人がつくった夜の庭
「…しつれいしまう」
『しますでしょうがこの馬鹿弟子が。』
「…うう。」
『…全く。それで、一体どこら辺を出したか覚えてる?』
「どこって。」
そう言うのは、コルン達が捌けた後。
メルの家である二階の寝室部分だ。
メルは机の前にある椅子に座り込み
その前にダリアことエテルネルを正座させて座らせている。
『しらばっくれるな。…屋根裏に隠してあった楽譜だよ。
確かアレかなりの量があったはずだし、他に出したのは?』
「えっと…たしか、屋根裏数曲と、床下に在ったのは
復元殆ど難しくて、3曲か4曲程度だったはずだけど。」
『チッまずいな…』
「え?」
『それがもし事実ならば、
床下ABCのうちAは台所の下で一番燃えてくれる確率高くて落としたところに
あんた何故寧ろ燃やさないんだよ。
…燃やせない理由くらいわかるだろう。
『なにせアレ全部サワアに対して書いた曲だからな。』
「……マジでいってる?????」
『マジ』
「…うわーーーおっも。」
『うるさい。しょっぴかれたいか。』
「いいえ。それで?他にかいてたんです?」
『もう分かるだろうが、あの曲。
捻じ曲げて言って提出しているんだ。』
というと?
『分からないか?つまり、この世界で通用するタクトを持つ力は
この世に出たことが引き金となって力になり分散してるってことだよ。』
それ即ち。
『…すべての力を一度に使えばどうなる。』
「…え、ま、まさか。」
『そう。この世の理なんぞさらりと一回転出来る力が取れるというもの。』
とは言っても、一回転処か数百回転は出来そうだし、
そんなバカなこと考えても自分らの良い様になんて
そうは問屋が降りない処か走って逃げてしまうレベルだ。
……いや、普通に夜逃げする家があったらたまったものではないが。
「全部でどれ程かいてたんです!??!?」
『…一応数千曲。』
「あっほですか!!!!そこまで書いてなんで告白しないんですか!!!」
『うるさいなあ!!!あの状況下で告白する馬鹿がおるか!!!!
第一私は当時でいうところの大神官様から嫌われてたんだよ!!!!!』
「え」
『当時外れた音楽家が辿る末路はお前も味わったことがあるだろう。』
「…規律を守らない音は皆悲惨な運命を辿り、死神に食われるとか、ですよね。」
でもアレ迷信じゃあ。
『嗚呼事実迷信だろうよ。…でも、貴族階級は一度信じれば覆すことは百年ない。』
「…まさか。」
『舞踏会当日何故私が逃げたか。婚約を考えてたのがバレて
金貰ってこれで手切れしろって言われてたの聞いてな。』
「は」
『流石に目を疑ったけど、こっちを見られた時怖くて逃げだしたんだよ。
音を貶した侮辱罪としてと言っているのが聞こえたからそういうことだろ。』
そんな、酷い。
『人間そういう生き物だ。今は違えど、元が元。
切り替わっても、記憶が戻れば皆同じ。』
「…だとしても何故彼にばかり縋るのですか。」
『約束したからね。』
演奏会、ではないけれども。
『いつか私が音を奏でて演奏してくれたその日には。
綺麗な花冠を、この頭に飾って称賛してくれるって。』
「…それはそれで上から目線で腹立ちません?」
『ぷっ、昔は嬉しくてうんと言ったんだよ?』
可愛いでしょ。
ええ、今もですけど。
っおい。
『ほんと懲りないよなお前ら。』
「それで他は?」
『えっと…確かBがピアノの下で
後は
出来れば腐って消えて無くなれ土と返そうと思っておいてたな。
…貴方それ楽譜への冒涜してません?
「それいっそのこと燃やした方が楽ですよ。だから虫湧くんですよあの場所だけ。」
『うるせぇな。仕方がないだろ。…いつか何かになるかなって期待も出しちゃった自分がいんだから。』
「あーはいはい。」
まぁ確認できるのは幾つか出ました。
ほんと!?!?!?
