どんな美食家も知らないだろう




ううと声が上がる。

「まさか、発作が起きて腰が抜けるまでするとは…」
「っくく、すいません。」
『うにゃ!!』

シャーと猫の様に言うメルがベットから顔だけを出して怒る。
近寄るだけでこの怒りようである。

なんなら近づくだけで人間の言語すら言わない。

「お兄様…」
「だから謝っているではないですか。」
「とりあえず、エフェメラル様何か食べたいものはありますか?」

流石にその状態で外に出るのは難しい。
何か作ってくるからと苦し紛れに提案した
コルンの言葉に、ううんと声が少し戻ってくる。

話を逸らせばちゃんと話せる処、
其処迄怒っている様には見えない。
と、思いたいコルンだ。

『…レタスとサツマイモとリンゴのサラダ。』
「わかりました。現地調達してきますので
少々お時間掛かりますがよろしいですね?」

うんと頷いた後そっと布団の中に身体を引っ込めたメルに、
はぁとため息を吐いてその場を後にする。
いたたまれない空気から抜け出したかったのか
モヒイトも後をついて来た。

「お手伝いします。」
「…助かります。」
「それにしても、本当に変わられましたね。」
「誰が、ですか?」

ちらりと見たコルンに、
モヒイトは貴方もですよと軽くため息交じりに答えて笑う。
階段を力も使わず外にぱっと出ずに律儀に降りる彼に。

昔ならばサッと力を使って調理を済ませただろうに。
時間を掛けるという使い方を一体何処で養ったのだろうか?
嗚呼、エフェメラルがというなら、本当に彼女は凄い人になる。

まぁ実際凄い人、いや天使と人間のハーフではあるのだが。

「私は其処迄変わった感じはしませんよ。貴方の気のせいでしょう。」

「充分変わりましたよ。
前はもう少しずばずば仰って
おられたではないですか。」


「…喧嘩売っています?」
「いやまさか。」

ちらりと睨むコルン。
もう階段は降り終わって玄関先だ。
それでも彼の身長は此処の階段一つ
降りなくても上を見なくてはいけない。

モヒイトはメルを肩車していたのをふと思い出した。

「また肩車してと言われたら、貴方はするんでしょう?」
「…気分によります。」
「ふふ、ほんと不思議ですよね。」
「何が言いたいのですか。」
「彼女は真っすぐにその願いを見ているというのに、
願いは違う場所に位置しているのですから。」

力の使い方が本当に不思議だと言う。
それに関してはモヒイトの意見にコルンは大いに賛成した。
天使が通常使い続けている身勝手の極意を
記憶の廻廊に入って戻ってきたとしても
すぐに出来る技量は持ち合わせていないはずだ。

願いを捨て、忘れ、消し、12もの時間を走り続けた。
何度も何度も、魂が回復しつつある中で見つけた本来の時間を。
見た時に、何度、恋焦がれ、そして絶望したのだろうか。

兄に会えた、記憶に触れれた、その喜びに。
どれ程歓喜極まったことなのだろうか。

「あの階段を上って身長が伸びたとか仰りそうではないですか?」
「…貴方も本当に変わりましたね。」
「ふふ、二人共彼女に充てられてるのでしょう。」
「そう言う事にしておきましょうか。」

ふっと笑い、行きますよと言ったコルンにええとモヒイトは続いて歩くのだった。


++++++++++

「ほれ、エフェメラル様お顔を出して下さい。」

調理後、コンコンとドアをノックしたモヒイトが
ウイスの声とドアを開けたことで
モヒイトだけでなくコルンも入ってきた。

次いでだからと自分達の分も持ってきたのだそうだ。
良く採れましたねと言ったウイスに、コルンは
うちの子達にしごかれましたのでと遠い目をする。

アンダルシアやフェル達はとても仲の良い子達だ。
加えてアルトも混ざったらと思えば、
もう手が付けられない。

一時期野菜やら食料品すらも
彼は覚えさせられたのだろうなと
メルに似たようなことをされたウイスは何となく察する。

兄や弟の分は机に置き、メルの分はそっとサワアに手渡す。
ぴょこっと貝から出てきたヤドカリの様に顔だけ出す。
非常に目が座っており、明らかに機嫌が悪いのが見えた。

もう眉間にしわが寄っているのは確かである。

『…すんすん』
「下品ですよ」
『あ』
「ん?どうしました?」
『…一口』

はいはいと言ってスプーンでそっとすくった食べ物を
メルの口に当てるとメルはぱくりと食べて口で咀嚼しながら声を出す。

飲み込んだ後、ねぇと身体をゆっくりと起き上がらせた。
まだ腰が痛そうにはするのが可哀想なのだが。

『誰が作ったの?これ。』
「主に私が。」
『へえ。誰かに教えて貰った?』
「いえ、これは…嗚呼、そう言えば」
「教えて貰ったことが?」
「前に師匠が栄養価が高いからと作ってくれたことがありましたね。」

