なんにでもなれるのにここでいいの
私は貴方を生み出した。
初めての子供だと言われても、正直考えがつかない。
だから、子供を連れて親子関係を調べに行った。
其処では、人の感情を知った。
ぼろぼろになった子供が、此方を見てくる。
誰もが見ないのに、目を開いてこの子供を見て言うのだ。
ーねぇ、きみは、なんていうの?
目を開いて言う彼女に、子供は私に誰だと問う。
それに名前はまだないと答えろと言う。
どうやら私の方は見えていないから。
ならばと人の子は言うのだ。
ー私がお名前考えてもいい…?
えっとね、と言って人の子は辞書を引くのだ。
自分の連ねただけの、ノートを辞書と書いているだけのもの。
其処はいろんな言葉が書かれていた。
見ていて面白く、この文字は神々の言葉に似ているとすぐに察知した。
逆にすればこの文字は神々の文字と同じだったから。
意味は全く違うのを、人の子の脳内を見て知れた。
そうして人の子は言うのだ。
カランコエの花の傍で、子供に伝える。
ー儚い、一時的な、短命な存在。
ねぇ、貴方はすぐに見えなくなる。
夢のような人。私この言葉が大好きなの。
名前を
「エフェメラル、カランコエの花を咲かせ笑う人だと。」
花は幸福を告げるや大らかな心などがあった。
なのに彼女は人の子は言ったのだ。
「私は貴方を守りたい。沢山の小さな思い出を抱えて。
共に私の手を取って一緒に、世界をずっと見続けてと。」
嗚呼別名
「メル」
なぁ、メル。
「お前は、人の子から名前を授かった神の子だったのだ。」
そういったルメリアの言葉により、メルの身体が一瞬光る。
ぱちくりと目を開けて起き上がる彼女の名前を何人かが呼ぶ。
あれ?ここと言って辺りを見渡す。
「メル」
『…る、めりあ、さま?』
「人の子は、神でもあった。」
そういってルメリアはメルの身体をそっと抱きしめた。
此処にいると、背中をトントンと叩いて。
+++++++++++++
「おや、お元気そうですね。」
アルトさん。そういったのはウイス。ここは第七宇宙、ビルスの星。
其処に訪ねてきたのはアルト、元加護天使の位置に居た者そして今は
「ふええええウイスにいいいいさああああああ」
「おやおや、ま〜〜〜たコルンお兄様の修行を抜けてこられたのですか?」
「だって酷いのおおおおおメルとカミカゼを僕がらどるうううう」
「ふふ、面白いことを仰いますね。」
そう笑うのは第七に遊びに来ていた第十宇宙の天使クスだった。
悟空が生まれ変わったという話を聞いて、様子を見に来たのもあった。
そんな中、急に現れたアルト。
ウイスの背中に隠れていると、クスを見つける途端離れてクスに抱き着く。
びえええと泣くアルトが愚痴をたらたらいう。
「クスおねえちゃあ、あの人人じゃない!いや人じゃないの分かってるけど天使だけど天使じゃないアレ鬼の生まれ変わり!絶対そうだって!もうやだなんなのあの人!!!人じゃないけど!天使だけれども!!!!」
「おやおや、酷い言われようですね。」
「これは、久しぶりにしごかれたんですねぇ〜コルンお兄様は一度決めると曲げませんし。」
今度は何をやらかしたのかは知らないが、クスの前でぼろ泣きし始め、それを見かねたウイスが顔を覗く。クスはそっと隣で背中をさすってくれていた。
「酷いことをされたのであれば、お姉ちゃんが一言いいますよ?」
「…クスお姉様?」
「なんでしょう?」
「コルンお兄様が泣きますよ?」
泣けばいいのです。そういったクスに、ウイスはこれ以上触るのは止めようと感じた。
悟空ではないが、人間でいう本能というものを察知するようになってきたのだ。
前はこうもなかったのだが、いやはや一体誰にうつされたのか、気になるところだ。
「女の子を泣かせるという罪は重いですから。」
「そうだろうなぁ、あいつらが知ればただ事じゃ済まさないだろ。」