「ええ。ピアノの下に隠されていた
後は
『…マジか。』
「ええ。」
「現存させました。放火魔に一度燃やされましたが
その時には現存させたいものを貴方が死んだ直後に
洗いざらい探しましたので。」
『…泥棒よりも泥棒したな????』
「おかげさまで今こうして彼等程の力を凌駕出来るものが出来てるんです。光栄に思ってください。」
というか君なんで僕の音に紛れてるの?
「なんでしょうね?其処が分からないんですよ。
それ言ったらチェレステ様も貴方の一部になって居る。」
『嗚呼確かいたねそんな奴。』
「天才と呼ばれていたお方をそんな奴呼ばわりとは。」
『私見てたのサワア以外いなかったし。」
「あーはいはい。」
『………。』
「それで、原本を作ればいいんですよね。」
『執念頼んだ。』
「お安い御用です。それくらいでしたら端から端まで完成出来ます。
その報酬ですが〜〜〜〜。」
『一日デートならいいよ。』
「一か月」
『やまって。普通に馬鹿みたいにいるじゃん。もうデートどころか家族だよこれ。』
「じゃあ一週間」
『三日間』
ちっという彼女にそれ以上は手を打たんとメルが答える。
『もう、サワアより長い時間デートするんだからね?』
「…へへ」
『あっ機嫌治った。』
「メルだって。」
へへへと笑ってしまえば、そうだと席を立つ彼女。
「それなら各部屋使っていい?一人になりたいんだけど。」
『嗚呼良いよ内側の部屋なら君の番号でよければ。』
「2番だよね。じゃ、暫く借りるよ。一曲ごとに見せればいい?」
『気分で良いよ。』
「了解。」
嗚呼ちょっと待ったそう言ってメルが言うのに何と聞く。
『ルーブル図書館って知ってる?』
「え?なにそれ。」
『嗚呼知らなきゃいい。』
「えっ待って怖い怖い怖い怖い。」
いいからいくと言ってドアを閉めるメルに、
暫く騒がれたが、ほどなくして彼女も外に出てしまう。
はぁとため息を吐いて、参ったなと胸元に入れていた鍵を出してしまう。
『…あの曲が世に出ていないなら、危険性は少ないが。』
もし別の人間として外に出ていれば…話が大きく変わってくる。
たった一つだけ、愛して愛して、捨て去った曲があった。
それは物語の絵本の悲しいお話悲劇の話。メリーバットエンドで終わる世界の話。
もしもこの曲たちが、自分の感情を注ぎに注いだ量が比例するならば。
『……敵になって相対しないことを願うばかりだな。』
捨てた感情、族の事情。
嗚呼嘲笑ってしまえる。
『親に捨てられた子供が愛情を求め書いた絵空事なんぞ。』
このタクトの中に、残っていやしないなど。
これ程迄に、胸が痛くなることはなかった。
気付かない方が、いっそのこと良かったとも言えるもので。
『(だからと言って、今具現化して何になる。)』
図書館にこっそり書いていたのを本に挟み
絶対此処誰も開けないだろうと思った
どうでも良い本の間に幾つか挟んでいったのを思い出してしまった。
思い出せば其処迄で止まる訳もなく。
気が付けばあの曲が何処かに無いかと
探してしまうこともしばしばあった。
『(こうやって忘れ去って思い出した時に後悔をするんだ)』
人間そういう生き物で。
決まりきって、そうなったら大事だったと縋り付いて泣き叫ぶ。
そうしたらどうにかしてくれると、分かっていたから。
…でも、そんなことない。そんなことある訳なかった。
だって私があの場所から逃げたのは。
『(私が貴族ではなかったから)』
った
そこまで。
「勝者悟空さんですね。」
「っしゃ!!!」
『(あれ、まてよ?)』
確かあの時間をリメイクしていた曲があったはずだ。
何だこの冷や汗は。此処は日射病になる程の太陽は創り出していない。
身体が前に落ちる。肩を取って大丈夫かという声から音が聞こえなくなった。
まただ。音が聞こえない。突拍子もなく出てくる。
「ほらみてよ。ほらふれてよ。汚い期待捨てさったのに。」
此処に在るよ、其処に居る。希望既望書き吊られて、捨て去れない。
縋り付いて残された。貴方の帰らない。ドアの前待ち続け幾星霜。
帰れない変えられない。貴方から受け取った。この光絶えられない。
消え去ったとしても気付かないふり。
「ねぇ覚えてるでしょ?気付いてるでしょ?新たに希望が産まれ創ること。」
逃げて。そう口を変え、前に足を出してから
ぐるっと回って首から使っていたタクトを元に戻す。
『もうやめてよ。もうとめてよ。醜い希望縋り付くことよ!!!』
やはり背後に人がいた。ぎろりと睨む。紫の色。
詠唱無しにタクトが変わっていることや
コルンらの音が聞こえないこと。
考えたいことは山ほどある。
でも、今は!!!
