呼び声が聞こえる




運動会合計総得点

第01宇宙:5+3=8
第02宇宙:5+2=7
第03宇宙:4+5=9
第04宇宙:6+0=6
第05宇宙:3+4=7
第06宇宙:7+1=8
第07宇宙:3+1=4
第08宇宙:2+3=5
第09宇宙:0+2=2
第10宇宙:4+0=4
第11宇宙:5+4=9
第12宇宙:1+5=6

+++++++++++++++++++


第7種目サイコロ運試しリレー前半戦

メルは背中に入れていた処から水を取り出し水分補給を取る。
ウイスがミシュメールに想いを馳せるなんてこと想像もつかない中
現在進行形で軽く小休憩を取ってぼやく。

『…まずいな。』

アイビーからの連絡後、音沙汰がないので気になって
パトロール隊に連絡を取った処、
どうやら本格的に行方不明になって居るらしい。

彼が参加する話は大分先というか、
新樹のメンバーはほぼほぼ不参加に近いし
加えて警備の話は周りにしてあるから
そこら辺うろついてるって言えば分かる。

でも、居ないと言う話では一体何時気付くか分からない。
何だかんだ長い付き合い。無事であることは願いたい。
話を聞くに、どうやら無の隙間が開いて
その中に引きずり込まれたらしい。

私の力に相対する者に、そんな奴がいたかどうかは分からないが。
無事だと良いんだが…無の隙間とか、普通に聞いたこと無い。
そもそも此処自体異次元なので
下手に触れたら消えることは在り得なくもない話だ。

星の瞳という本を手に取り、そうだよね。とぼやく。

この本は小さな女の子が子犬と出会い、家族の絆を取り戻すお話だ。
其処で陸上競技とピアノの話が出て来て実に興味深い話であって。
正直言うとこの本の影響がでかくてこんな話が出来ているのだ。

ちゃんと最後まで読み終えたが、勿論最後は悲しい結末だった。
家族の絆も取り戻せずに、子犬は死んで、何もかも残らない。
一羽と追う者は二羽をも得ずとは言うが、
そんな無慈悲なことがあってたまるかと思う。

本を握り締め、どうか無事であることを願い、
メルはそっと杖に本を入れ服の中に仕舞い込んでしまう。
胸にかけているのは緊急があると怖いからだ。

外に赤い汽笛用の笛はぶら下げているけれどもね。


「嗚呼メルこんなところに居たのかどうした?具合悪いか?」
『…朱音ちゃん』
「……大丈夫か?」

そっと膝をついて声を掛けてくれる。真剣そうな顔だなと思う。
多分顔色がずっと悪いんだろう。大丈夫と言えばそう見えないと答えられた。

「競技は引き続きやってやる。」
『でも皆心配しちゃう。』
「安心しろ。こういう事もあろうかとお前の偽造コピーはカンストしてある。」
『あんだって????』

とんでもない日本語が聞こえた気がするが、気のせいだろうか?
というか今外に出ないのは正直不味い。

『もう大丈夫だよ』
「だが顔色悪いぞ?白い。」
『大丈夫大丈夫。』
「…それならいいが、休憩来たら即刻迎えに行って
旦那のところに突き飛ばすからな?」
『あはは、流石にそれはそっとにしてほしいなぁ〜〜。』

へらへら笑って答えた後、良しと意気込み
さぁ次の試合に行きましょうかと声を張る。
案外気持ちで行けば大丈夫なものなのだ。

きっとあの人を想い出したから気弱になっているだけ。
そうだ、きっとそう。いつだってそうなのだ。
あの時間は酷く私に痛みを教えてきてくれる。

だから、きにしない。

『”サイコロ運試しリレー前半戦は現神々と華神ら混合チームになります。”』

聞こえた?

『”メンバーは破壊神をはじめとした神々3名。破壊神・天使・界王神。
後は華神ら3名を天使が選抜してきてください。3分あげまーす用意スタート。”』

その声で周りがざわつきだした。

まさか界王神の名前が出るとは思わなかったらしい。
前半戦なので勿論第1から第6宇宙の子達がこっちにくる。
先程のことは考えない様にしよう。


そうだ、その方が良い。









「ねぇ、知ってる?お父さん追いかけっこ得意なんだよ?」









『…え?』




背後から声が聞こえた。それも上。振り返っても誰も居ない。
黒い箱、いなくなる友人、追いかけっこ。
違う背筋からぶわりと舞い上がる汗に、違和感が拭えない。

落ち着けそんなはずはない。そんなバカなことがあってたまるか。
呼吸をしてそう、吸って吐いての繰り返し。誰も居ないじゃないか。



気のせいだ、気のせい。


「本当に?そうやってまた閉じ込めちゃうんだ。」
「え?誰…?」
『…連れてこうとしても、私は其処にいけないよ。』

そう言ってしまう。後ろの声に、
反応してはいけないと分かっていても、周りのざわつきには勝てない。
えーという嫌そうな声が聞こえるも、決して後ろを振り返らない。
間違いなく連れていかれる気がしたから。

