愛撫を残して去る
あれからある程度の作戦を練った次の日。
メルは身体を起こし、身支度を整える。
寝ている時は大体ルトラールが隣に居てくれている。
こうやって寝るのは正直初めてかもしれない。
『昔はあんなにせがんでたのになあ。』
いつの間にか巣立っているらしい。
そんな気持ちすら、失せているのだ。
洗面台で顔を洗い、身支度を整える。
おはようと呼ばれておはようと言い返した。
欠伸をしていたら寝れた?と声が掛かってくる。
『うん。ある程度はね。』
「そっか。二日目って確か運動会だったよね。競技内容は?」
『一応皆に渡してる。出場人間は華神らが全般だからね。』
「三日目は?」
『ひふふぁふはいふほ』
皆入るよ。そう言うメルにルトラールは流石に自分らだけではないかとぼやいた。
『…っぺ。一応悟空ら人間を何名か居れて出す選抜式試合も執り行うし、推薦式試合もする。』
「なんだいそれ」
『選抜は文字通り選び抜く。推薦もまた同じ。』
「誰に選ばせるの。」
『選抜は天使らに選ばせるよ。推薦は全員で。挙手制かな。
無理なら大神官様が適当に声を掛けさせる感じで。』
「成程。全王様に敢えて言わないことでわくわくさせていると。」
そういうことだ。
「君も考えたねぇ。余り手を出し過ぎると文句言い出すよ?」
『その時はまた別のことをやれば良いし、もう一度同じことをすればいい。』
「おや狡いねぇ?…もう一度なんて何処にもないのに?」
『似ているようで違うからこそ、味を楽しむというもの。』
君も言う様になったね。
「こりゃ戦うのが楽しみだ。」
『えーととさまとはやだなあ』
「そんなこと言って。ニヤニヤしてるくせに。」
『うぎゅ』
「っふふふ、ささ、食事取りに行こうか。」
何だかんだ言って朝食場所も全て移動式。
とは言っても、何故エレベーターに乗れているかというとだな。
「うわあああああああああ」
「最上階に半円上のドームを作ってしまうとは…考えたな。」
『発案私。』
「だから褒めてるだろうが。」
「おはようございますエフェメラル様ルトラール様。」
「おはようウイス君。」
おはようお姉さん
嗚呼はいはいおはようさん。
『だって褒めてくれないでしょ?何時だって外ばかり行くんだから。
こっちの取得の事も考えてくれたっていいのに。』
「そうは言うけどね。あの時君に構い続けていたら
華神らがどうなったか分かって言ってる?」
「あれ何喧嘩?」
『違う。も〜そんなこと言う話じゃなかったでしょうに。』
話は終わり。私周りに挨拶してくるから。
嗚呼ちょ、エフェメラル!!!待ちなさい!!!
「全くもう…ごめんサワア君、後頼んだ。」
「いえいえ、ではまた後程。」
「また言ったんですか?」
「いや言ってない。」
「言ったんですね。」
「…ルメリアお前までいうのか???」
「だって貴方が逆の言葉ばかり言うからあんなひん曲がったんですよ。」
「ひん」
君ねぇ。
「神様だからってそうプライドばかり高いと毛嫌いされますよ?」
「君も神様じゃないか。」
「私は一応人間の気持ち持ち合わせていますから?それに母親ですし。」
「それ言い出したら僕も父親なんだけどな。」
「案外神様のとこもオラたちとかわんねぇだべかな?」
そう言うのは悟空の妻であるチチだ。
悟天らが世話になったと声を掛けてきたが
それはエフェメラルでありこっちではないと答えてやる。
するとそうだよーとトランクスらが声をかけた。
女性でそれも赤子がいることを言うので、そっと口に手を当てた。
余りそういう言葉は言わないようにと言ったウイスにはぁいと声を出す。
「え?あか、え?」
「あれ、言ってなかったの?」
「言えなかったと言うよりかは単純にお声掛ける前にこの試合が始まったのではないですかねぇ?」
「いえ、というよりかは言えないに等しいと思いますよ。」
「コルンお兄様。」
おはようございます。
ええ、おはようございます。
「して何故そう思われて?」
「あの子のことです。どうせ孕んでいることを知れたら絶対安静だとか言われて試合中断されると思っていたのでしょう。全王様に仰せつかったというのもあって張り切っちゃっていましたからね。」
「待って情報が追い付かない。待って。」
「聞かなかったことにしておいておきましょうね。」
「情緒が無理。待って無理。」
「少なくともサワアさんを殺したらあの子一生口きかないですからね。」
もっときついこと言わないでよおおお!!!!ねぇ頼むよ〜〜〜!!!