『(お前がこの世界に溶け消えた後に出てきた華神であることは間違いない!!!!!)』
どうしてこっちに来たのかは分からない!!
でも明らか異質なのは分かっていて。
メルはとにかく走りタクトを振って彼女に攻撃を入れ走る。
向こうも向こうで黒い刃を創り出し、こっちに攻撃を入れてきたので
右へ左へ避け続け、そのまま空中に花を創り出し空にへと戦いを持ち越していく。
メルは浮遊せずに、自身の身体を重力に身を任せながら戦っていく。
そうした方が指揮の振りが良いからだ。
「貴方はいない。何処にも居ない。約束なんてしてなかったの。」
違う。していた。わかっている。覚えている。
でもこれが幻想だった?
そんなわけない。そんなこと、あってたまるか。
こんな場所に白昼堂々入ってくる阿呆がおってたまるか。
音が聞こえない以上こんなにも彼女だけに集中できるとは思わなかった。
タクトを振り、水面下から牙をむく。何も風切り刃程度の刃しか出さない訳ではない。
あくまでも組手はタクトを振り続け、歌い続ける為の体力上限底上げに過ぎない。
そして、同時にこの世界に居る者達がどういう思考をして、どうやって敵を殺しにかかるか。
きっと私はこの世界が夢であるんだと認識しているんだろう。
飛んだ甘えたさんである。
でも、そうやって思い違った方が、
私の力が無限に見える様に想えて来る。
まさしくただの勘違いである。
子供の夢物語を言う方がずっとずっとマシに思える程だ。
でも、これは現実。正真正銘、醒めない夢の、成れの果てだ。
『…迎えに来てくれたんだよね。ありがとう。』
悲鳴を上げて、もう止めて欲しそうに見えるその情景。
ギラギラと燃えるその眼を上から見下げてにやりと笑みが零れる。
彼女と戦って漸く分かった。この世界に生きる意味が。
私はこれから数多の欠片をかき集め続けるのだろう。
この世界に外れてしまった、紙切れにすら載れない音を。
束ねてかき集めて、そして見紛う世界を見る。
酷い時間だ。地獄よりも煉獄してる。だって殺してくれやしない。
何度殺しても、何度蹴落としても、這い上がってまた来て叩き潰す。
ぐるぐるぐるぐる繰り返したとして同じ場所にまたまた戻ってくるのだ。
それは時計の針のように。
それは太陽の外周を走る地球のように。
春夏秋冬やがて春に戻って帰ってくるように。
芽吹いて華咲き、やがて地に、戻りまた咲き誇る日のように。
貴方も私も、何度となく、繰り返す。
もう誰も彼もを、なぎ捨てない。
最果ての時間。此処は真冬。
次の春に、戻す為。
タクトを繋いで、今走りきる!!!
