炎よりも光よりも孤独のままで
惑星レラード、メル達はこの星のとある場所にやってきていた。
「此処がジャネイルですか。」
『形はほぼ日本そのものだなぁ。でも文化は多少違うか、』
所詮偽りの場所、いや鼻から存在しないのかもしれない。
メルの見ていた場所は、都佑の知る存在は、夢幻の世界で。
そんな世界は存在していなくて、
作り出していたと言っても、別におかしい話ではない。
華樹神が創り上げてしまえば、話が終わってしまうからだ。
だが、そんなことをする人ではないのはメルも分かっている。
だから困っているのだ。
『あ〜あ、あの子のぱっぱとまっまが居たら一度謝りたいのになぁ。』
「メル…貴方、そんなことを想っていたのですか?」
『お願い事にしたら禁忌って感じがしたからね。
こういうのは探し出して会うのがベストだと思って。』
まぁだとしても、彼女は彼ら家族からして
行方不明の人間でもあろう。
知れば返してほしいと言い出しかねないが、
そんなことは、神々が到底許すわけもない。
なんなら一部の神は彼女の対応にご立腹であるからだ。
彼女は普通の時間を生きてはいなかった。
子供を放置をして、それで返せと
一体全体何が言えるのだと。
もしそうなれば、愚かにもほどがあるとかなんとかで。
破壊神が怒りを前に出しちゃって、星を破壊しかねない。
とっばっちりを受ける星々の身にもなってほしい。
あとその後処理を任される天使や界王神達の身にもだ。
『だから三人だけの内緒ってこと。』
「とんでもない隠密しますね?」
『軽く殺されるかもしれないけども。』
「じゃあ見つけないほうがいいんじゃ……」
『でもごめんなさいとありがとうくらいは言いたいよ。』
彼女を生んでくれて、そこに存在させてくれて。
おかげで私達は生きているし、変な話彼女は救世主だ。
あの子が、都佑がいなければ、
この宇宙は終わっていたと言っても過言ではないのだから。
奇跡がずっと奇跡で在り続けた存在。
それが、彼女の存在であるのだから。
「、める……」
『ま、そんなことより〜?
このトゥイードってスイーツ見に行こうよ!』
「よく読めますね?読み方は大神官様達に?」
『いんや!元から!!』
「もとから!?!?!?」
だって此処は、日本語で書かれている場所なのだから。
これはある意味、大神官に報告強制場所でもありそうだ。
神々の文章を逆にし、書いているとはいえど、
ギリシャ文字やらなにやらのヒントもある世界。
加えて此処は
『
そう、人間の形をしない種族がほとんどいないのだ。
正確には、喋る種族と言った方がいいだろう。
この世界において、人型を存続しといて損はない。
衣装も前に着ていたTシャツやらなにやらに
変えておいた方が無難だ。
郷に入っては郷に従え
そう思ったメルはぴっと自分に指を指し、衣装を変える。
界王神見習いのような衣装から、黒いワンピース姿に変わる。
Vカットのようなワンピースに、中は白いシャツで決める。
『ほら、お前達も。』
「わわっ」
「おお、これはこれは。」
アルトとカミカゼの髪型も変える。
アルトはポニーテールから三つ編みハーフアップに。
カミカゼは一つ結びからハーフアップ姿に。
メルもまた、軽くハーフアップで止めた髪を
くるくると巻いて一つに固めた。
『これなら兄弟とかで何とか乗り越えられそうだからね。』
「かわいい〜〜!」
「これはいいですね。」
カミカゼは白のTシャツの上に、
青い薄手のコートを着せた。
後ろが高く、前が低い襟のついた
ステンカラーコートと呼ばれるものだ。
ズボンは少し動きやすいようにと、黒いズボンにした。
ジーンズ系の方だが、割と触れば違うのが感じられる。
「メルほんとおしゃれだよね!!!」
『いや、雑誌見つけてそれをまねただけだよ。』
「ですがそれもセンスがとわれますし。」
そう褒めるアルトはというと、メルと色を変えただけの
ほぼ同じにした、いわゆる姉妹コーデだった。
黒いワンピースに下のシャツは白い。
杖を小さくし、宝石に見立てたネックレスが可愛らしい。
メルはメルで、前に旅をしていた宝石を首にぶら下げた。
『こうしたら近くのショッピングも使いやすいでしょうし。』
「本当にお忍びって感じではないですね。」
「もう溶け込んじゃってるよぉ〜〜えぐいよ〜〜」
『まぁアルトの言葉は何処で知ったか後で問い詰めるとして。』
「問い詰めるの?!!?」
『何処から行こうかな〜ん〜
こういうのは地元の人間に聞くのが道理でしょう。』
えっ聞くってあの、と言うカミカゼを放置して、
すみませんと声を上げて話しかけるメル。
お辞儀をして「今お時間構いませんか?」
と、切り替えたのは本当に驚いた。
「嗚呼、なんでしょう?」
『私達ちょっとこの土地詳しくなくて、ご飯食べたいんですよ。
おすすめのお店があれば教えて頂きたくてですね…。
なんでしたら最後にジェラートは食べたくてですね。』
「嗚呼、そういうことですか。いいですよ。」
ありがとうございます!!
