルンお兄様。」

そう静かに言い合うコルンとウイスにメルはきょとんとして首を傾げる。
まいなんちゃらって言ったかと言う悟空にええと悟飯が答える。

「マイナスイオンですよお父さん。どうしたんです?」
「なんかメルんところから出ているようなないような。」
『……あっまってひょっとしてこれか???』
「それは?」
『…ウイスさん降ろして貰えます?』
「ええ、構いませんよ。」

ふと気づいたメルが胸元から出したものは先程まで使っていたタクトだ。
通常時の形に出来ても良いが、どうしても杖としての効果よりも
タクトとしての形が多い為に、どうにかできないかと思って
思いついたのは魔法少女の鍵的なものだ。

丁度メルの杖は宝玉の処上部分が空洞になっている為
紐を通しても抜けない仕様になっている。
タクトの鍵が光り輝きを放っていたのだ。

『わ〜〜〜きれい!!!』
「妙な気を感じ取ってはいましたが、其方でしたか。」
『これ元に戻したらどうなるのかな。』
「えっメルいつの間に魔法少女になってたの。」
「まほう?」
『嗚呼人間の空想が創り出したものですよ。
魔術を使う少女という者が魔を蹴散らす物語の主人公を指すものです。』
「嗚呼それならば間違ってはいませんね。」
『あのお兄さん待って。』

何です違って居ないでしょう?

「この世界を悪に染め上げる魔の元から
救って頂いても違うと言うのは何故ですか。」
「えっ」
『うう…』
「ほんとに魔法少女してるじゃん。」
『でも実際いた子達を駒のように使ってるみたいなもんだし。』
「元はお前の譜面から出たもんだからな。」
「ダリア様!!!」

よ、久しいな。
ええ、お久しぶりです。

「こうして会うのは廻廊以来ですか。」
「嗚呼。」
『うう〜〜〜朱音までそういうの。』
「寧ろ白い衣服に身を纏う事態で終わるなど
此処まで来たら統一したらどうだ。」
「あっいいねそれ!衣装皆で決めちゃわない?!」
『お姉さん方決めるの良いけど男性陣もいますからね?!?!』

あと黒歴史にならない程度のものにしといて!!!!
そう叫ぶメルに、いいよいいよとけらけら笑われるが、
全くこっちがよくないというものだ。

そもそも歌曲を出すつもりはなかったのに
出さざるを得ない状態になるという時点でおかしいのだ。
計算を越えた何かが動いている。うう怖いこの先怖い。

「そういや他にも曲があると前に言っていましたが、
全部で何曲作られていたのですか?」
『…うっそれは』
「104曲。」
「は、」
『あっえっ?!?!ちょ、ダリアさん!?!!?』
「あ?違ったか?」

確か右下に番号振ってただろ。
げっ

「あれ作った日付順の番号だと思ってたんだが。」
『うっわ〜〜〜〜こ〜〜〜〜わ。僕の弟子こ〜〜〜〜〜わっ。
えっ待って確か記憶が正しければ数しか振ってなかったんだけど。』
「貴方のことを一体何年追いかけた者だとお思いで。」
『うわ〜〜〜るいとも〜〜〜〜』
「何言ってるんですか。」
「類は友を呼ぶってことですよ。」
『えっ待ってダリアさんちょっと待って帰らないで。』

なんだよと言って不貞腐れる彼女に周りに人がいることを無視してメルは声を掛けた。

『君何処まで読み解いてるの。』
「っ…そんな怖い顔しなくとも。それどっちの記憶?作曲家時代?それとも高校時代?」
『出来れば作曲家時代…!!!!』
「…貴方が生前告げたように僕が出したのは大体14年越えた後です。」

そう律儀な口調になるのは作曲家時代のことなのだろう。
頭を掻きむしった後、丁寧な口調に仕草も丁寧になる処
本当に身なりも整えていたのだろうかと思えば案外違うらしくて。

ダリア、もとい作曲家シュヴァルツ・マイン・エテルネルは
生前メルの弟子入りになる為にひたすら追いかけに追いかけた。

「嗚呼その件で言いたいことがもう山のようにあります…!!」
「あっこれはメルさんが悪いですねえ。」
「ま、無理もないでしょう。」

なんでああいう保存の仕方をしたんですかと怒り出すダリアに
メルは耳を軽く塞いでうるっさいなあと声を荒げる。

『あんなの僕のやりたいようにすればよかっただろう!?!?』
「だとしても誰が家の軒下土深くに埋めるんですかそれも三か所も!!」
「っな!!!」
『家事にあってもちゃんと保管出来てただろうが!!!』
「現物はばっちりでしたよ。ええええ、そりゃあもう完璧に。」

