光も風も守護の牙





「メル様〜第7です。」

そうピンポンと音が鳴った後、バタバタと音がなる。
アルトの「こらメル慌てないでってば!」
という音といだいという音にビルスの耳がピクリと動いた。

ガチャリと開けたのはアルトの方だ。

「すいません、どうぞ。」
「とんでもない音が聞こえましたが、大丈夫ですか?」
「ああ、メルが勢いよくドアに当たっただけなので。」
『ああああいだいいいいい』
「君本当にいつあっても神様に見えないよね。」

そうビルスは部屋に上がる間、リビング左側のドア近くで座るメルに対して愚痴をこぼす。

「お仕事は順調ですか?」
「至って順調です。大体12分の4程度が終わりました。」
「おや、とんでもない量があったのですが、もうそこまで?」

帰ってきて大体10日と言った所か、
数日後ヘレス達と女子会予定の為なのか
メルはそれからも毎日コツコツと資料を見合わせつつ整理していた。

何度か各宇宙の者が遊びに来て、
仕事が進まないのではと思っていたが、
どうやらその話も杞憂に終わるらしい。

『案外思っていた以上に皆の資料がコンパクトでね。
削るところが無くて打ち込みでしかない作業なんよ。』
「ほう、それでも一苦労するのでは?」
『打ち込み大好きなので!ノーストレス!!』
「それは良かったですねえ。」

紅茶をビルスとウイスに入れたアルトがぺこりとお辞儀をする。
此方は玄関左側の書斎方面の所だ。

「此間リキールにしたやつ僕にもしてよ」
『嗚呼アレ?マジで言ってる?強化したけど。』
「僕を舐めないでほしいねぇ?君程度の技量だったら朝飯前だよ。」
「まぁビルス様は伊達に長く破壊神を務めていませんし。」
「ウイス…」
「おほほほほ!!ですがそうでしょう?」

軽く貶されて怒るビルスだが、上に言われては仕方がない。

「メル様は敵に対しても優しすぎるのをそろそろ克服していただきたいですし。」
「じゃあ逆に悪い奴に相手させた方がいいんじゃないの?」
『悪い奴この世にいるのかあ』
「プラティアがソレでしょうに。」

そういったアルトに、まぁそうだねぇと上を見て両手を広げる。
それに風を纏いながらぶわりと音を立て、出てきたのはプラティアだった。
椅子の上に両腕を置いて、メルの顔を覗き見るように
ちらりと少しだけ目を見ていた。

「ま、あんたに絆されたそのうちの一人だがな?」
『へへ!』
「ビルスと言ったか。初めましてと言うべきか?いつも天使が世話を焼いているだろう。」
「嗚呼」
「ビルス様…全くもう。」
「っくく、破壊神ならそれくらいが丁度いいだろう。
ま、アタシがお前の姉というのも言える立場ではないが。」
「プラティア様…」
「よせよせ、もう人に成って華を咲かせた後の魔女だ。
天使とはほど遠い位置にいるというのに。」
『でも元々貴方は天使でしょう?』

なら天使だし、ウイスのお姉ちゃんでいいんじゃない?
そう笑って手を股の下に締まっていうメルに、目を丸くして驚くプラティア

「お、まえ…なぁ〜〜〜」
『んん?』
「ふふふ、華樹神様もこう仰っていますよ?
貴方の件には確かに許されないこともありますが、
そのようなお姿を見ていては、ねぇ?」
「…止めて欲しい。どう反応していいか、本当に困る。」
「おや?」
『あ、え?嘘、まって?プラティアまさか照れてる????』
「ばっ!!だれが!!!」
『ああああかわいいいいいいいいいあああああああああああ』

こいつこんなんだったっけ。最近壊れちゃって。
そうビルスとアルトが話をする間メルは椅子から飛び降りて
プラティアに抱き着いて笑っていた。

反対にプラティアは放せと赤面しつつも力を其処迄入れずにメルを剥がそうとして剥がさない。

「アタシを許しても何一つ良いことなんぞない。
このまま嫌われていたほうが楽と言う者。」
「それは流石に」
『まあ気持ちわかるなあ』
「メル様!?」
『全てを嫌ってくれた方が、諦めがつくもの。』
「メル…」

