静かな声が宇宙(そら)を廻る




「…とんでもないことを話されていたんですねお兄様は。」
『うう、ごめんお話聞いてもいい?』
「構いませんよ。嗚呼言われて気になって仕方がないでしょうし。」

そう言うコニックは皆さん一度席を外して頂きますかと答える。
何故かと問えば、余り触れて欲しくない話だからだと答えたのだ。

「聞かぬふりをすればいいだけだろう。」
「そういう訳にもいかないのですよ。」
『人間知るとその情報を外に漏らそうと欲が出るからね。』
「メル様の仰る通りです。その為出来れば人を選びたい。」

分かって頂けますねと言われ、各々は一時的に其処に残ることに。
メルはコニックを連れ、自分が良くいる場所にへと戻って来た。
奥の奥、部屋の中に入れば声も外に漏れない。

『はぁ…此処なら大丈夫ですよ。』
「ふぅ……すみません、ご面倒をお掛け致しまして。謝罪は後程させますので。」
『いやいやいいですよ。あれくらい怒って当然でしょうし。』
「お気持ち痛み入ります。本当にお優しいのですね。」

そんなことない。

そうメルは首を横に振って椅子に座ると
コニックもまた椅子に腰かけた。

此処はピアノが置かれた場所。
メルはピアノの前にある椅子に座り
少し行儀が悪いも膝をついたりして話をする。

『16宇宙以降聞いていないんですが、どんな子がいたんですか?』
「…またとんでもない処で切りましたね。」
『え?』
「いいでしょう。お教えします。他言無用で。」

構いませんね。
ええ勿論。

『どうぞ?』
「…16宇宙はマールさんと呼ばれる方が司っていました。」
『へー!マールちゃん可愛いお名前だねぇ!!』
「ヴァドスさんの妹でしたよ。」
『…えっ待ってそれまさか。』
「ええ。ウイスさんの、いやメルスさんの双子の妹です。」

わぁお。とんでもない子が出て来たなおい。

『あれ待って、確かメルスさんって結構幼かったような。』
「その基準は正しいですよ。マールさんは幼いながらも
天使の心得をお持ちでしたからね。
かなり早くから天使ガイドをお努めされていたんですよ。」
『うっわ優秀過ぎる妹。』
「まぁ…色々あって宇宙は消され、現在行方がしれませんが。」

え?

『ど、どういうこと?』
「そのままの言葉ですよ。文字通り行方不明なんです。
宇宙が消滅しても天使が機能停止しないことはご存知ですよね?」
『え?ええ、確か破壊神が死んだりすると停止するだけですよね?』
「その通り。寿命やらのどうあがいても曲げれぬ事案以外で死亡すれば
天使が機能を持てるのは次の破壊神が決まった以降になります。」
『えっじゃあつまり…あっごめん。』
「こればかりは繊細な話ですからね。
彼女はかくれんぼが得意なので、
ひょっとしたら今も尚我々の話を聞いているかもしれません。」

えっなんで見えないの。

「言葉の意味そのままですよ。文字通りかくれんぼが得意なんです。
あの大神官様ですらお気づきになられない程なんですよ。」
『いや永遠に出てこない。それ。』
「ヴァドスさんの前では特に言わないで上げて下さい。
あれでも彼女、かなり手を焼いていたので。」

昔はもっと表情豊かだったんですがね。
彼女が居なくなって以来ああいう素振りでして。
…嗚呼、冷静だと思ってたら落ち込んでいたのね。

『通りで妹の様にかまってちゃんしたら寂しそうな顔するわけだ。』
「エフェメラル様??????何をしていらっしゃるんですか???」
『だって知らなかったんだもの。』
「いや知らないもなにも嗚呼いいでしょう。」

話しが飛びます。続けますよ?
別に構いませんよ。

「リッキーさんは第17宇宙を統括していました。」
『名前からしてお茶らけてる???』
「と、思うではないですか。実は違うんですよ。寧ろ真逆です。」
『いや名前変えたら????』
「そう何度か考えたらしいんですがね、彼曰くこっちの方がしっくりくるからと。」
『えっまさか彼も行方不明者って訳じゃ。』
「察しが良くて助かります。」

あっ、ふーーーーん????