ただ中身は虫に食われて穴あき状態でしたがね。
おかげさまで14年程の月日を費やす羽目になりましたが。
…うぐっ。

「あと至る所に手紙を隠すのはおやめください!!
謎解きにも時間が掛かりますし、極めつけは
屋根裏に楽譜を置くなんて以ての外です!!」
「……そんなことなさってたんですか貴方。」
『うっそんな顔してみないで下さいよ…!!!
っ第一、屋根裏の楽譜なんてよく見付けたな?!?!』

アレ没作品ばっかなのに
えっそうなんですか?

「あれ世に出しちゃいましたが」
『〜〜〜〜?!?!?!?!?!?!?』
「声にならない声出してる。」
『えっまってほんとに馬鹿!??!?!?!?』
「燃やさない貴方が悪い。」
『待って待って待って何処何処何処何処何処の部分が反映されとるこれ!!!!!!!』

どんだけ作曲してたんですか貴方。
ええっと…それは、その。

『…この際時効だから申し上げますと…ざっと12年程。』
「…待って下さい。貴方享年14でしょう。」
「じゅ!?!?!?!?」
「驚いた。そんな短かったんですか。」
「と言っても首つりですよ。」

え、と周りの温度が数度下がる。
はぁと深いため息を吐いて、あのなあと低い声が入る。
ギラリと睨むそのメルに、嗚呼こんな感じだったとダリアはふと思っていた。

『要らぬことをするなと僕は何度お前に言えば気が済むんだ…!!』
「それブーメランになってますよ。」
『うぐっ…それはそれ、これはこれだ。』
「あっ良い訳。」

うるせえな

『外野は黙っとれ!!!』
「っな!!」
『というかお前まだあの時家に帰ってなかったのか。
僕は言ったよなぁ?あの時、出て行けと!!!』
「ええ出て行きましたよ。ちゃんと貴方の言う事を聞いて。」

でもその後気になって帰ったんです。
貴方の息は既になかったんですけれども。

「生暖かい感触が拭えない。この世界に降り立ってから妙に夢にでる。
貴方の指揮する演奏会をホールのど真ん中で聴く時間を。」
『っ!!!』
「僕は言いましたよね。貴方の演奏するものこそ、世に出すべきだと。」
『……だとしても、あの時代誰もが下げずんだ。』

この胸の音が鳴らす時は、何時だってタイミングが悪い。
あの日もそうだった。だから、音を紡いで書いて書いて書きまくった。

「だから僕、持ち出した時に見つけた曲をみてボロ泣きしたんです。
嗚呼同じことしちゃったって。初めて弟子で良かったって思った。」
『…なんの、』
交声曲カンタータ
『っ!!!!』
「屋根裏に押し込んだ上に一番古びた楽譜です。
何度も歌詞を書き殴った上に設定までご丁寧に添えられていて。」

聞いてと腕を掴んで続けて言う彼女に、メルは首を横に振るった。

「あの日屋根裏に隠していた楽譜を読み解いてお小遣いで額を買いに行こうとしたんです。」
『…ぎり、あ。お前、』
「その前に喧嘩しちゃってすっかり忘れててお詫びにと花束を買って、お小遣いで作った額縁を貴方に選んでもらうつもりだった。」

でも、貴方はその前に死んでいて。

「夢に何度も出てくるんです…!!人に叩かれ怖がる貴方が、たった一つのピアノの前だけ、人に戻れるその時間が!!」

ずっとずっと、繰り返される。それはまるで、喜劇のような悲劇の劇場。

「間奏中、嬉しそうに笑って話しかけてくれる貴方の笑顔が…!!曲の稼ぎ目当てで恋をしてると騙してくる女共などガラクタ同然に見えるくらいに、綺麗に飾った、本物の笑顔が。ずっとずっと、残ってるんです。」

くすぶって、その火が消えることを知らない。

「額縁を買おうと思ったのは、貴方に展覧会を誘う予定だった。」
『…クライン』
「ねぇ、本当は伝えたかったんでしょう?舞踏会に出てきた彼に、想いを告げて。」
『やめて。もう過ぎたことだから。』
「っだからそうやって音を殺してなんになるんですか!!!!」

