ひとりきりの食卓
目を覚ました。外は真っ暗闇で割と笑った。
もうクス達は宇宙に帰ったのだろう。
メルは身体を起こし、そのまま風呂にへと足を進めた。
風呂の湯を溜めている間にキッチンへと
足を運べば手紙と共に置いてあった料理に目が向いた。
『…なにこれ』
カサリと音を立てて紙の書かれた内容を見る為に
とりあえず扉近くにあるスイッチを押してみてみた。
『っ』
ー目が覚めたら温めてお召し上がりください。
お昼ご飯のお礼です。サワアより。
彼が作ったのだろう。かなり簡単な調理で、
とてもじゃないが人に振る舞うつもりはないと
昔言っていたものが、この机の上に一つ残されていた。
『馬鹿』
本当に大馬鹿者。
『こんなの…好きに、ならない、わけ、ないっ』
あの子は私の方に振り向くなんてない。
有り得ない時間に目覚めた私が大いに悪いと思う。
何だかんだ言って彼は律儀な人なのだ。
一度決めた恋心をそう簡単に下ろす子ではない。
もしそうなら地獄の果てまで追いかけて絞め殺してやる。
消滅しても取り戻して絞め殺してからもう一度消滅させてやる。
そうメルは思いながらもクシャリと紙を握り締めようとして力を緩め、
用紙を机にそっと置いてからキッチンへと姿を消した。
レンジでチンが出来るこのシステムをきちんと作れた私は凄いと思う。
電気が賄えているのは手前にある菜園のおかげでもあるのだ。
あそこの奥には水路やダムが作られていて、
そこの電気が溜まれば溜まる程こっちでも利用できるようにしている。
勿論此処には四季が存在している。
今は6月の15日程度になっているので、
春が過ぎ去ったという意味ではあっている。
『たべなきゃ』
呑み込んでやらなければ。
もう、春は過ぎ去っていた。
夏になって、いや、夏のままで居続けている。
冬にすらなっていないではないかと
どこかから笑いが込みあがって来た。
余り笑い過ぎると咽るから困ったものだが…
『一応、失声症なんだよな。』
彼女、華神でありお医者さんでもあるクノフィリスの言葉を思い出す。
あの日、全ての破壊神らが死んで、天使らが停止したあの瞬間。
すぐに華神らが破壊神と界王神、そして天使の役割を担っていた頃。
メルは植物状態に陥り一か月程目覚めなかったことがあった。
其処から奇跡的に目覚めたはいいものの、
酷い顔と気に多くの者が絶望し、嘆いたことを覚えている。
勿論原因は性的暴行が主ではあるのだが、
それ以外にも自分で作った約束が守れないことが多かったのもあるのだそう。
その為確実に出来る行為を繰り返し続けることで精神も安定し
元に戻りやすくはなるかもしれないと彼女も言っていた。
其処からとにかく華神らが相手をし続けてくれた。
最初の期間は全王様自体は知っており、
それ以外の神々は全て我々のことを知らない。
その為最初は大喧嘩しかけたが、全王様の
「それ以上その子達を蔑ろにしたら全部なかったことにするよ?」
っていうとんでもない圧に、それ以上のことは起きなくなったのだが。
全王様怖いです。そこまでしないでもろて。
流石に引継ぎも何もない状態で詰まったので、
とりあえず原初が破壊神、引継ぎが天使、
最果てが界王神で104億年程だけ回し、
その間は終焉組がメルの面倒を付きっ切りで見てくれていた。
『…おいしい』
食べ物をスプーンで掬っては
口に含んで咀嚼し飲み込んでいく作業ではあるが、
思い出しながらだと割といけることが判明して、現在少し嬉しい気分だ。
話を少し戻すが、104億年の間、大神官が流石におかしいと気付き
原初らを嵌め、一体どういうことか問い詰め、私の所に許可を取りに来たが
その時未だ会話をすることすらままならない状態だった私に言っても意味がない。
その為その時の指示は全てアルトリアに任せきっていた。
彼女曰く「今までの記憶全てを一度に流して耐えれたら許す」ということで
本当に流して大神官曰く「死にかけました」
