嘘だと笑ってほしい真実なんて
「まじばりうま」
そう言ったアルトに、確かに美味しいですねと答える。
まぁとメルは続けて言う。
『ビルス様やリキール様達はこの惑星無理だろうね。』
「だろうね。モラル的な意味で。」
「おい」
そう突っ込みを入れるカミカゼに、メルは笑った。
ホカホカのハンバーグは肉汁が溢れて匂いを部屋に満たしている。
外の人達が日常の話を愚痴って笑い話していた。
嗚呼、そうだ、そうだから。
「メル」
そういわれて目を開く。ダメだと言う目に、メルはニコリと笑った。
私達華神はその力故、手を伸ばしても届きそうにない願いを渡す。
そう思い、伸ばそうとする行為で、その力は発動してしまう。
今現在は制限されている身ではあるものの、
使用できなくはないため、一度でもすれば
此処に各宇宙の神々が降り立つことになる。
面倒事は避けたい身である。
ましてや、今は旅の途中だ。
分かってると言ってメルは肉を頬張る。
熱さはまだ、口の中でとどまらず、
胃にまで侵入してくるものだから、
水を飲まざるを得ない。
『大丈夫、私は私だよ。』
もう、次なんぞ作ってやるか。
あの時間を、同じように繰り返すなど、もってのほか。
それこそ、フェル達が許すものか。
走って走って、たどり着いた先には、もう存在しない。
存在すら、していないと気づいてしまったあの絶望を。
彼女達以外に、犠牲者を出すなど、言語道断。
だからこれはけじめだ。
長い旅を経て、私は手を振り下ろす。
貴方に出会えてよかったと。
貴方の願いが叶えられなくて、ごめんなさいと。
そういう、ものなのだから。
「おいしいね」
『…うん』
美味しい。此処にあまり長居するものではない。
そう感じたメルは会計を済ませに席を立った。
其処には天使と破壊神だけが残される。
「ねぇ、アルトさん」
「ふぁ?」
「貴方はどうして加護天使になり、彼女を選んだのですか?」
私達は、選ばれる存在。だが、此方も権利がある。
良し悪しを此方も目を付けれるものだ。
メルのような、特別な存在を、何度見捨てようと思ったのか分からないが。
「貴方がこうして生き続けられることこそ、奇跡。
ましてや、元凶の存在に近しい」
「カミカゼ」
「…なんでしょう」
「私最初はこの子が死ねばいいと思ってた。」
虚ろな目が、オレンジジュースとやらに映る。
金色の目が、オレンジ色に見えるのはソレがあるから。
「でも、何度も何度も見ていて、可哀想とか色々越えちゃったんだよ。」
「越えた、とは」
「何度呪っても願っても、叶わなくて。
それでもいいというのは、
本当に叶えたい願いの為だけに。」
とっておいただけだ。
「それを知ってから、嗚呼この子は
目を放せば何処か遠くに行ってしまう。
一度目がそうなったように。」
「…彼女のように、神隠しになると。」
そういう。
「もう二度と離さない。何度も何度も繰り返したからこそ、私は思った。」
古い、古い記憶が叫び続けている。
この場所はいけない、此処は毒だと。
それでも、メルがカミカゼが選んだのは何か意味があると思ったから。
此処を乗り越えなくして、何が神様だ、何が天使だ、加護天使だ。
人である時間を忘れた、人ではなかった神様が、孤独だなんて許したくない。
「貴方を守るように、私も貴方を救いたい。」
始まりから、古くから。
「それに気付いてからは彼女のサポートに徹底した。
手を伸ばそうが、何をしようが、救うなどしなかった。」
そうしなければ、この長い時間は
幕を終えるどころか始まりに戻ってしまう。
そうアルトは気付いていたのだ。
だから、見捨てた。何度も助けられる時を、無かったことにした。
そうして、今がある。今しか、生き残れない。
それに
「沢山頑張ったのに、ご褒美がないだなんて。」
そんなの、あんまりじゃない?