「待ってくれてるのに?」
『それでも駄目』
「…そっか、此処がいいのね。」
『…うん、ごめんね。』

いいよ、なんて寂しそうな声がして胸が痛くなる。
嗚呼、折角決意していたのにな、
いざ声を聞けば決意が一番下の速度になった
メトロノームの様に右へ左へ欲がぶるんぶるんに動いてしまう。

ごめん、そっちにはいけないんだよ。
もう、いけないの。ごめんね。


『私は此処で生きたいから。』
「置いてっちゃうんだ。」
『…ううん。置いてかない。』

そっと振り返る。…嗚呼、何時だって貴方は綺麗なままなんだ。
黒髪の女性。長い髪を一つに束ね、三つ編みに纏めたお人。
凛とした顔持ちなのに、何処か幼げが残っている。


私の、最初で最後の、お母さん。


『私ね?お父さんみたいにうまく出来るようになったんだよ?』
「…そう。貴方はお父さんによく似たからね。」

ねぇ、


芽生めい、元気?」


近付いてくれる。周りの圧になんて、気にしないで。
来ようとした者達に対して手を上げ止める。
綺麗なお人。あの人ではない、お人達。


夏焼なつや芽生めい


それは、何時しかの時間に生きた者。
人間で在ろうとして、ひと時だけ、人間になった、紛い物の時間。


『…うん!元気だよ!お母さんは元気?』
「うん。元気よ。体調は悪くない?」
『うん!!あっねぇねぇお母さん見て貰いたい人いるの!!』

そう言ってメルは手を取り走る。
そんなに早く走らないでと言われつつも向かう場所に気付いた者達も合流する。


「あらあらあらあら…えらく大き、嗚呼ごめんね?」
「え、あっ、い、いえ…別に。」
『ふふ〜ん!お母さん聞いて?私ね、赤ちゃんいるの!!』
「………えっ????」
「エフェメラル?貴方驚かせたいのは分かりますが、困惑させてどうするのです?」

あ〜そんなこと言わないでよと不貞腐れるメルにいやですがとサワアが話を進めようとした中、お母さんと呼んでいる人が話をさえぎって聞いて来た。

「え?そ、そちらに居る人と????」
「え、あ、嗚呼…すみません、私の名はサワアと申します。
彼女とは少々長くご交際の末に授かりまして、顔を見せに行けず申し訳ない。」
「嗚呼そんな顔を下げないで…!!良いんですよ!寧ろ面倒極まりない娘を貰ってくれてすいません!!」
『おかあさん???????』

とんでもない言葉が聞こえた気がするんですけど。

「この子ちゃんとご飯食べてます?」
「嗚呼いやそれは」
『えっ待って???あの判定食べないに入るの????』
「…芽生?」
『ひっ!!!!!!』
「貴方子供を授かったなら猶更前の様に食事を摂るなんてお母さん許さないからね…????」
『あっはいすいません!!!!ちゃんとご飯食べます食べます食べますから!!!!!!』

母親の圧に委縮するメル。でもちゃんと笑っている。
サワアの後ろに隠れつつもちらりと向くその目線は、幼子その者で。
嗚呼まさか、ひょっとして…貴方が本来見ていた母というのはまさか。

「メル」
『ん?』
「私は彼女のことを知らぬのです。…出来ればご紹介いただいても?」
『…うん!紹介するね?僕のお母さん!!!』
「「…メル/芽生?」」
『にゃははははは!!!ごめんごめん!冗談だって!!!』

だからそんな顔しないで!!!

『こほん。…此方は夏焼なつや優子。天使の時に死んだ次の世代に産まれた、最初で最後に出会った、私の大好きなお母さんなのです!』

++++++++++++

突如現れたことにより、一時中断になった会場に
私なんぞの為に話を切るなと叩かれましてですね。

『いや痛いが!??!?何してん?!?!』
「あんたがさっさと仕事しないからでしょうが。」
「ちょ、お、お母さま落ち着いて下さい…!!」
「すみません、この子がご迷惑をお掛けして」
『いやどっちかというとお姉さんが出てきたからあーーーすいません私のせいですねわかりましたわかりましたのでそちらに居て下さいよ。』

全く、何処からどうなってるんだ。
アイビー帰ってこな…あれ?アイビーさん?
まさかお兄さん、うちの願いを叶える為に一肌脱いで来てる?