おほほほほ
そう笑いながらも引き連れ何処かに行く彼等に
置いてけぼりを食らっていたチチらもウイスの言葉により
第7で集まって食事をすることにしたのだった。
++++++++++
そんな中、メルはと言うと。
「…お前本当に喧嘩してるのか????」
『ふぁんふぇ。』
「いや、此処で食っていいんだったらいいんだが。」
『んぐっ…だって此処一番落ち着くもん。』
「それさらっと貶してねぇだろうな???」
「ろ、ロウやめよう…?」
そんな喧嘩腰って駄目だというシドラに
嗚呼と声を張るロウさん。此処は第9宇宙の場所。
メルはというと、ルトラールらと
食事を摂りたくないが故に此方へ避難してきていたのだ。
『だって今ととさまに会うとまずいもん。』
「なんでだよ。」
「嗚呼ひょっとしてややこがいるのバレちゃいました?」
「あ?言ってなかったのか?!?!」
『うん。』
「あちゃーーーー」
「駄目なのか?」
「そうですねぇ〜。我々らの最後ですし。」
通常でしたらもっと早くになる筈でしたが。
「どうやら訳アリのようですからね。」
『…だってととさま絶対叱るもん。』
「エフェメラル…お前。」
『サワア虐めちゃうし、かかさまならいいかなって思ったけど。
でもそれだとととさま独りぼっちでやだから。…だから。』
「あ〜〜〜だからと言ってこっちに避難して…ああもう好きにしろ!!!」
しょげた顔はまさしく見捨てられそうに寂しく見つめる子犬そのものである。
何て健気なんだとおいおい泣く狼たちには流石のメルも苦笑いで声を掛けた。
『そんなことないですよ。ととさまには沢山感謝することがあります。
私をかかさまと一緒に助けてくれたものですし。』
「お前さん良い奴だな…」
『そう言ってくれる貴方の方が良いお人ですよ。狼さん。』
「あんたが言ってくれる狼さんも良いが、俺はベルガモっていう名前がある。」
『わわ。ベルガモさん。』
「さんなんぞ付けなくて良い。」
『じゃあベルちゃん?』
「ぶっ」
「わっきっったねぇなおい!!!」
きったねぇなおい!!
…メル様、頼みますから覚えないで下さい。
『ええ?あっメル知ってるよ?えっと、悪い言葉悪い言葉。
あっ!…口の中手突っ込んで奥歯ガタガタ言わせんぞ!!!』
「ぶっ」
「とりあえず誰に聞きました????」
怒らないので教えて下さい今すぐに。
あわーーーーー
『アニメ?なんかでみたよ。あっ人だったかもしれなくもーーー』
「お人なんですね。誰です?第1とかですか?それとも楽譜?」
『あわわわわわ助けてろうううううう』
「知らん。」
あーーーんみすてないでーーーーー
そう半泣きのメルに、こうやってみるとと声を掛けられる。
「ほんっっっとうなんですか?」
『ん?』
「ああ、そうですよ。事実です。」
『何教えたんですか。』
「貴方がお強いことですよ。」
『待って誤情報。』
「今更何を仰られる。」
我々を軽く蹴飛ばしたりする癖に。
えっ
「…嬢ちゃん、あんた思ったよりも豪快なんだな。」
『違いますよ!??!?!?この人が嘘つきなんです!!!!』
「おや、でしたら見当違いでしたか。私は嘘を付いているつもりはなかったのですが。」
『すいませんでした僕が嘘つきですごめんなさい!!!』
言ってることがころっころ変わるのに
クスクスと笑いいえいえとメルの謝罪に応じるモヒイト。
だってきいて?ととさまったらこうなんだよ!?
