薬指のつけ根
前回のあらすじ
リキフェル爆誕
という訳で。衣装チェンジの状態にいやお前も
何着持っているんだとそろそろ声がかかりそう。
エフェメラルは緑色のドレスを身に纏いつつタクトを指揮台に置く。
『ええ!?!?なんで!!!!』
「いやだからどう考えてもアンダルシア様が後ろでしょ。」
「それにお主にはもっといい大役があるじゃろう?」
『えっ待って。』
「お願いエフェメラル。演奏して欲しいの。」
うぐっと胸を掴んで軽く蹲りそうになるメルに
流石に上目遣いでウルウルした状態でお願いされたら
メルでなくても誰でも縦に首降ると思うんですよ。
『いやだとしても過度な演出は許可出てなくてですね。』
「今日限りなら構いませんよ。」
『大神官様?!?!??!!?』
「ご結婚おめでとうございます。フェルさんそしてリキールさん。」
「ありがとうございます。」
「こんな大きな式をして頂いてありがとうございます。」
いえいえとニコリ微笑む彼もまた衣装が違うのは気のせいじゃない。
『あのーーーー大神官様?誰にそそのかされました?』
「おや、違いました?」
『違わないから困ってるんです。なんで貴方神父の恰好しとるんですか。』
そう、大神官がちゃっかり神父服着てご登場してるんだよ。
もう一周回って冷静になれそう。ってかなってる。
「だって神官なら神父をとなるでしょう?」
『いや相場が決まってるみたいに
あたかもさも当然のように言わないで下さい。
リキールさん普通に死にません?』
「おや、私の前で愛など誓えないならしないも当然でしょう。」
『悪魔みてぇなこと言いやがるぞこいつ。』
「もう!エフェメラルったら!!」
「ふふっ、構いませんよ。その代わり、演出、宜しくお願いいたしますよ?」
水面高校吹奏楽部の皆さん。
…マジで言ってる?
「だとしても人数が足らない。明らか指揮取られたら六人は流石に。」
「席はちゃんとご準備していますよ。」
「えっ嘘いや…マジだちゃっかりなんで」
「全部で48作っています。」
「待って待って待って待って待って待って待って待って」
『…まさか私持ってるの水面高校吹奏楽部全員とか言い出さないよね?』
「在り得そうなこと言わないで。」
そうちらりと会場の中を見た面々がすっと顔を戻して慌てふためく。
だとしても楽器どうすると言えば、其処はお任せをと声がかかる。
「我々が勢力を上げてお作り致しました。」
「界王神の皆さんじゃないですか!!!」
「えっなんでう〜〜〜〜わっすっっっご。」
「…これでよろしいのですか?」
「ええ、大変助かりました。ご協力ありがとうございました。」
そう言うのは、緑色の肌に白い髪の毛の男性。
『初めまして。ザマス様。』
「様はおやめください。…お噂はかねがねお聞きしております。華樹神様。」
『エフェメラルとでもお呼び下さい。』
「ですが…せめて様はつけますよ。」
宜しいですか?ええ。
これザマスとゴワスが言うも良いのだと答えた。
『私もザマス様ってお呼びしますので、ね?』
「はぁ…分かりました。」
「破壊しない?破壊しない?」
「あの者達も知っているんですか。」
『あはは、まぁ色々と此方もお噂はかねがね…。』
苦笑いで答えるメルに、しませんよとザマスがはっきり声を上げる。
「確かに人間が憎かったですし、未だに過ちを犯す人間は憎いです。」
「ザマス…」
「ですが、それすらも覆し、ましてや人で在る状態から神へと変貌を遂げ
数多の者達を従える神がいるとあれば…壊すのは流石に勿体ないと思いまして。」
『あっ待ってシフトチェンジご希望されてる?????』
「私を引き入れるなら今のうちですよ。」
『待って枠ない枠ないから。』
「ないなら作る迄でしょう?」
お兄さん?!?!?!?
っふふふふ
「ま、作れるだけは作りましたよ。確認お願いします。」
「いやまさか結婚式作るって一日でよく作ったよな。」
「一応言っておきますがこれは三時間ほどで作りましたよ。」
「…あんた馬鹿なの?」
「あ?」
『褒め言葉ですよザマス様…。』
そう言えばそうなのですか?と声を掛けられる。嗚呼そうです。
というかどうして私の話には耳をそう傾けられるのだろうか。
「貴方の気が物語っているんですよ。」
『きぃ????』
「…このような方なのですか?」
「ほほ、そうだよザマス。このようなお方だ。」
『???????』
「…ま、大体察しました。確かにこれは知れば知る程
こんなどうでもいい世界を破壊するのには呆れてしまう。」
神の怒りに触れたくないしな。
…?????