そう笑って言うアルトに、カミカゼは口を開くが、
それよりも先にメルがお待たせと言って帰ってきた。
外に出ようと言うメルに、分かりましたと席を立った。
振り返ると、寂しそうなアルトの顔は見当たらなかった。
+++++++++++++
アルトがカミカゼをまぁぶんぶん振り回す。
おかげ様で隣で撃沈している。
私はジュースを飲んで呑気に
彼女の姿を見て、椅子に座っているだけだ。
「(貴方労わろうという気持ちがないんですか)」
『(あの子凄いでしょ、私アレと一緒に旅してたんだよ。一年くらい。)』
「えっっぐ」
そう声に出るほどの引きを出すカミカゼ。
まぁ言いたいことはわかる。
今はアルトに此処で大きな図書館へと連れてきた。
この土地の日本語とやらに
大層気に入ったらしく、
勉強したいと言い出したので
ついでだから本を幾つか購入出来る店で
似たような本を選ぶためにも泳がした。
まぁ、本音はカミカゼを休ませるために
野放し出来そうな場所で放置したというのが正しい。
此処は図書館が見えるフードコートに近いところだ。
ガラス越しに見える向こう側では、
もう今にでも浮遊しそうな彼女を見ては笑う。
わくわくして周りを見ているが、
もう存在自体が煩いのを彼女は絶対気付いていない。
「面白そうですね」
『まぁ、ね。いい気分転換になるでしょう?』
「ええ、課題は沢山でますが。」
『おやまぁ』
「そういえばビルス様達が
これないってどういうことです?」
本当は、もっと違う方が原因では?
そういったカミカゼに、
少し考えた後メルは指を指して言う。
『アレ、どうおもう?』
「あれ…人間ですか?」
『そ。本を見たりした?』
「まぁ先程見ましたし、
アルトは気になって端から端まで見ると言い出して
私達は休憩に抜け出してきたくらいですよね?」
そりゃそうだ。
『ね、神話コーナーみた?』
「いえ」
『この星も獣は喋らないんだよ。』
神話を見て、すぐに察した。ここはあの場所と酷く似ている。
もう下手したら土地名が違うだけで、本当にあるのかもしれない。
『願いの球も願いを叶える華もない。』
「メル…」
『ここはね、そうあるべきだ。
此処に神々は決して来てはならない。』
そういってメルは人差し指を立てる。
此処が危険に晒されるときは、それまでだ。
もし、手を出してしまえば、この星は惑星と認知し、外に出る。
広い世界を知り、そうして
この惑星の価値観がどんどん変わっていくのだ。
「そうまでして、貴方は何故守ろうとするのです?」
『どうしてだろうね。
でも、少なくともウイスさん達は来ちゃだめだ。』
美味しいし、楽しいけど。
人型である我々であるからこそ、許されている。
アルトも天使の輪が今何とか反射系の色で
その輪をカモフラージュさせているが、
正直直感の鋭い奴が見つければ、
少々厄介なことになるだろう。
『お土産はやれるけど、遊びには無理だね。』
「…残念ですね。」
『これも星を守るためさ。』
それに
『(あの惨劇から、赤い本が紛失した)』
そう、メルの目的は他にもある。
アルトと共に旅をしたときに世話になった本だ。
正直、未だに都佑達と交流した感覚は夢物語のような感じだ。
本を見て、理解したに過ぎない。
その本が、急に紛失していた。
鞄ごと落としてはいたが、
本は救出していたものだと思っていた。
アレが人の手に取られれば、少々話が変わる。
アレにもし、文字を書き込めて、
その文字がその通りの物語に課せられば。
『(酷い惨劇が、繰り返し続けられるというもの)』
それだけは、防がなければいけないのだ。
何処の、どの誰の手に、届けられているかは知らないが。
一応ティーナ達にもそれとなりの話を聞いたが、
知らなさそうな感じを知ってすぐに分かった。
向こう側には、もういけない。
恐らく、もう一度行ってしまえば、それこそ。
「メル」
フードコートの音がする。
目を向けると、少し呆れた顔で心配そうな目でこちらを見ていた。
『…分かってるよ』
「分かっていません。」
『もう、分かってるって。』
「分かっていませんって。」
変な話、華神はもう、神ではない。
加護天使もしかり、神ではないのだ。
だから祈っても願っても、かなうわけではない。
望んでも手を取っても取らなくても。
別に大差ないのだ。ない、はずなのだ。
『…赤本が消えた』
「…何故それを早く言わないのですか。」
『あれ知ってるんだ』
「赤本とは、貴方のなんならルメリア様の記録を残した生きた本でしょう?
