ねえもう一度
そうこうしまして休憩明け、と思ったら
『待って待って待って待ってまさかの四時間熟睡とかマジで聞いていないってば…!!!』
「おや、おはようございます。」
『おはようじゃない!!今どこの種目してる!!??』
「意外とスムーズに行きまして今昼休憩の半ばくらいですよ。」
得点は?!?!?!
「はぁ…かなり面倒になりますけど、お伝えしておきましょうか。」
障害物レース
各場所に点々と隠され張り巡らせた場所を移動し、
ゴール地点に早く到達した者に高得点を与える競技。
全員参加種目で1宇宙につき1人誰でもOKということで
華神らだけでなく天使らも混合式で戦うことになった。
一斉に行く為、1位は12点で最下位は1点と
無得点無しの特別ボーナス枠。
第01宇宙:18+9=27
第02宇宙:12+4=16
第03宇宙:10+5=15
第04宇宙:12+1=13
第05宇宙:12+8=20
第06宇宙:11+2=13
第07宇宙: 4+3=7
第08宇宙: 5+7=12
第09宇宙: 2+11=13
第10宇宙: 4+6=10
第11宇宙: 9+12=21
第12宇宙: 6+10=16
つづきまして100m走最果て前半&後半
第01宇宙:27+0=27
第02宇宙:16+2=18
第03宇宙:15+3=18
第04宇宙:13+1=14
第05宇宙:20+5=25
第06宇宙:13+4=17
第07宇宙: 7+5=12
第08宇宙:12+0=12
第09宇宙:13+1=14
第10宇宙:10+3=13
第11宇宙:21+2=23
第12宇宙:16+4=20
追いかけ玉入れ後半戦
第01宇宙:27
第02宇宙:18
第03宇宙:18
第04宇宙:14
第05宇宙:25
第06宇宙:17
第07宇宙:12+5=17
第08宇宙:12+3=15
第09宇宙:14+2=16
第10宇宙:13+1=14
第11宇宙:23+4=27
第12宇宙:20+0=20
100走終焉前半&後半戦
第01宇宙:27+5=32
第02宇宙:18+0=18
第03宇宙:18+4=22
第04宇宙:14+2=16
第05宇宙:25+3=28
第06宇宙:17+1=18
第07宇宙:17+5=22
第08宇宙:15+2=17
第09宇宙:16+3=19
第10宇宙:14+4=18
第11宇宙:27+1=28
第12宇宙:20+0=20
騎馬戦混合式前半戦
第01宇宙:32+0=32
第02宇宙:18+4=22
第03宇宙:22+3=25
第04宇宙:16+2=18
第05宇宙:28+1=29
第06宇宙:18+5=23
第07宇宙:22
第08宇宙:17
第09宇宙:19
第10宇宙:18
第11宇宙:28
第12宇宙:20
サイコロ運試しリレー後半戦
第01宇宙:32
第02宇宙:22
第03宇宙:25
第04宇宙:18
第05宇宙:29
第06宇宙:23
第07宇宙:22+2=24
第08宇宙:17+3=20
第09宇宙:19+5=24
第10宇宙:18+4=22
第11宇宙:28+0=28
第12宇宙:20+1=21
三人四脚リレー後半戦
第01宇宙:32
第02宇宙:22
第03宇宙:25
第04宇宙:18
第05宇宙:29
第06宇宙:23
第07宇宙:24+5=29
第08宇宙:20+0=20
第09宇宙:24+1=25
第10宇宙:22+4=26
第11宇宙:28+3=31
第12宇宙:21+2=23
その為、前半戦だけで以下の通りになる。
第01宇宙:32
第02宇宙:22
第03宇宙:25
第04宇宙:18
第05宇宙:29
第06宇宙:23
第07宇宙:29
第08宇宙:20
第09宇宙:25
第10宇宙:26
第11宇宙:31
第12宇宙:23
1位:32:第01宇宙
2位:31:第11宇宙
3位:29:第05宇宙
4位:29:第07宇宙
5位:26:第10宇宙
6位:25:第03宇宙
7位:25:第09宇宙
8位:23:第06宇宙
9位:23:第12宇宙
10位:22:第02宇宙
11位:20:第08宇宙
12位:18:第04宇宙
『…あれ???サワア達滅茶苦茶負けてる????』
「まぁ…色々アクシデントが発生しましてね。」
『えっ私のこと看病してたからとか言わない?大丈夫?』
「嗚呼一応面倒を見ていたと言えば見ていましたが、其処迄大差ないですよ。」
嗚呼なんかごめんね…?