「ラムーシ様、そりゃあそうでしょう。」
なにせあのフィズをですよ。
「フィズを大事にしてくれていたメル様の、
エフェメラル様の対である破壊神カミカゼ様の天使ですよ?」
「まぁ、奴にはいろいろ世話になったからなぁ。」
奴の方に味方は出来ん。そういったラムーシと同じく、そうですねぇと声がした。
「モヒイトお兄様!」
「ごきげんよう、皆さん。」
「ああああえるううううう」
「はいはい、よーしよしよし。」
「いや、犬じゃないんだから……」
そう冷や汗を流すのは第九宇宙破壊神であるシドラだ。
さらっと抱き着いてきたアルトをよしよしと背中をさする。
「第九がどのようで?」
「こいつが察知してな。天使がぐずってそうだからあやしに行くだと。」
「ああああ、知られちゃってるじゃん…」
ビルスがため息交じりに大きく耳を下げる。
指を指して言うロウに、だってと言ったのは
白い羊の角を持った藍色の髪をツインテールにしていた子、
元第九宇宙で生まれ、華神として力を使い、
命を散らせたエル・ノルテである。
「こうなったアルトを落ち着かせるってなると、僕もいかないとって。」
「だがなぁ〜〜」
「まぁ示しがつかないというのはありますが…流石にやり過ぎでは。」
そういったのはモヒイトだ。
「うちの人達は下品で横暴でもう見れたもんではないですが、」
「おい」
「一言多いぞお前」
「エル様を泣かせるところまでは言ってませんし。」
「単純に僕が感情落っことしてるだけだと思うんだけど……」
気のせいじゃない気がする。
そういったエルに、そうでもないですよと答えたかった。
「アルト様がこうも毎回のように逃げてこられても仕事になりませんしねぇ〜〜」
「う」
「こら、ウイスさん。そんなこと言っちゃダメだよ。」
「ですがエル様。考えてもごらんなさい?
仕事中に何度も他所から用事が入ると。
しかも相手は自身の兄が指導されてるんですよ?」
確かに、気が気でなくなる。
エルは一人っ子であるが、ため息を吐いた。
「確かにドジだしまぬけだし、
知らないところじゃなくても迷子になるし、
好き嫌いは激しいし、
天使なのに人間っぽいの抜けないし。」
「うっうっうっ」
「お前鬼か?」
「でも、君だっていいところは沢山ある。」
もし、もしもだ。
「そのいいところを貶されたとしたら、
僕が黙っていないし、僕だけじゃあないんだよ。」
ね、そうだよね。
「フィズ」
「ええ、そうです。元であろうが、
我々の加護天使様をこんな有様にしたのですから。」
それ相応の対処をされるべきです。
そう顔が真顔になった彼女に、ロウとシンが驚く。
天使たちはおやおやと何やら和やかである。
「もう蹴ったり殴ったりされた?されたよね?したな?」
「ですが、私達の兄でもあるコルンお兄様が
そのような下種なことをなさる
はずがないんですよねぇ〜〜〜」
「確かに、きついというのはありますが、
ちゃんと見て下さった対応だとは。」
それに、そうだよとアルトが話し出す。
泣きすぎて最早顔が赤くなっている。
「っひ、わ、わた、しが、だめだから。」
「…アルト様、」
「な、なにひと、でき、なくて、あきれちゃって」
「よしよし」
「み、すてら、れちゃ、やぁ……」
そう言ってまた泣き出すアルトに、
これはダメですねぇとウイスが言う。
「そうおっしゃられておりますけど。」
どうされるんです?そういって振り返るウイスに、周りが首を傾げた。
其処にはため息を吐きながら出てきたのは。
「コルン様!」
「どうされる、と言いますけれどもね。」
いつもすみませんね、いえいえ。そういつも通りと言いそうな会話に、アルトの反応が変わる。
びくりと反応した後、縮こまるその動きに、コルンの眉が動く。
「っわ」
「…おや、久しぶりにしては少々粗い挨拶ですね?エフェメラル様。」
『……かなり久しぶりの気を察知したからね。』
