おかえり僕のシャボン玉
前回のあらすじ
サワアの子供が文字通り天使から降りてきました。
以上!!!!!!!
『という訳でして…子供、出来ました。』
「ああああああああああああああああああ」
「とりあえずころしていい?なぐっていい?」
『おやめろください。』
そう華神、加護天使らに発表することにしたメル。
色々考えて、あの後すぐに一年を止め、アルトに連絡し
全ての華神加護天使を招集した。
それに気になったのか、それとも大神官が気にしたのか。
全天使も招集しての、大事発表になってしまったのだ。
とりあえず、華樹の下で、サワアの胸倉を掴んで
飛び込んだティーナやらアルカポネやらをなだめるメル。
「いやにしてもあの泣き虫小僧がお父さんかあ」
「そのあだ名は本当におやめください。」
「子供に教えたら困るって?」
「…ええ、そうですよ。威厳も何もないでしょう?」
『私は好きだけどなあ、そっちの方が。』
そう言ってメルは髪の毛の紐を外し軽く手櫛で髪を梳く。
『だって人間味合って好きだもん!』
「…私は一応天使なんですが。」
「にしても人と天使に位置する神と天使が子を成せば何になるんだ?」
「というか今妊娠幾つだよ。」
『えっいっ、一か月半くらい?』
「ばっ!?!?!いっ!?!?!?!」
まぁ時期が時期だったし、仕方がないか。
「お前妊娠して子供産んだことは?」
『無いに決まってるでしょ。廻廊ですらないよ。』
「産むときどうするんだよ。」
『もう通常産むかどうかはその時に寄りけりかなと。』
最悪天使に産ませる。まぁ出させる人はこっちで決めさせてもらいたいが。
そう言ったメルに、まぁまぁいいじゃんと声が上がる。
「メル、おめでとう。」
『…えっと、あり、がとう?』
「わ〜照れてる〜〜〜!!!可愛い!!!!」
「ねぇサワア様頂戴?メル様頂戴?」
「あげませんよ。」
『わしは物じゃねぇんだが。』
そう言った彼女に、周りの者も笑いだす。
そりゃそうだねぇ神様だもんねえと笑う。
『…それで、さっきも少しは話をしたがだ。』
「…IFの世界の話か。」
『近々脅威が迫る可能性が非常に高い。
警戒をしてほしいというのもあり、
互いの宇宙内勿論外でも良い。
ちょっと特訓しておいて欲しいのがお願い。』
「言われずとも、もうやってる。」
『引き続きね。』
メルの言葉に、華神ら一同が頷く。
「にしてもこんな大勢の前で良く言う様になったな?
文字通り腹くくったか?」
『まぁね。何処にももう、行くなんてつもりないから。』
「メル…」
『私は此処に居たい。』
生き続けてやる。誰よりも何よりも。強くもっと、強く居る。
そうして、小さな雑草が何よりも大きな樹になれば、良いと思ったから。
誰もが見たことのない、
綺麗な大きな樹を咲かせてしまえばいい。
その決意した目に、原初らだけではなく、
廻廊たちや、天使らにも気持ちは伝わる。
『だから、私と一緒にこの世界を守って下さい。』
お願いします。
そう言ってお辞儀をした、
というか頭を下げたメルに、
顔を上げてと慌てる面々にもすっと顔を上げた。
「言われずとも、それくらいやってのける。」
「おうお前ら!!!我らの華樹神がお願い言ったぞ!!!
叶えるつもりしかないだろお前ら!!!!」
「「「「おーーーーー!!!!!!!!!」」」」
『わあすごいきあい』
「そりゃあ、ご自身で抱え込んで
人にすらお願いしない貴方の頼みですからねぇ?」
『ウイスさあん』
「おめでとうございます。メルさん、サワアお兄様。」
「ありがとうございます、ウイス。」
色々世話を掛けましたね。いえいえ。
「エフェメラル…!」
『クスお姉ちゃん!!』
抱きしめてくれる彼女に、久しぶりにその言葉をつげる。
嬉しそうに愛おしそうに抱きしめ直してくれた彼女が、何よりも好きになる。
思わず笑みだって零れ落ちてしまうものだ。
「是非ともお子は私に!!!!」
『ふふ、そう言うと思ったので…お願いしてもいい?