誰も見ない。何にも知らない。
その空間が、どんな場所よりも冷たかった。
嗚呼此処は居るべき場所ではないのだと。

最初から、いなければ良かったのにと。

どれ程願い、どれ程胸を締め付けたのか。

『誰もが居るのに、誰もが見ない。
それに慣れるとね、本当に戻れないよ。』
「…体験者の重みは強いな。」
『でしょう?』
「ま、時期に、な?遊びに行くとするよ。…ウイス。」
「…っ!…ええ、お待ちしておりますよ。お姉様。」
『へへ!!』
「君本当に不思議な子だよねえ。」

悪の存在全員浄化できるんじゃないの?
そういったビルスに似たようなことならとプラティアが言う。

「多分こいつの中に入らないとすぐには無理だろうな。」
『それに悪い奴のこと知っている人がさ、良くなるの許せるの?』
「ん?どういうことだ。」
『例えばビルス様だとしたら、え〜っと、冷蔵庫って英語でなんていうけ?』
「…ひょっとして、フリーザのことでしょうか?」
『ああそうそう!フリーザが超絶イケメンで良い人になって許せる?』
「……いや」

想像しただけでぞわりとしたビルスに、そういうこととメルは笑う。

『元々プラティアは凄く良い人というか天使さんだったのは知ってるから。
きっと何か意味があって、こうなるんだろうって思ってしたの。』
「メル…だからお前、あの時サワアを庇いに?」

ふと飛ばしたプラティアの先に居たサワアを見て、すぐに駆け足で戻ったメル。
ソレを思い出したプラティアに、メルはこくりと頷いた。

「お前、本当にとんだ大バカ者だな。
もし本来の姿だとしたらどうするつもりだったんだ。」
『その時は食われた後、お前ごと丸のみに包み込んだ。』

私を殺す?嗚呼そんなの出来るわけがない。
この恐ろしいくらいの幸せを望みを、
受け止め続ける神など何処に居るというのだろうか。

ニヤリと笑うメルに、プラティアもまたにやりと笑って返した。

「それもそうか。」
『ま、そういう訳でね。プラティアはまだいいけど、悪い奴をいい方向に戻しても元が駄目なら駄目ってこと。』
「成程、腐った根はどれだけ努力しても戻らないと。」
『そうそう。』
「ん〜流石に万能じゃあないのか。」
『質が変わってもいいなら出来るけど、して徳になることはないし、まぁそれに。』
「それに?」

変わった後、私の様になるのが少々怖いというもの。
まぁ、それは言わなくても良いかと思い、何でもないと否定した。

『それで、お二人さん此方に何様で?』
「嗚呼そうでした、ビルス様。」
「ん?嗚呼、なぁメル。お前久しぶりに外にでないのか?」
「っビルス様!貴方ソレがどういうことか!!」
「煩い!こっちだって色々考えたんだっ!!!」
『…いい、の?』
「良いも悪いも、お父様達からも許可は承諾されております。
第七であれば問題はないでしょうとお墨付きもね?」

目を輝かせるメルに、ホントに!!とビルスの身体にくっつくようにくるものだから
軽く引いた後、少し考えて良いと体制を整えたビルスに、メルの目が更に輝く輝く。

『や!!!!!!!!た!!!!!!!!!!!』
「よかったねぇメル」
『うん!!!!!!!!!ありがとうビルス様!!!!!』
「それくらい喜んで貰えたら、こっちもやった甲斐があるもんだよ。」
「ですが幾つかルールがありますよ、メルさん。」

まぁ流石に何もない状態は無理かと思い、ウイスが杖を叩いて物を落とす。

『これは?』
「第7で付けて頂くものです。
貴方の気は強すぎますので、
必ず華を仕舞って行動なさって下さい。
そちらは制御用です。」
『成程、人間の状態か。』
「イヤリングの方は気配を認知しにくくするものです。」

前に使っていた物に似ているかなあと思いつつ
深い青色のイヤリングを付けてみた。

「下界の者達に反応しないものですので、神々対応ではありません。」
『ありゃ…あ、でもそれなら』
「ビーデルさん達がご心配であれば無用ですよ。
そちらは特定の人間と神々であれば見えるようになっています。」

