似ているでしょう本物なんだよ




おかえりなさい。
そんな言葉が聞こえる。

『ただいま』

そういってメルは荷物を下す。
いやはやマジで重いったらありゃしない。

「大荷物ですね」
『ええ、大神官様達にお土産です。全王様にも。』
「これはこれは」
『お仕事は?』
「急がずともありますよ。すぐにいいのですか?」
『仕事していたほうが間違いなく
雑念ないってことが判明しちゃったので。』
「おやおや」

ニコリと笑う彼をみて、メルはすぐに察知した。
嗚呼これはバレている。だが、彼もまた言わない。
察するなと言われている気がする。

ならば、それを実行するまでだ。

『すみません、うちのアルトが
ご迷惑をお掛けしましたので。』
「いえいえ、面白い子ですね。」

これは軽く怒っている。いやもうそれはそうか。
天使で、なんなら加護天使あるまじき行為だ。
下界の人間に天使という状態がバレるだなんて。

書類送検は間違いないとのことで、
まぁしゃーないと腹をくくる。


一応言っておくが、
わいろとかではないからな?

この食べ物たちは。




全く、アルト達はちゃんとやっていけるのか。

正直、心配ではある。


「アルトさん達とは仲良く旅ができたのですね」
『あれ、そう思います?』
「ええ、顔が行きと帰りで変わっておられますので。」

気分転換はいいものですね。そういってメルは言う。

『どうせなら大神官様やルトラールも行けばいいのに。』
「…だそうですけど?」
「本当にいけるならいきたいものですねぇ。」

死ぬほど仕事あるので、
そう半泣きのルトラールに
メルは申し訳なさに包まれた。


まぁ、仕事は早く覚えてしまえばいい。
間違えは許されないが、文字を読み込むのも一つだ。


「ゆっくりで構いませんよ。
一日程休暇があれば、またお話しますし。」
『仕事漬けになって逆にやってないと
ソワソワとかしそうですよね。』
「ふふ、そうかもしれませんね。」

全王様の役目もあるだろう。

メルはうんうんと頷いて「では」と
二人に軽く報告を告げて部屋に戻ることにした。

『(とりあえず、二人は気付いてるだろうな)』


何処までかは知らないが、
彼らの近くで考え事は難しいだろう。


ルメリアが日本人で無いことを祈って、
メルは日記を記す。

正直こんなことをすればバレるのも時間の問題。



だが、逆に考えたのだ。


天使は記憶を考えたことを知ることが出来る。
でも、それに慣れ過ぎて、書物をみないのではと。

正確には仕事ではみるが、
人のそれも部下になるはずの子の
プライバシー関係なしにみるのか
というモラル的な問題である。




まぁみたらみたで、それまでの話ではある。
なんなら恥ずかしい暴露にすらなりそうで恐ろしい。



『(日本人は確定、神々の神話を調べたが、
花のような神話が一つ見つけたのが
少々収穫がでかいというところか。)』

そう、メルはあの大きな図書館で
一人気になった図書を借りてきていた。


流石に持ち出しはコピーなんてするのはまずいと感じ、
こっそり彼らに内緒で本を借りてきた。

場所がわかれば、まぁ移動もたやすい。
第八宇宙という場所が少々厄介なところだが。
理由を幾つか考えておいた方が無難だろう。

一応カモフラージュとして、花ことばの本を借りている。


それはアルト辺りに見られた感じがしたから、
下手したら伝わっている可能性もある。
勿論そのあと人目を気にして
なんとか借りたので、一応ばれていない、ハズだ。




彼女らには悪いが、これは自分の仕事でもある。


『(華神の本来の動きが、人の形で元々作られていたとか)』


それを、神が見つけ、
それはいいことだと閃いたとんでもない理論ならば。



それこそ、大事になるし、その事情を見つけ、そして


『(本来の神を、華神を無くしてしまえばいい)』



破壊神と界王神そして天使の枠組みだけで充分だ。


ルメリアを生きらせるために、
華神が作られたとなれば大事。


人の魂をなんだと思っているのか分からない。


まあもとより全王様が創り出した星々にもあたるものだ。
彼が一つ言えば世界が変わる。もちろん消滅も、創造も。
だが、生命体はそうもいかない。
それは作られてしまえばただの人形でしかない。



