ランドルト環とは別の方向




お待たせと言って空から出てくるアルトに、おひさーとメルが答える。
黒いローブ姿のメルとカミカゼに、アルトはニコリと微笑んだ。

メルはニコニコと笑い、何も言わないのに痺れを切らしたのか
いや、とカミカゼが突っ込みを入れる。

「流石にその荷物は要らないだろ…」
『魔法の鞄は?』
「一応持ってきたからこっちに居れるか。」
「いや、入れてきてないんかい。」

軽くカミカゼが突っ込む。
このノリ、神々でも異例過ぎて
コルン曰く「手に負えない」とのこと。

お墨付きを貰えてよかったね?

いや全くよくないのだが??


「よーし、これでOKいこういこう!!!!」
『にしても第八宇宙とか、
絶対コルンさん策士だろうな。』
「アルトの方はいいとしても、
メル、お前華樹神官様からも宿題貰ってるんだろ。」
『そういうカミカゼも、
ビルス様からお宿題貰ってるんでしょ。』
「まぁね。」

メルはルトラールが、アルトはコルンが、
カミカゼはビルスが師匠として、
現在各場所で修行を積み重ねている状態だ。

「にしてもビルス様とか以外だったよね。」
「と、いうと?」
「いや正直リキール様に来ると思ってた。」
『いいや、リキールさんは無理だよ、くっそ向いてない。』

なんで?そう言ったアルトにだってさと歩きながら話をする。
歩くのなんて別にしなくてもいいと思うところだろうが、
これは長い長い旅の始まりでもあるのだ。

『計画重視の不備は的確に落とす方面でしょ?
変な癖ついた方がマジで困る。主にアルトが。』
「えっっっ」
『全宇宙の破壊神を総合的に見て、
どう考えてもビルス様が一番いい。』
「おやおや、そんなに買ってしまって。
いいんです?メルトリアの記憶が
関係してらっしゃるだけでは?」
『そんなのほんの少しだけだよ。
いや、普通にビルス様がいいって。
マジ頭いいよあの人いやあの猫。』

あの破壊神?いやもうどうでもいいけど。

『とにかく破壊しなくても良いのは何が何でもしない。
常にバランス重視で留めるところが凄く平和で穏便でいい。
もう日本人の鏡と言っても過言ではない。平和万歳。』
「そ、それ破壊神として褒められてる…?」
『私はね、下手に破壊ばかりを考え、
人の地位ばかりに目が眩んで、星はおろか
周りが見えなくなるような者になるほうが、
私は愚かで愚弄される神だと思ってるからね。』

そうなる神様は、一体どれ程、華に散って消えたのやら。

『ある意味私達生き残りは、生かされているに過ぎない。
ならばそれを利用して、この時間を謳歌するまで。
それに、ビルス様でほんとよかったと思ってるんだよ。』
「何故です?」
『あの人は本当に優しい神様だから。』

それは一体、どこの話をしているのやら。

この話をビルスにすれば、
にやりと笑ってしまいそうな感じがする。
いや、逆に呆れて「あっそ」と言って
照れているのを隠すのかもしれない。


とにもかくにも、皆が生きていてよかったというのだ。


『今度は三人で!沢山の小さな思い出、出来たらいいねぇ。』
「出来たら、ではなくしにいくのでは?」
「そうそう!メルの好きそうな美味しそうなメニュー貰ってきた!!」
『誰から』
「コルン様から!!」
「ほぉ?それは心強いですね。此方もウイス様から
噂で聞いた場所が気になっておりましてね。」