『其処に居ない。何処にも居ない。約束忘れられ掻き消えた。
帰れない変えられない。貴方の帰らないこのドアの前。
縋り付く、憐れだな。こんな自分を見てくれなんてさ。』
分かってるよ。気が付いてるよ。貴方の言う事正しいこと。
それでもさ、否定する。そうでないことが良いのだと。
分かってるよ、気が付いてるよ。そんなことあり得ないことくらい。
メルは声に出しながら空を駆け走り、飛びに飛んで出てきた者の姿を捉え睨み付け一点集中でタクトを振った、が
「っな!!」
『っにゅあ!??!?』
「何がおきてんだ?!」
「分かりません。」
お前らも見えないのか。
ええ
「ですが、彼女の前には間違いなくいるでしょう。」
その姿が。映し出されて、そう思っていた者達だが、実はメルも見えていなかった。
『(其処に居る。絶対に確実に居る。)』
音もすれば、声もする。だからいるのだ。透明無色の彼女が、この目の前に。
なのに当たらない。正確には此方側の攻撃が当たらないのだ。
まるで自由にスケートリンクの中を回る選手のように。
いくら素人だろうがプロだろうが、氷の上で裸足や靴では歯が立たない。
捕まえようとしたらするりと手から消えて居なくなってしまう。
これで見えたとしても、恐らく攻撃は当たらないだろう。
この音を私は何よりも知っているし、誰よりも見てきた。
でも今来るかとは思う。もっと最後の方に来ていいと思う。
先程まで考えていた上の空が現実と化した。
この機会を逃せば、間違いなく敵として現れるならば。
『(私は貴方の事を今度こそ、捕まえなければならない…!!!)』
もう、殺すなんてしない。
手を取って、笑って歩いていくと
私はあの日から決めて此処まで走ってきたのだから。
だから此処で。貴方と二人きり。
約束しましょう。千切りましょう。
悪魔にも天にも見放され。
朽ち落ち果てた末路誓いましょう。
『どうか気づいてよ。私は此処に、生きてるのよ。』
忘れないよ、忘れないよ。貴方が生きてた記憶ごと。
この胸にも、この
忘れるなんてさせやしない。
今こそ
一人一つ道を選んで突き進んだその末路。
大きな場所に、辿り着いたこの場所で。
貴方が、泣き止むまで。繰り返してしまいましょう。
約束果たせるその日まで。存在理由此処に在る。
貴方が教えてくれたこの枷よ。繰り返そう、愛しましょう。
だからどうか安らかにお眠りなさい!
『”
【
眠れと叫んだメルの言葉が通ったのか、
メルの真正面上から透明になっていた子が姿を現した。
紫色、いや、紫が強めの壷菫色、渋く濃い紅紫色に
髪を染め、青い目を染めた子が見てくる。
ふわりと笑い、まるでやっとこっちを見てくれたと言いたそうに。
見せた後、綺麗に泡となり、消えタクトの中に消え居なくなった。
メルはそのまま下に着地し、タクトを軽く空に飛ばしてみる。
するとタクトは浮遊し、中心になって
外周に円状のものが光を飛ばしたではないか。
「っなんだなんだ?!?」
「…これは、」
『9番目の華神』
「先程の者がですか?」
『レーゾン』
そう呼べば、花緑青の光が強く光り輝き
人の姿を見せてきたではないか。
声は出せないのか、ふわふわと
メルの周りを飛んでじゃれついてくる。
ポロポロと涙を、静かに流して。
『…ごめんね、おかえり。』
そう言えば嬉しそうに目を輝かせて、笑ってしまう。
一度は捨てたというのに、まるでお留守番をしていた幼子のように、
彼女は嬉しそうに笑って、また溶けて消え居なくなった。
「何が何だかオラよくわかんねぇけど、
そいつもかしんっちゅーやつなんか?」
『ん。そうだよ。』
「全員で何人いるんだ…」
『48かける2』
「96とか最早100名近くではないですか。」