勿論彼女達も対応していますので。
そう言われてほっと胸を撫でおろす。
パンちゃんと遊ぶという話もまだ終わらせていないのだ。

一体幾つになったのだろうか。
この場所と外の宇宙に在る時間は違うので
進んでいたり進んでいなかったりの把握が難しい。

「こっちは?」
「流石に正装で居られるのも、ということでお忍びの服ですよ。」
『わあああかわいいいい』
「ビーデルさんに少しお話すると大喜びされまして。」

一着好きに着せてもいいかもと聞いたらソレがと言うウイス。
黄色のカーディガンに、下は白い襟付きの長袖。
ズボンは白いレース状の長スカートになっていた。

茶色い肩掛け鞄をつけて、ジーンズ系の靴と白い靴下を履いてみる。
新品なので部屋で付けても問題ないと判断したのだ。

早速着替えてきたのに、お似合いですよとウイスが嬉しそうに笑う。

『かわいい〜〜〜〜〜!!ビーデルにお礼言わないと!!
お菓子も持っていこうかなあ。』
「大変喜んでくれると思いますよ。」
『やた〜〜〜〜〜!!!楽しみにしてる!!多分来月辺りになるけどいい?』
「ええ、構いません。なんでしたら全て片付けた後でも良いですよ?」
『してもいいかどうかは、色んな人に許可取らないといけないから。』

そうちらりとメルはアルトの方を向く。
指を指したあと、指を回したメルに、嗚呼と声を上げた。

「調子よければいいのと、時間守るなら後で全員許可取るよ。」
『やる!!!!!!!』
「ならよし。」
『よし!!!!!!!!!!!!』
「元気ですねぇ〜〜〜!!」
「ま、元気そうならいいか。」

寝込むことももうないと知り、ビルスは席を立つ。
じゃあやるとするかと玄関に戻ろうとしたビルスに、
メルは先に外出ておいてと声を掛けた。

『流石にこのままやりたくないから。』
「…それもそうだね。いいよ、数十分くらいなら待つとしよう。」
『すぐ用意する!!』
「メル、危ないからあてるなよ。」
『シューズだからだいあああああ』
「アタシはこけると言ってない身体をぶつけるなと言ったんだ。」

全くもうと言うプラティアに、びえええと半泣きになるメル。
ほらこっちと誘導し、ドアを閉めて話をする二人に、
騒がしくてごめんねとアルトがお辞儀をして二人を外へと誘導することに。

「本当に元気で良かったですよ。」
「毎日ではないけどね、仕事中だと無音になるけど。」
「ほお?そんな感じしないけど。」
「メルさんは集中されると中々切りませんからね。
此方から意識をぶった切る勢いでいかないと
本当に言う事聞きません。」
「ねぇそれ普通に言う事聞かないんじゃないの?
意識失わせてるって余程でしょ。」

おほほほほ!そうともいいますねえと笑うウイスに
ビルスはううんと声をうならせた。

「でも割と本当に温厚になりましたよ。
向こう側で何されたのかしりませんが。」
「おや、見ていないのですか?見れるでしょうに。」
「あの子の中を見るのは良いのです。」

あの子は何時だって全てを包み込もうとしていく。
それを周りは知っているし、
その量を周りは必要としていないのも事実。

「見て欲しいなら見ます。あの子は見ても許しますが、私はあの子が良いと言うまで見ないと決めたのです。」

だってあの子は、何時だって其処にいるのだから。

「…信頼されているのですね。」
「いえいえ、すいません仕事場は本来
もう少し手前に位置していたんですが。」
「構いませんよ、これしきの距離程度。」
『おまたせ』
「きたか!!」
『やれるぞいぞい!!』

そう言ってメルは元々来ていた衣服に着替えて帰ってきた。
基本的にドレス姿で移動していたが、組手やらなにやらの時は簡易的な衣装に変えていた。

ボリュームが少なくなったと言えばそうだが。

「ねえ、君本当に食べてる?」
『え?一応食べてるはずなんだけどねえ?』
「管理してますが、ちゃんと三食
何ならおやつも適度に食べる様になりましたよ。」
「ならいいけど…痩せすぎてない?」
『そんな怖いなら、攻撃しないほうがいいんじゃ、ない!?』
「っと、そんな攻撃覚えたんだ。」