何処何処、此処ですよ。と言って伝える破壊神に、
メルは目を細めて本当に良かったなぁと思っていた。


『(貴方が思っていた通りになっているよ、都佑)』

そう何時しかの名づけの親に声を掛けた。
心なしかそれはよかったと言われている気がする。
嗚呼、貴方にも会いに行かなければいかないと。

現在、ルメリア様が復活した。

そうして華神は一度幕を閉じ、
新たな力を覚醒させるためにと、
新しいことが始動されている。

最古の華神であるティーナ様達は破壊神に。
フェルやフィズ達は界王神の位置に。
加護天使は天使にと力を現代の状態にセットされる。

調整が出来次第、ルメリアではなく、
新たな華樹神を選抜するといいだしたのだ。

エフェメラルも含めて、華樹神に成れるのは
最古の華神達12名と、
記憶の回廊に居た都佑達12名。
そしてエフェメラルも入って、合計25名。


華樹神官という役割も交代するとか言い出したので、
最古の華神に付いていた加護天使だった者12名、
そして加護天使になるはずだったアルトの計13名。


カミカゼはどちらでも構わないと答えているが、
この華樹神と華樹神官がきまれば、
その者が12の宇宙に役割分担を言い渡すことになる。




つまり、TOPの交代そして
組織の変更の権限が渡されたと言っても
過言ではないこの状況下。



その試験もあるため、
こうして各々の宇宙で暇があれば
現破壊神や界王神、天使達が育てているのだ。

ちなみに、上に上がればどんな願いでも一つ叶えられるとか。


『もう願い事はこりごりだよ』
「ほんとだよね」

間違いなく華神達全員顔を青ざめたことだろう。
いや、お腹がいっぱいですと。

日本人なのもあるのか知らないが、
根はみな真面目で、修行には順調に励み
各々力を強めているとのこと。

「にしてもこうしている間に他の奴らは力付けて、
上に上がる確率上げているが、お前らいいのか?」
「別にいいよ?」
『うちらは上なんて求めない。』
「…なんでまた」
『面倒なのが本音だけど、下でぬくぬくしたい。』
「同感。」
「…こういうところがコルン様の頭の痛いところだろうな。」

分かってくれます?分かってくれますか!!!!
と、ルトラールの弟子でありそうなマシンガントークが
脳内で鳴り響いて煩くなってきたところでカミカゼは考えるのをやめた。

『それに、私はカミカゼとアルトの三人で
宇宙を切り盛りしてみたいから。』
「メル…」
『だって面白そうじゃん?
人間の感情を持った天使と、
人間の感情を知った人だと思っていた華樹神原初の子。』
「そしてそれを知る元加護天使の破壊神と。」
「えっ!?!?!?カミカゼって加護天使だったの!?!?!?」

そう驚くアルトだけではない。
メルも驚いて固まっていた。

それにそうですよと答える。

「言ってませんでしたっけ?」
「言ってない言ってない言ってない!!!」
「何ならコピアの兄です。」
『猶更知らない情報来たんだが!?!?!?!?』

ニコニコと笑う彼を挟むようにメルとアルトが追い付く。
ねぇねぇと子供のように何故を親に聞くみたいに話を咲かせる。

『そういえばカミカゼってお酒あったよなぁ。』
「あ〜それメルのいたところだよね?」
『というお前もな???』

楽器やら石やら色んな大事な物という物になってたが。

「ほう?そんなものがあったんですか。」
『うん、元々カミカゼって神に風と書いて
神風と呼んでたんだよ。危難を救うために、
神が吹かせる激しい風。』


別名、かむかぜ。


『命知らずで無謀なことの意味も持ってたはず。』
「ほぉ?あながち間違っていませんね。」
「え?」
「此間もウイス様に言われちゃったんですよ、
貴方はもう少しご自身の位置を把握して下さいとね。」
『えっ、うっっわ、それって。』
「ええ、無謀な手段を選ぶのは
下界の人間達だけにとね。」
「いやビルス様のお師匠様にも言われるって……」
『でも私カミカゼのお酒好きなんだよね。』

バーのおじさんもよく話してくれていたから覚えている。

『ある国がその国の力を恐れたの。
かつてその国を守るために戦っていた人達が
貴方ぼこく救うすくいたい」と』
「願いの力ほど、強いものはないからね。」

そういったアルトにメルは深く頷く。

『救いたいと願う気持ちが強く出て、
無謀を引き起こす原因ともなる。
でも、それが決して悪いとは私は思えなかった。』
「なぜです?それは結果、
悪いことを引き起こしているのでは?」
『だって救いたかったんでしょ?
人を想って動ける人は人間の鏡だよ。』

人は愚かで、弱いものだ。
人ひとりだけだなんて生きてやいけない。

『誰かを救える人に、危難を救う、一つの光として。』

それは人が願う、神様のような存在だ。

『神など存在しない。』

それは私の持論である。

『神様がいたら、
この願いはかなっていたと思ってる。』
「メル……」
『でも、いなかったから、
貴方達に出会えたし、こうして生きていられる。
でもね、ずっといないなんて、それも寂しいから。』


だから一緒になってしまえばいいと思ったのだ。


『この三人なら、どんな屈強も
どんな時間さえも、
光にかえられそうだったから。』



例えそれが、地獄のような煉獄だったとしても。



「そうだね、儚い君の願いを、救えるのはカミカゼだけだもの!」
「メル、アルト貴方まで……」

本当に、

「貴方方と言う方たちは…神ではないように言うのですから。」
『へへ!』
「全く、こんな話を聞いたらコルン様辺りが頭を抱えそうですよ?」
『いや本当にそうだよね!まぁ流石にもうしないでしょ、えっし、してないよね?』