音を叩けば書き記し、未来に繋げられる魔法の本。」
『げ、やっぱマジだったか。』
「まじって…貴方まさか、それを知らずに!?」
『かいてたぁ』
ばたりと今度こそ力が抜けたカミカゼが机に倒れる。
「もう、もうおしまいだ、この神々……」
『正確にはうちら、見習いだけどね!』
「危機感というものがないんですか!?
ないからそうするんですよね?!!?」
『あはは、耳が痛いはなしだぁね。』
前にそんな話を誰かにされた気がする。
いやぁ一体誰だったかなぁ。知らないなぁ。
「…いつからです」
『逃げてた時に落としたから、向こう側だよ。』
「…もしも仮に、記されたら?」
『いいや、この世界に来る可能性すらが怪しい。』
もしきたら、それは華神であるべき存在。
12の誰かが持っていたらの話に過ぎない。
だが、彼女らが私達を騙すようなことをするはずもない。
「書き直すとかは」
『できなかった。なんなら破いたりもした。』
「やったんですか。」
『でも書き記すは出来ても、何も出来ない。』
燃やしても壊しても元通りになる魔法の本。
特定のペンでないと書けないので、それすらも紛失しているが、
まぁそこが奇跡的に合ったとしてもだ。
「本が帰ってくるはずがない、と。」
『もし帰ってきても、華神かあるいは』
「加護天使の子達がということですか?」
『ご名答。それ以外は本当に考えたくない。』
「…新たな華神の、力の幕開けとでも?」
おお、本当になりそうだから言いたくなかったんだ。
「ま、いずれにせよ隠密にことを済ませるべきでしょうね。
この件について大神官様達には?」
『いまはまだ、バレていない。だがもう時間の問題かな。』
探し物は見つかりましたか?
なぁんて言われたらおしまいだ。
「困りましたね、処罰どころの話で済みませんし。」
『事の重大さは知っているんだけどねぇ。』
「元の世界に帰るとなれば全神々が貴方を止めに来ますよ。」
まぁ僕もですが。そういうカミカゼにですよねとメルは答える。
「ましてや時間の操作はご法度。
できなくもないですが、
この時間に戻れる保証はまずないですし。」
『流石にしたくないし、向こうに神様いるかもしれないからさ。』
流石に別世界の人間がこうもドタバタ荒らすのは悪いだろう。
『奇跡に身を任せるつもりだよ。』
「…まったく、後で泣いても知りませんよ?」
『っふふ、その時は抱きしめてよ。』
そうしたら涙なんてなくなるよ。
そういって笑うメルに、困ったお人だと答えた。
「そうなれば破壊などしなければいい。」
『星を壊す者が何を言うのやら。
思うことすらしなくなった私はただの人間だよ。』
「おや、星を創造する者がなにを仰るのやら。」
星どころか宇宙の管轄任されると困るけど。
ははっ、言えてますね。
そう笑って話しているとああと声が聞こえる。
「アルト放置してメルわるいんだぁ!!」
そうガラス越しにいうもので、周りの声がざわつく。
少々考えた後、メルはアルトを見ながら言う。
『カミカゼ』
「はい」
指を鳴らし、衣服を変える。力を使うときはこうでもしないと示しがつかない。
カミカゼは一応とまでに赤いネックレスを取り出し、手で割る。
其処には天使と似たような杖が出てきたではないか。
『記憶を』
「ええ」
+++++++++++++
「全く、あれ程舞空術は止めておけと言ったでしょうに。」
「びえ、すみまぜん」
緊急でもしも、というお墨付きをもらい、ウイスが特別にカミカゼに渡していたものだ。
天使の見習いで扱うには如何せん限度があるので、これを使えば強制的にウイスに連絡が行くようになっている。
その為、メル達は急いで周囲の人から記憶を消し、情報を書き換え、路地裏の方へと逃げ込んできた。
カミカゼはご立腹。謝罪と言わんばかりに、コンクリートの上で正座をして半べそである。
「なにごとですか?それにしては早いですが。」
「ウイス様、すみませんこうも早く使うとは思っていませんでした。」
まだ修行がなっていません。そう謝るカミカゼに、構いませんよと一声かける。
久しぶりに見たウイスに、メルは少し考えてハッと気づいた。
『ウイスさんの管轄で力使っちゃったの!?!?』
「一応大神官様には許可を取っております。
アルトさんの行動には目を見張るものがありますので。」
「びえ」
『彼女大反省してますけど…』
