冬の瓶詰め夏の缶詰




「ほれ、此処がお主の仕事部屋じゃ。」
『はわあああああ凄い本当に凄いね!!』

メルの一軒家の中に新しい仕事部屋を作った。
というのも、空き部屋が二つ程あったのだ。
メルがよくうたた寝する玄関から入って左側

その更に奥にある部屋に創造で作ってくれたのだ。

「此処は配置はお主が好きにするがよい。
此処の家の姿形は何だかんだ言って我の管轄になっておるからの。」
『相談したいこと山ほどある。』
「なんじゃ、今のうちに整理しておくか。」

どうせあいつ以外今は用事がある奴はおらんだろう。
それに警戒させておるから大丈夫じゃと言う彼女に
此処に居れば向こう側の人間を察知するアラームを
強化しているんだろうなとメルは一人心地に思った。


『まず私の記憶と貴方の記憶の宇宙があっているかどうか。』
「ふむ…そう、じゃなあ〜〜〜、ある、ていどか???」
『なら資料を見ながらするね。しつもんいい?』
「いいぞどんどんこい。」
『この家の隣にあるあの図書室は移動おっけー?』
「許可が欲しい。なんなら取ってくる。」
『分かった。』

流石に外は厳禁らしい。

『じゃあ菜園は?』
「出来れば出ないで欲しいラインじゃな。
なんならお主は暫くこの家以外のドアに触れて欲しくない。」
『別の世界に移動しそうだから?』
「そうじゃな。それが一番でかい。」
『でも確か移動できる魔法のドアって
この家かえって出た部屋のほぼ真正面にあるドアじゃない?』

そういって指を指したメルに、それはそうじゃがとカランコエが
資料の本を下に置いて額の汗をぬぐい話す。
心なしか外からセミの声が聞こえてきた気がする。

あれ此処生物って生きれるんだっけか。

「アレはあくまでも元華樹神の得意武器じゃ。」
『ルメリアお母さまの?』
「嗚呼、ソレの継承がしっかりとされておる。」
『え知らないんだけど』
「血じゃ血。無意識下でドアを開ければ別次元に移動できる。」

白い世界におったじゃろう。それがそうじゃと言う彼女に、
やはりあれは私が創った世界だったのかと頷くメルは
部屋前にあった壁とキッチン程の高さにある
机にその腕を置いて身体を委ねた。

「恐らくそれが正しいじゃろうな。まぁ内容は恐らく違うじゃろうが。」
『えっそうなの?』
「お主がそんなえぐいことを考えるような者か?」
『いいえ』
「天使らもそれを分かった上での行動じゃろうに…
まったく、お主は何処におっても人騒がせさせるものよの。」
『すいやせん』

謝っても意味がないが、謝るしかない。

「はあ、とりあえず後々全ての星を管理してもらう。
視察は我がするし、何方にせよ我々は元から一つの身。」
『考え方やら書き方は同じだと。』
「それに奴らがこっちをもう見向きはせんから
そこら辺のバレは心配せんでよいぞ。」
『…お勉強会、してないんだ。』
「出来るわけがない。」

何度も言うが、お主はこの世界何処を探してももうおらぬのじゃ。
ヘレスがあのような顔をして分からなかったのかと言うカランコエに
メルはわかるけどと答えて本を手に取るために身体を動かした。

青い本を手に取り開く。文字は全てなぜか日本語に翻訳されていて。

「嗚呼一部日本語でやられておるが2つ意味がある。」
『え何』
「いやがらせと単純に記録をするのがだるいらしい。」
『わあひどい。』
「そこまでもう回るものじゃないのじゃ。なんなら閉める話もでておる。」
『っなんで!!!』
「…華樹の力はいくら願いが叶えられたとしても限度があるのはお主もしっておるよな?」
『あ、ああ…華神にまつわる全ては願いが叶わない仕組みになってるとかだよね?』
「そうじゃ」

嗚呼、そうか、彼女らは、何度も何度も願ったのか。
この場所で、何人もの人が、なけなしに。
それを、カランコエは知っている。

だってその願いを叶えられるのはカランコエだから。

『ご、ごめん……』
「…分かればよい。まあ殆どの時間我も傍におるし、そいつらも解放してやればいい。」
『え゛でもいや』
「流石にその花畑に籠らせきりはまずいじゃろうて。」

大丈夫じゃとにやり笑う。カランコエ。

「我は天才的な力の持ち主。」

お主が徹底するように、我も徹底派なのじゃから。


++++++++++

「だということで、外に出れたはいいが…なぁ、本当の本当にいいのか?」
「だから我が良いといっておろうが。」
「この世界のアタシはどうなった。」
「…一応我が全て喰ろうた。つい先日な。」

そうかと嘆くプラティアに、メルは少し距離を置く。
現在隣の部屋に移動し、キッチン側にいた。
昼休憩ということで、トマトスパゲティをゆでおえたのだ。

ことりと置かれたものに、メルは一度も手を付けない。

「…この世界の食べ物を食べても戻れる。」
『いい、お腹空かないの。』
「メル…」
『ごめんね、後で食べるから。』
「…固形物も完備しておる。好きに食べても怒鳴る者は誰もおらん。」