そう言うメルに「ええ、ええそうですね。」と答えている処見ると
なんだか笑いが込み上げてくるものであって。
「本当に面白い嬢ちゃんだな。今度うちに遊びに来るか?」
『えっいいっモヒイトさん???』
「流石にそれはどうかと。」
『あう?』
首を傾げるメルだが、メルがどれ程自分らの宇宙を買ってくれるのは良いが
それでも治安というものには黙っておれない。
ましてやメルは世界が溶ける前に一度痛い目に合っているのだ。
似たようなことが起きたらそれこそ今度こそ宇宙が消え失せることになる。
最初は自分も其処迄持ち宇宙に対して興味などさらさらなかったが、今は違う。
メルが、この小さな子が、ありとあらゆる数多の手を見て自分の方に寄って来てくれたのだ。
師匠の宇宙でもなければ、想い人の宇宙でもない。
全く関係も似つかないというからこそ、素直に嬉しかった。
平等に見て、メルが良いと言ってくれたのだ。
何処までも清らかで澄んだ気を持つ、お子こそが。
「もう少し宇宙レベルが良くなってからにして頂きたいものですねえ。」
「えっどれくらい?」
「とりあえず9以下はおいでになられない方が宜しいかと。」
『待ってほぼほぼ全部じゃん。』
ねぇ酷くない?!?!?!?
『第一あの基準値おかしいって。絶対高い方だって悪い奴一定数いるから。』
「おや。全王様の格付けに不満が?」
『そういう訳じゃないけどさ…人間良し悪しを分かったとしても働きアリの様なものだし。』
「あり?」
『一定数は休んで一定数は動く種族のことを指すんですよ。
何時か戦えるその日まで休息を適度にとるように。
人間も良い心の時があれば悪い心の時だってある。』
紙一重だからこそ、人は面白いのだ。
『新たな場所に境地で息する子達の様に、ね。』
「…全員が全員、貴方の様なお考えにはならないのですよ。エフェメラル様」
『わかってるけど…んんっ!!!』
「よくわかんねぇけど、それ好きならこっちも食うか?」
『えっいいの…?!?!!?!?』
そう言って食器からすっと取り出してくれた彼に礼を言う。
黄色い彼はいやいやと笑って手を振ってくれるので
嬉しくなって手を振ってやれば固まられた。あれ????
「エフェメラル様駄目ですよ。そうホイホイと手を振らないで下さい。」
『なんで?!??!?!??』
「あんな子いるのか…」
「やめとけ絶対やめとけ。」
「頼むから一つの気持ちで宇宙を滅ぼすことをしでかすなよ弟よ。」
ぽっと頬が赤らむ彼に、流石にと周りが騒いで落ち着かせる。
メルを狙えば最期。恐らく天使一人では済まされないことになる。
中立とはいえど、それはあくまでも善悪に興じなければである。
逆に言えば其処さえ破らなければ何でもありなのだ。
加えて全王様にちょっと言い方を変えれば何でも出来る幅が一気に増えるというもの。
最悪消滅だってありえるので、普通に手を出さないのが幸である。
一度死んでいるからこそか知らないが、其処ら辺の知能が芽生えただけ良しとするかとモヒイトは考えつつメルの事を見守りながらも話しかけてやる。
「なんじゃ、気になるか?」
「…いいえ?別に。」
「そんな不貞腐れてもお主の傍から離れるわけないじゃろうて。」
「ねぇねぇヘレス様。あのお方が天使様の?」
「ん?嗚呼そうじゃ。なんじゃ気になるのか?呼べばすぐくるぞ?」
「え?」
「メルーーー!区切りが付いたらこっちで一緒に食べんかーーー!?」
「ちょ、ヘレス様?!?!?!?」
そう言えば何名かの宇宙らも見たが、メルがまるで耳を立てるかのように姿勢を正して反応する。
モヒイトの方をくるりと待って何かを話した後。頷いた彼は前を向き、メルはこっちを向いて食器片手に席から飛び出したではないか。
勿論空を飛ぶのではなく、地面を歩いて小走りにだ。
こけますよと言えば大丈夫と言っている間にこけそうになる。
ふわりと浮かぶ身体に、流石のサワアも飛び出そうとしたが、
とんと地面に落ちる前に身体が保たれる。
食器も綺麗に第2宇宙のテーブルへと降ろされるのは、
「…っえ、えっ、え?????」
『わわ、ごめんね、ありがとう〜!』
「…な、なに、あれ…。」
「あやつの特殊能力、といったところかのお。」
「特殊????」
「歩いていた後を見ておれ。」
そう言って指を指すヘレスに周りも見つめる。
ぱんぱんと衣服に付いた草を取り払いこっちに走るも
その地面は黄金色に変わっていて。
「っな!?!??」
「メル…貴方力の調整常にしてますね?」
『えっなんでバレたの。』
「はぁ…全く、ヘレス様にバレる時点で駄目ですが。」
「なんじゃわらわが知っては駄目なんか。」
「駄目ではないですがレベル差の問題です。」
貴方と彼女では基準値も違いますから比べてはいけませんがね。
「じゃあヘレス様とエフェメラル様二人が戦ったらどっちが勝つの?」
「『そりゃあこっち。ん????』」
「待て待て待て待て。わらわを買い被り過ぎじゃ。サワアらを倒せるお主がわらわが勝てるわけがない。」
『だとしても戦略的には貴方の方が上な気がするけど。私考えるのって大体広く深くな上に全部纏めて考えるから効率悪すぎて無理だもん。』
「いやじゃがそれでも気の量、それに質からして無理じゃ。
端的に言えばカッターナイフとやらと出刃包丁とやらの違いくらいには違うぞ。」
『待って切れ味太さ駄目じゃん。おわりや。』
えっ私カッターナイフの方だよね?ねっねっそうだよね?