と降参の旗を上げる程の力を注がれたらしい彼に
私は申し訳なさでいっぱいになるが、
そんなこと気にしなくて良いと此間言われてしまった。
104億年が経過し、大神官も、
なんなら全王様の付き人も記憶がある状態で
アストランティアの方に入って全員
顔合わせをしていた時、
エフェメラルの姿には酷く困惑していた。
どす黒く、とてもじゃないが
何時ものメルなんて見れた者ではない者。
その姿に全王様も「ごめんね」
と泣いて抱きしめてくれたのだが、
抱きしめ返したり何故泣いているのか、
そもそも泣いている状態すらも理解出来なかったので
何も出来なかったのが悔やまれている。
その事情全て悟った大神官が
メルに天使らへの処罰は妥当だと言い、
仕事のことはこっちで出来るが、
精神的に楽ならしてもいいと言われて以降
其処からメルは大神官の仕事を任せて貰えている。
最初は間違いばかりで申し訳なかったが、
これくらい問題ないと言われるし、
何ならスペルミスが無い状態まで
勉強出来ていてよく頑張ったと
頭を撫でられ褒めてくれた。
昔は頭を撫でられて嬉しかったのにな。
今は酷く胸が痛み、泣きそうになるので
正直言うと苦手になってしまった。
声どころか、テレパシーで
会話するなんて一度もしていない。
指示を貰い、資料を貰って纏めて
彼に渡すの繰り返しをしてきたのだ。
もう其処から本当に何もない。
ただ原初と引継、最果て、終焉の
4組が全員各神々の職場を経験したのは
404億年が過ぎ去ったくらいの頃だ。
504億年で引継ぎを取り、それ以降は
別の神々に宇宙を任せきりになった辺り。
其処ら辺でアストランティアの持つ
四季に各華神らが住み始めた。
最初は建築から何からで色々揉めに揉めたが、
一覧としたらこうだ。
原初が春。
此処では染色や色とりどりの花を飼育しており、
動物も家畜込みで生息している場所である。
街並みは色とりどりの店が一色ずつ幅狭く建てられ、
まるでヨーロッパに旅行へ来たみたいな風景になっている。
引継が夏。
此処では海や川で採れるはずの生物を管理している。
街並みは白と青を基調としたこじんまりとした建物が密集。
漁も出来る上に獲りたてを保管も完備してくれていた。
最果てが秋。
日本らしき瓦屋根と現代建築の街を築いた。
此処で殆どの電気供給と食事が賄えているというものでもある。
主に野菜を育て、他の季節ではハウスや地下栽培を使っていて、
現代トリップしたかのような、何処にでもありそうな場所には
流石の私も向こうへ遊びに行った時は少しテンションが上がった。
終焉が冬。
何もない様に感じられるが、雪があります。あと氷。
冷やすものから何から何まで
氷が大活躍しますので重宝しています。
ほぼ保管庫、倉庫にも使われる
この場所は研究にも使用されていたりする。
以上が季節に取りそろえた街並み。
その中央にいく前に木々があるが
その森には部外者を弾くように
設定しているので、例えば他の人間、
この地に悟空が適当に瞬間移動してきたとしよう。
ティーナと戦う為にティーナの気を
取るとしてもこの地では取れない。
正確には各季節に入れば
気を察知させない様に作っているのだ。
理由は華神らの力が
通常の人間と大差ないという点である。
お休みの時期は勿論のこと、
此方に戻って来てからも殆ど人間の状態なのだ。
下手に入り込まれて襲撃に合い、
全滅なんてされたらたまったものではない。
『(にしても中央ってよく作られているよな)』
華樹がある場所は殆どが一面花畑になっている。
その範囲から越えると森に入り、
一部だけ小丘になっている処に
メルが住んでいる土地が立っているのだ。
因みに此処、その昔かつての神々が
メルと共にこの地を成形していたものである。
界王神も破壊神も割とくたくたで、
天使らが笑って居たので
次いでだからと言って
彼等にも手伝わせてやったところ。
まぁ勿論?
