天秤皿には羽根と君





前回のあらすじ

女子会始まりました。

メンバー一覧

・エフェメラル
・アルトリア

破壊神
・2 ヘレス

天使
・12マティーヌ

華神:原初
・4 感情エンヴィ

華神:最果て
・1 愛コファ
・2 知恵クライオリー

華神:廻廊改め終焉
・2 奇跡ミラ
・5 天使フィズ
・6 狩人シアージュ
・9 星風エル
・10目守ピナコル
・12再開リサ

以上13名になります。

++++++++++


下に帰ってきたというよりかは、
リビング、食堂の方に入った一同。

『もうすぐ夜になるし、当番決めよっか!』
「おお、面白そうじゃな。」
『こんだけ人数いるし、全員女性だからね。
流石に男に振る舞う訳じゃないから
全員で作らなくて良いかと。』
「それもそうですね。」

今から完全な二日になると話が別だが、
今からの晩御飯、明日の朝、昼、夜。
明後日の朝、昼、夜まで居るから
最低でも7回分は用意しなければならない。

13人いるのだが、流石に2人でするには難しい。
少なくとも3人は一度に必要だろう。
今回天使や破壊神が一人ずつでもある状態。

かと言って全部組み分けをするには面倒なので、
今日決めてそれをこなすというものにする。

『献立は各々が好きにしていい。
ただしそこの戸棚にあるレシピを使うこと。』

間違っても他の料理を作らないようにと念を押す。
まぁ作ってもいいが、ゲテモノになりやすいのと
結構他の惑星より質がいいので
勿体ない感じが出て悲しむのを見たくないというのもある。

『ひとまず今日は全員で作るけど、明日からは当番制でもいい?』
「我々は構わぬぞ。家主はお主じゃしのお。」
『おっけ。じゃあはい日本人挙手。』
「にほん?」

そう手を挙げたのはコファ、クライオリーの二人だ。
純粋な奴が二人かあきついねぇとメルは苦笑い。
こっちに来ていてとメルはキッチンの方に二人を誘導する。

『さてとお、最低でも6でしょ。』
「メル私達も共有出来てたしいけるのでは?」
「先にそれなら聞きたい。」
『何コファ様』
「先程アルトリア様から日本の全てと言っておったが、
お主調味料系も網羅しているのか?」
『やろうと思えばいけてるはず。』
「それは香辛料などの外国産もか?」
『あ〜〜〜あああ、そういうことか。
そうだよ、えっとね、ほら韓国料理あるでしょ。』
「嗚呼香辛料の味しかせんやつとかじゃな。」

そんな料理あるの…こわにほんってとこ。
いや外国だから大丈夫だとアルトがこっそり突っ込みを入れた。
彼女もまた、メルからある程度教えて貰っている一人だったのだ。

『要は日本で作れる和洋折衷は全部出来る。
何なら寧ろコレないから欲しいとかの要望が欲しい。
寧ろ全力でソレが欲しいから、今度最果てと息継
全員入れてパーティーしたい。』
「絶対人選纏めた方がいいから、ソレは今度な。」
『ええええええ』

ええじゃない。

『まあそれは今度にするとしてだ。
じゃあ私とアルト、コファ様とクライオリー様
この4人は分担するようにしよう。』
「味付け怖いなら人に聞くとかにするのね。」
『そういうこと。勿論一人余るから、5人態勢は作る。』
「ならメルの所に入れたらいいのでは?」
『そうだねぇ、それでもいいよ。』