そう周りをきょろきょろするメルに、模索はしないようにしましょうと言った本人が制する。

「弟子とは言えど、女性もいる旅ですから。
覗くだなんて下界の人間よりも下等な行為はしないでしょうから。」


ま、余程そうするなら心配性という称号を付けても構わない。
そういうカミカゼに違いないとメルとアルトは言って笑った。


+++++++++++++

此方は惑星レラード
星を見てすぐにここだと思った。

「綺麗だね」
『うん』
「お二人の話はいろんな方から聞いたことがありました。
その中で近い星があればと探したのです。」

そうしたらここがと言うカミカゼにいや凄いねぇとメルは感嘆を吐く。

『よくこの感覚気付いたね?住んだりとか見ないと分からないでしょうに。』
「まぁそうですね、ですが余りにも皆さん同じように面白く仰られるので。」

すぐに分かったのだと、彼は言うのだ。

そうして見つめるのは、綺麗な青い星。

「ちきゅうみたい」
『そうだね。さぁて!日本はど〜〜こだ!』
「にほん?まさか」
『そ。コルン様達から貰った場所も行くのはいいけど』
「最初はやっぱり自分達で選んでいきたいよね!!」

ニコリと笑って言う二人に、
カミカゼはアルトの肩に手を置いたままため息を吐く。

出発と言って飛び降りた彼女についていかねば、
この宇宙に一人取り残されるからだ。

何と言っても天使見習い。

元々加護天使になる予定だった者に、
旅の道中杖も何にもないなど怖い他ない、
という各天使達の話に、大神官が特別に、
天使の杖を使用するよう、旅の時のみ許可したのだ。

天使達が携えている杖。
それは単純に武器としても使用できるが、
様々な便利機能を搭載していたりする。
杖の内部に人や物を収納できたり、
浮かんでいる球体を通して
遠隔視や遠距離での交信も可能なので、
正直荷物はアルトに任せてもよかったのだが、

と言うか杖の内容をすっかり忘れているところ
この話をコルンにしたら卒倒しそうである。

メルは気付いて苦笑いだった。

「ついたよ!!ここがレラード!」
『なんかアースというよりジェラートみたいな名前だなおい』
「じぇら?なんですそれは。」
『ええぇ〜〜〜な〜んて言ったらいいんだあれは。』
「ん〜アイス?っていう食べ物の一種だと思ったらいいんじゃない?」

いやまぁ正確に分類するならば違うと言えば違うし、
そうと言えばそうなのだが…
なんならアイスクリームとラクトアイスとアイスミルク
三種類と種類も分かれているし、
氷菓菓子という区別もあったりで
結構詳しく話を読めば、シビアだったりする。

乳製品の分量に決まり、その名称も変わる。
ジェラートだけでなく、シャーベットとかもだ。

『とにかく、超ザックリ言うと、果物を液体上にした
飲み物を固めて、スプーンとかで掬いながら食べる
冷たいお菓子だと思ってくれたらいい。』
「ほぉ、それは冷たい食べ物なのですね。」
『滅茶苦茶冷たいから、暑いところでたべるのがいいよ。
人によれば寒いところから避難して、
暑い部屋の中で食べるのもいいって。』
「ええ、外寒いのに、よく食べれる気分になるんだあね??」

そう嫌そうなアルトに、メルも似たような感覚の持ち主だ。
ここら辺は、綺麗な人間ではないからなのかもしれない。
ちなみに、後日この話を都佑にすると
「私は断然炬燵でアイス」と言い切っていた。

いや、炬燵絶対神々に知られたらダメだから。
そうメルは強く感じ、そっとその後は知られないように思っていたが、
勿論大神官達には通用せず、神々の中で流行し、すぐに廃止された。

適度に使うというところを許可対象としたり
ややこしくなったのは、また別のお話である。


『そんなことより、アルト好き嫌い直った?』
「いや、メルもでしょ。トマトは?ねぇ生は?」
『私はだいぶ直ったけど、やっぱり吐く奴は吐く!!!』
「その様子では、ジュレ状以上の固形は難しいという話ですかね?」

そういったカミカゼに、そうなんだよとメルはわなわな震えていう。

『ナスとかキャベツとかはいけるんだけどねぇ〜〜
如何せん全人類の敵トマトは難しいと思うんだよ。
あの独特な匂いに感触、ジュレ状の感覚は他の食べ物にはない。』
「代替品がないからこそ、挑戦も難しいと。」
『まぁちょっと加工しているものなら
食べれるようになってきだしたのが救いってことで。』
「もういっそのこと私達の願いって好き嫌い治してくださいにする?」
「いや、それこそ皆さんの怒りを買ってしまいそうですが……」