その四季に位置する場所と、
小丘の上も含めてすべてだが。
流石に華神ら全員では骨が折れるので。
まぁそんな小丘はイメージ的に言えば
現代の小さな隠れコテージと言うべきか。
正確には現代の宿という方がいいのか。
シンプルな建築に少し工夫を入れた簡素な形に
樹木を生やし、とにかく中からも
景色が良くなってしまって外に出たくても出れなくて
一時期入った子達が「やべえ、でれん」
って笑って、一日交代だったのに軽く半年ぶっつづけで
そのまま全員そこで泊まった時は怒られてたな。
その地の二階で養生生活を送っていたメル。
基本的に寝室は二階で仕事場や
衣食住が成り立つ形は一階に降ろしている。
理由は勿論身体を動かすというものである。
ベットに寝たきりは流石に身体に悪い。
天使に戻った形だとは言えども
元は人間をベースにしている。
加えて神々の状態が切れれば
人間と変わらない状態であるのだ。
本来であれば人間は老化し、
死に絶えていくものではある。
では何故華樹神がほぼ稼働していなくても
華神らが生き続けられたか。
それは華樹神が持つ華樹が一本でも
生きていたからというのもある。
最果ての時期に華樹神が
いなかったことは覚えているだろうか?
華樹神官が生きている上で、華樹が、
アストランティアにある華樹が
生きているのでティーナらは生きれていた。
そう、生きれていたのはあくまでも
メルが戻るからこそだったことに
気付いたのが遅かったが。
『(504億年以降、殆どの華神らも眠る回数が非常に長くなった)』
私も通常の人間だったら数時間で終わるところが
下手をすれば軽く半年寝る時もあったし、
最高で100年程度眠っていた華神も中には居たのだ。
流石に身体がおかしいということで精密検査をした結果、
此処に生活を共にする者達全員が人間の形を被った何かになっていた。
正確には時が止まっているに近いらしく、歳を殆ど取らない為に
身体の調子が狂い、睡眠が不安定になっているとのこと。
精神的にも壊れそうで怖かった為、
娯楽や仕事を作り出したというのが、
この四季を賄う最大の理由にもなっている。
提案したのは最果てと引継ぎの現代に長く住み込んだ人間らだ。
24人もいて、尚且つ殆どの職業を経験した才能。
そしてメルの培ったあの大きな図書館レベルの書庫から知識を得て
仕事の仕組みから何から何まで作り上げることで精神を保たせた。
まぁ、そんなことをしている間も、
メルは自分の身体も心も止まったままだったが。
なにをしようとも、メルが動くことはほぼなかった。
そう、ある日を境に、急激に物語が変わって行った。
今から300億年ほど昔、コルンが
リキールを発見したことを大神官から報告を受けた。
正確にはヘレスやビルスらも
一瞬ではあったものの
神々に昇格した時期はあったらしい。
確実に魂がその身に宿り、
力を持った試しはなかったのだが、
今回は違っていた。
報告後、メルはとにかく会いたくなって、
身体を自分から動かす様になった。
それには周りも驚いたが、すぐに慣れ、
元々600億年ほど経過した辺りから
各季節一人選出し、小丘に住まわせていた
ルールを改めて制定し直して、現在に至る。
当時は交代制にしておらず、
つきっきりだったのだが
流石に色々と面倒がおきるということで、
人を変えることに。
メルも全員の名前を
把握等出来る訳もなかったため、
コレを機に全員の名を覚えさえるという
都合のいいこともあった。
『(言葉が発現したのはあの日から数えて、割とすぐだったけど
ちゃんとした感情を持って発するようになったのは最近だしな。)』
リキールだけでなく、キトラやシドラ、
ジーン、ラムーシ等の面々も戻ってきている辺り。
大体現在からしたら200億年ほど昔に会合へと参加した辺りか。
100億年周期で全神々、
正確には破壊神、界王神、天使が集結し、
全王様の前で自分達の宇宙の報告と共に
これからのことを発表する機会があったのだ。
それを作ったのは意外にも全王様自らで、
メルがリキールらのことを見つけられる
機会を設けてくれたのは流石に驚いたが。
まさか彼まで面倒を見てくれているとは予想外だったのだ。