「いえいえ。得点は特別カードを差し出した方達が多かったのでね。」
『特別カードってあれだよね?一つの宇宙につき誰でも呼べるカード。』
「ええ。最下位になればなる程カードを使っていないのですよ。」
コルンやコニック達もか。
「ですので前半戦とは言っても後半に点数が変わりますし
それに決勝や特別枠も設けられているのでどう転がるかはわかりません。」
『にしても第1と第11がトップか…第1はまだ分かるけど第11は意外だな。』
「マルカリータさんの目が冴えているというものですよ。」
一応指揮は全て天使に身を委ねられているも同然の形。
これは適当にあしらうのではない。
天使らのプライドもかかった大会になっていってるのではとサワアが言うのだ。
「まぁ楽しいに越したことはありませんからね。
コレを機に我々らも身を引き締める思いになれば、と…ね?」
『うわ〜怖いお兄さんだこと。でも私以外に指揮務める人いたかなぁ?』
「いえいえ。貴方が寝付いている間はあの方が。」
そう目を向けるサワアにメルはちらりと向けた。
その姿に、口が開いて、ボロボロと涙を流し始めた。
「っうぇ!??!」
『…っ。』
黒髪の男性がいる。会いたかった人がいる。
首を横に振るって、こんなの夢だと思い込みたい。
嗚呼、夢ならどうか醒めないで欲しい。
俯いたメルに、相変わらず泣き虫だなぁと声が聞こえて
サワアの身体に抱き着きしがみ付いて離れなくなった。
頭を撫でてくれる。優しい手付き。
陽だまりの様な温かさが胸を痛めつけてくる。
嗚呼、お願い。どうか醒めないで。
ずっと居て欲しい。縋り付いてしまいそうになるのを必死で堪える。
「お父さんに似て凄い良い仕事してたって。」
「へーーー?よくやってるんだなぁ?」
『っぱぁ、ぱ。』
「ふはっ、嗚呼はいはい、おいで?」
芽生
そう両手を広げられたら、行かない訳がない。
メルはサワアからするりと抜けて彼の胸に飛びついた。
会いたかった。ずっとずっと、会いたかった。
額縁に飾った。二度と会えないと分かっていたから。
だからこんな、会えるなんてありえないと思ってた。
嗚呼夢だ、きっとこれは、醒めない夢を見させてくれている。
嬉しくて零れ溢れてしまうくらいには、今一番幸せだ。
ぐりぐりと頭を胸に摺り寄せて甘えるメルに
よしよしと言って頭を撫でては背中をトントン叩いてくれる。
その叩く速度に、サワアは見覚えがあった。
…嗚呼、貴方からだったのですね。その、温もりは。
「聞いたぞ?子供いるって。」
『ぐずっ、ううんいるう』
「っふは、どっちどっち?」
『い〜〜るうううううああああああ』
「あーはいはい。ごめんごめん、よしよしよしよし。」
「…おもいっっっきり甘え込んでるではないですか。」
「ふふ、良かったですね?エフェメラル。」
うん。よがっだ。
『…えっ待って、お父さんパンパンしてたの?』
「ぱっ!!!」
「ん〜?ん。してたよ。パンパカパンパン撃ってた撃ってた!」
「ちょ、御父上様…!?!?」
『あんねあんね!芽生もしてたよ!!偉い?ねぇねぇ偉い???』
「うんうん、偉い偉い。よく聞いてるよ、いい子で居たんだね?」
そう頭を撫でてくれる。嬉しくて目を閉じて笑う。
ニヤケが止まらない。涙も、止まらない。会えて嬉しいから。
そっと気になったのか、隣から母が抱きしめてくれる。
嗚呼、このまま時が止まってしまえばいいのに。
そんなこと出来ないのだ。だってそうすれば、
これから先、この子に会えなくなってしまうから。
なんて狡いのだろうか。どちらかを選択しろだなんて。
そんな酷いことを、一体誰が、決めたというのか。
お願い、まだ居て欲しい。もう少し、もう少しだけ。
「…メル」
いやだ。ぎゅっとしがみ付くメルに、芽生と声が掛かってくる。
嗚呼やめて、お願い。私ずっと、ずっと望んでたのに。
「大丈夫、また会えるよ。」
『…でも』
「子供、産むんだろう?」
自分みたいにさせるつもりか?
