青を一匙、分けてくれ




前回のあらすじ


急な晩御飯大会が開催されました。


メンバーは此方

タケノコご飯
モヒイト&リフレイ

春野菜と豚肉の甘辛炒め
コルン&ボールパーク

菜の花のお浸し
メル&アルカポネ

春キャベツの汁物
ウイス&スコーピオン

イチゴアイス
サワア&ティーナ


++++++++++


さて。

「結構同じ場所ですね。」
「ま、そりゃ殆どが右か左の菜園ですし。」

最初はほぼ同じ様に来た者達だが、
それも場所が違う。

「いやにしてもなんでタケノコを数時間でいけると思ってるんですかね。」
「お前まだわかんねぇのか?」
「というと?」

そう右側に入った組である、スイーツ系と主食が会話をする。
左側は主菜とスープ系が先に入っていったのだ。

「あいつは嬉しそうに言ってただろ?
私達は魔法という力を手に入れたのだと。」
「いやまぁそうですが、単に気を練り込んで灰汁を出すとかでは?」
「は〜〜〜甘いなお前も。男に変わると頭も固くなんのか?」
「ほぉ?いいますねぇ?じゃあ何ですか貴方ならあく抜きすら簡単なタケノコを取れるとでも?」

カチンときたリフレイに、出来ると言い切るティーナ。

「簡単なことだ。灰汁のないタケノコを取ればいいんだよ。」
「………待って下さい、日本語が。」
「煩い、ごく簡単なことだ。」
「…まさか、この菜園って」

気付いたかとサワアが言ったことにティーナがにやりと笑い言う。

「そう、此処は華樹神のエリアにも入る場所だ。
願いが叶う、菜園なのでそれはつまり。」
「引き抜く時に願った味そのものが反映されると。」
「そういうこと。だから稲を刈るのも変な話
炊いたご飯を想像すれば出てくるわけだ。」
「ま、そんなことをしても意味ないでしょうがね。」
「何故です?」
「今回のタケノコご飯というのは炊いてから混ぜるのではなく
炊く前に入れて調理をするものですから。」

成程、炊いてからだと無理ですね。
だからメルは調理器具を使う時は一声かけろと言ったのだろう。

「タケノコはあく抜きをした者が担当した方がいいでしょうしね。」
「だろう?」
「ですが他の者は?」
「ウイス辺りに関しては文句ねぇハズだ。あいつは何気にメルとずっと生きてただろ。」
「嗚呼アレですか。」
「その時間あいつの知識を受けている可能性が非常に高いからな。」

徹底されたこの菜園の量を管理していたと考えれば、まぁ納得が出来るというもの。

「ですがそれならコルン達はどうなるんです?」
「あそこは検閲はいるから。」
「検閲?」
「ウイスのことですか。」

そういうこと、そういって離れるティーナに、サワアもついていく。

「じゃ、何かあればまたな!」
「ええ」


足音を立て、歩くティーナが声を掛ける。

「心配か?」
「何がです?」
「あたしの前でとぼけようったってそうはいかねぇぞ?」

ちらりと見た赤い目に、少しびくりと反応してしまう。
全くこの場所は本当に不思議なところだ。
この世界から出たら元に戻るというのに。

この世界の中に居る時だけは、昔のように接してしまうのだから。

「此処は否が応でも元に戻る空間なんだ。」
「元に戻るとは、一体どういうことですか?」
「お前気付かない訳がないだろ?
その臆病さが完璧にいつも隠れているのに何故出てくる?」
「…まさか」
「そ。メルをみたら一目瞭然だが、
あいつの様に元々隠していた素が
此処では半強制的に出てくるってことだ。」

逆に言えば、素を見れる絶好の機会でもある。
此処はある意味嘘のつけない空間なのだ。

「ま、こうやって人を使わずに作れるもんなんだがな。」
「…仲良くさせたいのですかね。」
「だろうな。不安なんだろ、自分の周りが仲良くなかったから。」

今まで、彼女の生まれる場所は何時だって不憫だった。
一度も嬉しそうに笑えたところなんて、何一つないだろう。
なんなら、11番目以降は親など存在すらしていない。

親が一番、周りに近い場所なのだから。

「だから不安を解消させられるならば、ってね。」
「…ティーナ様、貴方も本当にお優しい方ですね。」
「よせやい、照れるだろ!あいつの方が何倍も優しいんだ。」

酷いくらいに。傷付くくらいに。
そういったティーナに、そうですねとサワアは答えた。

「…此処だな。」
「そうですね。」
「おもいっきりデザートと場所の回数書いてるな…」
「まさか日本語とやらです?」
「嗚呼ってお前まさか読めねぇ奴か?」
「ええ。」
「…嗚呼成程、あたしを付けたわけだねぇ。」
「?」
「気にするな。」