面白いねぇと笑うビルスに、良いでしょうと
メルはリキールに言われた様に
地面に足を叩くように押して
ビルスの下に根を生やした。

それに気付いたビルスがとんと後ろに避ける。

『まだまだ!!』
「植物の方に変えたんだねえ、でも。」
『わ!!』
「出す速度が遅すぎるね。」
『っならこう!!』

鼻をちょんと触られて、メルは驚き後ろに軽くよろけるも
手に力を込めて気を飛ばす。

「っと、おおだすよおおお!?!?」

出す様に出来るのかと言う前に、量が増えて思わず声が驚く。
数の暴力だが、当たっても全く痛くない。

「加減しすぎじゃないの?」
『わわ』
「まあ僕も言うて加減してるけどね。」
『え?まじ?』
「まじ」

ニヤリと笑い蹴りを入れてくるビルスに
メルはしゃがむと足をしっぽで掬われる。 
ふわりと浮かぶ身体に軽く手を押されて飛ばされた。

「優しいですね〜」
「うるさい!!元々女子供は手出しするつもりはないんだ!!!」
「でもメル様がお望みとあらば、と前にでてくれるんでしょう?」
「だまっ!?!?」
『ほおら、つかまえた?』

空に飛んだメルは隠れてリキールにしたような黄金の草原を創り出した。
その範囲はビルスだけではない。ウイスやアルト達もその中に入れた。

「え、待って、私達も???」
『試しに付き合ってね。』
「…これは、これは。」
「なんだこれ、動いても動いても追いかけてくるぞ?!?!?!」
『っはははは!!!すげええ〜〜〜!歩く草原だ!!!』
「煩い!!!は、やく、ほど、」
「ビルスさま!?!?」
『あー数十秒は持つか。調整これで此処なのねぇ。』

そういいながらメルは下から生やした植物に身体を落とし
そのままゆっくりと植物から身体を地面に下す。

ぐったりして倒れるビルスの上からどう?と声を掛ける。

『心肺やら感じは一定だけど、やる気ある?』
「…なんだ、これ本当に。お前何をした。」
『我儘の極意や身勝手の極意に近いもの。』

どんな危機でも回避出来る身勝手の極意
闘争心を燃やし続けた破壊、我儘の極意

そのどちらでもない位置に居る状態。

『名前はまだないが、危機処か
その状態事態をあやふやにさせれば
お互い何もダメージなんてないでしょう?』
「…優しすぎる、が、お前らしいっちゃあお前らしいな。」
「天使にも通用するというのは、些か厄介ですねえ。」

ちらりと見たウイスに、メルはにやりと笑う。
その黄金の目には、赤い瞳など映す気配は一つもない。

『そいで、どう?ご気分は』
「すこぶる悪い…と、言いたいところだが、気分がいい。」
『でしょう?』
「気合全部削ぎ落していくのは、破壊神と滅茶苦茶相性が悪いねえ」

闘争心を上げて燃やすので、その心を根こそぎ包まれると話にならない。
ビルスは考えたねえと身体を横に倒したまま降参だと声を上げた。

「えげつない攻撃があるから気を付けておけと注意されたが
…まさか根こそぎ持っていくとは思ってなかった。」
「あの第8の破壊神が滾々と言うなんてと思っていたのですがねえ。」
『えっ待ってそんなに精度良くなった?!それなら凄い嬉しいんだけど!!!』
「まだ荒療治ではあるだろうけどね。これ常時されたらたまったもんじゃないよ。」

こっちの仕事になるわけがない。
そう言い切ったビルスに、流石に常時はとメルは半笑いである。

「植物だけに根こそぎって?」
「アルトリア様…流石にそれは」
「あれ?皆そう思ってそうだったのに違ったの?」
『あはははは!思ってる想ってる。』
「くだらなさ過ぎることで良く笑えるもんだ…」

黄金の草は綺麗に消えて無くなるのに、まだ意識がもうろうとしている。

いや、朦朧としているのではない、あやふやなのだ。
一体今まで何がしたかったのか分からない。
それに苛立つこともなく、何故か、心が穏やかになる。

「…なあ」
『ん?』
「プラティアにそれをしたらどうなる。」
『ああこう?』
「どう」
「…あ〜〜〜〜〜メルお前コレ出すのか???」

本気で言ってる?そう嫌そうな顔になったのを見て納得がいった。
カランコエが以前メルの中は地獄であり天国だと言ったことを。
そう、メルが使っているこの状態は、メルの内部で起きていること。