「ま、話は後だ。とりあえず確認されてみては?」
『えっええ…ねぇザマス様?』
「なんです?」
『本当に誰情報これ。』
そうメルが手に取ったのは一本のアルトサックスだ。
そのベル状に広がった場所の下には、一つのマークが彫られていた。
それだけではない。
『待ってこれ牡丹?嘘でしょ???本気で言ってる???』
「え?」
『ねぇ待って誰この子に花言葉言ったの。』
「はなことば?なんだそれは」
『え????』
ザマスは知らない。牡丹も、その花言葉も。では一体誰が?
ふわりと甘い香りが会場に止まる。その匂いに、ばっと振り返るも誰も居ない。
ただ、澄んだ水の心地よい感覚に、嗚呼と声が漏れた。
『…そっか、貴方の方か。』
「エフェメラル様?」
『なんでもないです。どうやらこれは我々へのプレゼントだそうで。』
「何方からですか。」
『貴方達が知れることのない、最初で最後の神様ですよ。』
「…左様ですか。それはそれは、とんでもないお方から頂いちゃいましたね。」
何を捧げればお許しになられるやら。
音を捧げましょう。
「え?」
『水面高校吹奏楽部はいしゅうごう!!!!!』
そう言って距離を取って手招きする良いか皆と円になってしまう。
『演奏会するってさ。』
「エフェメラル…」
『えへへ…私も楽器演奏したいんだけどさ、指揮者出て来てくんねぇかな?』
「…貴方が望めばきっと。そのタクトを代わりに取ってくれるでしょうね。」
『ならば、掛け声、出来るね?』
メルはにやりと笑った後、息を吸った。
手を叩いた彼女が、笑ってくれてる。
『水面高校吹奏楽部ーーーーーーーー!!!!!!!!!!!!』
その大声に会場に居た者達のざわつきすらも消え去った。
『舞台は式場!!聖なる場所を奏でる我らは神の遣い!!!』
「天に選ばれ愛に誓いし彼女らの祝福誘う音合わせ!!」
そう叫んだのはリーダーでもあるダリア、否朱音だ。
「水面高校吹奏楽部掛け声用意!!!」
「なんだなんだ」
「何が始まる」
「しっ黙って。」
周りがざわつきだしたのを指一つで止めると、
朱音がおめぇらあと声を上げた。
「やる気はあるかーーー!!!」
「「『おーーーー!!!!』」」
「声出してけーーー!!!!」
「「『おおおおお!!!!!』」」
そう叫んだ後、朱音が先導して足を前に出し、
円陣を組んで下に向かって声を張り上げた。
それと同じ動きをメルらも組んでやってやる。
楽器を持っての状態でだ。
「…っ、響くは
「「『
「
「水面の様に!!!」
「「『清らかに!!!』」」
「お空の様に!!!!」
「「『高らかに!!!!』」」
「「「『感情静かに包み込め!!!!!』」」」
『
「「「追いかけ
『僕らの音楽「「「終わらせない!!!!」」」』
轟け欺け酔い狂え
約束果たせし、その日まで。
「一人は!!!」
「「『すべて』」」
「すべては」
「「『一つ』」」
「僕らは」
「「『水面』」」
「笑うのは」
「「『彼等』」」
『願いは同じ』
「「「想いは一つ」」」
『約束果たしに?』
「「「いざ
『「あじゃあじゃ〜〜〜〜〜???」』
「「「『ふぁいてぃん!』」」」
うおおおおおと言う声にうっしいこうと声が上がる。
すると全員ではいと歯切れのいい声が出て一同急いで準備に取り掛かったではないか。
「なんですかあれは…」
「一種のまじないですよ。」
「え?」
「一つに合わせて、一つだけを見据え先を走る者達。」
「それが彼女らだと。」
「時期に分かりますよ。何故全王様が彼女らをお許しになられているのか。」
そして、この先がどういう結末を迎えるのかも、ね。
++++++++++
そして、メルが立ち尽くす指揮台の場所へと戻る。
ふぅと息を吐いて、持ち場を確認した。
先輩がいる時点で人数が大きく変わる。
毎年満員でださないうちのチーム。
何故か綺麗に48人で絶対合せているのだが
卒業していった者達を含めれば全部で60名。
対してメルが今華神らと出会った人数もまた…60名程であるのだ。
原初から始まり、引継ぎ、最果て、終焉と来て春の新樹ときている。
そこだけでも60名いるのだ。このままいけば定期演奏会くらいには総勢約100名の演奏会とか出しかねないなと思って笑いが混みあがって来た。
「何笑ってんだこの馬鹿。」
『あいたっ』
「ほらさっさと席つく」
『もーちょっと待って!??!つっきーーーじゃん!!!!』
「あああああああああああ」
「我らがつっきいいいいいい!!!」
「ばっ馬鹿お前ら煩い!!!!」
そう殴る彼に酷いパワハラーと声が上がる。
ぶーたれるも、煩いお前らが悪いと声を上げる。
「全く、急に呼ばれてきたらなんという有様だ。」
「だって我らがアイドル副顧問の月城先生見たら叫ぶの恒例行事なの先生知ってんじゃん。」
「なにさも当たり前のことのように言うんだ宮間。」
「あーーなっつかしいいいいはげそおおおおお」
「っくくく、相変わらず変わっていないなお前達。」
笑う顧問に、皆してクスクスと笑う。
「だから言ったでしょ?シラトン絶対来てくれるって。」
「シラトンってだから誰がニラトンみたいな言い方しろっつった。
「えっ待って私の名前も忘れてる?」
「
「だからどうしてお前は先生をつけねぇんだっつってんだよ!!!」
先生言ってるじゃん先生って!!!