「はぁ…帰ったら始末書行きですから、その旨ご忠告を。」
一日も立っていないのに、先が思いやられるとウイスがため息を吐いた。
この旅はアルト達が以下に下界の人間達に気付かれないように旅をするというものでもある。
時期がくれば、三人で一つの星で暮らすことも視野に入れてくれている話も出てきたくらいだ。
「これでは先が思いやられますね。
うちの弟でもこうはいきませんでしたよ?」
「耳が痛い話です。」
「うう、ごめんだざい。」
「おほほほ、まぁよろしいでしょう。楽しい旅をご満喫のご様子ですし。」
そういってこちらを見るウイスに、
メルは再度自分の服装を見つめる。
アルトやカミカゼに夢中になっていて、
自分の服装が変わっていないことに気付いたのだ。
『うっ、す、すみません。』
ぴっと音を立ててすぐに服装を整える。髪型もだ。
「構いませんよ。それにしても、皆さんよく馴染んでおられましたね?」
「来られていたのですか?」
「いえ、貴方の力を使ったのと同時ですから、先程到着しました。」
「ではなぜ…」
「ほほほ、様子を見ていればすぐにわかりますよ。
羽目を外さない程度に、遊んで来て下さい。」
そう再度ご忠告を挟み、今度こそウイスは消える。
本当に目を付けられているとは思っていなかった。
メルは三人分の衣装と服を戻す。
『ごめん、私も勉強不足だ。』
「いえ、課題は互いに山積みといったところですね。」
「ふうえええ」
『嗚呼はいはい、ごめんごめんって一人にさせちゃったのも悪かったね。』
「今度から三人で行きましょうね。」
+++++++++++++
「いや、絶対そうじゃないだろ。」
「おほほほほ!仲がよろしくていいではありませんか。」
うちの宇宙もこうなれればと、思うんですがねぇ?
そう覗き込むように言うウイスに、煩いとビルスが答える。
此処は第七宇宙、ビルスの部屋の一角だ。
其処に心配だと言っていたシンと、遊びに来ていた悟空とベジータがメル達の休日をのぞき込んでいたのだ。
「…趣味の悪い」
「おや、そうは言いますが、こうしてみていたからこその速さで対応が取れたのですよ?」
それよりいいんですか?
「偶には奥様に彼女たちの様に旅行に行かれてあげては?」
「ふん!」
「ウイスさん、こいつさっきまで遊びにいってからよぉ」
「なっ、ちょ、おい悟空貴様!」
「へぇ?土産なしに?僕のところに来るだなんて
随分と怠けた魂に生まれ変わったもんだねぇ?」
「なっなななんあなめめっめめ滅相もない!!!!」
今度一緒に届けにきます!と言ったベジータに、
あっそとビルスが宝玉の方に身体を向けた。
「それにしても、赤本ですか。」
「おほほほほほほ!
おもいっっっきりバレておられますが、
さぁ私達も一手打つとしましょうか〜
いや〜ど〜〜いたしましょうね〜!コルンお兄様!」
「…ウイスさん、貴方と言う方は」
そう通信が入ったと同時に言うウイスに、
いいではありませんかと答えるウイス。
「メル様は何度か旅を続け、捜索するご様子。
此方も知らないふりをして、彼女らが気付くかどうかも図るというのはどうでしょうか?」
「…それは別に構いませんが、ウイス」
貴方、いやいいでしょう。
「ではその手で。大神官様達にご報告にいきますので。」
ええ、そういって通信が切れると同時にではとシンを連れてウイスが移動する。
「赤本、ですか。」
「ええ、すみません、
彼女らの話を盗み聞きしてしまいましたが、
流石に放置するには難しい話とおもいまして。」
「赤本、赤本、あか…んん?」
どうしました?そう聞いた大神官に
ルトラールがいやどこかでその名前を聞いたと首を傾げる。
「ひょっとして、ルメリアルの書ではないですか?」
「ルメリア様!!!」
「ごきげんよう、第七の天使そして界王神よ。」
お辞儀をする彼女に、すっと膝をつく。
立ってというが、恐れ多くて出来るわけもない。
「と、え?る、え?」
「あら、赤本でその本は三回ノックをすれば本に記せるのですよね?」
「え、ええそう話は聞いてしまいましたが…」
「なら猶更そうですよ。ルメリアルの書です。」
「……っ」
ああ、ルトラール様!!そう倒れたルトラールに、ウイスが行く。
おほほほと笑うルメリアが話を続ける。
「ほんとうに、私に似ちゃいましたねぇ。」
「…どうするんですか、あの本を、貴方と言うお方は…!!!!」
まさか子供に渡したのですか?!!?