それ即ち

「常時これを浴びせられていると思えば…そりゃ気力も失せるわ。」
「元々の素まで丸裸にさせられてる感じがなんとも嫌なはずなんですがねぇ。」
「全てが嫌でもない、かと言って忘れたいと思えなくもない。」

その何処にもいかない感情が、ただ目の前を彷徨い続けている。

「アタシがメルに協力し出す気持ちが分かるだろう?」
「納得するっていうかよく今まで壊れず生きれてるよね???」
「そりゃ壊させてくれねえからな。」
「…ねぇ君さ、悪魔から生まれた悪魔じゃないの?」
『あははは!!一応ルトは元悪魔だしね!』

いや違うそうじゃなくてと言うビルスが呆れて続きを言う事もなくなった。
確かにこれは忠告を滾々とするのも頷けるというものだ。

「これ奥の手なんだよね?そうじゃないと破壊するよ???」
『わあ。一応リキールと組手してそういう手筈にしたけど、だめ?』
「だからそうじゃないと破壊するよって僕言ったよね????」
『わあ〜〜でも最初の攻撃とかは?』
「…甘すぎるけど、ちゃんと組手に反映して
隙を出させるチャンスと考えれば充分してもいいと思うよ。」

君らの攻撃のパターンは色々あり過ぎて考える気すら失せると言うビルスに
恐らくだがうちの原初が何かしたんだろうなあと思い出した。

『そういえば悟空さん達は?』
「組手となったら我も我もと出てきましたが
はしゃいで倒れると困るので、自分達に勝てたら、と
現在原初と息継が対応していただいてまして。」
『あ〜〜〜コロネとトレイーズなら容赦ないだろうなぁ〜〜〜〜。』

数日前に、滅茶苦茶心配していたコロネを思い出す。
一応元気には振る舞っていたが、精神的なショックは正直ある。
まあそれは未だにあるというもので、こうして神々が遊びに来ているのも
恐らくそこが心配なのだろうと踏んではいたが。

『あの二人大丈夫かなぁ。特にコロネの方が心配。』
「おや、私はトレイーズ様の方が心配でしたが。」
『あの子はちゃんと見るとなったらある程度手加減してくれるんですが
コロネの方はコレって決めたら我を貫き通すので。』

相手が悟空さんであればと言うメルに、
その通りですよと言ったウイスにホッと息を吐いた。
これが逆ならかなり心配で今すぐにも飛んでいきたいと言ったメルに
流石にとウイスは苦笑いを零す。

「ま、この感じならいざとなった時でも大丈夫そうだね。」
『ビルス様…!』
「君一応狙われてもある程度守れるようになってもらわないとこっちの心臓が幾つあっても足りないし。」
『あはは』

そう言えば前は良く狙われていたなあと思い出す。
11番目辺りからの付き合いではないが、
確かに狙われることはあった。

そういや

『まだ最悪の6魔女全員に会っていないしなあ。』
「…エフェメラル」
『ん』
「一応言っておくが、アタシ以下の奴らは力と言う力はない。」

だが、友達になろうなんて考えは捨てろとギッと睨むプラティアに、メルは笑っていた顔を消し去った。

「奴らは残酷で魔女というより殆どが悪魔に近い存在だ。」
「そういえば魔女になったということは、プラティア様は
加護天使様がいらっしゃったと?」
「あの時は少々特殊でね。アタシの場合は居なかったというかつけても無意味だったが正しい。」
「無意味?」
「ある一定以上の能力を持つと一人でいいじゃんってなるんです。
原初の華神達がそうであるように。」

まぁ私はこの通りドジで迷子癖も色々あったので
カミカゼがついてくれていたんですがと笑うアルトに
メルも苦笑いで答える。

『でも悪い奴じゃないんでしょ?』
「最初を見ていないから猶更そういう考えを
捨てろっていう話をしているんだ。」
『ああ、ううん。』
「…ま、一度お灸を据えるべきではあるだろうが。」
「その方達をご存じなのですか?」
「一応ね。だが名前すら言いたくない。」

