一片の偽雪





さて

エッチをなぜか途中で終わらされた私は
綺麗に身体を拭かれ、現在トランプをしていた彼らの事を見ていた。

いやなにしとんの。

「何ってババ抜きですよ。はい一抜け」
「っ!!」
『何故トランプ出てきた。』
「試しにしたんですよ。ほらお題が変わった。」

そう振り返ると、確かにお題の項目が少し変化していた。
組手が綺麗になくなっているのに笑うしかなかったが。
これで此処で出来るお願も一つ消えた。

いや、そうするしかない。
覚えさせろと思えばぽたりと涙が出てくる。

「…メル」
『ちがう、これは』

違わない、そうでしょう?
そう言い聞かせる自分に嫌気がさす。
終わりだ、もう終わりが近い。

優しくされて、気持ちよくて、溶けてしまって。
それで終わりなんて、狡過ぎると思う。

「やはり、そうでしたか。」
『っ』
「生理的な涙とは違う感じがしまして、中断したんですよ。」

正解でしたねとそっと頬に手を置かれた腕を握る。
違わないと首を横にふるのに、言う事を聞かない。

『気付かないで』
「メル様…」
『お願い、お願いだから。』
「…気付かない代わりに一つ教えて貰えますか?」
『…うん』

こうも顔が上手く騙せないとは、向こう側に行っても苦労することになるな。
何か術を考えておくかと考えをめぐらせていると、想像通りの質問がかかってきた。

「今回も貴方に特別なお題が投げかけられているのですか?」
『うん』

嬉しそうに笑って答えるメルに、顔が見えないが、少し苦しそうな顔のようにぼやけた視界でもよくわかる。

『ごめ、いえない、いえないよ』
「エフェメラル」
『ごめんね、ごめん、ごめんなさい。』

言えば私は生きれない。生き続けなければいけない世界で、独りぼっちになる。
本当の本当に、この精神は綺麗に亡くなってしまうだろうから。
それは他の人達に迷惑になるし、何より貴方がいない世界は生きれない。