そう聞いた彼に、顔を上げてぶんぶんと
横に振ってしまえば笑われてしまう。
「ならちゃんとしなさい。」
我儘言ってないで。そう涙を手で拭いてくれる。
自分の手より少しだけ大きい手。
ちょっと頑張ったら抜いてしまいそうなくらいの、小さな手。
なのにこの手がどんな人よりも一番好きだった。
『…うん!』
いい子でいるよ。大丈夫。貴方の知る、いい子で。
涙を乱暴ながらも腕で拭い去り、じゃあ行くねとメルは答える。
此処に居たい。でも、その気持ちもひっくるめて、未来に渡せばいい。
どうか、この子が幸せに暮らせるように。
いってらっしゃいと声が聞こえる。
行ってきますと余り振り返らずに走り出す。
衣装を正し、前を向いて帽子を被り直した。
『…ねぇ、お父さん。私、いい子かな?』
いい子だよ。そんな声が聞こえた気がした。
空は何処までも青く広がっていた。
あの日の様に、何時しか遊んだ、夏の青空みたいな青さの様に。
何処までも高く広がっていた。
++++++++++++
えー現在ですね。パン食い競争が始まる直前で、ですね。
特別カードを差し出しやがりましてですね。
『…ねぇ〜〜〜なんでこうなるの???ねぇ〜〜〜。』
「ふふっ絶対勝つ」
『あ゛????うちが勝つし???』
「…特別カード間違えましたかね?」
特別カードを使っていない宇宙は
第2、第4、第5、第7、第9、第8の計6宇宙。
そして今此処で、同時に使われてしまったのは
『べーーーつにぼーーくがぁ???
第2で走るのは問題ないんだけれども…
第8ほっっっっっときらい!!!!!!』
「…あ〜〜ごめん、スイッチ入れちゃったね。」
『シャーーーーーーーー』
もう猫である。口で鳴らす猫の威嚇音に元父親もたじたじである。
パン食い競争は400m走。各場所に吊るされてあるパンを口で取っていくこと。
勿論浮遊は厳禁。高さは必ず頑張ったら掴める位置に吊るされている。
尚妨害行為はありとしている。その為メルは超絶警戒していたのだ。
「考えましたね…まさか御父上を同時に参加させるとは」
「あの様子からして父親に勝てない子でしょうからね。」
この勝負貰った。そうにやりと笑うコルンに、
余り触れない方が良さそうだと思ったウイスがそっと目を背ける。
確かにこの勝負、割と優先的には元メルの父親であろう彼が勝つ可能性は高い。
他の子達は他の競技で使い果たしたというのもあるが、温存しておきたい子達もいる。
その為この種目変な話点数が稼ぎたい者達が出払うだろうと算段していた…のだが、
「まさか第2にあいつを入れて第8に父親とは…考えたもんだねぇ〜〜。」
「負けるのか?」
「負けなくはないでしょうが…また後でバテるのは目に見えますねぇ〜〜。」
おほほほほと高笑いするウイスに、聞いていたピッコロが話を振れば悟飯が話を持ち掛ける。
「あの方って一体どんな方なんですか?一見普通の人間の様に見えますが…」
「ええ、至って普通の、人間である、成人男性ですよ。」
「…負けない?」
「さぁ?元々今回の種目は浮遊厳禁な上に華の力を制限した状態ですからね。」
さぁどうでるか、見ものですね。そうにやりと笑いながら見るウイスの目なんて気にせずに。
メルがウォーミングアップをしている最中、本気出すなよと笑いながら入ってくるのは
『チッ』
「舌打ちされる????」
大学時代に生きていた実の父親である。
「にしてもひょっとして鍛えてる?お父さんに勝つために?」
『ああ????ね〜〜〜絶対隣来ないでよ?』
「嗚呼分かった分かったソレだけ呼ばれたら行くしかないよね?」
『ねぇ待って?人の話聞いてる????』
「だって芽生の言うソレ最早おいでおいでだろう?」
『いや違うが????ねぇ待って???』
人の話聞けごっらあ!!