…そうだとよかったがな。明らか逆じゃ。
ひえっ
「全く、手を抜かねば私の攻撃くらい余裕で交せるというのに。」
『だって…傷つけたくないし。』
「きゃ〜〜〜愛ね、愛よね。」
『うみゅ。』
「あっちょ」
「それにしてもなんでかしら。ぶっさいくなのになんか違う。」
「なっ!!!」
『あっ私それ知ってる…!ぶさかわって言う部類ですよお姉さんや。』
ぶさかわ?
そう首を傾げる彼女らにふふふとメルがにやにやして言うのだ。
もったいぶって言うもんだから、気になって仕方がないのだろう。
早く教えろと言う彼女らにメルが丁寧に教えてやる。
不細工だが可愛いと感じられる顔立ちや表情を形容する表現。
「ぶさいく」と「かわいい」と組み合わせた語であり、
「ブサかわいい」とも表現される。
端正とは評しがたい顔立ちだが可愛げのあるさま、
目鼻立ちに愛嬌がある不美人などなど思う処は様々。
『なんか違うって思った時が心の開く扉の目の前です。
ほらほら〜早くあけて〜扉あ〜け〜て〜〜〜』
「うっ駄目よ、そんな心に屈しては…!!!」
『なんだこれ面白いなこいつ。
多分ちょっと揺らしたら沼るタイプだな???』
「エフェメラル様?????」
要らぬ知恵を持たせないで下さいと言うサワアに
良いじゃん別にと不貞腐れるメル。
『だってサワアが全部分かってくれてるんだったら何も心配すること無いでしょう?』
「っ!」
「…だとしても妬いて欲しいと言っているようなものですよ?こう他の気を付きまとわせて帰って来るとは良い度胸していますねぇ?」
『むう!!だって皆こうやってお喋り出来るの今日と明日明後日くらいしかないし。』
「はぁ…機会を練ればご連絡やらなにやら尽力致しますよ。」
でもお仕事あるでしょう?
其処迄考えてやらずとて構いませんよ。
「一度に無理してやろうとするから倒れやすいのですよ。
そうしたら何時まで経っても成長しませんし。」
『成長したら終わるから、だから待つために止めてるって言ったら笑う?』
「……呆れてものがいえなくなりますね。なにしてるんですか。」
「愛ね」
「そんな愛があってたまりますか。」
「でも良い目をしてるじゃない。」
それ、盲目の目ね。
盲目?