貴方は生きてこられたのに、私は生きれない。
いや違う、貴方は確かに私が帰れる術を何となく気付いていた。
だから希望が見えたから、生き続けられた。

でも、今回は違う。もう二度と在り得ないのだ。
だから此処まで悲しくなってしまう。
隠していたものが、綺麗にはがれ切ってしまったから。

辛くて辛くて、怖くて苦しくて、嫌なのだ。
気付かないで、お願い。どうか、おねがいだから。

知られないで欲しい。この感情を。
気付かないで欲しい。この想いを。

「…わかりました。ですが、手折るのは
この僕にしてもらってもいいですか?」
『いいよ、もちろん。』

寧ろ、手折られて私は幸せ者だろうに。
大好きな貴方に、この想いを此処に置いていけるのだから。
嗚呼、そうやって、私もあの時置いていったのだろうか。

置き去りにされた、この感情が、この世界を作ったというならば。
私が、元凶でしかないというものであって。
ごめんねなんて、謝りたくないのだ。

私がそうされて、凄く嫌だったから。
でも、言ってしまうのだ。許されたいのだろう。
怒って欲しくないのだろう。

嗚呼私はやはり弱くて弱くて、本当にどうしようもない。

『(この手にもう、触れられない)』

触れるなんて許さない。
目を閉じてそのぬくもりをかみしめる。
笑みがどうしても涙と共に零れてしまう。

醒めない褪めない夢を、見続けてしまおう。
もう二度と、環に続くその螺旋に呑まれるために。
多くの者達が泣き堕ちるくらいならば。

こんな願いの一つ身体の一つくらいくれてやる。

嗚呼、私は今、とっても、満たされている。

ガチャリと音がした。

〈全員が満足に達しました。ペナルティーを解除します。〉

「え?」

〈お題は1つになります。〉

ポーンとアナウンスが鳴る音の様な軽い音が鳴る。
一つの言葉に、嗚呼とメルは涙をまた零す。

「っそんな!!!」
『ね、さわあ』
「っダメです、ダメだ、そんなこと」

満たされるという範囲は、この場所は私が創り出したもの。
そう言う彼女に、何をとサワアが言う。

『ほら私が言った通りになったでしょう?』
「っだとしても、貴方は!!!本気でしたら怒りますよ!!!」
『怒っていいよ』
「っお兄様!!!!」

ダンと音が鳴る。突き放されたのだ。
冷たい目が此方をじっと睨みつけている。
胸の痛みがすっと消えていく。

違う、馴染んでいっているんだ。
これは痛みではないのだと、言い聞かせている。

「…貴方がそういう方だとは思いませんでした。」
「っお兄様!!いくら何でもそれは!!!」
「この部屋が貴方の願いに通じるならば、書き換えてしまえばいい。」
「っサワアお兄様!!!」
「うるさ………」

いいよ

そう言いたそうに、メルの手にあるもの。
目を閉じて嬉しそうに笑って、左手は添えらえたまま。

本気でやる馬鹿が何処にいるんですかと
飛び出したサワアがメルを抱きしめる。
ニコリと笑ったメルが、口からちらりと華を見せた。

それにサワアの顔がぞっと色を変える。

「っいけません!!吐き出しなさい!!!」
『(お願い神様願いを叶えて)』
「っエフェメラル!!!」
『ねえさわあ』
「言わせません。」

意識を飛ばさせようとしても、無駄だ。
それに気付いた顔が歪む。
此処になると、どんなことも傷がつかない。

逆に言えば、こうなれば、肉体も精神も安泰ということ。
どんな状態でも無敵状態のこの時間。

お題の画像が変わる。書き換わる姿に、くすりと笑った。

嗚呼、何度だって、最初の願いなんて言わせない。


『彼らをこの部屋から出してあげろ』
「っめ」
『ごめんね、ありがとう。』

メルはそっとサワアの手に触れて、頬にあてる。
嗚呼もう、もう充分だ。こんな時間、あんまりだから。

『廻廊よ回れ回れ、何度も廻れ。』
「っなにを」
『貴方の願いは私の願い。めぐれ、めくれ、そのページ。』
「…また、お待ちしております。」

そっと言うウイスに、メルは嬉しそうに笑って涙を零し言う。
その旋律を、詠唱を言い続ける。

『華の者願う、その時間。』
「…メル」
『何度も廻ろう、その場所に。』

メルはそういって、綺麗に消えて居なくなる。
それと同時に、世界も変化し、メルの住んでいた家へと戻ってきた。

「…貴方は大馬鹿者です。何度も置き去りにして、本当に呆れる。」
「サワアお兄様」
「ですが、私も馬鹿ではないのです。」

そうちろりと彼女が食べた華と同じ花が見えたのに、今度はコルン達が驚く番だ。

「っ同じことを!!!」
「これ以外方法が無いのでね。」

ガキンと鈍い音が鳴る。鎖が出てきたのだろう。背中からの違和感に、身体がずんと重たくなる。
嗚呼、ルトラール様もこういう気持ちだったのだろうかと、ぼんやり考えるサワアに、周りが騒がしくなる。