『(だから初めて会ったのは500億年ほど前か?)』
引継ぎを下あたりからなので、
今回で5回目くらいの会合。
一度目は色々天使らも慌てていたので
見れていなかっただろうし、
二度目も破壊神らのサポートが
上手くいかずにヤキモキしていたのが印象強い。
三度目あたりで正直になったのかなんなのか知らないが、
余裕が生まれ、此方を見れる様になってきた辺りで
アルトリアらと共に会合へ参加する時はシーツを被っての参加にした。
私は単体で参加したことがあるのは二度目と今回くらいだ。
二度目は何とかなるだろうと思って動いたので後で滅茶苦茶怒られた。
大神官も手が回っていなかったので連絡しようにも出来なかった。
その為後で怒られた時に
一人で動くことは基本的にしない
と言われてしまってだな。
動くなら近くにいる誰かへ
一言いってから動けと言われました。
まぁ前科あるしな。
四度目は今から数えて104億年ほど前だが、
ここら辺で大方の破壊神や界王神が戻ってきてから
メルの内心は酷く荒れに荒れ始める。
夢見が非常に悪くなっていったのだ。
サワアに抱きしめられ、名前を呼ばれるみたいな、
あんな夢を見続けるようになった。
前は何も考えられなかったのだが、
今は感情を少しずつ知っていく機会が増えた為にか
あれがしたい、これがほしいという割と一般的な欲求も
かろうじではあるが出てきたのが原因だと踏んでいる。
いつも通りに過ごしていた日常。優しい陽だまりの下で笑う神々。
その時間が夢で鮮明に動かされ、現実に戻って来ては涙を流し続ける。
前から涙は出ていたが、感情に動かされて涙を流すことはなかった。
メルが泣いていると皆が悲しそうな顔をする。
だからなるべく泣かない様にと我慢するが、
しないでと言われて困って困って
困り果てた上で更に泣いて現在に至る。
『ごちそ、うさ、ま、でし、た。』
手を合わせ彼の調理したであろう
料理を完食したメルは席を立ち
食器を洗いにキッチンへと戻る。
カチャカチャと食器が擦れる音を聞きつつも
洗う速度は変えずに手を動かしていた時だった。
「食べたんですね」
そんな声が暗闇から聞こえる。
一人で居る時は最低限の灯りしか
付けていないのでキッチン周りの電気で
ライトアップされている為にか奥がみえにくい。
『(美味でした。ありがとうございました。)』
「いえ、お粗末様でした。お口に合ったようで良かったです。」
『(帰ってなかったんですね。もう夜ですよ。)』
「一応大神官様から此方に飛べるように設定して頂きましてね。」
お食事の礼をと彼女がいうものですからと言った言葉に
メルは食器を洗っていた手を止め、蛇口の栓を降ろして前を向いた。
暗闇だが、少し目を開けてすぐに誰かが分かってから目線を落とした。
「まさか夜分遅くとは思わず無礼をお許しください。
一刻も早くこの感情を伝えたかったもので。」
『(…構いませんよ。
此方の時間と貴方方の時間は変わるでしょうし、
此方に合わせなくて構いません。)』
「大変美味しかったです。
礼が出来るならば是非とも
何か仰って頂きたいと思いまして。」
『(そうですねぇ、でしたら…どうしましょう。)』
流石にヘレスから其処迄言わせるとは、
多分かなりの勇気が入った事だろう。
こっちが彼のことを好いている
という事実は伏せられているのがみえる。
ヘレスとて馬鹿ではない。
好意の持つ者の関係性は
きちんと見極める者だろう。
嗚呼だからこっちに来たのかもしれない。
ひょっとしたら大神官様に無断で彼女を
連れてきたのではないだろうか。この天使。
ほんと腹立たしいな。それ程まで見せつけたいのか。
お前の入る余地はないと、言い聞かせたいのか。
この胸はどれ程痛めば気が済むのか。
…嗚呼、でも、もうすぐかもしれない。
もうすぐで、きっと。
嗚呼それならば、約束を交わそう。
『(今度彼をお借りしても?)』
「…別にソレは構いませんが、」
「一体何の御用で?」
『(その時にお話しします。
近いうちにまた、是非ともいらして下さい。)』
そうしてこの心を自ら手折るのだ。
貴方に折る前に、私自らが、私を見て言うのだ。
ほぉら、言った通りだろう?