恋のキューピットさん。』
「〜〜〜〜〜!!!!!」
「エフェメラル様…余りお姉様を甘やかさないで下さい。後が収集つかなくて困ります。」
おめでとうございますとお辞儀をするモヒイトに
ありがとうとクスに抱きしめられたまま笑って答えるメル。
その言葉に何よとクスが振り返る。
「甘やかされてないです!それとも貴方が彼女の子を出すと?」
「っっ!!め、めっそうも…というかお姉様近いです。」
なによ!いえだから…そう二人の押し問答らしき、いや。
クスしか押していない状態に、メルは腹を抱えて笑ってしまう。
ぱっと白いタオルケットの様な物が背後から落ちてきたのに驚き身体が飛び上がった。
「身体を冷やしてはいけないでしょう?その衣装ですと特に肩が野ざらしですし。」
『コルン様…!!!』
「おめでとうございます。お二人とも。」
『わあ、クスお姉ちゃん!これで子供巻いて欲しい!!!』
「ちょ!!もう少し柔らかい素材に変えた方がいいです!!!」
と言うか貴方の為にとですね、いや違いますよ?
そう訂正を急に入れてくるコルンにサワアは分かっていますよとクスクス笑う。
そうやって二人やら、四人やら。
周りで天使達が嬉しそうに会話をするのを
上を見ながらきょろきょろしては前を向いてにんまりするメルを見て、
「…良かったな、本当に。」
「嗚呼、本当にね。」
原初らも、彼女の嬉しそうな姿を見て喜んでいた。
だが、その喜びもつかの間になる。
「…ということは、メルは
ほぼ確定で守らないといけなくなる。
戦闘には絶対出させない。」
「嗚呼間違いないな。」
「天使らに護らせるには流石に
プラティア並みと言われるときつすぎる。」
そのメルからの情報が、彼女らの顔を曇らせる原因でもあるが、
一番はメルの状態が壊れるのを恐れたというのであって。
「あんなに頑張ったんです。絶対にあのお願は我々で叶わせるしかない。」
「神にだって叶えられない願いを、我々で叶えさせると…面白い話だよね?」
「ええ。でも成し遂げられる気がします。」
正式な、華樹にすら我々もなっていない。
完成されたといっても、彼女の中身がと言う意味であり、
華樹自体の力はまだまだ未知数であるのだ。
華が全員ではないものの、前の華より変化したものが殆ど。
現在各華神達も大急ぎで自身の華の名称やら気持ちの変化やら
バイタルやらなんやら記録を取って漁ってと大騒ぎの毎日だ。
拍車をかけて、忙しくなる毎日に加えてだ。
護り切った後の楽しみにわくわくが止まらない。
「全王様には?」
「真っ先に発表したって。滅茶苦茶喜ばれたらしい。」
「すぐに産めないとは言い切って、
出来たら会わせるって言ったら喜んでたっても聞いたな。」
そう各々が話に花を咲かせる。
ざわつくこの空間が、
今まで怖くて耳を手で塞ぎ、目を閉じて、
息すらも忘れる程に押し殺していたというのに。
『…嗚呼、変わっていくんだなあ。』
「お嫌ですか?変わられるのは。」
『…嫌にならなくなったから、困ってるんだよ。』
「っくく、さようですか。」
『しにたくないなあ』
「死なせません。」
貴方をお守りすると言ったでしょう?
それ何時の話?
さあ?ご存知でしょう?