其処じゃねぇ其処じゃ!!!!
「だーって我らの美波ちゃんちゃんこだよ?射止めて置いて何言ってんだか。」
「っあ?!?!?!?」
「そうそう。でもマジでビビった。まさかほんとにガチで結婚するとは思わなかった。」
「演奏会ついでに後で隠れて作っちゃう?」
「既に聞こえているから意味ねぇし、人様の式場で何変なこと言ってんだお前達は…!!!」
『あはは、ま、まぁまぁ追い付いて下さい。』
「千代木さん、ソレを言うなら落ち着いて下さいですね。」
『……はっ!!!!!』
…お前もほんっっっとうに変わらないんだな。髪の毛とかは色々染め上げてるけど。
あっそうですね????
『あれそうだったっけ????』
「…ほんと、良いかお前ら。全力で演奏しないとたたっきるぞ。」
「うわーーーえぐーーー」
「先生そんなことここでいうんだー」
「お前達はどうしてそうも変な所で律儀に引くんだ其処じゃないだろ其処じゃあ!!!!!」
怒りが爆発している処で周りが笑いに包まれる。
腹を抱えて笑うメルに、仲が良さそうで何よりだと大神官は微笑んだ。
「すみません、無理を言って。」
「嗚呼いえいえ、此方こそせがれが世話になっています。」
「せがれて、分かるの。」
「いえいえ。とても仲が宜しくて毎日楽しいですよ。」
「わかるんだ。」
「おい千代木ハウス。」
『はぁ〜い。よーしよしよし、いい子だからお口チャックしようか〜〜〜。』
嗚呼、彼女が落ち着かせ役だったんですか。
逆の様に見えるでしょう?意外とアレなんですよね。
「千代木は昔から周りを良く見る子でしたから。こっちも何度助けて貰えたことやら。」
「嬉しいですか?」
「ええそりゃあもう。…噂を聞いた時は夢かと思いましたがね。」
いや、夢の中とでも言いましょうか。
「きっと悔やんでいたんです。彼女らをきちんと向かわせられなかったから。」
「白鳥さん…」
「この機会を存分に、使わせて頂きます。ありがとうございます。」
「…楽しみにしていますよ。」
ええ。そう言って指揮者が戻ってくる。
その目の前には、白い棒のタクトが置かれていて。
ぱっと右側を見れば、どうぞと言いたそうにニコリと微笑み手を差し伸べるメルが座っていた。
いつの間に座っていたのやら、楽器を首から
下げていたリードに取りつけ場所の調整をし始める。
譜面台の高さを隣の人と合わせつつ、
ホルンの方、メルから言えば右側奥から出てきた
ダリアこと朱音がコソコソと声を掛けていた。
それに続き一番外側に出ているであろうエリーゼこと
先輩の譲原が指を指して指示を出せばこくりと頷き
メルと朱音が移動し始めた。
メルは手前、つまり木管側に。
朱音は奥、つまり金管側に位置し他の者達に指示を出しつつ譜面台と椅子の調整。
それに合わせ指揮者が指を出して指示をしている。
的確に移動させ、準備を整えているのだ。
この広い会場の端に置かれた場所だとしても、
その広さはホールの範囲とそう変わらない程場所を取っている。
広ければ広い程、音の届きは奥まで届かすにも一筋縄ではいかない。
技術面は勿論音がきちんと合わさらないと遠くまで響かないのだ。
極端な話音が大きければ遠くまで響く。
でもその音を大きくするには一つにならないといけない。
音程を取り、手と手を合わせて一つにするからこそ想いは一つに。
遥か彼方の遠い先まで響かせられるというものであって。
一人では絶対に、辿り着けない場所であることを
この時エフェメラルは悟っていた。
「古都葉、準備出来たぞ。」
『え?あっああうん。わかった。』
「…なぁ、お前確か前に迷子になってたって言ってたよな?」
『ええ?』
「あの時の様に願えば、きっと続きが見れるぞ。」
そう言われて背中を叩かれ、頑張ろうなと言われたリーダーに
ううんと生返事を返して席に付く。何か言われた?と先輩に言われたら
ちょっとと答えを返していると隣に付いた後輩に声を掛けられた。
「頑張りましょうね、千代木先輩!」
「そうそう、頑張りましょうねせーんぱい!」
『ちょ、
「しーーーー」
『んぐっ』
「…良いかお前ら。水面高校の水面は一体何から来てると思う?」
え?