余り食が細すぎると怒るが。
そうふわりと赤髪が上がる彼女にわあすごいとメルは笑って軽く拍手する。
煽るな煽るなと、プラティアは横目に見ていた。

「プラティアお前も食うた方がいいぞ。」
「何故だ?アタシは完成された魔女だぞ?食わなくても問題ない。」
「…まさかお主も完成されて?」
「なんだ一体」

首を傾げた彼女に、嗚呼なっとくがいくとカランコエが背もたれにもたれかけた。


「成程、元々我々は欠けたパーツじゃったわけか。」
『どういうこと?』
「ほら、お主の願いは」
『えっと言ったら死ぬのでは?』
「馬鹿此処は全てをシャットアウトされた環境じゃ。
どんなに願おうが祈ろうが此処は基本的に消される。」

飽和するようになるのはお主のところもじゃろうがと言われて
そういやそうだったかとメルは言いながら話を戻す。

『えっとパパとママが仲良くなりますように?』
「違うその前」
『ん〜〜お友達と手を繋ぐ?』
「違うそのもっと前」
『…いっしょにいる?』
「…残念じゃが、違うんじゃ。」

そういった彼女に、メルの胸が悲鳴を上げる。
駄目だ駄目だと言うのに、手を置いて宥めるしかできない。

『いえない』

いえないよ。

そう項垂れるメルに、それがとカランコエが続ける。

「お主の一欠片、カタバミは3つじゃったろう?」
「…まさかアタシ達全員揃うことが本来の姿ってことか?」
「嗚呼そして、お主の中にちゃんとおる
カランコエもソレを知った上で実行した。」

お主の中に大量の気を注ぎ込んだ。

「我が消えることはお主が望まねば出来んしな。
此処の場合は、まぁメルの力が余りにも弱すぎた。」

まぁ他にもあるがと目を背ける彼女に、メルはまた首を傾げる。

「まあ全てが完成された状態だったから、太陽に充てられても生きれた。
綺麗に完成されて、めでたしめでたしじゃったわけじゃろう。」
『…完成、でも貴方は?』
「メル」

良い其処迄拾わなくていい。そうカランコエが止めに入る。

「我を救うとなれば我はお主を殺す。」
『それでもいい』
「駄目じゃ。お主は完成されたもの。
数多のIFが存在する中、
ソレに辿り着けるのは限られた者しかおらん。
まだわからぬのか、お主は選ばれたのじゃ。」
『選ばれなくていい。貴方がいい。』
「…メル」

ぽろぽろと涙を零すメルが、カランコエの腕を掴んで言う
肩を揺らしたカランコエの腕に力が入らなくなる。

『私が居なくなれば誰もが笑ってくれると思ってた』
「メルお前本気でそれを」
『でも、それは迷惑をかけてたからであって。』

ちがくてと首を横に振る。

『皆が笑っていて欲しかった』
「…嗚呼」

そっと抱きしめ、カランコエはふわりと身体を浮かばせた。
こてんと身体を委ねるメルに、二人が宙に浮かび上がる。

『私以外の皆が、笑ってくれる、そんな場所。』
「…お主が居ないと皆笑わぬよ。」
『私は額縁だけでいいから。』
「メル」
「優しい子じゃな、ホントお主は。」

我々が呆れてしまうくらいに。
そういったカランコエの上からそっとプラティアが覗き見る。
彼女も昔は冷酷にメルを奪おうとしたが、
それは完成されに戻る術であったことに気付いたのであって。

綺麗な優しいあの時間を守り続ける彼女が
余りにも残酷過ぎて、殺す気なんて失せていた。

「お主が人間で在ろうとするのはプラティアが天使で
我が人と天使の子である状態であるから。
だと思ったじゃろうが、本当は違う」
『え?』
「我は人なのじゃ。人がこの威力を持つなんて無理があり過ぎる。
そこで彼女が惹かれた。欲に惹かれると前が見えんからの。」
「だからメルを半殺しにして取り込もうとしたのか。」
「まあIFの場所は無限、お主が神になった場所もあるじゃろうがな。」

大体想像がつくから良いと鼻を鳴らすプラティア

「お主は人と天使の子じゃ。間違いなく、ソレが真実。」
『それが、しんじつ。』
「知ってしまえば戻れぬ、現に前の仮面等できるか?」

いいやとメルは首を横に振る。この涙もどうしてか出てくるのだ。
それが証拠だと彼女は言い切る。

「寝る前やら風呂に入るくらいなら許すが、外に出るとなれば話は別じゃ。」

そう真剣な顔持ちになったカランコエがメルをそっと地面におろす。

「プラティアもどうかこの子を守って欲しい。」
「言われずともする。完成された状態が其処迄貴重なら尚更な。」
『プラティア……』
「アタシを殺せる奴が居たら出してきて欲しいレベルだ。」

それ程迄、この世界何処を見渡しても殺せない力を持つ者。

「プラティアは戦闘の方面じゃからな。」
『私は?』
「自分で答えを出すがよい。」

さて、腹も減ったじゃろう?