『華神だけで、ね。本当はもっとずっと沢山いるんだよ。』
そりゃあもう、無限には。
『破壊神や界王神らみたいに長生きじゃないからね。
瞬きの間に現れ溶け消えた者達だよ。』
とは言っても…
『この子らは片側私の書いた楽譜だろうがな。』
「楽譜?」
「何故そう断言できるので?」
『声だよ。さっき歌った音。
アレは私がかつて曲を書いていなかった時期に
適当で書いた未完成品の一つだった。』
何故此処に出てくるのか、もう大体察しがつく。
恐らく半分くらいはそれだろうと思ったのだ。
『未完成品は全部で六作品作っちゃってるからねぇ。』
「なんで完成させなかったので?」
『終わらせたくなかったんだよ。』
先程の
生前生きていた者を惜しむ曲が多く綴られている。
メルは終わらせたくなかったのだ。
まだ生きていると、この曲に、生きているから、死んでいないと。
本末転倒みたいなことをして作り、
放棄したみたいにして終えているのだ。
まぁ実際問題放棄したも同然なのだが。
『まさか急に現れて急にかえって来るとは思わなんだがな。
加えて攻撃がまぁ当たらなかったから身投げ覚悟で無防備にしてたけど。』
「だからあんな突拍子もなく気をさらけ出していたのですか。」
「んにゃ!!そうだよ!!!」
『そっって、ちょ、レーゾン!?!?!』
ぽんと音を立てて何処からともなく、
時空の狭間から頭を下から上に上げて
出てきた彼女に周りも驚き声が上がる。
幼い声があのねあのねと言葉を綴る。
「春の新樹、夏の果て。秋の月代、世は廻る。
帰り花の蜃気楼にて、そうして廻る廻って廻る白昼夢。」
『え?え!?えっ!?ちょ、ちょっと!?!?』
「委ねに委ねて狂ってしまえ。永久(とわ)の命(めい)。」
「ちょ、レーゾンさん!?!?」
「約束果たすその日まで。終わりに終わらぬフィナーレ結末最果てにて。」
僕らは待ってるずーっと、待ってる。
「だからどうか、迎えに来てね?
「え?そいつはこんなんちゃらじゃねぇぞ?」
「ちょっ悟空さん!?!?」
「…違うよ?この子は僕らの
『落ち着け落ち着け。』
分かったからとメルは出てきた彼女を。
ウイスは悟空を止めて落ち着かせる。
『悟空、一応名前というか名称は合ってるんだよ。
「へ?そうなんか?」
「へへん!僕らの
『まぁ名前ですらないけどね。』
だってそれは職業名だから。
え?
「嗚呼音楽家ってことですか?」
「ぶっぶーーー!!!違う違う!!
「?????」
「すみません、彼には少々難しいようでして。」
どうか気をお鎮め下さい。レーゾンデートル様。
…むう、仕方がないなぁ。
「よきにはからえ!」
『あんたは時代劇の御代官様か。』
「あーれーー!!」
なんかごめん。
い、いえいえ……。
「それにしても先程の言葉は一体なんでしょう?」
「ん?どこだろう?」
「春はからのお言葉ですよ。」
「あ〜!春は新樹、夏の果てのこと?」
「そうです。」
「
うぐっこっちに回って来たか。
どういうことかご説明をと言われ、あとずさりしつつもメルは答える。
『〜〜っ、嗚呼もう!!私が作った最初で最後の交響曲での名前です!!
春は新樹、夏の果て、秋の月代、
あの時滅茶苦茶日本文化に憧れていましてね…!!!
『留学はしていませんでしたが近所の子が
滅茶苦茶日本語達者で季語やらなにやらに
ドはまりして興味本位で付けた名前なんですよ!!
中二病溢れていて私誰にも言ってなかったのに
って何で知ってんの?!?!?』
「そりゃあ僕、楽譜の中だし。」
『そうでしたねってあれ私君入れてなかったよね?!?!!?』
え?そうだっけ?
そうじゃないの!?!??!
『待って待って未完成品ってまさか無理矢理入れた…?
いやでも私確かに完成させたのは第一楽章のみだよな????