「あら、ご名答。漸く気付いたなんて…割とおまぬけさんな所は変わらずのようね?」
「っアイビー様!!」
「あらイケメン。」
「あらあら〜ご婦人にそう言われちゃあこまっちゃうわ〜〜!!」
「…芽生、貴方付き合いは程々にしなさいよ?」
『あ、あはは…』

カオスである。

いや何故にこうなった。

『アイビー、なんでコレ連れてきたの?』
「ちょ、これって」
「貴方が一番、ソレを分かっている癖して。」

今更何を。そうニヤ付く彼に、腹の底が疼いた。
運動会。手を取ってくれるお人は、誰もいない。
見てくれる人も、だぁれも。居なかった。

小さい頃は居たのに。其処に、走って行けば、困ったように笑ってた。
急いで帰って、戻って戻って。そう笑って居るのを見るのが嬉しくて。

人で在り、人で生きれた、唯一無二の時間。

ルトラールとルメリアの管轄から外れた、唯一の時間。
それが、この人の元に産まれた時間だったのだ。

『みててね、お母さん。私沢山、出来ること増えたんだよ?』
「…うん。見てるよ。ずっと、ずーっと。だから早く行っておいで?」
『…うん!!いってきまーーーーすっ!!!!』

そう言ってメルは走り出す。さぁ続きを始めましょうと開始の宣言をし始める中、すみませんねと母である人はサワアやコルンに声を掛けた。

「いつもご迷惑をお掛けしているでしょう?」
「嗚呼いえいえ…楽しくて暇で困ることがありませんので。」
「それにしても、大きな人ね?貴方達の親御さんは?」
「私ですが」
「…ん?????」

首を傾げてとまるその姿に、一同がぶっと吹きだした。
それにはえっえっと慌てる母親にいやすみませんと大神官は笑いながら答える。

「素振りがエフェメラルさん…いえ、芽生さんにそっくりでしたのでつい。」
「っふふふ、成程、お師匠らに似ていない処が多々あると思っていましたが、其方からでしたら納得しますね。」
「え?ええっと…どうも?」
「いえいえ。ご観覧になられますよね?此方で見られますか?」
「ええ、お邪魔でなければ。」
「いやいや…色々お話をお聞かせ願えれば。」

そう微笑む大神官に勿論だと母である優子は笑って答える。

「あの子私の一人娘ではあるんですが、私途中で投げ出しちゃって。」
「あら」
「本当はなんで捨てたのって泣いて縋られてもおかしくないのに…
なのにあの子は何時だって見つけたら嬉しそうに目を輝かせてくっつてくる。」

ーおかあさん!

「寂しがり屋で、泣き虫で。その癖変にプライドが高くて言っても聞かない頑固者ですけれども。」
「其処ら辺は変わりませんねぇ。」
「よく動く元気な子です。…でも、立ち止まる子の元には止まるんです。」

ー大丈夫?隣にいようか?

「人の感情に寄り添う子で、嫌がることは一切しない。しても次にすることはない。
天使の様な子で、天使に産まれた子で。…すみません、日本語おかしくて。」
「いえいえ…辛く苦しい時間だったのでしょう?お子を育てるなんて早々簡単なことではありませんからね。」
「ええ、全くですよ。あの子が子を育てるってなったらもう心配で心配で心配で…」

心配で
ふふ、心配され切っちゃって。

「あの子も困ったお人ですね。」
「全くですよ!何か月なんでしょう?」
「確か一か月其処らだとお聞きしていますよ?」
「じゃあつわりとか…嗚呼でもこの感じ私の子ではないのかな?」

そう首を傾げ唸る母に、まぁある意味では同じでしょうねとサワアが答える。

「彼女の癖は貴方からよく伝わってきますし、出生自体今世が不明なので。」
「もし私に似たらつわりとっても酷くて確か芽生を生む前も酷かったので。」

後あの子一応9月生まれの予定だったんですよ?
ほぉ?