そうメルとサワアが華樹の下で話を進める。
メルは疲れたのか分からないが、身体を下ろして
お姉さん座りからぺたんとひざから下を太ももより
外側に出して座っていたのを、お姉さんすわりに直しているとくしゃみが出てきた。
『っくちゅっん』
「おや、本当に冷えました?」
『んん?花粉症?』
「馬鹿なことは言わないで下さい。」
「そうですよ?余りお身体に触ることは暫く控えて貰わねば。」
『ええ…遊びに行けない?』
「うっ…それはですね。」
上目遣いでお願いするメルに、
ソレを意図してしているわけがないのを
気付いたウイスが少しどもる。
破壊力と言う意味では確かに強いだろうが、
しょげる彼女にこれ以上悲しい想いを
してほしくないという気持ちも相まり困ったのだ。
「…サワアお兄様もご一緒という形であれば。」
『っ!!!!』
「今度お伺いしますね。」
『そうだビーデルに報告しなきゃ!!!!』
「ええ、きっと喜んでくれると思いますよ。」
赤ちゃん産んでるし、絶対教えて
貰わないといけないこと沢山あるよね。
メモ用紙とペンと鞄に詰めておかねばと
ブツブツ言いだしたメルが下を見つつ
手を指折り数えて言い出すのを見て、
ウイスとサワアは目を合わせた後
困った様に互いに笑いあう。
本当に真面目で、真っすぐに見つめるのだから。
「これ以上お身体を冷やされても困りますし、
そろそろ部屋に入りましょう?」
『お仕事は?』
「程々ですよ。もう殆ど終わらせて、
向こう側の方達とお勉強出来るのでしょう?」
『おっと、バレて居たか。』
「あらかたの目途が立てれば充分でしょうに。」
まぁそれも向こう側の人達も、
ある程度言えばわかりそうですが。
そう言ったサワアに、メルは嗚呼と声を上げた。
エフェメラルが復活したので、
恐らく彼女に伝えれば何となく分かってくれそうだ。
と言っても、メルが向こうで整理した状態は知っているはず。
下手すればそのまま放置していれば
勝手になんとかしていくだろうと、
遠回しに引っ掻き回すなとサワアが言ったのだ。
『ま、そりゃそうか。こっちはこっち、だもんね?』
「ええ。では皆さん、また。」
「身体冷やすなよ?」
「飯食えよ?」
「歯磨けよ?」
「ちゃんと寝ろよ?」
『こぉら!お前ら私のお母さんか!!!!』
恥ずかしいことを言うな!!!
そうメルが照れつつも怒るのに、けらけらと笑った華神達が手を振る。
『わったた、ちょ、サワア!?!?』
「歩かせる訳ないでしょう?」
「ひゅーお熱いね?」
『〜〜〜〜っ!!!』
「おや」
「あらあ」
余りの恥ずかしさに、顔を真っ赤にした後、
バッとサワアの胸元に顔を埋めて何とか見せないようにする。
ぎゅっと目を瞑ったメルに、サワアはクスリと笑みがこぼれてしまった。
「ではまた」
「ええ」
またねなんて言えるわけがない。
あんな恥ずかしいことされたら。
「それよりもっと恥ずかしいことをしてしまうのに?」
『えっ?』
コツコツと音を立てて連れていかれる場所は、自室には決まっている。
部屋のドアをどんどん気を使って開けまくる彼に、そっと身体を起こす。
「っと、どうしました?」
『…いや、なんでも?』
「…本当にどうされました?気分でも悪いのですか?」
『顔色悪い?』
「ええ、ほんの少し。」
あら、感じはしないのだが、そう思っていると急に気分が変わる。
うっと言ったメルに、メル様!?と声が驚く音が聞こえた。
前に誰かがつわりが酷いとかと聞いたことがあるが、
「吐いても構いませんよ。」
『っう、お…えっげほっごほ』
「はしゃぎ過ぎですよ…」
船酔いしている感覚が一番近い。
ゆらゆらする頭に、血の気が更に引くのを感じ取ったのか
サワアは軽く身体を温めつつ、声を掛けた。
「少し我慢して下さいね。部屋にお戻しします。」
『っ』
息をするしか出来ない。頷きすら、
言葉を想う事すら出来ないのが苦しい。
そうしなくても、此処では通用しないのではあるのだが。
ガチャリと自室特有のドア音がして、少し落ち着く。
ベットにおろされて、身体がふわりとベットに沈んで
火照った身体が冷えていく感じが気持ちいい。
「ティッシュと袋は此方に置いておきます。
温かいものや、飲み物を取ってきますので、
少々お待ち下さい。何か食べたいものはありますか?」
『…っ』
「…分かりました。」
そう言って彼が消えるのをドアのところまで見て、そっと目を閉じた。
++++++++++
あれ程気分が良さそうだったのに、急に一変したな。
そうサワアは思いながら彼女の家の階段を降りていく。
色々あって正直頭が整理のつかない状態だが、
なんとか保たせるしかない。
少し顔色が悪いと思っていたが、それもすぐに白くなった。
玄関先で戻させた後、そのままにしていたので、
それの掃除もしていくことにした。
「…ヘレス様になんてご報告したらいいですかねえ。」
絶対に彼女は言わずとも華神らから聞いて
こっちに乗り込んでくるだろう。
なんなら破壊神星で永遠と話を聞かされる
未来しか見えなくてため息しか付けない。
おっと、こういうため息は良かったのか?