「すいません、あとは、頼みましたよ。」
「っ…わかりました。」
「華の者、魔の者、人の子よ。我の、願いを、かな、えて、おくれ。」

そう何時しか言っていた彼の言葉を思い出しながら言う。
手を伸ばし、その先に居る子の手を、繋ぐ様に。
そうやって、この繋がりは続いて行ったのかと。

「【彼女の願いが叶いますように】」

ぱたりと手を落とし、意識を手放した。


++++++++++


暗い暗い場所からふわりと異空間を感じる場所に入る。
嗚呼、記憶の廻廊に入ったのか。大分久しぶりだなとぼんやり考える。
下へ下へと降りて、見えたあの扉を見つけた。

『…っ』

涙が止まらない。本当に泣き虫に戻ったと思う。
嗚呼でも、きっとこの涙も何時か枯れてしまう。
この華と共に、綺麗に枯れてしまうだろう。

ざわりと華を閉じ、息を吐いて前を向いた。
ドアを開けて、中に入る。

バタンと閉じた場所に、此処はとメルは周りを見渡す。


「此処は時系列的にお前が覚醒した後辺りだ」
『っそのこえは!!!カランコエ!?!?!?』
「よ、久しぶりだなッとと」

抱き着いたメルに、よく頑張ったとカランコエはそっと抱きしめる。

ひとしきりワンワンと泣いて、
ぐずる彼女に、顔が真っ赤でトマトみてぇだな
と言われ煩いと言える言葉が出る程
気持ちの余裕も戻ってきた。

「此処はお前の知っているところではない。
我も出ている上に、お前のことを一応盗み取った。」
『…この世界のカランコエってことか。』
「嗚呼、華樹神になる際、お主は我から栄養として取り、本当の完成された形になりおったが、此処は違う場所。」
『貴方が神になった時間軸か。』
「そういうことじゃ。なのでお主はほぼ生きている話で進んでおらん。というわけでコレをつけておれ。」
『これは?』

そう新しいアクセサリーを受け取る。
緑と黄色が混じったような色をした
球体のついた明るいイヤリングだ。

「存在を変えることが出来る。一応我の分身という形に書き換えるでな。
メルの欠片とでも名乗らせるので、そのままいても構いやせん。」
『…わかった。』
「メル、お主の記憶を見させてもらったが、此処は地獄じゃぞ。」
『分かってる。分かってきているんだよ。』
「お主……」
『ごめんね、辛い想いさせるね?』

いい、いい。というカランコエにメルは首を横に振った。
もう満たされたこの感情に、何を言ってもきかないのだ。

コンコンとノックがされたのに、身体が動く。
ガチャリと入ってきたのはヘレスだ。
久しぶりにみたなあと思いちらりと様子を見る。

「…ヘレス、またタイミングが悪いのお、お主と言うやつは。」

滅茶苦茶嫌そうな顔になるカランコエに
なんじゃ急に生理にでもなりよったかと
ある意味失礼なことを返したヘレスが此方を見る。

「おや、そいつは誰じゃ?」
「…我の分身」
「ほお?奴に似ておるが」
「そりゃ我の元々はメルじゃからな。似て当然じゃ。
気分が良さそうなので出してみただけじゃ。」
「また面倒なことをしよって。
折角前を向き始めた処じゃというのに。」
「分かっておる。出すような真似はしない。」
『あの〜〜〜なんのはなしで?????』

本当の本当に理解が出来ない。
と言うかヘレスはこんなに冷たかっただろうか。
凄い嫌そうな顔でこっちを見る。
いや私そんな悪いことした?

何貴方の知らない所で
貴方のプリンでも食べちゃいました????


「…まぁ、良い。どうせ似た者同士じゃ。」
『はあ』
「それで、例の件はやってくれるのか?」
「別に出来るが…」
『何をするんですか?』
「っメルお主は」
「何って結婚式をするんじゃ。」

そういった彼女におおおおおおおとメルが食い寄った。
あのヘレスが、愛を叫ぶヘレスがだ。
いや誰が婿にいや嫁に嫁ぐのだろう。

待って待ってとメルが感極まってわなわな震える。

『おめでとうございます!ヘレスが、あのヘレスがお嫁さん!?
いや絶対可愛い。間違いなく可愛い。化粧を薄くして、ドレスを派手にしても良い。
顔も滅茶苦茶美人だし整っているし、体つきも良いからなんでもあう。』

えっなにきるの?和洋折衷?なんでもあり?それともごちゃまぜ??
そう目をキラキラさせていうので、これこれこれこれ、とカランコエがメルの首根っこを捕まえて引っ込ませる。

「そう食いつく出ない!彼女が可哀想ではないか!!!」
『え〜〜〜こういうの滅茶苦茶考えないといけないんだよ?
も〜〜カランコエの意地悪意気地なし〜〜〜』
「いっ!?!?」
「ぷっはははははは」

そう高らかに笑いだしたヘレスが嗚呼おかしいと腹を抱えて笑う。

「っふふ、お、おぬし、ほんと、うまいのお」
『ほえ?』
「エフェメラル様も生きておったら、確かにこうやって言うじゃろうな。」
『ヘレス……』
「幻影だけでもきっと喜ぶじゃろうが、今は流石に酷すぎる。」

触れようとした身体に、メルがそっと下がった。
反射的に彼女らに触れるのはまずいと思ったのだ。
それに、宙に浮いた手がそっと降りるのを見て、悪いことをしたと思った。