そう叫ぶメルに、まぁまぁと周りも落ち着かせに走る。
気が荒だって仕方がないのだ。現在メルは銀色の首輪を付けた状態。
半分になっている筈の気が立ち込め周りの選手らにも影響を及ぼしかねない状態にまで入っていたのだ。
かと言って金の首輪をすれば動かないのは明白だったので、これ以上のハンデは無用。
『…一応言っておくけどお父さん。』
「ん〜?」
『もしも勝ったらさ、なんでも一つ言う事聞いてよ?』
「…ならこっちも、そうさせてもらおうか。」
そう言われたらメルはニヤリと笑い笑みを浮かべる。
敵になんてなりたくない。味方で在って欲しかった。
でも、正直この戦い、かなり面白い話になりそうだったのだ。
燃えるメルに、熱いねぇと言ったのはティーナだった。
メルを出してきたとあれば、周りの子達も、選手を変える次第。
『うわ〜〜〜ティーナにフェルに、うわフィズまで居るのかきっっっつ。』
「それは喜んだ方が良い話だよね?」
「そうでしょうね。」
第1からはミュラリス。正直足は其処迄速くない。
でも他の子達から比べると圧倒的に練習はしているのだ。
その為先程の100走も1位を獲得している。
第2からは我らが主役のエフェメラル。
因みに長距離が得意な彼女は、一番良いタイム3qで12分ジャストである。
どれくらい早いかというと、100m換算で24秒を常にキープするということ。
陸上選手までとはいかないが、通常の人で其処迄走れたら推薦を貰えるレベルではあるのだ。
12分切れたら上級者と言っても過言ではない。
切っていないのでギリ違うが、まぁ誤差程度である。
第3からはカルルリが。第4からはフィズが。
第5からはティーナが。第6からはルキティスが。
第7からはミシュメールが。
第8からはフェルが交代し、うちの元父親が。
第9からはミスティが。第10からはアルカポネが。
第11からはメリアが。第12からはリサが出場していた。
『い〜〜〜や、滅茶苦茶難易度たっっっか。』
「負けるんだ」
『煩いドアホ。誰が負けるか。』
これでも第2宇宙を背負ったのだ、それ相応の態勢で挑むしかない。
これでも睡眠時間がっつり4時間寝ているのだ。
15分のウォーミングアップを貰った上で
試合に出場を許可してもらえている。勿論体調も万全である。
『でも誰がパンパンするの。』
「私が致しましょう。」
『わぁ〜〜〜ぱっぱだっ』
「…すいません。」
「ふふ、いえいえ。」
隣から頭を叩かれたメルは下を向いて動かない。
クスクスと笑う大神官に対して
父親であった者は恥ずかしそうに俯いていた。
痛いと言って口を開けば軽い痴話げんかである。
要らないことを言うからそうなるんだというのに
メルはというと、ひたすらにキャンキャン煩い。
調子を狂わせられ続けるので、
第2には申し訳ないがビリ欠でも
許して欲しいと思いつつもメルは前を向いてみる。
パンが設置されているのは200m先の場所のみ。
それ以外は通常の走りであるもの。
左側から順番なので、間違いなく先に走らないと後が詰む。
まぁパン食い自体初挑戦なのでどんなのかは知らないがな。
銃の扱い方はメルや父を見ていて分かったというので
大神官には色々任せて貰うとして、だ。
『(嗚呼、楽しいんだな、私)』
わくわくしている。一応この競技、
華は使ってはいけない上に浮遊も厳禁だが、
使う目安量を決めさせて貰えている。