「かなりの広がりがある水の表面をみなもという。他に読み方があるのを知っているか?」
『(知らないと言うかなんで今更)』
「…ミノモというんだ。ミナモの別の言い方。」
そう、それは全てが繋がる物語。
「実の者、皆者、真の者。やがて実り成果を上げる子供達を、広く清らかな水面の様に
どうか心穏やかに、素直にすくすくと成長しますようにっていう先代からのお伝えだ。」
『みのもの、しんの、ものって…』
メルが続けて詠唱をしている、その言葉に酷く似ていて。
いやそんなわけがとちらり指揮者と目が合う。
何処か、見たことがある気がして…そんな気のせいだ。
どうか気のせいだと言って欲しい。
彼がいや、彼女がずっと、私を見てくれていたなんて。
そんなバカな話があってたまるものか。
「…良い子に恵まれて、本当に私は嬉しいんだよ、エフェメラル。」
『レクトル?』
「さ、始めよう。」
結婚式の、行進曲を。
そう言って姿勢を正す。それに引き続きメルらも姿勢を正して出番を待つ。
さぁ、奏でよう、轟かせ、響かせ、そして、その一瞬を皆で味わい酔いしれよう。
祝福奏でる、無限の時間を。
「それでは新郎新婦のご入場です」
その言葉で指揮棒が上に振り上げられ、下に降りた直後だった。
今まで居なかった席にぱっと人が現れてきたではないか。
演奏し始めて驚き音を止めるなんて芸当はしない。
タカタカーと飛ぶラッパの音に、徐々に音が重なり響きだす。
正直譜面読みなんてしている暇等なくて、
初見で読み込んでいるに等しいこの演奏。
音を外せば死ぬも同然だと思いつつ、緊張感をもって
メルもまたサックスの黒い口元に舌を巻き込んで音を響かせた。
まぁ此処で終わらせるなんてわけもなくて。
『(えーぐいえぐいえぐいえぐいえぐいえぐい)』
結婚式の曲は本当に長い。新郎新婦が席に付くまで演奏続けるのだ。
加えて長い衣装な上に広い部屋なので軽く10分は演奏し続けなければいけない。
普通にブランクがある状態で急にその長さって普通に鬼畜だからね?!?!?
唇の感覚が痛くて堪らなくなるも、堪えるしか他ない。
だって折角出会えて喜び合う二人なのだから。
この子もきっと、祝福に祝福を重ねてくれていることだろう。
チャペルの様なこの場所で、愛を誓い前を進み駆け走る彼等の邪魔などさせる訳もないのだ。
音が合わさり、繋がり架け橋となる。この時間が何よりも好きで、どんな時間よりも来て欲しいと思っていた。
皆がいる。音がしている。此処にずっとずっと、居てくれたんだ。
それが何よりも嬉しくて、前が見えなくなりそうになっては意識を変える。
休符は休憩時間なんかじゃない。
他に音を渡す為のただの停止しただけであって。
ルールは常に、守り続けるべきであるのだ。
新郎新婦が着席した後、一息つく。
息を吐いた後、ツンツンと肩をつつかれ横を向けば
お疲れ様と声を掛けられたので、其方こそと互いをねぎらう。
演奏次するのかと聞かれたら、流石にしないのではと思うも
楽譜あるんですがと言われて気付いてページを見てしまえば
大きな野太い声が出て口をばっと手で覆い軽く身体を前のめりに倒した。
まってごめん本当にごめんなんでもない。
わけでもない!!!!!!