でも楽譜が飛んで別の楽譜読めるのか????』
「いやそもそも楽譜とやらは人ですらないでしょうに。」
何変な所で困っているんですか。
いやそうなんだけど困るでしょ。
『だって音全く同じで合わせてくる敵とかどんな敵だよ。
私のこと大好き過ぎでしょ。前々前世から追いかけ続け
飛び出したところは溶けた先だよ。てやんでい。』
「貴方も混ざっていますよ。エフェメラル。」
「にしてもゴロ合わせが良くて覚えやすいではないですか。どうして其処迄恥じらうんです。」
「春は新樹。新しい季節。全てが始まりでも終わる。」
そう言いだした彼女に、メルが止まる。
「余花は夏。春は新しい芽吹きを出したのに既に夏になって居た。
夏が来た。でも終わる。夏の果てに、何を望む?願いは同じたった一つ。」
『…レーゾンデートル』
「秋は来る。月に依り代捧げても。待てど暮らせどやってはこない。願い花。」
駄目だよと言っても言う事を聞かない。
まるで伝えたいかのように、彼等に言うのだ。
「そうして廻る。冬の時間。籠りに籠って幾星霜。
待ち続けたってやって来ない。
だって此処は永遠見紛う狂った時間狭間の終わり。」
『…それでも私は其処に居ることを望んだの。』
「違う違う。全部違う。君は望んでいやしない。」
ならばどうして、全部に名付けた?音もないのに形だけ。
…それは、
「終わらすなんてしたくなかった。終わってしまえば全てが完結閉じてしまう。」
でも、その先なんて、見えていたの?いたんでしょう?
え?
「そうでもしなきゃ、言の葉綴って置いておかない。」
「…まぁ彼女の言い分は分かりますね。」
『ちょ、お師匠!?』
「もし仮に終わらしたくなければ、楽譜をそもそも作らねば良かっただけの事。」
ですが彼女の言い分からして、貴方は生前その楽章全てに名付けた。違いますか?
…いいえ。
『あっています。』
「ならばその楽譜らが貴方の力となり得るという証拠になる。」
「どれ程の作品をお書きになられておいでたのですか?」
『…一楽章と同じ要領だけど、確か題名とかだけで綺麗にしてなかった筈。』
それこそ一楽章が本来の完成形に近しいものだ。
『全部で四楽章構成で中身は12曲。序曲、零番、間奏曲、
十三番、終楽章を含めたら計17だけどね。』
「おや、それならピッタリですね。」
『え?』
「名前からしてその楽章名を含めたら計18。」
まるでかつての時間を思わせるかのように。
…ウイスさん
「その話を持ち出すということはそれ相応とお見受け致しますよ?」
『お、お師匠何もそんな怒らなくても』
「貴方は黙ってなさい!!!」
そういつになく苛立つコルンに、いい加減現実を見ればいいのにとウイスが答える。
「そうして全部消えてしまえば無意味だと。貴方も分かっておいででしょうに。」
「…っ、リキール様、帰りますよ。」
「え?あっちょ、おい!!!」
気分が悪いと言って帰って行くコルンに
追いかけようとしたメルをそっとコニックが止めて首を横に振った。
「…っひゃ〜〜えれぇ怒ってたぞ?大丈夫なんか?ウイスさん。」
「すみません、ちょっとカマをかけただけでしたが。ご迷惑をおかけしましたね。」
『ウイス…。』
ごめんねと言いたそうに頭をそっと撫でてくれるウイスに、気落ちするメル。
そう落ち込むなと言わんばかりに、先程出て来てくれた子が頬を摺り寄せ抱きしめてくれる。
書きかけではあった。でも、これが本当ならば。
『ねぇ、皆は逢いたい?』
「え?誰に、」
「メル」
『』
「流石に私でもソレは怒りますよ。」
そう言うサワアに、メルはでもと声を上げるが、周りの空気が一変する。
メルの背後に亀裂が入ったのだ。歪んだその場所に悲鳴が喉の奥で止まった。
「次は当てます」
「っちょ、お兄様!!!」
「貴方は黙ってなさい。」
『…知ってる?この曲は9番目なんだよ。』
「それがどうしたと言うのです。」
『9は苦しみや不足した意味合いを持つ。』
「何が言いたいのです。はっきり仰いなさい。」
目を細めて怒るサワアに、メルは言った。
『奇跡を起こす魔術をこの子は持っているっていうんだよ。』
「……はぁ、貴方の夢物語にはついていけません。」
『っさわ!!』
「後の者は彼にお聞きなさい。」
私も帰りますと言ってヘレスは黙ってついて行き姿を消す。