位置に付いてという声に、メルも位置に付いた。
本当は隣をみたい。でも、此処は我慢だ。
前だけを見据え、その先には誰も居ない場所で在るべき。
セットという声に身体を上げる。
嗚呼、わくわくが止まらない。
ぱぁんと鳴り響く音と同時に走り出す。
歓声を無視し、とにかく手や身体の力を全力で抜き切った。
徐々に走りを速め、一定に保たせる。先に居るのは誰も居ない。
ならばひたすら前に突っ切るのみ。
力を抜いて、とにかく走り続けると、隣から声が降りかかってくる。
「はやくなったな!!!」
煩い。笑ってしまったのが悔しいが、ちゃんと流れを戻す私も偉いと思う。
前だけを見て、とにかく走る。後ろの子になんて目向きしなくていい。
速い、速度が、身体を息を殺してくる。楽しい、走るのが楽しい。
今迄ずっと、生きる為に走り続けていた。
筋トレとかも割と生きる為だったし、こうやって何かの為だけに走るだけだなんて、正直してなくて、本当に久しぶりの感覚だった。前がキラキラしていて、世界が彩られ、綺麗に見える。
こんなにも透き通っていたんだ。
「…っ、」
「笑って、おるのか?怖い?」
「いや、違います。」
目を輝かせて、笑った後の真顔が、目が、燃える様に熱い視線を向けていた。
本気なのだ。メルは力を一切使わずに己の筋肉だけで動いている。
彼女は案外利口で、筋肉の使い方は他の人よりも上手い。
それは筋トレやら日々の修行メニューを課しているコルンも分かっていた。
速度が早過ぎる訳でもなければ、力をごり押しするだけの量が在るわけでもない。
それでもそのままメニューを置いて誰かと共にやらせるのは、一人でないと言い聞かせる為。
「楽しまれていますね。」
「嬉しいんだろうな。…良かったな?名付け親に報いることが出来たんじゃないのか?」
「…喧嘩なら後で買いますよ?」
「いやいや。」
目をキラキラさせている。何か楽しいことが見えたかのように。
口を開けて、前を向いて、走っているのだ。
その綺麗な動きときたら何と言うべきか。
無駄が一切ない。強いて言うなら顔の表情くらいだと思う。
身体の重心は一定で、ブレ等一切ない。
声を掛けられても笑うだけですぐに持ち直すのだ。
その動きは、隣で走る父親とそっくり瓜二つであって…。
「あの方の真似をずっとなさっていたのですかね…それとも」
あの方こそが、貴方の父親であるとでも、言うのですか?
エフェメラル様。
パンが見え、その手前で足を踏ん張る。
ホップステップジャンプで飛び上がった処に口を開けた。
一発で咥えられたまま、驚く感情を抱きつつも走り出す。
とにかく食べ飲み込む。そうしないと走るに走れない。
片手で押し込みながら走りを緩めず息を吐いて吸う。
前に父が走っていた。
嗚呼綺麗だな。ついていくなんて勿体ない。
私はずっと背中を見続けていた。
隣で歩くなんて、最初から諦めてたのだ。
でも、今は違う。
食べた物を押し込んでから、速度を一気に加速させた。
ゴール地点で転げ落ちるかもしれない。それでもいい。
「っ!!!」
楽しい。隣に走ってる。
横を見れば、驚いた顔をしている父親がみえて。
ねぇ、楽しい。楽しいよ、私。
白いゴールテープに向かって速度をとにかく速めた。
一度だって勝てなかった。今なら勝てる。絶対に。
そう思ったから、いけないのだろうか。
足ががくりと落ちて、目の前で転倒した。
歓声の音が鳴り止む。転倒の声が鳴り響いた。一体誰の?