別に皆がイチャイチャしていれば私は満足である。

『…コファ様、クライオリー様。』
「なんじゃ?」
「どうした」
『はい二人決めて良いよ人。私エンヴィとフィズは貰う。』
「おお、貰われた。」
「私も」

そう服を掴んで外側、ガラスの方に移動するメルに、
じゃあとコファが手招く。

「我の所はエル、シアージュが来るが良い。」
「じゃあ私の所はリサとピナでもいい?」
「いいですよ!!!」

そうわらわらと人が移動する中、ヘレスとメルが手招く。
それに呼ばれると思うておったと笑う。

「ではミラとマティーヌ様は此方に」
「わかりました」
「はあい」

当番のメンバーはこんな感じ。


当番
・0  華樹神エフェメラル
・2  破壊神ヘレス
・4 原初感情エンヴィ
・5   天使フィズ


・0 華樹神官アルトリア
・2 終焉奇跡ミラ
・12  天使マティーヌ


・1 最果 愛コファ
・6 終焉狩人シアージュ
・9 終焉星風エル


・2  最果知恵クライオリー
・10 終焉目守ピナコル
・12 終焉再開リサ


そう紙に書いたメルに、メルメルとコファが言う。

『なにコファ様』
「言語すら日本語になっておる。なおせ。」
『え?嘘!あっ!!!嘘ほんとだ!!ああごめん〜〜〜!!!』
「その言語、皆さま折角なので覚えて帰るというのはどうでしょうか?」
「マティーヌさんそれはおすすめしません。」
「おや、何故です?」
「ううん、覚えて損するしかないからなあ。」

そうクライオリーとコファが全力で否定する。

「我々の住んでいた星でも、一番難しい言語と呼ばれていたのです。」
「おや、ですが簡単そうにもみえますが…」
「書き順とか色々含めて少なくとも丸二日では習得は無理だな。」
『ひらがなとカタカナ、漢字とローマ字の四種ごった煮だからねえ。』

流石にと手を合わせたメルに、そうですかとしょんぼりするマティーヌに
そうだとメルが声を上げた。

『マティーヌさんそれなら近々日本語勉強会します?』
「よろしいのですか!?」
『無駄知識になるとは思うんですが、どうせアルト達も使えるし。』
「死ぬほど無駄だったマジで無駄。」
「そ、そんなにですか?」
「でも暮らしの豆知識的には楽になりますので、物は考えようかと。」
『予定組む時一応大神官様にも聞きたいので、どうです?』

無駄だと全員に否定されても、します?
そう笑うメルに、お願いしますと言うマティーヌによし来たと笑うメル。

『あとで大神官様に言っておこ。』
「ああ手にそんな落書きを…!」
「あ〜くっそ懐かしいなそのノリ」
「え?」
「覚えて忘れるからって集団行動で誰か一人するやつね。」
『そうそう!!これさコルン様の前とか絶対出来なくてさ!!!!』

絶対説教食らうもんねええええと笑ってはしゃぐメルに、ぽかんとするマティーヌ

「すいません、メルはテンションが上がるとああなるんです。」
「ああいえ、その…可愛らしいとはお噂に聞いていますが。」
「幼稚でしょう?」
「…いえ、その。」

いいんですよとアルトは答える。
彼女が何故あんなにも周りに囲まれるのか。
それがきっと彼女も不思議であったろうし、
こうして此処に入れて貰えるなんてありえないと思っていただろう。

「コルン様やサワア様達が変わるのもきっとわかります」
「…いえ、こうしているだけでわかりますよ。」

ああ花かいたあと笑うメルに、描いたミラがクスクスと笑う。
他にこれとかはと、書き直してくれているのはコファで。
風呂の選択とかの文字も書いていたが、アルトもまた、間違えていた。

「嗚呼ごめん、私も間違えてたね。」
「書き直しておく、大丈夫だよ。」
「すいません、言い訳苦しい話ですが、此処の全てが日本語でして。」
「え」
『書類は神々の言語。それ以外は全て日本語で記載されています。』

その戸棚全部日本語だよ。
そう言われて、マティーヌはそっと棚からレシピを見て驚く。

「おやこれはまた…」
『読めないというのもあって写真も掲載してます。
アルト、コファ様、クライオリー様は私含めて
この言語を読めますので。』
「成程、あの編成で確かに正しいでしょうね。」
『そうでしょう。まぁどうしても読めなかったり何かあれば教えて下さい。』
「ええ、その時はお願いします。」