言えば来るだろうからなと言うプラティアに、
メルは少し思い出しながら考える。

確かプラティアの力は絶大で、
完成されたと言ってもおかしくない脅威ではある。
その力は誰も太刀打ちが出来ない。

技量、力量、想像力から全てにおいて完璧であるもの。
揺るがないその感情を、私は揺るがせてしまったので
取り込むことが容易にではないものの、一応できたは出来たが。

「なんかこう特徴とかも言えないの?何処の宇宙に出没するとか。」
「…お前達宇宙は幾つと言っていた。」
「第7ですが。」
「……………まあ、いいか。」
「何々何々、その含み方。」

一応管轄内ではあるが、そんな悪魔の様な存在ならば
ウイスとて天使の端くれ。察知しない訳もないが。
魔女の特に最悪と呼ばれる状態達はそうもいかないらしく。

「魂自体は一つだからね。制限も各々で出来る。
まぁ最悪の6のうち一番威力が小さいので
下手に当たっても大丈夫だとは思う。」

それに、アタシも体内に居るわけだし。
そう言うプラティアに、少し緊張していたメルの肩が降りる。
そうした途端、とんとメルの胸に指を三回付いてくるプラティアに、
なにも防ぐことなく、メルは後ろに作っていた樹木にもたれかけた。

「ほら、そうやって気を抜くから花を折られるんだ。」
『…ぷ、らて、あ?』
「はぁ〜〜〜〜お前のお気楽さには本当に怖いが。」
「我々もいますし、ね?」
「……まぁ、天使やらを信用していないとかじゃない。」

普通にお人よし過ぎるこいつの問題だと言うプラティアに、
ううと唸ることもせず、そうかなあとメルはちらり胸を見て手を当てた。
いまだドクドクと心臓の音を鳴らすその場所に、プラティアが見ていたのに気づく。

「…残酷だよ、ほんと。」
『?』
「それ、完成したらアタシも使おうか?」
『いや貴方は元々使ってるでしょ、身勝手の極意』
「え、ちょ、待って待って聞捨てならないんだけど。」
『何々』
「まさかプラティアが居たのに向こうで囚われてたの???」

あと言うメルに、そう言えばそれどうなのとメルは言う。
確かにあの時、逃げようと思えば逃げれたはずだ。
プラティアの技量であればメルの方に下がって戻り、
そのままプラティアがメルの身体を乗っ取ってと動けたハズ。

「…出来るわけがないというか、したくなかったんだ。」
『プラティア……』
「あの時、大神官らの目は本気だった。
下手に動かすとメルの身が危ないと察知した。」
「だから自分の身を彼らに渡したと。」
「まあ監禁されているとは知らなかったから
あの後胸倉に一発撃ちこんだのはそういうことだ。」

メルを傷物にしたのだ。それ相応のことはする。
ソレを言ったことで、ビルスが固まる。

「…第8の天使の匂いがやけに煩いと思っていたけど。」
『ひ』
「へぇ〜〜〜〜〜〜?????偉く気を許していたんだねぇ????」
『だだだだだだだだってアレ仕方がないもん!!!』
「別の世界でも悪い奴なんて幾らでもいるんだよ。」
『でも、天使だよ?神様だよ?そんなことしたら悪魔にだって…』
「メルさんはご存じかと思われませんが、
以前神々でも全てを壊そうと企む輩がいましたので。」

勿論悪魔になんてなりません、界王神でしたが。
そういったウイスに、そう、とメルは零す。

「もう破壊したから願いで戻るなんてことはないだろうが。」
「…いや、出来なくもない。」
「なんだと?」
「華樹の願いがちょっと頑張ったら出来うる可能性はある。
あの華樹は華神の範囲外ならほぼほぼなんでも叶うんだ。
一度ドラゴンボールで救った命でも、管轄が違う場所なら効果はある。」
『じゃあ、その悪くなっちゃった界王神様も狙う可能性がってこと?』
「っなら猶更!!」
「だが、それで隔離すれば本当に奴ら以下になるぞ。」
「…っぐ」