すっかり忘れて居たと言いたそうに
彼は少し上を見ながら話したことに
やっぱりとメルは嬉しそうに笑って言う。

『ルトの似たような味がしてちょっと元気出た。』
「それはよかった。」
『ありがとう』
「いえいえ」

すっかり彼女も機嫌が戻って何よりだ。
身体を動かそうとするのに、無理をしないでと言うも
大丈夫とメルは言い切ってベットからそっと降りて足をつく。

『な、れない、と、い、けない、し…』
「…すいません。」

大丈夫だって言ってるじゃんとメルはけらけら笑うが
最早産まれて数十秒の歩く小鹿である。
流石にいたたまれなくなったのか、
サワアがもう一度謝ったのに、
メルはけらけらと笑って答え流したのだ。

「そのままでいいんですっていうかお座りください。」
『うう』
「ほら口を開けなさい。」
『腰だけだから大丈夫腕はなんとか生きてる。』
「そういう問題ではないのですから……」
「メルさん、すいませんがサワアお兄様の
言う通りにしてもらえませんか?」

困り顔で言うウイスに言われたら仕方がないと
メルはため息交じりに目を閉じ口を開ける。
ベットに大人しく腰を下ろして食べ出したのだ。

他の者達はソレを見て、別に食べても構いませんよと
言ったサワアにお言葉に甘えて食べることになった。

「美味しいですね〜」
「ええ」
『ほら逆あーん』
「あっちょんぐ」
『美味しい?』
「…………はい。」

流石に弟たちの前でいちゃつきたくは
ないのだがと思ったサワアだが、
今更かと諦めることにした。

『そういや、話がごろっと変わるけど。サツマイモだけに。』
「何の冗談かさっぱりわかりませんが、なんです?」

そうコルンがサラッときついことを言い出したのにメルがウッと唸るが、それどころではない。

『思ったんだけどさ、あの例の白い部屋さん。』
「アレですか。何か気付いたことでも?」
『前に私華樹神にちゃんとなったとき、皆半強制的に華が変わった事件覚えてる?』
「……嗚呼、【覚醒華花かくせいかばな】のことですか。」

通常華神は願いの華を創り出し、
その栄養素は生命と願いから貰っている。
気は生命的なエネルギーだが、
力の元が少々違う故か、
その作りは他の人間や天使とは異なる。

手折れば願いを止めることになり、一時的な停止へと。
願いを捨てると同意義にたっせれば、魔女にへと変化する。
それは力が余りにも巨大になり過ぎた故の、所謂ハンデというものだ。

勿論、魔女になって死んでしまわない例外もいるにはいるが。

「本来華は生涯一つだけだとお聞きしております。」
『その部屋の主がもしも同じ状態なら?』
「…まさか、願いが変わったから、部屋も消えずにということですか?」
「もしそれが事実なら、私達一生定期的に戻る羽目になるのですが。」
『いや逆を突くんだよ逆を。』
「何が言いたいんですか。」
『その部屋、私や君らの欲望が叶っていたらどうする。』


それに全員の顔が冷める。
あっちがうちがうよとメルが顔を赤らめて全力で否定する。

『私ああいうことしたかったわけではないから!!!』
「…いや、分かっては居ます。分かってはいるんですが。」
「仮にそれが正しければ我々の誰かがそう望んだと思うとですね。」
「駄目です、話を流しましょう。続けて下さい。」
『嗚呼ごめん。』
「いえ、いいですというか謝られると更にいたたまれなくなりますから。」

軽く爆弾を投げてしまったことにメルが半泣きで謝るが
もう手遅れである。

『それで、ちょっと次入るとき全員何か一つ考えておいて欲しい。』
「願いの反映がされるかどうかということですか?」
『そう。それが出来ればちょっと私やりたいことがですね。』
「まさか今度は糸巻き巻きをしたいとか企んでないでしょうね?」

