ありがとう、呪いも魔法も解けました
あの白い空間から出られたのは、すぐのこと。
各宇宙に戻った天使達がコンタクトを取り、急いで向かった。
「メル様」
「事情は聞きました」
「ある」
アルト、と言わず前に、身体が飛ぶ
「っお兄様!!!」
「…ま、及第点としますか。」
「…っ」
「処罰は受けます。」
そう膝をつくサワアに、続いてウイスやモヒイトも膝まづく。
それに対し、冷たい目でどこまでも見続けてくる彼女。
旅をしていたりメルを見ている時は優しいくせして、
彼女は怒ると本当に怖いのだ。
「…ま、メルも言っていますから許しましょう。
優しくしてもらえたのは事実でしょうし。」
「優しくしない訳がないでしょうが。」
「お兄様…」
「あの方を出すために色々考えた挙句ああなってしまったのです。」
「口を慎みなさい」
「…失礼」
淡々と言うアルトに、余程切れているなとサワアは考えた。
まぁ無理もない。あんな部屋であんなことが続いていたのを
こんな場所ですぐに知られれば来たらボコすのも分かる。
自分だったら普通にそうしているだろう。
「サワア様」
「はい」
「覚えてますか。私達が出会った時。」
「…忘れるわけがないでしょう。」
小さな子供がわらわらと集まる。
その中で、ちょこんと立っていた
金色の彼女が此方を見ていた。
その下に、黒い髪の毛をした同じ身長の子供が、此方を見ているのを。
「僕は、忘れもしません。」
「……はぁ。まぁ今回の件は貴方方の意見を汲んで、許します。」
「ありがたき幸せ」
「次あるのも一応知っているので、期間が分からない以上此方に居ることでも構いませんよね?」
「はい」
「全員このまま此方へ。アンダルシア」
「はっ」
「エフェメラル様を頼みました。」
そういって前を歩く彼女。その先は全王宮だ。
++++++++++
「という訳です。」
「おや、そのようなことが」
「彼らを少々借りますが、よろしいでしょうか?」
「だ、そうですが、構いませんね?」
そうちらりと大神官に呼ばれた各宇宙の者達が、頭を下げる。
「ですが、少々とはどれ程の期間でしょう?その間付き人は変わるのですか?」
「だそうですが」
「変えませんし変える天使も生むつもりないのでしょう?」
「勿論」
「なら暫く天使は此方で。その代わり各華神が付き人の代わりとしていきます。」
ご安心をとアルトが淡々と説明をする。
その背筋が通った振る舞いと指示。
立派になったと、大神官は少し考え深く思っていた。
「なるほど、華神様は加護天使様でもある者。
その加護天使様が、ビルス様達破壊神の元にいくと。」
「そういうことです。一応原初が行くはずなので、そのつもりで。」
「すいませんビルス様、このようなことになってしまいまして。」
「いいいい、お前が悪さをしたわけじゃないだろう。」
そう何時帰るかも分からない以上、こういう形になるのも頷けた。
ビルスもまたすぐに変わったウイスの気に気付いていたのだ。
何事かがあったのだと、それが、華樹神の関係だとも。
「噂はあったし、実際天使ですら抜け出せなかったんだろう?
巻き込まれたんだからきっちり終わらせてからじゃないと帰ってこられても困る。」
「…すいません」
「だからいいっていってんだろ!!」
軽く怒る彼に、ウイスはホッと安心する。
案外あの白い空間は堪えるようだ。
天使と言えども、元々を辿れば華樹神、いや人間の部類。
奥に眠っていた自分が、呼び覚まされた感じがして怖かったのだろう。
「…だから大丈夫だ。」
「ビルス様?」
ぱたりと落ちた雫に、驚くも、そっとビルスが言う。
「俺は見ていないからな」
「…っくす、ええ、すいません。目にゴミが入りまして。」
「ああ」
「よろしいので?」
「ええ」
ウイスが破壊神と会話をした後、コルン達は集まってアルトに連れられ
そのまま華樹神の内部に居ることが決定している。
その為、ウイスが来るのを待っていたのだ。
「すいませんお待たせしました。」
「構いません、それでは大神官様、彼らをお借りします。」
「はい、皆さん頼みましたよ。」
そういった彼に、はいと一言答えあとにする彼らを見て
ふぅと大神官が息を吐いた。
「もう出てきてもらって構いませんよ?」
「……流石に殺したりしませんよ?」
「いえいえ」
そう出てきたのはルトラールだ。メルの気配に気づいてすぐに戻ってきたのだ。
あの場所で起きる出来事に良いことは一つもないのが悲しいところ。
呪われていて、もう引っ越した方がいいのではと言いたくなるレベルなのだ。
「それよりいいのですか?」
「なにがです?」
「うちの子が貴方の子を取ろうとしていますが。」
「…ま、あの子なら。」
「おや、買いかぶっておいでですか?」
「いいえ。あの子は自身の力を最大限に使ってあの子を守ってくれました。」
ー申し訳ありませんでした
「己の力が力量不足で不甲斐ないにしろ、
逃げてすぐに助けを呼ばなかったその愚かさ。
知識がありながらも実行にうつせなかったと、
過ちを後悔して前に進もうとするその姿勢。」
「おやおや、本当に買い被り過ぎでは?」
「まぁやり方はどうにせよ、あの子も目を向けた。」
それが、何よりの証拠なのだ。
「寧ろいいのかと言うのは此方のほうです。」
「ほぉ?」
「貴方の子を貰っていいのですか?」
「彼が良ければ。私は何も言いませんよ。」
「…はぁ、そんなことを言えば何も言えません。」
クスクスと笑う大神官にルトラールは呆れてため息を吐いた。
「どうせなら早く孫を見せてもらいたいものですね。」
「……あの子が本当に素直になればの話しですが。」
私に似ましたからねえと言うルトラールにクスクスと大神官は笑った。