「よい、我とてお主に触れられる権利などハナから無いのじゃから。」
『ヘレス……』
「そのような顔をするでない。」

へにゃりと笑ったヘレスが、ではまたと手を振って笑って消える。
嗚呼にしても結婚式かあいいなあと呑気に言うメルに、
お前なあとカランコエが叩く。

『いっ』
「馬鹿が!!あんな外に顔を出すなとあれ程言うたじゃろうが!!!!!」
『なんで〜これでも抑えた方だよ?』
「いやそんなバカな話が……………あ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜すまん。」

この体内に残ったカランコエの欠片が見えたのだろうか。
察したカランコエが意気消沈のご様子で席についた。

『それにしても結婚式かあいいなあ、してみたかったなあ』
「してみたかったとは、お主それどういう意味じゃ。」
『想像の話だよ。ほら女の子って将来お嫁さんとかウエディングドレス着たいとかあるじゃん?』
「いや、それは人間の風習が合わさればの話であってじゃな、この世全てがそうとは限らんのじゃが…まあよいか。」

考えるのを諦めたかのように、肩を下ろしながらため息を吐いたカランコエ。

「いいか、絶対に結婚式は出るな。なんならその威力を倍増させて気配すら感じさせなくする予定じゃ。」
『え〜〜なんで』
「何がなんでもじゃ。お主にはいくら何でも酷すぎる。」
『はっまさか……うちのミラをたぶらかしたんじゃないだろうなぁ????』
「ひっ」

殺意のこもった刃物を出したメルに対し、ぞっとするカランコエ。
一応二人とも華樹神であり、その威力はお互いにわかるというもの。
物騒なものをしまえと言い切ったカランコエに仕方がなくしぶしぶそっとしまうことにした。

『アルト達は?』
「一応おるが、我と付き合いはほぼない。基本予定は手紙か連絡網からの答えじゃ。」
『えっお話してないの。駄目だよ会話大事だよ。対話絶対だよ。』
「…お主が生きておればな、そうなったじゃろうよ。」

我ではいかんのじゃ。それはお主の中に居る我も言っておったじゃろうに。
そう神妙な顔つきに、メルは怪訝な顔をする。

『まあ、分かったよ。なるべくそうするようにする。』

どっちにせよ、もう向こう側にも帰れないのだ。
あのドアが綺麗になくなった以上、帰る場所はない。
二度とあの世界に戻れるわけがないので、ひとしきり泣いたのだ。

『じゃあ天使とかに会うのも?』
「駄目に決まっておろう!というか寧ろ天使対策じゃ。」

ぴんと指をはじいたとたん、メルの胸と腰には綺麗な華が咲き誇る。

『わあ!これは?』
「お主も前に無意識下であろうがやっておったことじゃ。
華の上に華を咲かせてカモフラージュをしてみた。」

黄色の月見草が綺麗に咲き誇っている。
手で触れると、その草花の感触が伝わってきて笑みがこぼれる。

『へへ、滅茶苦茶可愛いねぇ』
「まあカモフラージュとは言っても形だけじゃ。
力はお主から貰っておるからの。」
『あんれまそれは借りれないのか。』
「そうするとお主の完成された状態が崩れるじゃろうて。
ま、崩れさせたくないから制限をかけまくるんじゃ。次じゃ次。」
『え゛まだあるの。』

当たり前じゃろう。

「その状態はこの世界誰にも知られる訳にはいかぬ。
お主は選ばれし完成された究極の個体じゃ。
その力を望む者など五万と居る上に我ですら敵だと思うが良い。」
『ええ全員お仲間駄目絶対?』
「嗚呼」

まあ、捨てられてきたものだし、仕方がないか。
サワアの怒った姿を思い出して軽く胸が痛み始める。
殴られたり怒鳴られてはたかれた方がマシだった。

突き放すなんて、どんなことよりも、残酷なことだったから。

「メル、お主、まさか奴に」
『いいよ、此処はカランコエが主の世界だから。』

私はそれに従うまで。そう軽くお辞儀をするメルに、しばし考えた後カランコエがいいじゃろうと答えた。

「首にこれを」
『黒いね』
「対感情制御用装置じゃ。華樹神用にパワーアップしとるから、
これに気配を消させれば万が一爆発的な気が出ても大丈夫なハズじゃ。」
『ああなるほど、悟られるとまずいもんね。』
「はい次、これはくっつける位置が胸元じゃ。」