『成程???』
「まぁ宇宙が崩壊して以降、姿をくらましてはいますが
自分から進んで自害する子ではないでしょうし
あの中では一番早くに出て来そうな子だと思っていますがね。」

怒っていませんし、早く戻って来てしまって欲しいのですが。
そうは上手くいかないでしょうねぇ。

「一体何処でふらついているんだか。お父様も呆れてため息を出してますよ。」
『なんか凄い家庭事情の闇を見ている気がする。』
「言えるのは貴方くらいですからね。一応サワアお兄様とご交際されているんですし。」
『ねぇ待って恥ずかしいからそういう変化球は入れないで。』
「………貴方あれ程のことをしておいて未だに照れてどうするんですか。」

色々されているでしょうに。
いやだからこそ思い出すからやめてってんだよ!!
…ま、いいでしょう。

「彼は戦いが好きではないですが案外寂しがり屋な処があるので
寂しくなったら帰って来るとは思っているんですがね。」
『何その喧嘩してお腹空いたら帰って来る三歳児みたいな考え方は。』
「事実そんな子なんですよ。割と素直で謙虚なんです。見た目と反して。」

いや凄い気になる。

「最後は貴方が一番存じ上げているでしょうし割愛しておきましょう。」
『え?』
「確かサワアさんとは同い年だったのですよね?」
『え?ああ、いやそうですが。待って原初に居たとかいうん????』
「ええ」

えっだれ???????????????

「っくくく、精々考えていればいいでしょう。」
『あっ悪い子だぁ〜〜!!!』
「ちょ、叩かないで下さい!!!」

あっそうだ。

『皆からして君はどこらへんなの?』
「と、いいますと?」
『どっちが弟お兄ちゃん?』
「嗚呼、マールさんは妹ですし、リッキーさんは弟ですよ。」
『ラストラスト』
「…少なくともサワアさんよりは上と言えば」

待ってそれって

『お兄ちゃんきたこれ!!!!!!!』
「……はい?」
『うわーーー!!!待って待って待って待って!!!
それって私お姉ちゃんお兄ちゃんとれるってことでしょ?』
「嗚呼いや、取れるも何も、義理の兄や姉にはなるでしょうが、」
『えーーー!!いいないいな!!いや〜弟と妹が
沢山いるだけでにやついてたのにまさか
お兄ちゃんというコンプできる枠がもうあったとは!!!』
「あの、ちょ、お待ちください。」

ついて行かせないつもりですか。
おおいえーー!!!

『だってお兄ちゃんお姉ちゃんだよ!?!?くそいいじゃん!!!!』
「貴方生前ご兄弟おられたのでは?」
『え゛なんでしってるの。』
「色々お聞きしているんですよ。」
『…そりゃあまぁ、そうだけどさ。』

でも今はいないよ。

『それに最初から私は独りぼっちだったもの。』
「エフェメラル様」
『溶ける前の世界よりも、もっともっと、ずーっと、昔。』

綺麗な透明広がる青い世界。
一つ間違えば深い青に染まり落ちる、そんな世界。
何処までも青くて、染まりあがったその髪色は、
まさしくその場所に居たであろう証拠にもなる。

青い目青い髪色を持つメルこそが、その場所に居たともされる。
白い髪の毛白い目は、染まる前の時間であるもの。
創り出した後は、時間を掛ければ綺麗に染まりあがったもの。

『元に戻って来ちゃっただけ。…ただ、それだけだよ。
もう天使と人の狭間には生きていないの。』
「…それでもお戻りになられた。この場所に。違いますか?」

そうだけど。

「ならそう気を落とさないで下さい。
貴方まで消えてしまわれたら、
我々は気が狂ってしまいそうになりますからね。」
『したらどうする?』
「少なくとも貴方の想い人とお師匠がお怒り狂いますよ。」
『あっそれだけは良い。要らない。本当に要らない。』

ただでさえサワアだけでも面倒極まりないのに
コルン入ったらもう地獄と言う名の煉獄ではないか。
そんな生き地獄願ってもないし見たくもないです。お帰り下さい。

「天使の名はこれで明かしましたし、充分ですか?」
『うん!充分だよ。』

そう言ってありがとうとお礼を言えば
どういたしましてと少し寂しそうに笑って答えるコニックに
メルは嬉しそうに笑ったまま外に出たのだった。

++++++++++


『…で、そんな感じなんですが、お兄さん方どうするんですか?』

ねぇ

『リッキーさんにマールさん。』
「…よく我々二人が近くに居ると思いましたね?」
『普通に勘。居ないと思った。』
「「だああああっ!!!!」」

ずっこけた二人に、いやー当たってめちゃ嬉しいとメルがにやにやして笑う。

『うわ〜〜聞いてた二人と違ってめたくそ可愛い!!!ねぇねぇ握手してもいい!?』
「別に構いませんよ。」

何時もサワアお兄様がお世話になって居ます。
えっなんでバレてるの。

「溶ける前からお聞きしていましたけどね。噂で、って感じですが。」
『待って何処まで神々の噂になってるんだ私は。』
「少なくとも古の華樹神がご復活されたと大騒ぎになりましたからね。」