「ま、本当に欲しいと言い出したらあの子から来るでしょう。」
「違いないですね。」
++++++++++
「あの、アルト様」
「此方が貴方方に住んでもらう場所です。部屋は二階の上がって左側になります。」
「えっと…そのすいません」
「なんです?」
「此処、来たことあります。」
悲鳴が上がる声に、メルが煩いと言って紺色の服を着てベランダに出た。
「おや」
『〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!!!!』
悲鳴にならない悲鳴が更に上がった処で、話が進む。
「お茶を」
『ありがとう』
此処はリビング。華樹神の最奥にある部屋のまた奥に眠ったメルの寝室部分。
その空間は球体上になっており、
半分から上に家が。下はほとんどが土に埋まっている。
勿論地下もあるが、其処は家の下のみ。
現在天使とメルらは、メルが一番過ごしていた一人の空間のリビングでお茶を飲んでいた。
「あの、メル様」
『なぁに』
「その…」
『謝罪は受け取らないですよ?
それに私が第二回戦言い出しちゃったから
どっちかって言うと怒られるの私の方ですし。』
仕事止めてほんとすいませんと謝るメルに、
4人ともいやいやと首を振ったり顔を上げて下さいとせかす者も出る。
「あの場所自体貴方が原因ではないのです。」
『いやでも元々魔女が出したもの、ならば華樹神の責任では?』
「ですが、それも神ですら見つけられない場に責任など
一体どう取らせるのです。」
「コルンの言う通りですよ、エフェメラル。
今回に関しては貴方の記憶そして彼らのを総合してみましたが
どう考えても誰にも非などないし、嗚呼するのが最善でした。」
…まぁ、流石にアルプスは笑いましたが。
そう言って後ろを向いて言うアルトにメルは苦笑いする。
『後でしようね、アルト。』
「…クスも入れてですよ?」
『はいはい』
「それで、此処で住んでもらうのですが、勿論消えたら
ちゃんとブザーが鳴るように設定しています。」
『この利用は前に説明したよね?ま、一番末っ子は聞いてないだろうが。』
「…どういうことですか?」
にやりと笑うメルに、アルトはため息を吐いて手を前に出した。
「一度我々は此処に来ているんですよ。」
「………まさかアレですか?」
「ええ、アレです。」
「アレが、ここだと????」
「ええ」
『…私ほんと散々言ったけど、此処人を入れる前提で作って無かったのよ。』
「滅茶苦茶綺麗じゃないですか。」
創造とは、精神統一。頭の中で精巧に作らなければ、その力は現実に発揮されない。
そう、この空間もこの場所の見た目も物も何から何までだ。
メルの想像力は、本当に素晴らしいものだと言うのはアルトだ。
「貴方達天使も分かるでしょうが、創造とはかなりのエネルギーが生じるもの。
実際作るよりも取ってきて組み立てた方が数倍もマシなのです。」
「だからこそ、これはやりすぎではと思ったんですが…」
「ほら言われていますよ?メル。」
『煩い、私がこうしたかったんだからいいでしょうが。』
むすっとするメルが胡坐をかいて言う。
今までこうしていうのは無かったので、
嬉しそうにサワアは笑ってしまった。
「ひとまず、この場で待機、と言う事ですね?」
「ええ、華樹の仕事も一時中断です。」
『ええ〜〜〜〜〜』
「聞いてますよ?貴方0番目から12まで全て仕事厨だったそうじゃないですか。」
「ちゅう?」
「中毒という意味では?」
嗚呼なるほどと納得する天使達を無視してアルトが告げる。
「流石に食事量を誤魔化す程までするのは看過出来ません。
通常であれば仕事を増量しますが、各華神達の判断を考え、
結果仕事自体を禁止することにしました。」
『あsどふぁsdfkじゃそdfじゃsどふぁいsjdふぉ』
「言い訳は通用しません。その間はルメリア様が代わりにします。
なので私も空きましたが、各華神達の様子も知りたいので暫く離れます。」
アルトが説明をするのは、彼らに任せるということだった。
それには良いのですかとモヒイトが手を上げる。
「我々は償いきれない罪を犯したというのに、野放しにするということですよ?」
「何度も言いますが、あの状況下でああなれば、
私だってメルの様に動きますし、貴方達の様に動きます。」
仕方がないとしか言いようがないのだ。
「あと仕事の件については別件です。
ついでなのでお灸据えですから悪しからず。」
「それはそれは…」
『あるとおおおおおおお』
「問答無用!仕事って言っても鍛錬もですからね。」
「おやまあ」
「まぁ4人も目があれば大丈夫という判断もあります。
貴方達の噂はよく聞いていますからそれでは。」
「いってらっしゃいませ」
そう言ってお辞儀をしたウイスに、アルトは軽く笑って手を振って消える。
「いい加減泣くのは止めたらどうです?」
『ううう、ううう、しごと、うう、げんじつとうひ、うううううう』
「現実逃避して忘れようとしたのが駄目になりましたねぇ。」
『うううう頑張ってたのに!!!!!!!』
「頑張り過ぎなんですよ。
その威力を此方の破壊神にも分けてもらいたいレベルです。」
「うちもですね。」
そう二人がため息を吐くのに、メルやサワアらは苦笑いする。
「それにしても、あれから変えてないのですね。」
『当たり前でしょう。一応此処は私の完璧なおうちなので。』
「部屋は上ですよね?」
『まぁ、ついてきてください。』
メルは駆け足で行くのに、コルンが走らないと言う。
それにはあいと言って笑い声と足音が聞こえる。
「こら!!メル様!!ドタドタ足音を立てないで下さい!