そう紐のようなものを出してきたカランコエに、
メルは頷きながら背中に紐を回し、端と端を胸元でくっつける。
自然と紐は腰元近くまで垂れ下がる。

「ソレは対神々専用。特に天使じゃな。近くに寄ると知らせて植物を出して隠れさせる。」
『何その徹底ぶり。何私を見たら天使達心臓発作起こして死ぬの?』
「そうではないが、念入りにしとかんとお主の状態は危険すぎるのじゃ。」

ただでさえこの始末というのに。
そう目を背けたカランコエにメルはまあいいけどと胸元を見た。
キンと音を立てた後、綺麗な青い四つ葉が見える。
紐は緑か青か分からないが、わりとしっかりしている。

「基本裸足でおれ」
『え、別にそれはいいけどなんで』
「靴じゃと音が響き過ぎる。お主裸足の方が音を消すのが得意じゃろう?」
『其処迄知ってるんかお前は。』

悪いか。いいえ。

「基本あの家に居ろ。」
『ええ、旅に出たかったのに。』
「馬鹿!絶対にこの場所から出るなよ!!
もう出れば最後だと思うがいい。
元の世界に戻れても戻れなくなるぞ。」
『ええそんなに?』
「嗚呼大神官には特に気を付けろ。」
『なんか悪代官とかに交代した?』
「あながち間違いではない。」

え、うそ。そういったメルに事実じゃと答える。

「華の樹は威力が強すぎる。我の力は恐ろしいからの。
それを操れる完璧な子が出てきたらどうする。」
『えっとりあえず手籠めにする?』
「言葉はアレじゃが正解じゃ。隔離し、記憶を改変させて居座るように誘導するのがオチじゃ。」
『でも向こうにはもう』
「…戻れる。」
『え』
「お主は戻らねばならない。もう、もうこれ以上酷い世界に足を落とすな。」
『切り落としたわけではないんだけれども。』
「うるさい」

とにかく

「天使対策じゃ。何かあれば絶対に我を呼べ。すぐに反応して飛ぶ様にもそれには種が仕込まれておる。」

あとこれと衣服を渡される。
黄色の綺麗なドレスから緑色に変わり、白いベールの冠を渡された。

「これにも着替えておけ。」
『これは?』
「一応この世界の正式な衣装じゃ。別世界の衣装のまま居られては困るからの。」

ま、忘れたらそれまでじゃが。
そう睨むカランコエに、メルはちらりと見た。

「嗚呼それは頭と言うよりかはこうじゃな。」
『わあモモンガ!!』

下の方がレース形になっており、両腕の方のみ輪が出来ている白い布の上着。
肩にかけて羽織るその服も、彼女仕込みらしく?

「ペンダントやら何やらが反応しないとき用の防御結界を出すものじゃ。」
『えっこれが?』
「ふむ、じゃあたとえば。」

そういったカランコエが席を立ち姿形をサワアに変えてみせる。
おおと唸ったメルだったが、サワアのような姿が手を前に出すと
バチンと薄い緑色の半円が彼の手を軽く消し飛ばしてきたではないか。

それに目を丸くして驚くメルに、カランコエが元に戻る。

『おあsどふぃあjsどfじゃおしdfじゃ』
「分かった分かった、一応適当に手を出せばこうなるってことじゃ。わかったか?」

ぶんぶんと頭を振ったメルに、よしと声を上げた。

「名前は変えずともいい。それは覚えるためにも残せ。」
『じゃあメルでいいの?』
「嗚呼」
『出る時間帯とかは?何かしてほしいことあればするよ?』

私一応貴方が仕事放置していたからしてたんだよ仕事。
うっと唸るカランコエにそれならばと目を背けた。

「この場所の仕事をお主に半分程任せてもいいのかの?」
『それぐらい別にするし、寧ろこの途方もない時間
仕事がないと私は帰る前に枯れて死んでしまいます。』
「っふふ、それはこまるのお、よし、まっておれ。」

仕事場を創るぞと言った彼女にメルもおーと声を上げた。