「なのに9月を越え10月まで入って産まれたんです。あの時間忘れられなくて。
真っ昼間に産まれちゃったんですよ?それも天使が好きだからって言ってて奇しくも天使の日に。」
「…は?」
「あら?どうかされました?」
「え?あっい、いいえ…」

真昼間、それは、エフェメラルが力を、本領発揮する時間の最中。
天使、それは、エフェメラルがかつて生きていた、時間。

それは、偶然?いや、

「必然だとでもいうのでしょうか…」
「コルンさん」
「すみません。」
「アイビーさん、御父上様は?」
「それが探しても見つからなくてねぇ〜?この人がうろついてたから話を聞けばうちのエフェメラルのお母さんってことが判明して連れて来ちゃっただけで。」
「あの…それまさか異世界から引っ張って来てないでしょうねぇ?」

というかそうですよね?場合によっては消滅させますよ?
…あらあら、させれない癖して何を今更。

「それ相応の処罰、とはいきたいのですがね。彼女の顔に免じて、今回は特例で許して差し上げましょう。」
「本来は駄目なんですか?」
「ええ。魂の移動は本来在るべき場所に居なければなりません。癖になって別の場所に移動されては管轄者も困るでしょうしね。」
「それもそうですね。すみません、この大会が終わったら帰りますので。」
「いえいえ、別に構いませんよ。エフェメラルさんも気になっているそうですし。」

ちらりと見れば、ソワソワとコッチを見てきているではないか。
母親としても、仕事をしている身分としてもそれは如何なものか。
全く子供っ毛が抜けないんだからと嫌そうな顔をしている
彼女に対して別に構いませんよと大神官は答えた。

「貴方のおかげで。私達はあの子に出会えたというものですから。」
「…それならいいんですけど。」

クスリと笑い、その先を見据える。


++++++++++++


それからというもの。サイコロ運試しリレー前半戦は以下の通り。


運動会合計総得点

第01宇宙:8+5=13
第02宇宙:7+3=10
第03宇宙:9+1=10
第04宇宙:6+2=8
第05宇宙:7+4=11
第06宇宙:8+0=8
第07宇宙:4
第08宇宙:5
第09宇宙:2
第10宇宙:4
第11宇宙:9
第12宇宙:6



三人四脚リレー前半は以下の通りになってしまい…?


第01宇宙:13+5=18
第02宇宙:10+2=12
第03宇宙:10+0=10
第04宇宙: 8+4=12
第05宇宙:11+1=12
第06宇宙: 8+3=11
第07宇宙:4
第08宇宙:5
第09宇宙:2
第10宇宙:4
第11宇宙:9
第12宇宙:6




中間休憩時間に入った処で合図を鳴らす。
これから15分間の休憩を取るそうです。
メルはそのまま地面に座っていると、駄目ですよと声が上からかかる。

「エフェメラル様…!!」
『はぁ…分かった分かった…裏に行けばいいんでしょ?』
「そういう問題ではありませんよ…!」

コルン様が声を掛けに来てくれていた。
正直言うと割と動くのだけで手一杯なのだ。
ふらつかない様に身体を動かすメルに気付いたコルンが失礼しますと一声かけ抱き上げる。

『っわ、ちょ!!』
「裏に横になれる場所を構えていますので、其方に行きましょう。」
『えっま、まって!』
「待ちません。顔色が白い。」

無理をしましたでしょう?

「もう二度と会えない筈の母に会えた。それだけで舞い上がった様じゃあ困りますよ。」
『…ごめん。』
「お兄様。」
「お預かりしますね。」

裏に回った一室にて、コルンはメルをサワアに渡す。
お母さんはと言いたそうに周りを見渡すメルにサワアが答える。

「彼女は温かく見守ってくれているそうですよ。」
『…そっか。』
「…あのお方は一体何者なのですか?」
『知らなくて良いよ。』

知らなくて良い。

酷く幸せだった、あの時間に、私は縋り付いてしまいそうになるのを堪えて居る。
これ以上あの人に会い続ければ、きっと此処から離れたくなるだろうから。

早く忘れてあげなければいけない。
この子の為にも、サワア達の為にも。
でも、でも夢であるならば、どうかと願ってしまう。

『ちょっとだけ寝るね。』
「…分かりました。何かあればお声がけを。」
『うん。おやすみ。』

おやすみなさい。

そう言った声に目を閉じる。
本当は寝なくていいのだけれども、こうやって目を閉じ横になって居るだけでも変わるというものだ。
青白く心配をかけたのであれば、早く気分を変えてやらなければいけない。
それに割と点数が面白いことになっているのだ。まさかの同数点が多発している。

このままいけば、どうなるだろう。

ねぇ、お母さん。

芽生え生きることを、約束した。
だから約束は果たされなければいけない。


この時、メルは思っても居なかった。

華神らの伝説にある華が咲くことになることを。
そして新たなる称号がこの地に付けられることを。
メルは知る由もなかったのだった。