飯にしよう。

++++++++++

『先にお風呂あがった〜〜〜』
「アイスあるぞ」
『びゃあああ伸びるアイスきちゃこれええええええ!!!!!』

んあああああああああああ
そう言いながら軽く走ってソファーに落ちるメル。
コルンが居たら何をしているんですかと怒られているだろう。
いやそうでなくてもあの天使ども全員言いそうである。

まあそんなことをする私も私なのだが。

『何見てるの?』
「神チューブじゃってお主はいいか」
『嗚呼別にいいよつけてても』
「…いや、いい。」

そうテレビを消す彼女に、本当に分かっているんだなあと改めて知る。
本当は音が少し苦手で、なるべく音に触れて居たくないのだ。
静かな状態で色々頭の整理もつけなければならない。

まあ音で紛らわす時は寝る前くらいか。

「それにしても風呂でよくはしゃいでおったの?」
『えばれた?』
「反響するのを忘れておったか!っははははは!!!」
『だってえ、めたくたきれいだったもお?』
「食うか喋るかにしろ。行儀の悪い。」

そう言うプラティアに、メルはコルンみたいなこというと反論する。
まあ彼女は姉にあたるので、言うのは当然か?

「風呂は綺麗になるからの。明日は外に出るぞ。」
『え何処の』
「裏庭のじゃ。流石にこの世界の外になど出すわけなかろう。」

紺色の肩出しルームウェアを着たメルが
白いタオルケットでガシガシ頭を拭いている。
器用にアイスを食べるものだから、まあ見ていて面白い。

「流石に監禁するつもりはない。」
『してんじゃん監禁』
「違う隔離に近い」
『同意義』
「お主が力を維持できるように戦闘は欠かせん。明日は組手をするぞ。」
『らじゃ』
「そういや我々の寝る場所はどうするんだ?」
「ああ別部屋があったじゃろ?其処で寝るが良い。」

それとも増設するか?
いやそれでもいいと答える。

「ま、メルも流石に疲れたじゃろ、先に部屋に入って寝ておれ。」
『ああい』
「歌って踊って疲れてねろよ〜〜」
『ばっしないってかなんでしってるの!!!』
「我々お主の中の者じゃからの?」

あああ煩い煩いと言ってアイスの棒を律儀に
ゴミ箱に置いてから逃げるように
二階に上がってドアを閉める音が聞こえた。

それにクツクツと笑うカランコエ。
呆れてため息をプラティアが吐いた。


「こんなことをしてアタシバレないの?」
「大丈夫というか、対策をするために二人きりにしたもの。」
「なにを」

ぱちんと音が鳴り、プラティアの前に幾つかの着物が出てくる。

「あいつと同じ衣装じゃ。着るがいい。」
「流石に全く同じは嫌だが。」
「安心せい、ちゃんと下はズボン型に近い。」
「ならいいが」
「のうプラティアお主は我がお主を喰うとは思わんのか?」

そう言われてちらりと見たプラティアだったが、別にと答える。

「アタシを見くびって貰っては困る。それに」
「それに?」
「…あんたの顔をみてすぐに分かった。お前はあいつに傷一つすら入れられない。いや」

入れるのが怖すぎて腫れもの扱いにしていると言った方がいいかとプラティアは他所を見ながら話す。

「この世界の天使に、真実に触れるとあいつは死んでしまうと。」
「…気付いておったのか。」
「嗚呼、だからアタシも出てきた。流石に精神で幾ら語り掛けても無駄ってことが分かったからな。」
「だろうな。」
「あいつは優しい。サワアに、弟にはもったいないくらいには。」

そうコーヒーを見ながら言うプラティアに、
そうじゃなとミルクを飲むカランコエ
カフェオレは綺麗に飲み干されて机に置かれたままだ。

歯磨きがまだだったが、どうせすぐにこっそり降りてくる。
その時に違う話をすればいいだけのこと。

「あの子が」
「うん?」
「アタシらが帰ることが出来ないと知って何故あんな希望を?」
「…きっと帰れる。」
「お前」
「言う出ない。何時か気付かれて怒られてしまう。」
「お前が怒られるようなことをす」

るから、そう思って、嗚呼なんだと笑う。
おなじことを、私達はしているのだと。

「四つ葉にはならない。決して、幸福になんてなれない。」
「だが三つ葉にもなれない。これは偽物の絶えぬ葉だから。」

違うものだから。

「メルが好きだ」
「嗚呼」
「カランコエのことも、好きだよ。」
「…素直じゃな?」
「充てられたんだよ。」
「我もお主らが大好きじゃ。」
「カランコエ…」
「じゃから、我はお主らを守りたいのじゃ。」

その強さが、彼女を縛ると思っていても尚、そうする。

「泣いて欲しくないのじゃ」
「そうだな」

両手を広げたプラティアに、カランコエがそっと立って胸に入る。
優しく抱きしめて、背中を叩く彼女が、よく頑張ったと答える。
ボロボロと泣きだしたカランコエに、プラティアは微笑み目を閉じる。

手に胸を置いて、その場を後にした人に気付いたかどうかは、知らないが。