誰も彼も、お前を見る等、有り得ないのだと。
…あの時間を、進めてしまおう。
これ以上待てないと彼等が言うならば、
こっちもこっちで手があるというもの。
今の今までしてこなかった、あの約束を。
貴方と二人で、最期の、弔いを。
私は街に待ち遠しくなってくる。
嗚呼、世界はそうやって色づいていくのだ。
味も何もかもが、鮮明になって痛々しい。
見えないでしょう。見えなくて良いよ。
分からないでしょう。わからなくて良いよ。
こんな感情なんて、誰一人にすらも、
気付かれたくないのだから。
『(出来れば一週間後辺りが嬉しいです。)』
「わかりました。そのようにしましょう。」
『(ヘレス様でしたっけ?)』
そう敢えて覚えていなかったかのように聞いたメルに
はいと余り考えずにヘレスが答える。
『(彼とは長い付き合いですか?)』
「っえ??」
『(これじゃあセクハラになってしまいますかね。
自重しておきましょうか。)』
流石に初対面に近い者に、
目の前の彼氏のあれこれを聞かれるのは怖いだろうて。
こっちも知らないと徹底するならそこも守ってやった方が良い。
彼女の姿をみてつい思ってしまった言葉に自重の念を込めた。
「嗚呼いえ、別に其処迄では…」
「一億年と二千年くらい前だと
昼間に仰ったではないですか。」
「サワア、お主そんなことを?!」
「彼女が望むモノは大体与えるように
と大神官様からのご命令ですのでね。」
『(大丈夫、彼を取ったりなんてしないわ。)』
「メリディエム様……」
とるなんて、そんなこと、私が許さない。
彼はもう、彼女に目を向けてくれているのだ。
そんな時に私が記憶を戻してみろ。彼女はどうなるというのだ。
ただでさえ一瞬でも私は彼女からこの幼馴染を奪ったのだ。
此処は距離を取り続けるのがいいというものだろう?
貴方の者だよ。大丈夫。もう、大丈夫だよ。
貴方に返すよ。その代わりと言っては何だけど。
『(サワアさん)』
「なんでしょう?」
『(黄色いお花ってまだ手元にあるかしら)』
「嗚呼…ひょっとしてあの黄色い花ですかね。」
「なんのことじゃ?」
「昔から何故か忘れた頃に手元に戻ってくる花ですよ。」
「なんじゃその呪いが掛かったような花は。」
『ぷっくくくく』
「!?!??!」
「え、あ、め、メリディエム様?」
クスクスと笑いだしたメルに、二人も驚く。
暗い顔をしていたから余計にだろうな。
嗚呼呪いの花か、良いネーミングセンスしてるな!!
『(すみませんっ…ふふっ、あっいや、ほんと、気にしないで。
呪いが掛かったネーミングセンスにつぼっただけなので。)』
「は、はぁ…」
『(それで、手元には?)』
「一応願えば出るようになっています。」
そう言って手に黄色い花が光を灯し輝きを増すのに
サワアだけでなくヘレスも目を丸めて驚いた。
それに関しては、一切動じないメル。
それもそうだ、だってその光は何時だってそのままで。
だからこそ、残酷だと思う。
…そう、貴方はずっと、そのままでいてくれているのね。
でも、もう大丈夫。
だってこの胸の中には彼が生きてくれているから。
未だに、眠ったまま目を覚ましてさえくれない、彼だけれども。
『(そちらをお持ちの上、お越し下さい。)』
「え、ええ…分かりました。」
そうして手折ろう。
貴方の記憶と共に、この真なる愛情も。
全て統べて、綺麗にひっくるめて。
その為にも、記憶を片っ端から片付ける必要がある。
時間が掛かるのだ。綺麗に纏め上げるのにも。
そうして、次の日には、きっと貴方の目を見て言えるだろうから。
何時か目覚めた時、
私は笑って「おはよう」だなんて
言ってやれることだろう。
今迄のことなんて、もう、何処にも存在しない場所での話にはなるのだが。
『(それにしても結婚式とかしたの?ていうかしないの?)』
「け!?!?」
「すみません、人間の様なしきたりはしないつもりですから。」
『(したらいいのに。白いドレスに身を包んでね?冠を交換するの。)』
「それは…」
気になった?
ちょっと、は。
「確かにお主が違う衣装を纏うなんて今後見れないじゃろうしな…」
「…ヘレス様????何をお考えになっているのですか???」
「ふふ、メリディエム様。天使らは貴方の望みならなんでも、と言いましたよね?」
『(…!…ええ、そうですねえ?)』
二人してニヤリと笑うもので、サワアがたじろぐ。
『(こっちへ来て下さい)』
そう言ってメルは彼等を呼んだ。