その時くらいですよ。
わぁお。

「…ひょっとして隠してるつもりだったのですか?」
『いえす』
「ふふ、此方も聞いていた話と違いますね。」
『え?』
「可愛らしいお方と聞いていましたが。」

全然違う。
えっそうなの。

「ええ。思っていたのよりもずっとずーっと。可愛らしいお方で驚いちゃいましたから。」
『…褒めても何も出来ないよ。』
「良いのですよ。我々は天使ではなくなっているのですし。」
『え?』
「貴方と出会う。それはつまり、そういうことなのですよ。」

そう寂しそうに笑って言うマールに、いやだとメルは首を横に振る。
まだ百歩譲ってプラティアやフィズがなるのは分かる。
でも彼女らまで巻き込むなんて話が違う。

「人に会わなければと思ったでしょう?」
『違うの?』
「我々は貴方に出会わなくてもいい権利があったはずです。
隠れてずっと暮らしていましたしね。」
「しかもこんな、それも目と鼻の先にです。」

それもこんな、真夜中に。

「寝ていないとは悪い子ですねえ?」
『うう…だってあんな話聞いたら寝れないもの。』
「まぁそりゃあそうでしょうね。6人中2人は行方不明。他の者は自殺していますし。」
『え?』
「マールさん?」
「失礼。でも事実ですからね。彼等が出てくると言うことは、即ちそういうこと。」

貴方が願うその気持ちが、一つに戻してくれるんですよ。
…マールさん。

「ふふ、お気軽にマールとお呼び下さい。お姉様。」
『〜〜〜〜?!!?!?!?!?』
「滅茶苦茶喜びますね。」
「ふふっ、本当に可愛らしいお方なんですねぇ。」

お兄様達がとっても羨ましいです。

『ねぇ一緒に寝てくれない?!?!?!』
「ちょ」
「構いませんよ。」
「マールさん!??!?!」
「もう無理ですよ、リッキーさん。」

これ以上のかくれんぼは、ね。
…ですが

「それに約束は果たされる。」
「え?」
「必ず。」

そう言っている間にメルの頭がこくりこくりと縦に振るのに
もう寝てしまいましょうとベットに誘う彼女。
メルはそのままベットに寝っ転がればお休みと声を掛け目を閉じ動かなくなってしまった。

「随分と遅いお帰りですね。」

その言葉に二人の身体が止まる。
メルが深く眠っているからこそ、声を掛けたのだろう。
静かに凛とした声に、ええと声を掛ける。

「遅くなってすみません…お父様、いえ大神官様。」
「…一応悪いという気持ちはおありで良かった。」
「お兄様、」
「はぁ…皆さん心配していましたよ。」

一体何処に遊びに行かれていたので?
…それは。

「まぁ此処では悪いですから、場所を変えましょう。」
「彼女は」
「ご安心なさい。彼が付いてくれていますから。」

そう言えばワンと声が聞こえる。
何処からと下を見れば、白黒の犬がしっぽを振って此方を見ていたではないか。
それには驚くも、何となく内容が読めてきた。

ーあの馬鹿は俺だけで充分だから家族喧嘩は俺の見えない処でやってくれ。

きっと、そう言っているのだろう。

++++++++++

「それで、一体何故この期に及んであの場所に?」
「…これを見ればお判りになると思います。」
「っな!!!!」
「やはり…選ばれていたんですね。貴方方も。」

そう言う大神官に、貴方方も?と言ったのはマールだ。

「他にもおられたのですか?」
「プラティアさんという子がいましてね。」
「キャロルさんの双子の姉ですよ。」
「まぁ!!!」
「その子も非常に優秀でしたから、進んで出て行きましたよ。」

まぁその後親不孝なことをしに戻ってきましたが。
…。

「そんな話をするために来たのではない。そうですね?」
「…こうふらりと戻って来て
おいそれと言う言葉ではないことは百も承知ですが、
お言葉ながら、単刀直入に申し上げます。」
「新しい華が芽吹きました。」

如何致しましょう。
…ソレに関しましては

「彼女の管轄なので、彼女に委ねることに致しましょう。」
「彼女にって…まさか!!!」
『人の布団でごたごたするからこうなるんだよーーー』

起きたんですか。
起きたも何も時間を進めてくれたからね。

『あんっっのクソ犬が。誰が外の時間と中の時間を一時間1分にしたんだ馬鹿。』
「此方でいうと7分程度で起床されたのですね。」

そういうことです。

「そちらの子は?」
『名前』
「ノインのレーゾンデートルだよ!!レーゾンでもいいよ!!」
「のいんって?」
『ドイツ語で9って意味を持つんだよ。第9番目。…君らが何処の位置かはコレに入れてみなけりゃわからんけどね。』