もっとマシな願いはないのか。願いは、
と第九宇宙のロウ辺りがしゃしゃり出てきそうである。
いや充分ありえるが、多分他の宇宙の神々だけでなく天使も言うだろう。

まぁ元華神や加護天使達は苦笑いで答えそうだが。
彼女、彼らは元々人間であった時間もあるのだから。
好き嫌いに関して言えば、身近なところであるだろう。

『っはは、でもそれくらいの小さな願いを
思いつくくらいが、私達にとっては丁度いいでしょ。』
「そうだよね、うん。そうだよ。
あの子だって、メルに託したくらいだもんね。」
「アルト……」
「でも、ほんと狡いと思うんだ。
私何度聞いても、何度見ても。」

青い星、白い雲に囲まれた場所で。
ただ何気ない日常を叶えて欲しいと言うだけ。
でも、それはすべての時間が一致する、別世界。

だから叶うはずもないのだ。
途方もない時間を逆行し、そして作り変える。
いわば禁忌も禁忌の行為を小さな願いごときで
許可をしなければいけないということ。

それ即ち、大罪である。

『お父さんとお母さんに見てもらいたかった。
でも、見られる環境ではなくて、その時間を
作るような世界にしなければいけない。』
「思念操作という概念を越えた何か、ですか。」
『そ。結局叶うことはなく、あっても幻。
それでも、それでもあの子は酷く嬉しそうに泣いた。』

苦しく、とても、なによりも、苦しそうに泣きながら笑ったのだ。

『だから、そんな願いよりも、少しだって叶えられるように。』
「だから「お友達」を選んだ。そんなの叶うわけがないのに。」
『そう』

空想上の時間を選んだ。
家族という些細な時間を忘れてまでして。

友達かみのこと、契りやくそくを交わしたのだ。

『ま、叶えられていると言えば叶えられているけどね。』
「おお、消滅しない?」
『時効だし、それに最初っからあの子の手を取らないことはなかったよ。』

例えどんな時間に行ったとしても、
私は何度だって彼女の手を取っただろう。
寂しそうに、怖そうに、きっと取らないと、諦めたその眼を見つめながら。

そんなことはないのだと、言い聞かせて。
よろしくと言って手を繋ぐのだ。
契りを交わし、その時間が途方もない時間彷徨うことになったとしても。

彼女からしたら、忘れる行為そのものが、怖かったのだと。

『忘れる時、凄く怖がってたけど、凄く嬉しそうだったんだよ。』
「なんとも変な話ですね。怖いのにうれしいですか。」
『きっと安心したんだと思う。この時間は何時かきっと思い出してしまうんだって。』

でも、今は、今だけは、忘れさせてくれるのだと。
この面倒な絡んで離れない感情を、強制的に振り落としてくれる。
時間をかけて、本当に必要な言葉を、見つける時まで。

『だから嬉しかったんだと思うよ。
いつか、この感情に名前が付けられると。』
「…ほんと、逆に都佑さんで本当に良かったですね。」
「え?どうして」
「他の願いならば、他の人であれば、そのように縋る行為もなかった。」

この場所に、存在することもなかっただろう。

『そう、彼女だから成せる技でもあった。
皆戦闘能力が皆無過ぎて頭抱えちゃってるけどね!』
「ま、界王神でもある程度の武術は必要ですしね。」
『でも、そんなあの子は花を愛してくれたから。』

音を慈しみ、花を愛した子供だったから。
だから、華樹神はこの子ならと託したのだろう。
円環に巻き込んでしまうと知っていても。

恐らく、いやなんなら、

『都佑は気付いていたと思うよ。』
「え?華樹神様のことを?貴方のことを?」
『うん』
「それこそ何故ですか。知っていたら、尚更叶えたい願いはかなわないのですよ?」




『叶えたくなんてなかった』



それが、彼女と生きて、彼女のことを思い出して出てきた答えだった。
何度も何度もめぐって、整理をして要約辿り着いた答え。


『はなから、叶えるなんてしない。叶えたら忘れるから、忘れるということは、二人の子でなくなる。』

そんなことはないというのに。

『それに、人には親切にしなさいって言われていたらしいから。』
「…お母さんとの約束、守ろうとしてたんだよね。」
「なんと、本当に狡いお方ですね。」

そういえば、誰も言えなくなるというものだ。

『ならば、嗚呼でも叶えてしまえたらそれでもいいから。
だから一番はかえれない。この時間だけを、望んで居続ける。』

そうしたら、いつかきっと、本当に叶えたい願いが叶うだろうから。
そういったメルに、呆れたとカミカゼが話す。

「叶えられたらどうしたのでしょうね。」
『いや、多分叶えてたんだと思う。』
「あの、さっきから矛盾ばかりなのですが、」
『これは神々のお宿題だよ?』

メルはにやりと笑って言う。

『人間を知ることこそが、神の要る術なのだと私は考える。』
「…ほんと、恐れ入りますね。」
『っふふ、まぁお友達になって彼女の時間以外を巡って楽しかったよ。』

まさか自分が別の存在だとは思いもよらなかったが。