それにしても、彼女も少し考えていたが、
つわりというものだろうか。
ちょっと前にメルが他の子達と話をしていた間、
妊娠した女性の話をかいつまんで聞いていたが。
「きつい方の方でしょうかねぇ。」
つわりが酷いと立っても居られないとは聞いている。
文字通り介護に近い状態だともだ。
この状態で仕事に戻りたくはないが、
戻らないといけない時もあるだろう。
まぁ、行っても仕えている方が方なので、
蹴られて此方に返されるがオチだろうが。
「さて、戻るとしましょう。」
さっさと戻らないと、どうなっているか分からない。
キッチンで軽く作った物を持って、部屋に戻る。
「失礼します、気分は楽に……」
その姿を見て、冷静ではいられないものの、食事を机に置いて傍に駆け寄る。
ぐったりとした状態で、戻していはするも…
「っ華を…」
だが見たこともない桃色の小さな花に、
何の意味があるのかは分からない。
涙を流しながらも、
何とか吐き出し楽になろうとしているのを、
横でさすってあげることしかできない。
ただ、彼女の代わりになってやれたらと、どれ程想う事か。
++++++++++
大分楽になった処だろうか、
意識が漸く落ち着いて来た感じがする。
滅茶苦茶周りがピンクピンクしているのが、凄く気になるが。
「顔色がマシになりましたね。」
目元を軽くタオルで拭ってくれる。
ごしごししようとすると、止めてこれと怒られた。
「そんな乱暴にしては顔に傷がついてしまいます!」
『…でも、これくらいが気持ちがよくて。』
「はぁ…全く。もう少し横になっていて下さい。」
あれ程吐いて外に出てはしゃぐとか言い出したら
今度こそベットに身体を縛らせますよと言い切るサワアに
はぁいとも声を出すこともなく、メルは身体を横にしたまま
サワアの姿をじっと見ていた。
「…なんです?」
『ああいや…その、えっと。』
「はっきり仰って貰わないとわかりません。
此処では貴方の思考が読めないのですから。」
『…読めなくていいもん。』
なんか、普通って感じで。いいなぁって思ってしまった。
でもそんなことを言って二人してはしゃぐってキャラでもない。
ただ、誰もが得られるはずの、穏やかな時間が。
自分のこの目の前で起きていると思うと、
心がくすぐったくて、嗚呼これを人は嬉しいというのだろうか。
「…そうですか。気分はどうです?」
『大分マシ…』
「ああ、起き上がっていいのですか!?」
『大丈夫だよ、そんな驚かなくて。』
「貴方が先程から驚かせることばかりするからでしょう…!!」
『つわりってしんどいの私知らなかった。』
今は吐いた後だからだろうか、かなりマシだ。
まぁどうせ食べても吐くシーズンに入るんだろうが。
「何か食べたいものとかあれば作ってきますが。」
『嗚呼大丈夫なんでもいいよ。どうせ全部吐いて出す。』
「…それはそれでどうかと思うんですがその。」
『妊娠経験ないからなぁ。お母様とかに相談したいけど今するのもなぁ。』
「流石に此処までお身体が悪いと連れて行くにいけませんよ。」
もう少し身体が軽くなってからにしましょう。
そう言うサワアに、下で物音がしたことに二人が気付いた。
「…少々見てきます。」
『えっ待ってまさか魔女とかじゃないよね???
だって華神達も全員来て帰ったばっかだし。』
「流石に敵が来たとは考えにくいですが。」
何かあればすぐに逃げれる様に、外と連絡は?
一応出来るけど…
『サワア、杖貸してくれる?』
「別に構いませんが…どうぞ。」
『ありがとう。これで外に連絡が取れるようにしておいたから。』
「…そんなことまで出来るんですか。」
『頑張ったらってこんな話してる場合じゃないよね。』
この話はまた後で、
そう言ったサワアにメルはこくりと頷き、
サワアの杖をぎゅっと握り締めて待っていた。