そう言ってメルは首から下げていたのを
タクトに変えて彼等に向け腰を下ろして答えるのに
行儀が悪いですよと声を掛けたのはコルンだった。

そうは言ってもこっちもこっちで意味があるのだ。

『下の者に頭を下げてぺこぺこしてたら掬われ落ちたらたまったもんじゃないでしょうが。』
「っ」
『ま、そんな話はどうでもいい。それで?君ら二人はいいの悪いのどっちなの。』
「まさか剥奪を考えて?」
『嗚呼言っておくけど私其処迄頭良くないので。
そんな貴方達に眠っている種を綺麗にとり攫って天使に戻す〜だなんてことは考えない様に。』
「では何故」
『君らが選べる方法は全部で3種類。』

意外と多く見積もりましたね。

『1つ。全王様に直談判して天使に戻してもらう。
そう例えば……宇宙を元に戻す、とかねぇ?』
「可能なのですか!?」
『今は全王様と協力したら普通に戻れると思うよ。』
「…他は」
『2つ。配下に加わること。レーゾン!!』
「なぁに?」
『君この子達見れる?』
「え?」
「みえるよお?」

君は何処の子?

「樹の子夏の子貴方の子ーーー!!!!」
『嗚呼じゃあ夏の果てに居るのか。それこそ話が早いな。』
「何の話ですか。」
『だから6人全員私の華神になれば一応力を持つことが出来るって話だよ。』

勿論輪が消えることにはなるが。

『あと人間の情がとにかく付きまとうことになる。…正直これは余り取って欲しくない手段だけどね。』
「替えはないよ?出来ないよ?」
『出来る。』
「それは模倣。偽造したもの。本物には、敵わない。」
『…嘘も真。年月を加えたらそれは本物にもなり得るよ。』

そう言い切るメルに、そうかと言って軽く落ち着くレーゾンに最後はと声を掛ける。

『自分から消滅する。』
「…それが救済だと。」
『勿論ただの消滅じゃあない。ちゃんと種を綺麗に取り除いてからだけどね。
そうでもしないと君らが人間に生まれ変わった時華神に成り代わってしまうからねぇ。』
「私は構いませんよ。」
「っマールさん!?!?」
「二番目で。」
『……ほんとうに?』
「ええ」
『いいんだあ?』
「構いません。」

その為にも、外に出てきたのですから。

『では問おう。それは何の為?』
「それは初夏の為。終わりに終わらせたくなかった、余花の先。」
『…それは何の種?』
「空を願う、箱の中の根の種です。」
『…何を願う、何を望む?』

代償唱えて、さぁごらん?
願わくば、

「”彼女らに、もう一度会いたい”」

そう言えば、白い髪色がうっすらと紅を灯し始める。
紫色の目が桃色に光を灯し、天使であった衣服が白に身を染める。

輪は消え、その代わりに花が一度胸に咲き誇って散っていった。

『箱根空木、か。良い花だね。』
「お褒めの言葉光栄に思いますよ。…我が主。」
『主だなんてそんな恐れ多い。』
「えー?違うの?」
『なんでお前はそう机にだらんと入って来れるんだ。』

私ですら我慢してるのに。
したいのですか。

『してもいいの?』
「しないで下さい。」
『え〜〜それで?君はどうする。』

そう言って目を向けた先は、

「します。」
「リッキーさん」
「いいんです。どちらにせよ、花は既に咲いていますが。」
『…願いは。』
「”彼女らに会いたい”…その子と同じです。」
「えっ奇遇だね!」

え?

「僕も同じ願いだったの!!」
「…つまり同じ願いが夏の果てに置いてのルール?」
『だろうね。…あ〜分かった分かったから君はお帰り。』

ヒュウガミズキという枝垂れる黄色い花を灯した子が
白い髪色や紫色の目を金色に書き換えた辺りで
えーという否定の声が机の上から出てきた。

青い目が此方を見る。
壷菫色の、紅紫がやけに目を引いてくれる。
長い髪をいつの間にポニーテールにしてから三つ編みしたのか。


「僕も君に会いたくてお願いしたというのに?」
『え?』
「へへっ!ねぇねぇ!お名前なんていうの?」
「…えっと。」
『…各自でお決めして良いですよ。』
「では、マールと申します。」
「リッキーです。」

あっそこ名前変えないんですね。