『〜〜〜っ!!!』
痛い。変に動いたからか、身体を打ちまくって動けない。
これくらいで根を上げるのか。違うだろう?
転がりながらも体制を変え、走り出す。
痛くて声が上がる。心配そうな表情が此方を見ている。
煩い。煩いそんな顔でコッチを見るな。笑え、笑ってしまえ。
痛くない。痛いのは、嗚呼痛いのは、
『っああああ』
この時間が終わってしまうことなのだ。
止まっていたゴールテープはない。
崩れ落ちる様に倒れたメルの元に大丈夫かと声がかかる。
嗚呼、嗚呼嫌だ、嫌だ、嫌だいやだいやだいやだいやだいやだ。
勝ちたかった。もう心配しなくて良いよって言って貰える為に。
安心して欲しくて。笑って走りきりたかったのに。
いつもしない転倒をした。痛くて痛くて堪らないのに、胸が張り裂けそうなくらいに痛い。
悔しい。ただただ悔しすぎる。もう一度したいなんて思わない。
それ程に完璧な走りだったし、最後までやり切った。
なのに勝てなかった。勝てる筈だったのに、勝てなかったのだ。
泣き崩れるメルに、よく頑張ったと下から抱きしめ掬う父にボコスカ叩きまくった。
背中を、ぎゅっと掴んで嫌がった。嗚呼、終わった。キラキラ光った、時間は、何処にも無い。
一瞬で消え去ったのだ。嗚呼、もう、嫌だ。一瞬で終わる時間なんて、うんざりだ。
胸が熱い。燃える様に、深く深く、何処までも深く見える。
パチリと音が鳴った。胸元に光る感覚が、前と全く違う。
でもそんなの構っている暇ではない。今は目の前の、
「偉いね、よく頑張った。」
『ん〜〜〜〜!!!!!』
「いたいいたい、いたいから…!!でも2位とか初めてじゃない?」
『にゃ!!!!やだ!!!!1位じゃないとやだ!!!!!』
「ぷっはははは!!!!」
『やあああああああ!!!わらうなああああああ!!!!!』
うわあああんと大人げなく泣いているメルに、白いタオルがかぶさってきた。
偉い偉いと重しがのしかかってくるので、煩すぎてギャン泣きしながらも宙に振り上げる。
バチリと音を鳴らし、下から這いあげた感覚。
吐きそうになる程の胸やけの後、タオルから顔を出せば、周りの表情が固まっていた。
あれ?
「…え?あ、え????」
「いあ、あ、き、のせいか、」
『…なに。もんくあんの。』
「なんでもないです!!!!!!」
全く何を慌ててるんだか。
父親の方を向けば、唖然としている。
『夢だよ』
「…だ、よな。」
そう、夢だよ。これは夢。メルはそう言い聞かせながら肩を落とした。
世界が、色を戻していく。あんなに綺麗な場所だったのに、もう通常の色合いだ。
コントラストがキラキラして綺麗なはっきりした場所だったのに。
一応第2の人間で行ったので、メルは第2へと足を歩めた。
歩けるのかと声がかかるも、大丈夫そうなので歩いていく。
其処に空からメル!と心配そうな声がかかる。
「大丈夫ですか!?そんな歩いて…!!」
『大丈夫。それよりごめん。』
「え?」
『1位取れなかった。』
「…2位等充分過ぎますよ。ありがとうございます。」
よく頑張りましたね。そう抱きしめう抱いてくれる。
悔しさが胸を押し付けてくる。喉が痛い。胸が痛くて堪らない。
『…だめ、なの』
「え?」
『いちい、じゃな、いと。だめ…!!!』
「…心配かけちゃうからですか?」
『っふ、うう。』
「寧ろ心配してなさそうですがね。」
え?