意外と話したら結構可愛らしい女性だと思う。
マティーヌさん本当にお母さんって母性が強くて好きだなあと
前まで威嚇して嫌っていた自分とは打って違う。

まぁそれも、外に出れば違う関係になるのだろうなと
メルはふと、玄関よりも奥のトンネルを見つめて立っていた。

「メル」

そう呼ばれて、振り返る。
うん、大丈夫。大丈夫だよ。

『いるよ?ここに。』
「…嗚呼」

変わらない。そう決めたのだ。
ふと思い出す。どうしてこの道に辿り着いたのだろうかと。
黄金の草花が、記憶からちらりと覗いてくるのを、首で消し去った。

「メル、晩御飯どうする?」
『どうしようねえ』
「女子だけだし、滅茶苦茶美意識高いの作る!?」
「お、よいのお。」
『美容か〜考えたことなかったな。』
「お主も綺麗にすればもっと可愛らしいというのに。」

やめてよとメルは照れてそっぽを向く。
自分がこれ以上綺麗になっても仕方がない。
みすぼらしい自分のままが、一番好きなのだ。

余り手入れのしていない髪の毛を触り、よくないと答える。

「メル、お主もう少しくらいは身なりをじゃな。」
『えっしてる、とおもうけど』
「違う髪じゃ顔じゃ。女の命は髪の毛じゃ!!」

そう言えば確かに、其処迄気にしていなかったと思っていた。
まぁ髪色やらが変わるというのもある。

『んん、綺麗に出来るけど、余り綺麗にしすぎるとまとまらないんだよ。』
「…纏めなくてもよいのでは?」
『えっまさか私髪の毛きるかんじ!??!』
「確かに背中まで伸びてますよね。」

たしかに、そう言えば最近切った覚えがない。
髪の長さも変えれるとは思うが、此処での時間やら
なんなら下界に降りるなら人間に戻るというもの。

適当に放置していたのにヘレスがならぬと答える。

「女子ならもっときれいにじゃ!!」
『化粧はちょっと…』
「そう言えばメル化粧しないよね?なんで?」
『いや女の子なら化粧好きとか偏見だからね???』

いや本当にそう。

『面倒というのもあるけど、そんな余裕なかったからなあ。』
「…そっか、メル私達の所も走ってくれてたんだもんね。」
『まあ、ね。』

そうフィズに言われて笑って答えてみる。
あの時からしたら、確かにのんびりしていると思う。
焦って走って、とにかく、前を向くしか出来なかった。

でも何時だって後ろは振り返っていた。
其処に誰かがいる気がして。

誰も何も、いないのに。

「猶更じゃ。猶更せい。」
『うう、直ぐには無理だけど、まぁ身なり程なら出来るよ。明日しようか?』
「おう。待っておるぞ。」
『とりあえず組に分かれて20分後発表でいいですか?』

今回の晩御飯。

さあ、一体何にしようか。

『カレー作るのは王道過ぎるから、焼きそば?でもヘルシー系じゃないよなあ。』
「うわっ、チャーハンにラーメン、餃子とかお前此処系列店じゃないんだぞ??」
『でも食べたかったから作ってみた。』
「はらへるううううう」
『ねぇフィズ、エンヴィ二人とも好きな味とかある?』
「私は酸っぱいものかなあ。」
「ある程度は食べれるけど、メルは?」

どうしようねぇと唸るメルが、ぺらりとページをめくった後、
がたりと身体を動かし、棚に戻る。

そう言えば、昔似たようなレシピを探していたな。

『あった』
「なにこれ」
『スパゲッティ・ポモドーロってやつだよ。
トマトの水煮を煮詰めるだけの、いちばんシンプルなパスタ。
お米系より麺の方が良いかと思って。』