そう目をギンギラと光らせ下から見るエフェメラルことメルがキレている。
そりゃあもうぶちぎれての登場だ。杖ではなく、手で止めているのが礼儀なのか。
コルンは背後からの殺気を感じ取り、受け止めた。
「何いじめているの?と言いたそうな顔ですね?」
『そんな感情を芽生えさせるよう頼んだ覚えは更々ねぇんだよ、こっちわよぉ?』
「うっっわ」
「こわいですねぇ〜怒ったらこうなるんです?」
「私達はあまりメルと話したことはないから分からないけど」
「まぁ、怒れば怖いような感じの方ではありますよね。」
そうウイスがこっそりとエルとフィズに聞くが、返答が苦笑いである。
『優しすぎるからって、少々傷めつけ過ぎたら後後悔するだけだよ。』
「それはそれは、ご忠告ですか?」
『事後で忠告になると思う?そんなバカなの?お前。』
「ばっ……貴方がそういうのですから、彼女もそうなるのでは!?」
『確かに、馬鹿だしまぬけだし、方向音痴全く直らないし、天使として失格かもしれないけどさ。』
「ひぃ」
此処にも鬼が居たか。
『でも、私はそんな貴方と一緒に旅を共にした。』
そういってメルはアルトの前で座って話をする。
『傍にいないと寂しくて辛くて、
穴が開いたのをそっとさするだけしかできない。』
「…め、る、」
『私はずっとあの時から君に出会って救われている。
出来ることが沢山増えて、それが続ければいい。
最初からすぐに出来なくて呆れて捨てられるならば、』
ソレは神の心すらも知らないナニかだ。
「…言ってくれますね」
『アルトは幼馴染だから。私の大事なお友達でもある。』
「そして僕の大事な付き人だ。」
そういったのは、アルトの背後にいつの間にか座って話をしていた。
「カミカゼ…!!」
「やぁ、神々の諸君。そして天使の皆さん。こにゃにゃちわ。」
「だあああっ」
「相っっ変わらず気が抜ける挨拶を……」
ほぼ全員がずっこけるのに対し、カミカゼと呼ばれた男性がにやりと笑う。
「僕は君を一度だってダメな天使とは思っていないよ。」
「……っ」
「そりゃあ泣き虫で一番弱いし、見習いだし、方向音痴直らなくて僕の方が正確なのが難点だけど。」
「あいつも似たようなもんだな???」
「でもね、メルが言うように、僕だって君でよかったと思っている。」
そういうカミカゼに、アルトの涙が引っ込む。
「…一応弁明させて頂きますが、少々きつい修行に切り替えさせて頂いただけですからね?」
「嗚呼、分かっているさ。メニューは見てるから。」
「……私、貴方に教えたつもりはないのですが、」
「君もまだまだだね♪」
こいつ、多分ほぼ毎日のように来てるな、そうリキールは考えた。
フェルもアルトの涙を見て傍に寄り、きっとコルンをにらむ。
「酷い!狡い!可哀想!!」
「あの、フェル様?さらっと聞き捨てならない言葉が聞こえた気がするのですが…」
「私だってアルトを虐めたいもん!!!!」
そっち側かい。
「まったく」
「アルトさん。コルン様はあまのじゃくなのです。」
「ふぇ?」
「ちょ、フェル様!?」
「貴方の力が予想以上に強いから、毎日の様に確認してはメニューを作り変えて楽しそうにしてらっしゃるかふぁふ」
そう最後まで言い終えるまでに、コルンが口を手でふさぎに来る。
全く何を急にと言い出すと、今度はリキールが説明する。
「仕事が終わってひと段落ついたと思いきや、末妹を可愛がるように庭に出るからな。」
「ちょ、り、リキール様?!!?」
「確かにメニュー的に少々キツイが、ちゃんと言ってくれるようになるのも見ているんじゃない?」
君、破壊神と会話しないまま仕事しかねないし。
そういって座るリキールに、カミカゼがそっぽを向いて
そのままモヒイトの後ろの方に隠れる。
「っくくく、図星だとよ。」
「寧ろアルトさんがうらやましいですよ。」
「え?ど、どうして?」