「全力で走ったのでしょう?それが何よりも、嬉しいことだと私は思いますけどね。」
ほら、つきましたよ。
「全力で和えられてしまいなさい。」
「めるううううううううう」
「うわああああああああああああああん」
『うにゅあ』
降り立ったところにぽんと置けば、ヘレスだけでなくミラ達もよってたかってメルの身体にしがみついて泣きだすではないか。あんなに悔しくてギャン泣きしたのは正直初めてだし、いや正確にはあるんだけれども、この世界に降り立ってから一度も外に見せていないというのが正しいべきか。
あの日も泣いた。沢山泣いた。見て欲しくて、でもいなくて。
だからずっとずっと、偉く良い子で居なければと枷を付けた。
それでもあの日に勝る程の時間は存在していなくて。
息がずっと苦しかった。
2位でも良いと思ってたのに、こんなにも悔しいものなんて、覚えたくなかった。
知らないままで良かった。こんな痛み、持ちたくないのに、不思議と嬉しい気持ちが混じってきてしまう。
嗚呼、私、まだ貴方に勝てないんだなぁ。
++++++++++++
ギャン泣きが黒歴史になるであろうということはもうこの際潔く諦める。
ことにしたくはないが、そうするべきだろう。
メルはミラに言われたことを思い出していた。
『(いつの間に黄色いカタバミを樹の様に咲かせられたの…?)』
そう、メルがタオルを被っている間、どうやら地面から大量の樹木が生えだしていたらしい。
現在ギャン泣きしたのもあって新樹のメンバー12名が駆り出されている中、一人でぐずりつつも彼らがいたであろう席に着席して父親が審判しているのをぼーっと眺め見ていた。
樹木なんて、白い華でしか咲かせられないのだ。
カタバミが成長して、なんてそんなの在り得ない。
だとすれば、新しい華がこの胸に咲いたというものであって。
あの時、鮮明に綺麗に見えた。それは、本来咲かせるべきだろう華なのだろう。
終わりを告げている。
胸に手を置いた。また出会える気がする。割とすぐに。その華を知ったその時には、私は。
『(考えるのをやめよう。)』
次は100m走特別枠だ。全宇宙誰でも参加できるという話にメルもいかない?と言われて拒否する。
出来れば此処で父親と走りたかったのだが、あんな状態醜態を見せしめらせたら後で出るのがきつすぎるものだ。
正直今すぐ時間を戻してしまいたいのだが…何故かそんなことをしたら、二度と華が咲かない気がして怖かった。
だから時を戻すことはしていない。
因みに新樹の得点は最後に持ち越すらしい。
かなり僅差だったらしく、このまま保留だそうで。
「『あ』」
裏側に来れば出るの?と聞けば出るらしいと答えられる。
此処は前の段階でウォーミングアップする場所。
バックグラウンドと言うべきだろうか、
観客席の真下に位置する場所に
幾つか配置されているその一つにいた。
どうやら特別枠は全宇宙外の人間を集結するらしい。
私は何番くらいになるんだろうか。
「元華樹神候補者が出場するらしいよ。」
『へー』
「…余り乗り気じゃなさそうだね。」
別に乗り気な訳ではない。
『勝ちにいくだけなので。』
「…ほんと、さっきのギャン泣きと良い、面白い子だね。」
『うるっっさい。』
本当にマジで煩い。メルは一体誰だろうと思っているとも〜シルヴァったらと声がかかる。
「急に外に出るんだからこっちの身にもなってよね。」
「ごーめんごめん。」
「あれ?ひょっとしてエフェメラル?うわ〜〜〜お姉ちゃんになったねぇ!!」
『わぷっ、ちょ、まっ、ミスティアさん!??!』
頭をガシガシと撫でられる。もう、髪の毛を纏め直すことになってしまったではないか。
乱暴に紐を解けば、バチンと音が鳴る。あっ、これ壊れたか。
手のひらに置けば、金色の髪紐が二つに割かれていた。
うわー不吉ーという声が上からかかる。
服の中に仕舞い込み、あらかじめ持って来ていた黒いゴムを取り出し付け直すことにした。