加えて周りは女性だし、お野菜重視でもいいかもしれない。

『ハイハイ集合。皆決まった?』
「スパゲッティって話聞こえてミネストローネが食べたくなりました。」
『採用決定。何の?』
「春野菜のミネストローネ」
『合格過ぎる辛い。』
「デザートに、バニラのアイスとかは?ビーンズある?」
『ご用意させて頂いております。』

ニヤリと笑うメルに、じゃあ決まりじゃなと笑う。
それならもう一つ作ろうよと声がかかる。
確かに三品で全員もあれだし、とメルが気になったのを手に取る。

『いやでもなあ』
「どうしたんじゃ?」
『鮭かあ、しゃけ、しゃけかあ〜〜〜』
「えっ待って山菜系じゃないの。肉とか魚も獲れるの???」
『できなくはないんだけど、海ねぇ…大丈夫かなあ。』

私の知識がちょっと曖昧なんだが、
でも絶対合うよなあと唸る中、
それならとクライオリーが指を指した。

「春野菜系になるならマリネはどうだ?」
「いいな、洋風だし。」
『魚もコンプするために調整します。
いや待って魚介系知ってる人わかる?』
「いやわからないが、それこそ息継の人間なら知っているんじゃない?」
『女子会終わったら絶対きこう。』
「今聞かぬのか?」
『この状況に男性一人とか殺されるわ。』

私が逆ならマジで引くと言うメルに、
大げさよのおと笑うヘレス。

気になるなら聞けというも、
こういうところも彼女の良い所であって。

「まあ、また。来てもいいってことじゃろう?」
『…あ、う、うん。』
「ならよい。また、な?」

また、それは次があるということ。
嗚呼そうか、一度にしなくていいんだと胸を撫でおろす。
どうしようもなく、全部して完成させようとしてしまうところがある。

「じゃあメニューはこんなところか。」


スパゲッティ・ポモドーロ
・0  華樹神エフェメラル
・2  破壊神ヘレス
・4 原初感情エンヴィ
・5   天使フィズ

春野菜のマリネ
・0 華樹神官アルトリア
・2 終焉奇跡ミラ
・12  天使マティーヌ

春野菜のミネストローネ
・1 最果 愛コファ
・6 終焉狩人シアージュ
・9 終焉星風エル

バニラアイス(ビーンズ入り)
・2  最果知恵クライオリー
・10 終焉目守ピナコル
・12 終焉再開リサ


担当が決まったことで、メルが指示を入れ始める。
アルトの所は別にいいが…。

『コファ様、クライオリー様』
「よせそれは」
『え?』
「別に我々を呼び捨てにしてもいいんですよ。」
『うういやでも…いいの?ほんとに?』
「嗚呼」
『えっと、じゃ、じゃあ……こふぁ?』
「っぐ」

救急車いります?いらん。
そう胸を掴んで倒れそうになったコファに
クライオリーが背中をトントンとする。

本で隠れつつも目だけは様子をみたくて。
そう照れ隠しに言ったメルが可愛らしくて
死にかけたコファに、メルは苦笑いだ。

『お二人とも、菜園の場所は知ってる?』
「アルトリア様に聞いておる。詳しい詳細もな。」
「どちらにせよこうなると思いまして二人はちゃんと教えましたよ。」
『じゃあ大丈夫か。今回日本語リーダー全員いるし。』
「ん?今回?どういうこと?」
『嗚呼前にウイスさん達が遊びに来てた時があってね。』

そういやその時の話していなかったか。
まぁあれが時効かどうかは知らないが。

「えっお泊りしてたの!?!?」
『んんいやお泊りと言えばそうか?保護観察?んん。』
「夜も居ればそれはお泊りじゃろうて。」
『じゃあお泊り。』
「いたんだな。」
「ええずるい。」
『まぁあの時はねえ?』
「メルも割と調子悪かった時期が長かったので。」