「ええ。私の目に狂いはないわ!!」
『あーーーーーそうかもね。』
「っ」
『ねぇこれってすっぱい?』
「ええ、直で行くのは流石にってちょっと!!!」
『〜〜〜〜!!!!』
「ああだから言ったのに…」
大丈夫?と声を掛けられむぃいと目をぎゅっとして嫌そうな顔をするメルに
ちょっとは良い顔するじゃないと言われてヘレスが少し項垂れる。
価値観は人それぞれではあるのだから、仕方がないと言えば仕方がない。
バタバタと足を動かすメルが途中からすーーーっぱと声を出した。
『あーーーえーーーげつない。滅茶苦茶でも旨い。待って好き普通に好き。』
「えっマジでいってる????」
『うん。あっねぇ〜〜〜駄目だと思って食べてみない?』
「あのソレを言うなら騙されたと思ってとか言わないです?」
あと一度食べましたが私は向いていませんでした。
私も。
えーーーー
『んもーつれないなぁ。』
「結構酸っぱいものいけるんですね。」
「前は駄目だったのか?」
「ああいや、そういう訳ではありませんが。」
『まぁ昔よりかは耐性上がってるのは確かだね。』
でも量は食べちゃ駄目かなあ。
駄目に決まってるでしょ。
「どうせ好き勝手食べてきたんでしょう。それ以上はおやめなさい。」
『えーーーー』
「気になる者があれば天使らに言ってきなさい。それこそ調理ならまた今度振る舞って差し上げれますから。」
『わかったじゃあいってくるね!!!』
「ええええ、どうぞお好きに。」
「…いいんですか?」
「構いませんよ。寧ろ好きに放置させた方が後々楽ですからね。」
「あんなに妬いておったのに、来たら安心したか?」
「ヘレス様?」
っすまんすまん。
そう笑って話を流す彼女に、なんだか楽しそうだねぇと言ったのはミラだ。
「皆楽しそうでなにより。」
「そうですね。それよりも今日は午前中我々の出番、でしたよね?一体何をなさるのでしょうか?」
「宇宙色別対抗試合だそうですよ。」
「サワアさん。あらそうなんですか?」
「ええ。個別で出る競技もあればチーム戦で出る処もあるそうですよ。」
戦いという意味では戦いですがね。
「所謂お遊びです。適当に遊んできて貰って構いませんよ。」
「わかりました。」
「随分と楽しそうじゃないか。」
『あれっそうみえる?』
「嗚呼。」
「メルさんどちらがお気になります?一応メモしておきますが。」
『えっ片っ端からいいの???』
構いませんよ。
えっえっじゃあ、これとこれと、あとこれも気になった。
はいはい。此方ですねぇ〜〜〜
「ねぇねぇお父さん」
「ん?どした悟天」
「お姉さんとお父さんってどっちが強いの?」
『ごめん流石に武術のみなら悟空に負ける絶対負ける。』
「へ?だけんどいい線いってるとおもうけんどなぁ。」
それに全体的ならオラ負けるぞ?
そういう訳にはねぇ〜〜〜。
「悟天さん。エフェメラル様は勝ち負けが
明白になっているものはお嫌いなのですよ。」
『げっちょウイスさん???』
「おや、間違っています?」
『あっています。』
「どうして?勝って嬉しくないの?」
『え〜〜〜?…だって勝ったら相手負けちゃうでしょ?』
「うん。」
「そりゃ勝ち負けだから負けがあって当然だろ?」
いやでもねえ。
『私が勝つと相手悔しがるじゃん?いやな気持ちとかさせたくなくて。でもそれもなんかやだなぁって思って考えてたら本当に負けちゃってたりするからさ。』
「要は気持ちの問題だろう。逆に勝たないと思い込むのは駄目なのか?」
『したんですよ。したんですけどねぇ、どうしてもなんか白黒はっきりさせに行きたいって感じでして。』
余りこういうのは言うべきではないかもしれないが、
『グレーラインに入るとちょっと歯止めが効かない気がして凄い怖いんですよ。』
「怖い?」
『こう、高い処に足を置いてるみたいな感じ。浮遊出来たり手綱があるならわかります。落ちて死ぬとかあるから怖いっていうのも。』
似たようなものではあるのだ。
『落下したその先に到達するまでに。落ちる前の自分が変わってしまうのが酷く怖い。』
戻れなくなったその時、きっと後悔する。
自分を見て、人が消え去ってしまうのが、怖い。
「ふんっ、憐れだな。」
「ベジータ!!」
「そんなたまで周りが消えると思うなら、好きにしたらいい。」
『…。』
「気にしなくていいからねメルちゃん。こいつメルちゃんの方が上ってことで腹立ててるだけだから。」
「っば、馬鹿なことを言うな俺はだな!!!」
『ううんいいんです。それじゃウイスさんまたあとで。』
「ええ。…全く、ベジータさん?」
明らか気落ちしているメルにウイスが睨む。
でもベジータが言っていることは事実ではあるのだ。
メルが確かにこっちの気を汲んでくれるのはありがたい。
でも同時にそれは貶しているともいえることであって。
ソレを分かっているからこそ、もどかしいのだろう。
本当の優しさは、一体何処に位置しているのか恐ろしくて。
「(一度だけならまだしも…彼女は幾度となくその身を否定拒絶させられ、自我を保てなくなった。)」
花にその感情を保管する以外術がなくなってしまった。
そんな彼女が漸く前を見て歩き出してきたというのに
これでは後戻りもいい処である。
詫びに今度何かを添えてやるべきかと思ったが
変にやれば勘の鋭い彼女が察して
寧ろ気を遣わせてしまうことだろう。
それを知らないから言えるというものだろうが。
「やるせませんねぇ〜まったく。」
「なにが?」
「いいえ、なんでも。」