キッと睨んだコルンにそんなわけないと笑うメルだが、
明らかに動揺しているのをみて、やろうと企んでいたのは明白だ。

『まぁちょっと考えたんだよ。私がもし、魔女ならば。
華樹神をどうやって墜とせば面白くなるかなあって。』
「部屋の主の位置にたってということですか。」
『そう。流石にすぐ壊すには悪い。
かと言って一人にさせると面白くない、
というか成長の余地がない。』
「成長?力のですか?」
『半分正解。力というよりかは感情の成長ってところかな。
我々華神らはエネルギーのほとんどが願いからきてるしね。』
「成程、感情を部屋の中で更に高めさせ、喰らうと。」

私ならねとメルは続けて言う。

『すぐ壊すのではなく、壊れつつ確実に堕ちて
戻れなくさせた方が寝首をかかれずに済むってものだし。』
「では、あの時メル様が本当に壊れそうだったから、
我々は半強制的に出されたと。」
『そういうこと』
「なら猶更厄介極まりないですか。
もしそれが本当であれば、
何度も繰り返すという事。」

『だからそれを突くんだっていうんだよ。』

私に喧嘩を売っているということだよねぇ
とメルがにやにやしながら
笑って手を顎にもっていく。

『この私に。何度も繰り返して
完全を創らせた、この私に?
嗚呼〜〜〜?よくもまぁ考えるよねぇ???』
「…完全に切れてます?」
『あはは!きれてないきれてない』


…これ如きで切れたら話にならないじゃん。


そう低い声でぱっと言った言葉に、
各々が少しゾクリと悪寒を感じる。

光の見えないメルは本当に
心臓に悪いものなのだ。
何時もが温厚なので猶更感じる。

『最悪私があの部屋ごと喰らえばいいけど食い方分からんし。』
「いや、食べ物ではないので食べないで下さい。」
「お兄様、そういう問題ですか?」

そう言う問題では決してない気がしてウイスが咄嗟に突っ込んだ。

「では此処で一つ提案が」
「なんですか?モヒイトさん。」
「自分達で今ここでお題を決めてはいかがでしょう。」
「成程、お互い共有をしていれば入った時すぐにわかりますね。」
『(これまさか…嗚呼いややめよう考えるな。)』

言えば考えれば現実になっているので、メルはすぐに考えを止めた。
その言葉が現実になれば本当に厄介になるからだ。

「普通にあのパターンを考えたら
振り出しに戻ってもいい気がするんですが。」
「食事をするくらいですよね?」
「ええ」
「では私はメルさんから教えて頂いていない料理を
一緒に作って食べるというもので。」
『え、そんなのでいいの?』
「寧ろそれくらいではないと出れないでしょう?
あ、出来れば凝った物がいいですねぇ。」
『ええ〜〜〜〜めんどくさすぎる。』
「おほほほほ!!ビルス様にも食べさせてあげたいところですし。」

まぁそりゃそうか。
これだけの長い年月を生きるとなれば、
レパートリーはあるに越したことはないものだ。

「では、私は貴方に教えて貰っていない言語を一つ教えて貰えれば。」
『え゛それこそ難しすぎない?えっ待ってコルンお兄様???』
「誰が貴方の兄になったと…嗚呼いや、この場合は義理兄に入るのでしょうか。」
「話が逸れますよ。」
「すいません、正直に白状しますが、私はこれでも
アルトの目を盗んで軽く見たくらいです。
ほぼ独学と言っても過言ではありませんので。」

白状した。

『んん〜〜〜コルンさんところねぇ、ドイツ語圏が多いからねぇ。
ドイツ語教えたらもう楽勝なのかなって思ったけど』
「思ったけど?」
『私がドイツ語そもそも苦手なので、日本語の古語でよければ。』

ふと思いついた言葉があったので、
それを教えようと言うとそれでお願いしますとコルンは答える。

『さすれば、サワアとモヒイト様はどうします?』
「そうですねえ、何にすると言われましたら困りますね。」
「ええ。」
『…ではお願いでも?全員が外れると嫌ですし、半分は私からのってことで。』
「構いませんよ。」
『……モヒイト様、凄くいたたまれないというかなんというか。』
「待って下さい何を考えてるんです。」

そう止めたモヒイトにいやでもなぁとメルが首を傾げる。

『いや、組手してもらいたいなと。』
「…組手、ですか?」
『その代わりサワアとウイスさん絶対目隠しして。』
「何故です」
『見世物じゃないのと、多分絶対視界に入ると笑うので、
コルン様出来る限りお二人を私の視界に外す様にご協力を。』
「わかりました。」
『前にエルからモヒイト様の組手聞いたことがありまして。』
「ほう?」