どうしようもない時だったのだ。
こうして話していられるのも奇跡というもので。
華神達とイチャイチャだって私もしたかったのだ。

うんうん、女の子が可愛い。

『その時も似たように分担してたんだよ。』
「成程だからこんなにも手際が良いのか。」
『えっとそれ褒めてます?貶してます?』
「好きにとらえてよいぞ?メル。」
『あーはいはい、両方ね。』
「っこれ!適当に扱うでない!!」

むきになるヘレスを半分無視し、じゃあちったちったと指示を出す。
此方も大量のパスタをゆでなければいけないのだが、だ。

『今回麺なので、うちらの組はほぼ皆が帰ってきてそのあとくらいね。』
「そうなのか?」
『玉ねぎニンニクか、左側の菜園に行けばあるけど…』
「取ってきましょうか?」
『嗚呼いや私が行く。エンヴィは此処に残って皆の調理鍋構えておいてもらえない?』
「わかった。」
『私だけでもいいけど、フィズくる?』
「おやわらわは一人か?」
『エンヴィの手伝ってて欲しい。多分他の人が来るはずだから、その対応任せて貰っていい?』

よかろうと笑うヘレスに、じゃあとメルは待った待ったとガラスから外に出るのを止める。
この空間くらいならいいが、向こうに行くとなれば土道を歩くというもの。
流石にと部屋から靴下をとってくると走って戻っていく。

「元気そうですね。」
「ええ、感情的にも心配なさそうでなによりです。」
「そういやお主は天使だったときいておるが。」
「ええ、そうですよ?」
「司る場所的にどのような力があるのじゃ?華神どもは皆何かしらが得意と聞いておる。」

第2であればクライオリーが特にそれを際立たせているだろう。
ああとフィズは声を上げた。

「天使の情報であれば全て出来ます。
なんなら意志操作やら色々出来ますよ。」
「成程……対、天使対策ということか。」
「…恐らくその位置でしょう。
流石に今回の事を考えると、少々警戒はします。」
「天使が監禁していたと?」

目が変わるフィズに、ヘレスが答える。
メルを取り戻しに言っていた張本人として
確かにフィズを華神の中に入れるのは妥当ではあるだろう。

界王神の件も然り、破壊神や天使が道を外さないとは言えない。
なんなら前科が今回ついてしまったのだ。
尚更外せない位置にフィズは位置していることだろう。

だが、それは酷というもので。

「兄弟の罪や罰すらも管轄にいれさせるとは酷よの。」
「…まあ、仕方がないとは思います。
メルはどうしようもないくらいに天使が好きですから。」
「メンタルも割と人間と天使を彷徨っているからなあ。」

冷酷になったり、人情じみたり、様々だ。
それは人間でもありうることだが、その表現の強弱が激しすぎる。

「今回の件、確かに管轄して酷かったですよ。
あの真面目で真っすぐな方が曲がるとは思いませんでした。」
「向こう側の意見もまぁ分からんではない。」
「ですが処罰は処罰です。その時のそれ相応の対応をします。」
「子を孕めば?」
「ヘレス様。」

余り煽らないで下さいと言ったエンヴィによいと前を向く。
揺れたフィズの、紫色の目だけをみるのだ。

「…まず消滅はさせたくないですね。
曲がりなりにも父親になるでしょうし。
彼女の性格上殺せば自分も自害しかねません。」
「じゃろうなあ。じゃが全てが終われば?」
「それは…その。」
『ただいまあああああああああ行こうフィズ!!』
「え、あ、ああ!じゃあお二人ともまた。」