落ち着いて下さいとメルから引きはがすコルンに貴方はっと泣きながら叫ぶ。

「だって、あんなにも…あんなにも貴方は彼の事を愛していたのに…!!!」
「っ」
『…時効だから言うけどさ。あれ、夢の中で出てきたんだよ。』

綺麗な白い世界だった。金色の額縁に、飾られた何もない場所。
たった一つだけそれを飾ろう作ろうと思っていた。
額縁に飾った楽譜たちは、確かに生かす筈だった子供達。

そんなの画家への冒涜と受け取って何ら問題ない。
だってそう思ったのは誰よりも私だったから。

『大きな樹の下で。貴方と二人で。花冠を。』
「…その頃からだったんですか。」
『舞踏会で知らない女の人が抱き合ってるのみちゃって。怖くて逃げちゃったけどね。』
「っ、」
『今なら誤解だってわかるよ。きっとあの日の貴方の事だから、私お友達作らなかったし
貴方のお友達か親戚か近所の幼馴染を紹介しようとしてたんだろうし。』
「…エフェメラル、」

でもね。それでよかった。

『あの日あの時、裏切られたって思えてよかった。』
「え?」
『だって、誰も彼もに褒めてくれなかった閉じた時間を、
この子が愛して止まずに止めなかったから。』
「…アイリスさん」
『ふふ、だ〜から名前で呼ぶなっつってんのに。』

ばっとコルンから飛び出したダリアことエテルネルがメルに抱き着いてしまう。
よしよしと笑って涙を零しながら答えるメルに、ぐずる彼女。

『耐えられなくてごめんね。何よりも辛いことを、任せてごめん。』
「っうう、っあああ」
『嬉しかったよ。君が僕を見つけてくれて。ずっとずっと…追いかけてくれて。』

この時間を、愛してくれて。
額縁の中に、葬るはずだった、
屋根裏部屋に隠した紙切れ一つ残らず出しやがって。

『馬鹿な弟子に、恵まれちゃってからに。』
「…類は友を呼ぶですか。」
『へへ。弟子譲りですから。』
「ぐずっ」
『ああほら皆いるところでどうしてこう話するかね。』
「だってメル僕のこと避けるし」

エフェメラル????
ああいや君らだって僕の状態になればそうするよ。

「ですがことがことでしょう。自業自得です。」
『うう』
「…話を戻すけど、あの時見つけて額に飾ろうって思ったのはね。
君が書いた交声曲カンタータをみて決めたんだよ。」
『エテルネル…名前見つけてくれたんだね。』
「うん。あんなに見てくれなかったのに、手紙であんな告白されたら付ける以外に他ないでしょ。」
『え゛まって私君に何描いたの。』
「何焦ってるんですか。貴方方でいう人間なら女性同士なら関係ないでしょう?」
『そう言う問題じゃあないです!!!!』
「なんでしたら僕は元々男性ですよコルンさん。」

なんですって?!?!?!?

「あと言っておきますが、額縁を買って帰ろうと相談しに色々考えてる時に自覚したんで。責任とって下さい。」
『あれまって時効じゃないの。』
「ふふ、僕はずっと君を好いているのですから。」

音を端から端まで。
ひえっ

『愛が重い愛が。』
「人の事言える身分ですか。誰が何度も繰り返して一人だけを愛すというのです。」
『うぐっ否定出来ないのが辛い。』
「ま、そこが好きなんですけどね〜〜〜〜」
「おや、この私から奪うとは良い度胸していますね?」
「一度は捨てた癖に何を言うか。」
「いいえ?彼女が言う様に彼女のご友人を、と誘ったはずですよ。」

記憶もない癖して何言うか。
…人に物を言うには態度から師匠から言われませんでした?

『やーーーーめなさいお二人共!!!!ダリア!!あんた後でお部屋きんしゃい。』
「え゛」
『そーーーんなに私のいや…僕の愛情が欲しいなら一滴たりとも零しはさせないよ???』
「あっやっべ。スイッチいれちゃった。」

ニコリと笑う彼否彼女に、問答無用とタクトを使って暴走した後、
綺麗に正座して反省の看板を首にかけられ一時間こってり現在の師匠に絞られたことは言わずもがなだ。