さてと、面倒な処いれてるなぁと言ってティーナがこんこんとノックを入れる。

「甘い甘い、時間をおくれ。いちご、いちご、ストロベリー。」

そういったティーナがドアを開けた。
其処には一面の赤と緑が部屋を埋め尽くしていた。

「イチゴは種類があってな、実がしっかりしていたり
酸味が控えめだったり、香りが強く程よい酸味だったりと
まぁ色々あるんだが、食べてみるか?」

こうやってへたの方をとティーナがしゃがんで話す。
それに、サワアが聞いた。

「ティーナ様はイチゴを栽培されていたのですか?」
「いいや、あたしはリフレイと一緒にバーテンダーをしてたからな。」
「ばーてんだ?」
「カクテル、まぁ酒を造ってたんだ。」
「ほぉ、お酒を。」
「正確には出来た酒を混ぜ合わせていくんだよ。
その混ぜ合わせた酒にトッピングを入れたり
隠し味を入れるのに、こうして果実を取ってたってわけ。」

にやりと笑って軽く取ったイチゴを彼の口の中に突っ込んでやる。
本当はあーんなんてさせたくはなかったのだが。

「…っ!美味しいですね!」
「これが程よい甘みと酸味の王道ってイチゴだ。」

こっちが、と言って取りながら
何かを思い出す様にしながらも説明するティーナ。
成程とサワアはメルが言っていたのを納得した。

彼女はとても真剣に物事に対して向き合ってくれる。
誰かを傷つけるわけでも、取るわけでもない。
確かにあるソレに対して、面と向き合う心の持ち主なのがティーナ。

そんな彼女を優しいと言わない人など、恐らくいないのだろう。

サワアは頷きながらもティーナの話を聞きつつ口にイチゴを入れて覚える。
ある意味これはかなり質のいいものを作らねばならないのだ。

「この中でお前はどれがいい?」
「糖度が甘くまろやかなものでもよかったのですが、
やはり最初の味が忘れられませんね?」
「…はぁ〜〜〜?惚気か?このやろう。」
「のっ、私何時メル様のこといいました?」
「イチゴにも花言葉がある。」
「食べ物にもですか?」
「植物には花が咲きそしてただ食べれるものがイチゴだっただけだ。」

花言葉は

「貴方は私を喜ばせる、尊重と愛情、幸福な家庭、先見の明だ。」
「……ほんとです?」
「事実だ。」
「…流石に無意識とか言いませんよね???」
「恐らく無意識だろうな!イチゴは春に実る果実だし、あいつも好きだったんだろうよ。」
「…なら、いいですが。」
「ま、他の奴らもアタシらみたいなそれに気付いたら合格だがね。」
「?」
「気にしなくていいよ。」

ほんと。

「あいつは何時だってそういうんだから。」


++++++++++

菜の花、そうアルカポネは上から見下ろす。

大体花を咲かせる前に収穫する菜の花は
数十センチ下あたりをはさみで切り取るか、
その自身の手で自ら手折ることで収穫される。

「ほんと、手折らせにいかせるとか、馬鹿なことね。」

いや、逆か。

「手折らせたくないから、貴方は此処を選んだと言うの?」
『そうだとしたら?どうするの?』
「……花言葉、知ってるでしょう?」

にやりと笑う彼女の笑みが感じ取れて鼻で笑ってしまった。

「小さな幸せとか元気一杯って言葉以外にも明るさや豊かさもある。」
『…そうだね。』
「いつも元気一杯でいて欲しい人に、
小さな幸せをお裾分けしたいために、
貴方は自らその手で手折るの?」
『…そうだね。』

「庭に咲かせたのは2つ理由がある。
1つは誰にも見つけられたくないから。
もう1つは空の下で育てたかったから。」

庭に咲いた、華を何処までも見続けたい。

「貴方の時間にある大事な記憶は全てこの庭に集結されている。」

違う?そういったアルカポネに、ご名答とメルは答えた。

『此処は全部私の時間で必要な花や植物、食べ物が植えられている。
全てにおいて意味があり、全てにおいて愛情を注がれている。』
「だから適当に手折ろうが、はさみできろうが、大丈夫。
ただ、その意味を、知られたくないから私をということ?」
『知ってるなら言うまでもないじゃん。』
「貴方の考えが未知数だから答え合わせしたんでしょうが。」