嗚呼、と手を振った二人に靴を履いて駆け足でいくメルに
待って其処迄上げるとこけるよおおと後をついていくフィズ。

「ふむ、流石に離されるか。」
「バレましたね。」
「まあ仕方がないことじゃ。」



そう、仕方がないこと。
メルは気付いていた。
どうせ二人が特にヘレスとフィズは
くっつけると碌なことにならないということ。

だが他の者が対応できるとは思えない。
だから敢えて二人をくっつけたのだ。
そうして自分で引きはがすという魂胆。


「…怒らないんですか。」
『ん〜?それは私が不倫した相手を殺すかもしれないってこと?』
「ふっ!?!?!」
『あはは、割と合ってて自分でも…結構きついなあ。』
「メル!??!」

腐らせちゃったそう笑うメルに、下を俯くフィズ。
あのねえとメルはその腐った玉ねぎを捨てて、
新しいのを見つけようと探しながら話す。

『私はね、コルンが見てくれて良かったなあって思ったの。』
「…っ!!」
『子供が出来たら、誰かが殺すかもしれない。』
「しません!!させるわけが!!!」

そう掴むフィズに、メルはニコリと微笑んだ。
死ぬ気なのだ。彼女はもしも、子を孕めば。
死んで、そのままなかったことにさせようとしている。

ぞっと顔を青ざめたフィズに大丈夫と笑い答える。
私は此処にいると言い聞かせているのは、おまじないではない。
最早それは、決まりきっていたことで。

「どうして?どうしてそこまでして、皆を守ろうとするんですか?」
『すきだから』
「好きでどうこうできる者ではないでしょう!?」
『どうしようもないの。』
「…それが、天使だからですか?貴方の望んだ、天使だから?」
『…それでいいねえ。』

よくない。何一つもよくない。
子供を置いて、捨てていくのも嫌で。
でも、自分と子供が生きていても、父親は居ない。
どう転んでも、普通の家庭なんて出来ない状態。

それならいっそのこと、消えて無くなってしまえばと企んでいるのだろう。

この部屋から出ないのはつまりそういうこと。
だが、菜園の方にくれば話は別で、一応みえなくもない。
大分あやふやではあるが、見えるには見える。

だが、それは、残酷な知らせということになるわけで。

見れる、見れるだろう。でも、見たくないのだ。
それが現実に、なるのが恐ろしく怖い。

『大丈夫、大丈夫だよ?』
「…まだ、此処にいるから?」
『うん』

嗚呼、見なくても分かる。
ぽろぽろと涙が零れ落ちたフィズに、
メルはそっと抱きしめて、背中をたたく。
優しく、何よりも優しく。

それが余りにも辛くて、ひくひくとしゃっくりをしながらも泣き続ける。

何故だ、どうしてこうなってしまうのだ。

好きな人と幸せになりたくて。
でもそれは叶わない。
だから叶えさせるためにダミーを何度も創り上げた。

だが、それもどんどんと解け落ちて
最後には本当に叶わない処までたどり着いてしまって。

無駄なあがきだったと、両手を前に出したというのか。

幸せは何時だって、一瞬の小さな部屋の中でしかなくて。


「…酷い、こんなの。……ひどすぎる。」


優しい彼女が、天使を望む彼女が、
天使に、堕とされるなんて、あんまりなのだ。


『優しいね、フィズは。』
「そんなの、貴方ほどではない。」
『違うよ、貴方は優しい。それに初恋は必ず叶わないっていうものだから。』
「だからといって諦め!!!!」