とんでもないことを思いつきましたね!!!
と怒鳴り散らしだすルトラールにまぁ落ち着けとウイスがなだめる。
「ええ、あの子には必要だと察知しまして」
「いつから!!」
「一人目の子に会った時から。」
「ああ」
「ルトラール様!!!」
何度も倒れるので、本当に病気を疑うが、
天使が病気になどなるわけもない。
今度はウイスも笑いながら介抱を手伝うことにした。
「その、ルメリアルの書というのは一体どのようなものですか?」
「私の力をふんだんに使った本です。変な話、願いが何でも叶います。」
「ほぉ?」
「っそれは!!」
「ですが、幾つか策もあります。」
「策、ですか。」
「ええ」
そういってルメリアはニコリと笑って手を使いながら話す。
「アレは血筋の人間ではないと扱えることは不可能なはずなのです。」
「ほぉ、ならそれは」
「ま、本来その呪文を10億年単位で書き直さなければ
いけないのですが、もう時効過ぎちゃいましてね。」
「だめじゃないですかやっぱり!!!!!!!」
ルトラールが何度も叫ぶ。もう情緒が不安定である。
「もし、それに他の人間が書き加えれば、どうなりますか?」
「間違いなくその通りに起こりますね。」
「ならば猶更、全神々を招集して」
「それはしないほうがいいでしょう。」
え?ですが、というシンに、大神官が答える。
「ソレはメル様も記しておられました。
彼女の勘を探るに、どうも、
ある一定のラインを外れると記入は不可能だと。」
「…なるほど、下手な路線は書くことも許されないと。」
例えば、ルトラールが死ぬだとか。
そう言ったルメリアに、周りの空気がぴりつく。
「ま、彼女は危機感を持って他の方達を巻き込まずして探そうとしていますし、問題ないかと。」
「ですが」
「それに、もし本を手放し、適当に生き延び自身の保身のみで生き抜こうというのならば。」
私自らが、手を出すまでです。
そう言い切ったルメリアに、大神官は少し驚いた後、変わりませんねと笑って答える。
「これでも人間であった身です。神にない、感情というものをあの子は持ち合わせていなければ話になりませんので。」
「まぁ、その方針で教育されておられるのは構いませんが、消滅させることは?」
「まず不可能でしょう。アレは力を持つ者が消滅させる権利があります。」
「現段階で、もうそれは出来ません。」
「え、ど、どうしてですか?」
聞いたシンに、今度はルトラールが説明をする。
「あの本は華樹神の力を注いだもの。それ即ち、華樹神としての時間があっての本です。」
「つまり、現時点で役から降りられる身としては、力を制御出来ないと。」
「そうですね!」
「そうですね!っじゃないですよ!?!?!?
何を呑気に話しているんですか?!?!
子供に自分の使っていた本を渡すのとは訳が違うんですからね?!?!?!」
「いいじゃないですか、あの子達が探すと決めたのです。」
それを見守るのも、親の務めというもの。
そういったルメリアに、もう好きにしてくださいとルトラールは答える。
「とにかく、知られるのはあまりよくありません。
もしも仮に、彼女達よりも先に天使達が知れば」
「わかりました、口裏を合わせろということですね?
そういうことで、お二人とも分かりましたね?」
「「はい」」
「よろしい。では帰っていいですよ、ああ後ウイスさん。」
「はい、なんでしょうお父様。」
「アルトさんの件ですが、今度ウイスさんも此方に来てくれませんか?」
旅が終わった後でも、赤本が見つかればでもいいが。
そういった大神官に心得ましたとウイスは答え、席を外した。