そうペキンと音を立てて折るアルカポネに、
メルはそうだねぇと言って軽く手折る。

『これね、私に愛情を教えてくれた人が好きだった料理なの。』
「……それ、1?それとも」
『ぜろ』

目を細めて言うメルに、アルカポネが、パサリと落す。

『落ちた先で死んだ願いが愛情が芽生えた時。
私花言葉を聞いて、本当にいいなぁって思った花であり、
同時に恨みつくした花でもあるんだ。』
「…なんで」
『父と母は花を好きではなかった。』
「っ」
『お花見、させてくれなかったんだぁ。』

そっと背中から抱きしめるアルカポネに、大丈夫だよとメルはアルカポネの手をそっと繋ぐ。

「大丈夫、此処は、此処は過ぎた場所。」
『うん…知ってる、知ってるよ?もう戻れない。』

戻らなくて、良い場所なのだから。

『でも、これは気付かなくていいんだよ。』
「…バレると思うけどなぁ、特にティーナは無理でしょ。」
『あはは、アレ以外は何とかしたいね。』
「…ほんと、人選凄いね貴方ってば。」

さ、手折るよ。

『私と貴方で』

この花畑を。


++++++++++


「メル様」
『おっと、帰ってきたか。』
「何ですかその緑みどりは…」
『何って普通の菜の花。湯がいては叩き落しての繰り返ししてるだけ。』

ちなみにこの液体は全部第8行きだからね。
薬草系ですか。そうですねぇ。と話が続く。

ぐつぐつ煮えたぎる中、汗を一つもかいていないわけでもないだろうに。
サラッと言うものだから、此方の気を取らせない。

『鍋ならその机に置いてる札2を持ってって。』
「これですか。」
『大きさは貴方方に任せる。
気を練り込めばちゃんと大きさ変わるよ。
他の子達も場所を取ってやってるから、
数字の場所に向かって作ってね。』
「ではお借りしますね。」

手を振るメルに、ぺこりとお辞儀をした。
もうすでに何組かは調理を開始しているらしい。

「量がえげつないですから、さくさくっとしましょうか。」
「そうですね、先に野菜でしょうか。」
「ええ、味付けなどはレシピ通りに」

そうボールパークがふわりとレシピを浮かばせ、
ふむとコルンが頷きつつも内容を読み続ける。

手分けしてしましょうと説明をするコルンをそっと外から見ていた。


「休憩ですか?それともやきもち?」
『っ、ウイスさん!』
「お鍋を頂きに来ました。」
『嗚呼入って入って、中に4の』
「人参は幼い夢そして小さな幸せ。玉ねぎは不死と永遠。
ネギは愛嬌笑顔微笑み、そして挫けない心。」
『…ウイス?』
「ニラの花言葉は、多幸そして星への願い。
それに加えてあの二組。意味がないだなんて、流石に人が悪いですよねぇ???」
『……はは、ばれちったか。』

ええ、と微笑むウイスに中に入るように促す。

『キャベツは利益。価値のある者という意味を込めた。
まぁ後は君の知る事実から憶測を言えば正解だよね。』
「ありがとうございます。」
『いえいえ、力を使えばそのまま反映される。
料理楽しみにしてる。頑張ってね。』
「はい」

帰るウイスに、メルはそっと息を吐いて調理の方に戻った。
もういいの?と言うアルカポネにそうだねとメルが言う。

『息が苦しくて』
「っはは、そのまま苦しくなってたら?時期に慣れるよ。」
『慣れたくないなぁ』
「離れがたくなるから?」
『……』
「おおこわいこわい。そのままの顔で人と会話しないでよ?」

しゃがんでから言うメルに対してアルカポネが笑って返す。
此処からだと彼らが調理しているのが見えるから、監視にはもってこい。

まぁそれよりかはメルが普通に心配だから見たいと言うのもあるのだろう。

「楽しい?」
『…それは一体何時の?』
「今、の。」
『……楽しいよ、とっても。』
「そう、とってもか。」
『うん、、とっても。』

そうかみしめるように言うメルに、ならいいねと答えた。
あの子は優しいし、綺麗な子だとアルカポネが言う。

「スコーピオンが断言するんだもの。間違いないでしょう?」
『っふはっ、そうだね。』
「メル様〜お料理が終わったらどうしましょう。」
『げっ!?もう!?ほらアルカポネ急ぐよ!!』
「ああもうメル待って急いだら足っ」