そう小さな声でも感謝を忘れずに
全力でお礼を言うメル。
いやはや人間時代で培った交渉というか、
聞きに行く素早さは見習うべきだろう。
男性と女性のデートと言われるような
二人に声を掛けて、少し男性の方が警戒していたのだが、
此方を見てすぐに落ち着きを見せた。
メルが言わずとも、
どうやら身内のように見えているらしい。
それもそうだ、メルとアルトは髪の色がほぼ一緒。
加えてカミカゼも割と似たような髪色なので、
兄弟と思われるどころか、言われても不思議ではない。
加えてメルのその対応。
だてに下界の人間で何人もの魂と交流してきた訳でもないだろう。
カミカゼはため息を吐きながらぺこりと会釈をして会話に合流する。
背後には天使の欠片もないアルトがひょっこりと顔を出していた。
もうひたすらに人見知りを発動する末妹である。
多分というか確実にコルン様辺りが頭を抱える。
天使ならもっと堂々と!と言い出すだろうなぁ。
「最後にジェラート食べたいんですよね?」
『はい。』
「ん〜ねぇ此間行ったところは?」
「え?あ〜あそこか。差し支えなければお聞きしても?」
『ええ』
「お姉さん方、すみませんが好き嫌いとかはあります?」
『私はトマトが苦手です!!!』
「「だああああっ」」
そうずっこける二人にあり?とメルが首を傾げる。
「どうしてそうも素直なんですか貴方と言う人は!!!」
「こっちが恥ずかしいんだけど!すみませんうちの人が!!!」
「っぷ、ふふふ」
あっすみませんと言う吹き出した女性に、
アルトとカミカゼがきょとんとした。
「いえ、素直でいいと思います。
私も実はトマト苦手なんです。」
『トマト共鳴…!?!?』
「いや、ないから。」
「猶更おすすめの場所があるんです。
お金ってどれくらいあります?」
「えっと手持ちでじゅ」
『大体5万くらいですね。』
軽く3泊4日の旅してるので。
そういうと、嗚呼なるほどと言いだす女性。
『(二人とも下手な金額言っちゃダメだよ。
こういう時はね、手ごろな金額言わないと
変な目で見られるのが此処だからね。)』
「(いや、此処も何も、エフェメラル?
貴方この星来るの初めてなんですよね?
何で金銭感覚も似ているんです?)」
と言うか何故そんなにも打ち解けられるんです?
もうカミカゼからしたらいろいろと聞きたいことは沢山あった。
金銭感覚から土地感覚から何から何まで普通に言う。
まるで其処に居たかのように、言うから困惑してしまう。
もう一度言おう。私達は初めてこの惑星に来て、
初めて第一村人ならぬ惑星の住人に声を掛けているだけだ。
決してこの惑星に生まれて旅しに来たレベルではない。
断じてない。
はっきり言おう。
と言うか言えるのすら迷うくらいの潔さに逆に困惑する。
「(いっそのこと三人だけでいけばいいのに…)」
『(こういうのは人伝いに聞いておいた方が
後々楽なんだよ。言い訳大事絶対。)』
噓も方便というものがあるが、
これに関してはメルの対策勝ちというものだろう。
女性が気を許してほらと板のようなものを見せてくる。
それにメルはもう確実だなと察した。
「地元はどちらなんですか?」
『
「嗚呼、詳しくは知りませんが、大分南から来られたんですね。」
ちらりとみた土地の名前を挙げる。
違う土地ではあるが、位置は大体四国の方面だ。
「ええ!?ほんとですか?!私地元同じです!!」
『って言っても私達親が転勤族でして、
余り土地にいなくてですね。』
「ああ、そうなんですね…」
「(いやメルの交渉術というか、線引きうっっっま)」
そう口を開けてみていたアルト。
もう脱帽である。先程までのお惚けは何処へ。
コルンやウイス達に見せれば、
最初からそうすればと言いそうなくらいの礼儀正しさ。
場所はちゃんと弁えると言ったところだろう。
『それで、ここら辺におられる人に、
此処で美味しいものがあればと。』
「出来ればお土産も」
『ちょ、っこらアルト!』
「ふふ、構いませんよ。たしか、
「はんばーぐ!?!!?」
『…カミカゼ』
「はいはい、アルトさ〜ん?