寂しそうに、ぽろりと零す涙に身体が止まる。
嗚呼、違う、諦めたくなんてないのだ。
完成された、そう聞いて何がだと思った。

違う違う違う、全てが違う。


完成されたのは、その感情なのか。


綺麗に包んだ恋心を、神に渡し、
犠牲にしてでも願いを叶える。

それが、この仕組みであるというならば。


『壊さないでね。』
「っ!!!……っふ、うう。」
『ごめんね、ごめんね?』

アルトも、アルトも同じ様に渡したのだろうか。
コルンと付き合っている彼女も、
前に好きな人がいたのだとしたら…いやまて。 

白い髪の彼を思い出して固まる。

「…メル、貴方まさか、全部、知ってて?」
『へへ』

嗚呼肯定だ。それは、確実な肯定。

元々サワアを好きだったメルだが、
仮にサワアが元々メルの事を好きだとしても
サワアがこっちを見なくなると分かっていたのだろう。

アルトも、カミカゼを好きであったように。
記憶を取り戻し、願いを掴み、奇跡を掴んだとして。
犠牲がないなんてあるわけがない。

それ相応の、量がないと、奇跡なんて出来ないのだ。

ならば、諦めきれずに、完成なんて出来ない訳であって。

「…メル、待って。駄目、そんなの駄目だよ?」
『いいの。いいから。ね?』

サワアの想いを捨てる勢いだ。
何なら、願いが叶わないとわかり切っていたのだろう。
白い部屋で知った残酷さに、どれ程打ちひしがれたのか。

向こう側に行って、逃げれなかったのではない。
逃げたくても、何処にも戻れないと
再認識してしまったのだから。

戻ったとしても彼が死ぬなんて耐えられない。
その願いは確かに叶えられないが、
居ると居ないでは話が大きく違ってくる。

じゃあ何処に帰るというのだ。
何処に行けば、彼女は陽だまりの中で安らかに。
ずっとずっと、笑える場所なんて、何処にもない。

『大丈夫だよ?』

こんなの、大丈夫なんかじゃない。
これは、これはね?

「つら、いって、くるし、いって、いうのに」
『…っうん、うん。そう、たぶん、きっとね?』

きっとなんかじゃない、そうなのだ。
こんな痛み知って欲しくない。
知って笑っているなんて、つら過ぎる。

嗚呼貴方が優しくないなんて、そんなのない。
こんなにも優しいのだ。こんなにも。

どの世界に行っても、ずっとなんてありえない。
ソレは事実だ。彼女の幸せは、向こう側にしかない。

別世界の、彼が、彼女の幸せになるのだろうから。

だがそれは残酷過ぎる、現実だ。
異世界同士の関係は基本的に禁止されている。
華神達の流れはあくまでも基盤を作るための
模倣にしか過ぎないものであって。

これは違う本当にまずいところでの、歪んだ子が生まれるということ。
それを放置するなんて、神々のそれこそ大神官達が許すわけもない。
メルが異様に穏やかなのは、一体どれだけ涙を流したのだろうか。

一体どれだけ、その時間に、覚悟を決めるよう意識を変えたのだろうか。

『涙流し過ぎるとバレちゃうよ?』
「…大丈夫です。こういうのは力を使えば、ってそうか、使えませんでしたね。」
『ね?大丈夫。』
「狡いですね、大丈夫って。大丈夫じゃないのに、
大丈夫になってしまう。本当に麻痺してしまう。」
『いいでしょう?私の一番大好きなおまじないなの。
醒めない夢を見続けているから、大丈夫。』

嗚呼、そんなのない。

残酷過ぎる。

色褪めない、醒める夢ですらない現実に居続けているのを分かって言っているのだ。
天国の様な地獄、いや地獄の様な場所に天国を作り上げて、維持するしかない。

神々すらも選んだという逸材。
それは、貴方が何処までも人に天使に、優しいから。
それを、それを利用しているこのシステムが何よりも憎たらしくなる。

『思ってくれるのは嬉しい。でも貴方まで居なくなるのは寂しいよ。』
「…分かってます。魔女になんてなるものですか。」

憎たらしいとしても、このシステム自体破壊はしない。
作り変えることだって、出来るのだろうに。

「…知っているんですよね。華神の願いは夢にすら夢で叶えられない。」
『うん、知ってるよ?』
「…玉ねぎ、苦くなってしまいますね。」
『知ってる?玉ねぎは甘いなんて殆どないんだよ。』

多くが苦くて、子供が嫌いになるんだ。
そういってメルは、ぼろりと土から玉ねぎを抜きあげた。