そういってる途端、メルが足をつまずき空に飛ぶのを見つけた者達が力を振るおうとした時だった。


『っは!!』

手に力を込めたメルが空をたんと飛ぶ。
下からくいッと上げた手に合わせて今までの菜の花が空に浮かぶ。

『っせい!!』

引き分けというように、両腕を左右に広げる。
それに対し、ぎゅっと菜の花が中央に縮んだではないか。
落ちた水はそのまま家の隣にあるツボの中にどんどんと入り込んでいく。

もういっちょ、さらにくわえて!
そう掛け声を上げるメルに、なにしてるんです?
と下から覗き込むウイスにティーナが答える。

「絞り上げだよ」
「絞り上げ?」
「菜の花のおひたしはゆでた菜の花を絞ってから
調味料とあえて終わる簡単なものだからな。」
「ほぉ?それはそれは。」
「ま、あいつの得意料理の一つだよ。」
「そうなんですか?」
「嗚呼、一度食べたことはあるが、滅茶苦茶美味かったぞ。」
『こぉら、そうハードルを上げない。』

ばっと落ちてきたメルに、うわっびっくりしたあとティーナが叫ぶ。

『ったくも、この量を一度にしたことがないから
私ゲテモノ一択作りそうで怖いんだから。』
「いや絶対無理だろ。それで出来たら笑うわ。」
『まぁいいけどさ。皆真ん中に出来た料理置いてってよ。』

早くご飯ご飯というメルに、急かすなとティーナが笑って言う。
























『それではみなさんお手を合わせて!!!』





「「「「「「「「「『いただきま〜す!!!』」」」」」」」」」




「ん〜〜〜〜〜〜!!!!!!!!!!」
「美味しいですねぇ〜!」
「ええ、非常に。」
『っふふ、でしょでしょ。っふは、あふあふううい』

そうメルが笑って調子に乗って入れるから、熱くて涙目になる。

「でもびっくりしました。まさか本当にあく抜きなしのタケノコが出てくるなんて。」
『だから言ったでしょうが。ゆでてもゆでても出なかったでしょ。』

甘くてとても味のついた良いタケノコご飯が口いっぱいに広がる。
ほんのりとした甘みがまたより一層食欲をそそると言うものだ。

「んん!やっぱうめぇじゃねぇか。」
『あら流石に失敗しなかったか。じゃあ次のごはんか?』
「なんでそう失敗前提で話を進めるんですか……」

そう箸を止めるコルンにいやあ止めるが笑う。

『どうも癖なもんで。つい。』
「そういえば今日はがっつりたりしませんね?」
「確かに、前に見かけた時も無言で食べてましたが。」
『………げ、マジだ。』
「メル様?」
「どうせ、本当は喋りたかったのでしょう?」

そうちらりと見て言うのはサワアだ。

「みんなで楽しく食事をするなんて、
本音でしか語れない此処でしかないから。」
「…本音って、まさか!!!」
『あちゃ〜それ言っちゃいます?まいだーりん。』
「ええ、言っちゃいますね?まいはにー?」

ああどうしてサラッと恥ずかしい答えかえすかなぁ!?
貴方が言い出したからでしょう?おや、本当に美味しいですね。

「…楽しそうですか?」
「…ええ、そう思わないのですか?」
「いいえ、とんでもない。」

そうサワアとメルが喋って話をしつつも楽しむのを、ちらりと見て言うボールパーク。

「あの子達が嬉しそうに笑うだなんて、何年ぶりでしょうね。」
「…ああいう感じだったのですか?」
「ええ、ほぼほぼ同じですね。昔はもう少し騒がしかったですが。」

昔の様に、メルがサワアの皿から摘み食いをして、叱られる。
それに対してメルは自分の皿からサワアの口に突っ込んで食わせて黙らせる。
美味しいのと、やられて照れているのに対して気づいていないのか
嬉しそうにメルは笑って肩を落としている。

「ほんと、楽しいですね。生きててよかった。」
「そこまで言います?」
「ええ、そこまで。」

だって

「やっと戻ってこれたのですから。」

長い長い、時を経て、彼の元に戻ってこれた。
それを祝福しないで、なんになるというのだろうか。

顔に出さないサワアだが、此処にいる時は違う。
ちゃんと表情が出て、メルに叱る態度も結構大きくなる。
メルはメルで嬉しそうに身体を揺らして話を聞いていない。

「…甘いなあ」

ボールパークはぱくりとイチゴのアイスを口に広がせた。