そう睨まれるプラティアに、ビルスはぐっと抑える。
何も心配なのはサワアやウイスなどの天使だけではないのだ。
監禁され、犯されて帰ってきたとあれば話が別であって。

「幸いなことに、あいつら、特にコルンの方がまぁ良かったから良いものの。
そいつの言う様に、必ずしも別世界も同じ良い天使とは限らない。」
『でも消滅したりは?』
「それこそドラゴンボール見たいな願い玉等に頼られるとどうなる。
加えて華樹の事を知っていたら其処に飛ばし、
成り代わられていたら話にならんだろ。」
『うぐぐ』
「プラティア様の仰る通りですよ、メルさん。
貴方は確かに神々特に天使に限っては気を許し過ぎています。」
『ウイス様まで…』
「すいません、ですが心配なんですよ。
こんなになって帰ってこられたら
本当に監禁してしまいそうになりますから。」

そっと頬に付いていた汚れをふき取るウイスに、メルは礼を言う。
本当に寝首をこうやってかかれる可能性だった充分あるというのに。

「なんでしたらあの後サワアお兄様の説得だって
ものすご〜〜〜〜く頑張ったのですからね?
本当に消滅寸前みたいなことをしでかそうとするんですから。」
『え』
「…嗚呼、例のアレ?流石に前のサワア様
見ていても、ちょっと酷かったよね。」
『えまって何それアルトさんウイスさん何の話です???』
「そりゃ数億年以上待っていた愛おしい人が
自分を選んで進もうとしたら奪われていたとか
そんなの知ったら気が気じゃないだろうよ。」
『言葉ではさらっといいますけどね?!?!?!』

焦るメルに、アルトが軽く事情を説明する。
メルが消えた後、サワアはメルの華を元々千切っており
その千切った華を喰らい、願いを言った。

願いを言った後、戻ってきたが、
未だかえって来ないという話で、
別世界に移動しようとするのを止めていたら
向こう側の大神官と大神官がコンタクトをとり、
連れ戻しに穴を開けたらすぐさま飛び出したらしい。

成程だからあんな切羽詰まったような形で来たのかと。
因みにそれだけではないらしくだな。

「メルさんの匂いを咄嗟に知ったお兄様がそりゃあもう大激怒でして。
割とシャレにならないくらい監禁しかねなかったので。
流石にと大神官様が説教しましてね。」
『え』
「一応落ち着いているとは思いますが、最近お顔をみていないのでは?」
『そういえば、確かに…元気なかったというか、よそよそしかったというか。』

ああ、そういうことなら、まぁ。

『うう、ちょっと危機感持つようにします。』
「ふふ、そうしていただけると我々も助かります。
何かあれば困るのはお兄様だけではないのですから。」
『うううう……ご、ごめんなさい。』
「ま、外に出る以上危機感を持つのは大前提としてだ。」
『あっそれ以前ですいませんね。』
「…メル」
『なに』
「暫く出ていてもいいか?」

いいけどと言ったメルに、はいと渡される。

『なにこれ』
「前に付けていただろ。紐。」
「なんですかそれ?」
『嗚呼対天使用の保護紐。これ付けると範囲に入れば身体吹っ飛ぶ。
因みにコルンが手軽く吹っ飛んだからそれで焦って助けなきゃって思っちゃって。』
「…隙が生まれやすいですね、本当に貴方と言う人は。」

あははは。

「ソレ改良して花の方にボタンがあるだろ。ちょっと押してみろ。」
『え?ああこれか。』

カチリと音が鳴るソレに、聞こえるかと声が通る。

「(お前アタシの音声を直接シャットアウトし続けているからな。
これは強制的に通信できるように改良している。)」
『(おお、まさかこの声って周りに聞こえては?)』
「(一応いないはずだ。加えてお前の安否と場所によっては移動できる。)」

そう言って距離を近づけて移動したり、
遠くに移動したりとするプラティアにこれいいねと声を出したメル。

「気に入ってそうだったからな。向こうのコルンから奪い取ってきた。」
『う、うばいって…』
「服の下に隠して付けていたらバレやしない。」
『ええ』
「ええじゃない。それら付けないなら連れ出す許可はださん。」
『え!!!それは、困る。』
「なら言う事を聞いておけ。」

わかったなと頭をぽんぽんと撫でるプラティアにはぁいと声を零す。

「じゃ、僕らはこれにて。」
「また遊びに来られるときはご連絡いただけると助かります。」
「わかりました。連絡するようにさせます。」
『なんか保護者増えた感あるんだけど、気のせい?』
「間違いはないな。」


えええ