あのエルが外に漏らすとは意外なことを聞いたとモヒイトが驚く。
外に何でもかんでも言うタイプの人ではないのは分かっていたからだ。
自慢げに言ったのだろうかと思い言うが、そうでもないらしく。

『普通に勉強になったし、凄い的確でわかりやすかったからって。』
「そこまでした覚えはないのですが…
彼女は物覚えも良い子ですし。」
『エル的には滅茶苦茶良かったらしいよ。
お菓子とかもらったらありがたく貰っといて欲しい。』

多分彼女滅茶苦茶考えてから作って渡すから。
そう言われずとも、ちゃんと頂きますよとモヒイトは答えた。

「ではその手筈で。」
『さあお兄さんどうしましょうね?』
「どうされます?」
『んん、多分此処が肝なんよね。』
「お兄様とのですか?」
『…殺しはさせたし、命を紡ぐ行為もした。』

なら間か?ふと嫌な感覚が胸を過ってすぐに手を胸に置いてぽつりと考えた言葉が落ちた。

『駄目だなソレは流石に』




だが、そうなればと思っている矢先にブザーが鳴り響く。
聞いたことのあるブザー音に、全員が身体を動かしたが、



















「…戻りましたね」
「ええ、案外、早いお帰りで。」

〈再度実行します。お題の改定が開始されます。〉

そう誰かの声が上から響く。
メルは白いベットの上から空を見上げて聞いていた。


〈現在10のお題のうち、5つがクリアしました。〉

そう言われて、5つ、肩車や抱っこ、
温泉等のものが〇になり、消えて無くなった。

〈新たに5つ追加します。〉

「流石に途中からとはいきま、せ」
『…嗚呼、ほら。私の悪い予感ってすぐに当たる。』

旨を撫でおろすメルに、
サワア達の目がその言葉だけに一点集中する。


それ以外の方を見て、メルは胸に手を置いた。
特別メニューも全部そのままであってほしかった。

どうか、それが変わるなんて、してほしくなくて。
嗚呼願ってしまう力が、此処まで苦しいのかと。

だから言ったのだと誰かに指を指された気がする。
感情を取り戻しては、いけなかったのだと。
どうせ後悔すると、言われている気がした。

嗚呼、その通りで、彼らに大変な迷惑をかけているのは分かっていて。



『…ごめんね』
「っそんな貴方が謝ることでは!!」





嗚呼、また、地獄が始まるのだ。





【保留】10のお題をクリアしないと出れません

現在攻略情報
・誰にも教えて頂いていない料理を何品か一緒に作って食べること
※但し全員で調理及び食事を完食する。
・誰にも教えていない言語を一つ教えること
※但し誰かに教えて貰った言語であること。
・メルはモヒイトと組手をすること。
※但しサワアとウイスは目隠し及び姿を消すこと。
・10分間抱きしめ会うこと。
※但し誰でも良いが一人以上であること。
・華樹神の華を一人手折り、願うこと。
※但し華樹神の願いに反映される範囲内とする。
・全員メルに10か所キスをする(〇サワア・ウイス)
・性感帯を5つ増やす(〇横腹、耳、膣奥、背中)
・メルを大小問わず50回いかせる(〇現在大小含めて40回程)
・全員が満足する
・2人一組でメルをいかせること
※必ず全員が入り、全員一度は必ずメルと手を繋ぐこと。


特別ペナルティ
・20本ある媚薬を飲み切ること(〇合計10本)
・うち5本は10回達するごとに、メルが媚薬を1本飲むこと(〇3本)
・うち4本は致す間にメルに口移しで飲ませること(〇ウイス・サワア・コルン)
・必ず全員1本は飲むこと(〇サワア・ウイス・モヒイト)
※尚メルのみこの1本は他のペナルティと別の瓶。
・他の媚薬は誰が飲んでも構わない。(〇モヒイト)
※但し一滴でも零した液体は自動的に瓶に戻る。


メルのメニュー

【記憶の廻廊に戻り、IFの中で花を手折ること】

尚このことが他の者に知られてはいけない。
知られた途端、ブザーを鳴らします。

同時に、その時点でサワアの存在を抹消し、
どんな状態でも彼に会えないようになりますので
注意をして下さい。