「お二人ともまだ貴方と同じ見習いではあるものの、
理解のある破壊神と界王神様に囲まれ、
コルンお兄様にご指導を受けられるのですから。」
中々面倒見がいいですけどね。
「で、どうなさるつもりです?お二人に保護されちゃってますが。」
「…なんとかします。」
そういってコルンはメルとカミカゼの元に行き、謝り事情を説明する。
終始メルはシャーシャーと猫のように感極まり半分暴走していた。
だが、話を段々聞いていくと、アルトの根本的な問題も見えてきた。
『んん、流石にそれは、千年以上経過しても無謀な気がする。』
「ですが、今後のことを考慮しても、破壊神のサポートをするという仕事すら出来ないのであれば、いや出来るはずなんですがね。」
見込みがあるはずなのだ。見込み違いということは断じてないと言い切るコルン。
流石に言い切るのは理由がと聞いたのはカミカゼだった。
「お師匠も認められておりますし。」
『え?あのルトが?』
「ええ、アルトは間違いなく加護天使の新しい風になるはずだったと。
力も、感情も、全てにおいて他の加護天使よりも強い天使だと。」
だが、ほんのすこーし、他の人たちからして、
一つのことに執着する時間が長いだけなのだと。
「天使に降格とはいえど、加護天使の頃で発揮するはずの力が眠っている。
お師匠にそこまで認められている貴方を、私も手を抜いて指導など出来ないのです。」
「こ、コルン様ぁ……」
「確かに、私も息抜きをさせないのは落ち度がありました。
月に一度帰られてよろしいですよ。」
『ぱあありいいいいいい!!!!!』
「ふーーーーー」
そうメルのテンションの高い暴走気味のぶくうじゅつと違い、
カミカゼは両手を人差し指だけ立てて上を向いて棒読みで言う。
天と地の差に変な空気にもなるものだ。
『年末年始とGWとお盆くらいの連休は欲しいところです!!!』
「年末年始はわかりますが、そのあとはなんですか……」
「人間でいう連休年間休暇ですよお兄様。」
ちなみにお盆は人間の先祖や亡くなった人たちが苦しむことなく、
成仏してくれるようにと、人間の子孫が、報恩の供養をするものだそうだと
丁寧にウイスがコルンのフォローに入っている。
「…考えておきます。」
『やっっっ!!!アルト!』
「ふえっ?」
『また!旅出ようよ!!』
そういって両手を掴んでメルが飛んで帰ってくる。
目をキラキラさせて、あれもこれも、見に行きたいと思ってたんだと言うのだ。
『リストいっぱい作ろうと思って、メモたぁくさんしてるんだ!
ねぇ今度は私とアルトだけじゃなくて、カミカゼも一緒に!』
「いいな、たまには長旅も悪くない。見聞を広げるのもまた勉学、だろ?」
「…はぁ、本当に貴方達という方々は。」
にやりと笑う二人に、コルンがいいですよと返した。
「次のメニューをこなせれば、ですがね。」
『よぉし!そうときまればカミカゼはホテルとかいいところ探しておいて!』
「あいよ、出来れば景色と空気重視な?」
おういえーと言うメルがアルトに向き直す。
『アルトはまた、ご飯見つけてきてよ!』
「………っ、うん!!!みつける!!!!」
ニコニコと笑う二人に、ほほえましいですねぇと話す。
「人間のような感情を持った天使が、
神様の魂を持った人を知る神様。
そしてその人と神を同時に知り、共に歩む。」
「楽しんでるな?」
「ええ、アルトさん」
「はっ、はい!」
「もし美味しい食べ物があれば、
是非ともこのウイスに教えて頂けますか?」
そういうことなら、とアルトが目を輝かせて話す。
どうやら彼女の機嫌は元通り、もう大丈夫そうらしい。
「(全く、恐ろしいお人だこと。)」
臆病に、縮こまって震え、手を伸ばすことを諦めた子が、
怒り狂い地に振り下ろせば、一体何人もの命が消し去っていたのか。
宇宙規模の被害は免れないのは事実で、割とひやひやしたウイスだった。