神ともあろう方がみっともないですよ!!!」
「まぁまぁ、いつも通りにした方が楽なんでしょう。」
「こんな可愛らしい形を良く創り上げましたね。」
「しかも其処迄年月を経ててないようなんですよ。」
「…本当に界王神も見習って貰いたいものですね。」
二階へ上がる中、天使達が雑談しながら行くのをメルが上で見ていた。
それに気付いたコルンが止まる。
「メル様」
『いひひ』
「その姿でしゃがまないで下さい!!したが見えるでしょうが!!!」
『きゃ〜〜おこられちった!』
「だから浮かないで下さい!!!」
『も〜〜思い出すから?』
わなわなと震えると思ったメルだったが、
そうですとサラッと言われて目を丸くした。
「貴方を二度もあんなところに連れて行くと思うと、
胸が張り裂けそうになってしまいますから。」
『………ご、ごめん。』
「分かればよろしい。」
「手名付けましたねぇ〜〜」
メルを何度も叱って分かったのだ。
ちゃんと気持ちを前にだせば、彼女は理解する者だと。
『手前からモヒイト、ウイス、コルン奥がサワアの部屋。』
「おや、前に見た時とは部屋が違いますね?」
『前は大人数部屋にしたからね。スイッチで変えれる。』
そう部屋の電気を変えるように、
パチパチと音が鳴るたびに景色が変わる。
複数のベットが並ぶ部屋から、一人の小部屋まで。
明るく暗く、部屋の壁まで変わる始末である。
『此処を押して開くと細かい選択が出来る。』
「ほぉ…まさかこれも?」
『この空間あるものは私の知恵で出来てるからね。』
資料は別だけど。
「本当に爪の垢を煎じて飲ませたいですね。」
『アレ飲んでも無駄でしょ。
魂から書き換えないと無意味だって。』
「…それ、本人の前で言ってもらっても?」
『あはは〜無理無理!』
そいじゃ、他の部屋も同じだから、出来たら私の部屋来てくれる?
と言ったメルに、4人は分かったと言うように頷いて各々部屋に入ることに。
『…さて、厄介なことになってねぇ〜〜〜』
ブンと球体を出して話をするメル
『どういたします?皆さんや』
ちらりと見上げたもの達に、メルはにやりと笑って言う。
ー普通に
「殺すべきでは?」
「キャド」
「だってあの天使がただで愚弄する天使がこの様。前々から弱いと思っていましたが、此処までだと呆れてものが言えません。私は断じて放置は厳禁だと。」
「キャドの意見も一理あります。4人でアレは流石に無謀かと。」
「…だが、彼女の力を最大限に利用しても、じゃぞ?」
そういったのはアンダルシアだ。
「メルは力を隠れてでも使って攻撃を入れた。」
「…え、まさか」
『ばれたかあ』
「阿保、バレるにきまっとろうが。」
一瞬に紛れ込ませ、自分の力も入れてブザーが鳴ったのを思い出す。
あの時良いと言ったのはそういうことなのだ。
自分も同罪、下手すれば、私の力がいけない可能性だってある。
「よって、これはメルが悪いと思う。」
「同じく、魔女という異空間を知りつつもむやみに
それもこっそりするということ自体が無謀。
普通相談をしてからするというもの。」
「だがあの感じでさせてくれるとは思うか?」
「んんん」
各々が会議に参加しては協議を繰り返す中。
メルは足を組んで後ろに腰をかける。
「どうした、メル、浮かない顔だが。」
『…ねぇ、皆。』
「なんだ」
『その、えっと、ええ、こういうのなんていうんだろう』
「はっきりいわんかこの頓珍漢」
『ああ酷い!!』
えっとね?
『好きを殺す方法って、知ってる?』