お口はチャックしておきましょうね〜?」
お姉さん少々困っていますよ。
そういってアルトを少し離れさせるカミカゼに、
本当に仲がいいんですねと、メルに対して女性が話す。
『いえいえ、私も兄も妹のことで振り回されていまして。
なんでしたら今日の旅も彼女の発案で決定したんですよ。一か月前に。』
「一か月前に!?!?」
『なので、仕事も忙しい時にそうされて、ですね。』
「嗚呼…お気持ち察します。」
ろくに調べもせずに出てきて困っていた感じを装う。
まぁ事実本当ではあるのだが、規模が違う規模が。
庶民の仕事から規模が変わり、現在は宇宙そのものの管轄だ。
その目まぐるしい忙しさの中で、
一つの惑星の一つの地域を調べるなど時間があっても足りない。
ましてや、日本に近い環境下であったとしてもだ、
文字も文化も変わっている可能性だって非常に高いのだ。
幸いなことと言えば、かなり近い環境であるということだろうか。
それくらいで、他は全く違うところだ。
「では此方には公共交通機関で?」
『ええ、』
「電車ですか?飛行機?」
『飛行機です。』
そういってチケットとかはホテルに荷物も置いてるんですけどと誤魔化す。
上手く誘導出来ているのか、納得されるのも割と困る。
お前達、本当に呑気過ぎて私も胃が痛くなるんだが。
現在進行形で騙しているこっちの身にも…いや、いいか。
「なら
突き当りの角に看板があるはずです。
そちらにはんばーぐ屋さんならあります。」
『すみませんご丁寧に。』
「いえいえ、トゥイードでしたら妹さんいえ、お兄さんは甘いもの好きですか?」
『え?ん〜ちょっとくらいならいけると思いますけど。』
甘党ではなさそうだが、どうだろうか。
『あまり一緒に食事をとらないので、今の味覚が分かりませんが、恐らくいけると。』
「もしもというのもあって、最近ここら辺で美味しいトゥイード屋を見つけまして。」
おお、滅茶苦茶大当たりである。いいのかいいのだろうか。
そうおろおろするメルに、いいんですと女性は笑う。
「そこ、喫茶店にもなっているので、遊んで休憩するときに是非立ち寄ってみてはどうでしょうか?」
ぴぴぴと音が鳴る音に、三人が目を向ける。
嗚呼もういかなきゃと言った女性にメルはもう一度礼をいった。
『すみません、道をお尋ねするどころか美味しいお店を二つも教えて頂いて。』
「いえいえ、ご兄弟で旅行楽しんで下さい!」
お役に立てればよかったと笑う女性にメルもニコリと笑った。
行こうと言った男性にうんと女性が手を取って歩き始める。
その姿をみて、ほんの少し、ほんの少しだけ、胸がツキりと痛む。
「…顔が出ていますよ」
『っ!』
「ふふ、貴方もそんな顔をするんですね。」
煩いと言ってそっぽを向いた。
これは心の奥にこびり付いたナニかだ。
何度も何度も人と共に生き続けてしまった、
そのナニかがずっとずっと、生き続けて叫び続ける。
違う違う、私もあそこに、と。
そんなこと、許される訳がないというのに。
ひと時の幸せを得られるなど、そんな行為は、期待してはいけないのだ。
普通の、幸せを。
『あんな人達が笑っていられるのならば、
私はそれで充分で居続けれなければいけないの。』
「…メル」
『いこう、道を教えてくれた。』
道しるべに沿って行くだけだ。
簡単なこと。そう、簡単だ。
『(もし、もしも彼女達のように、何処かの世界で…いいや、考えても無駄でしかない。)』
あくまでも、私はこの宇宙の頂点に君臨されるお方から生まれた二つのうちの一つから得た生命体。
子供が粗相をして、上の人達が危険にさらされることは断じて許されない。
加えれば、もう前科一犯である。
ようやくルメリア様がお戻りになられたというのに。
ルトラール様に嫁いできたと言っても過言ではない人間。
願いを束ね、祈りを捧げたその魂が死ぬことなど、許されない。
そんな永劫の中にその魂を落として、悪くならないように戻される。
各魂は12の時間を過ごし、そうして元に戻る。
願いを束ね、そうしてまた、同じ時間を繰り返す。
次、もしも12の時間を過ごすというのならば。
『(きっとこの世界には、厄災しか降り注がれないのかもしれないなぁ)』
たまたま、本当にたまたま、彼女が、都佑という純粋な子供がいたから。
その子に出会えたから、こうして生き続けれたのだ。
その願いが、その気持ちが、もし違う形であれば。
きっとこうも上手くいってはなかった。
『(次を起こさないように、私達は歩くんだ)』
この先が、もう間違えないように。
仮に間違えたとしても、取り戻せるように。
私達は、ずっとお勉強して歩いていくと、少なくとも私は決めていた。
だが、もしも、もしもがあるならば。
願わくば、
『(貴方の子として、この子達とお友達となれていたらよかったなぁ)』
学校に行って、たわいもない話をして、過ごす時間。
それがどれ程の幸福なのか、彼らは知らない。
日影がどれ程残酷な場所なのか。知らなくて、いいのだ。