私のように、一つの無だったように。
そしてその無を、有に変えた人のように。




『(君がもし、もしも、向こうに帰りたいなら)』





向こうですらない、別の世界であれば。
私は君に協力をして、この世界から救い出すつもりだ。
そんな覚悟は、最初からしていたのだ。

だから、彼女の親をこの記憶だけで、探し出す。
もう姿形も、なんなら死んでいるかもしれない。
でも、惑星の前に向こう側で見つけているのは事実。

向こう側に、彼女の親が居そうな感じは、正直しない。
だが、更に別の世界があるとすれば?
それの手がかりにもなる可能性があるのだ。

かなりの時間がかかる面倒な話ではある。
色んな旅をして、また色んな世界をみるだろう。
そうして、私は、また変えるのかもしれない。

いや、

『(変えない、変えたくなんて、ないのだ)』

あの子が嬉しそうに笑って過ごす。
恵まれた時間に、あの子を戻さねばならない。
だが、その場所に誰が…嗚呼、いるではないか。


『わたしが』


そうだ、彼女の代わりは私が出来る。
なら猶更彼女を向こう側に返すことが可能だ。
まぁ、都佑が望めばの話だ。

今の現時点で、正直帰る気持ちは薄くなる。
だってお金の心配はしなくていいし、
仕事だって悪くない話ではある。

親こそいないが、他は全て与えられている。
嗚呼でも、あの子のことだから、それこそが地獄なのだろう。

親が、全てなのだ。

あの子の願いは。

寧ろいないと、成立などしない。

だから、私は手を取ったのだ。

あの子が、助けを求めていそうだったから。

その手を取らねば、あの子はきっと、殺されていただろう。


だから、元の場所に、返すだけだ。
物は返さねばならない。もちろん、人だってそうだ。

居た場所に返す。それは、本来であればルメリアもそうだ。
それが出来るということは、即ち全王様を説得ということ。

いやぁ〜〜〜〜無謀だなぁ。


『(でもやる価値は確実にある。)』

少なくとも、赤本がどうなっているかにもよる。
最後の方をみて、あの子が帰れそうなら嬉しいが、
もし違えば、もしそうなれば。私は、私は一体何処に。


『…寝よう』

界王神見習いとはいえど、
この場所にいるのは
何も界王神になろうというものではない。



私の位置的に、全ての時間を知って
共有できる核のようなもの。



中心核のような存在が、
界王神という創造だけを
司る場所に居座るなんて無理な話だ。



だから、界王神の勉強と同時進行で、
この世界の役割を教わる。





勿論、思考が破裂しない程度に、
ゆっくり確実にだ。





メルは目を閉じた。






この世界が、本当に幸せな場所を望んで。








+++++++++++++





それから二か月後

「此処まで」
「ふぇ」
「終わりです」

第八宇宙では相も変わらずアルトの特訓をコルンが指導していた。
息切れをしてはいるものの、しっかりと立っている。

ありがとうございましたそう立ってお辞儀をして言うアルトに
最近本当に成長したな、とコルンはそう感じながらも
いいえと答え、本日の修行は終わったところである。


少々気になったコルンは一つ考えを聞いてみた。

「アルトさん」
「ひゃい」
「メル様とはお会いに?」
「いえ、最近は特に連絡もしてません。」

身体が跳ね上がるのは、
正直そろそろやめて欲しいところだが…
まぁ彼女のビビりは今に始まったものではない。

コルンは気になるというのも、アルトを除いた人達、
エフェメラルとカミカゼ、その二人と旅をしていた。
彼ら彼女らとは、最初の方ワイワイとしていたはずだ。

そんな話も数日経てばぴたりとやみ、
最近はそんな浮いた話も一切出てこなくなったくらい。
まぁ仕事に現を抜かす様では、天使も務まらない。

寧ろ今までどうやって生きてきたのか
こんこんと聞いては説教を垂れ流しそうではある。


…話を聞くに、どうやら三人で
交流するような通信を取ったらしく、
旅以降通信を何度かしていたが、
本当に最近ぱたりと止まったらしい。

なんなら本人もあまりよくわかっていなかった。

「気にはならないのですか?」
「え?いや〜まぁ気にはなりますが、向こうもお仕事ありますし。」
「ほぉ?」
「なんですか?」
「いえ、貴方であればすぐに飛んで遊びに行きそうな気がしたのですが。」
「も〜人をなんだと思って!…大丈夫ですよ、
そう気を使わなくても。また連休貰ってはっちゃけるので。
そんなことよりも私まだまだですよね。動きがとろい。」
「え?」


急に話が変わったので、思わずコルンも聞き返した。
なんなら立ち止まった。
なのにアルトは知らずに歩きながら話を続ける。

「というか、右重心が引っ張るんじゃなくて、
左の動きが妙に遅いせいですよね。
リキール様の動きとか、フェル様の動き
見ていてもすぐにわかります。」

あとフェルさんはよく甘くみて
下側に攻撃くらいやすいですし。
そう言ってから立ち止まるアルト。

その詳しい分析に、コルンは自分が
立ち止まっていたことを忘れていた。


アルトに言われるまで。

「お師匠?どうされました?立ち止まっちゃって。」
「……いえ、なんでもありません。」



確実に、彼女は力をつけている。それも、急激にだ。


旅で何が起きたのかは、
正直全て見ているわけではなかった。

途中まで馬鹿ばかりして、頭が痛くなり、
そのまま視聴を中断というのもある。

だが、確かに、彼ら、彼女らに出会って、この子は変わった。


恐らくだが、あの二人以上の急成長を遂げていると思う。
まぁそういって、自分がただただ
彼女を甘やかしているような気がしなくもないが。



「そんなことより、お掃除の方は終わったのですか?」
「ええ、いつもよりちょっと力入れてみました。」

そういう彼女に、ふむと言ってちらりと隅を見る。
まだうっすら埃が残っていたのは、たまたまか?

「此処に埃がついてますよ」
「ひえ」

わぁほんとだぁと半泣きで
座って見るアルトに、少しホッとする自分が居た。


いや、ただ成長するのはいいことだが、
こうも急激は少し恐怖を感じる。



この私が、恐怖を感じるとでも?


いやだが、なにやら得体のしれないものを見ている気がするのだ。







まるで、覗かれているような



「(いや、気のせいということにしましょう)」






もしも、悪魔に堕ちるような行動を見つけたらそれまでだ。
自分が手を下さずとも、上の方が下す。それに、従うだけだ。

そうコルンは言い聞かせて、前を歩く。
それをじっと、見つめていた者をコルンは気付かなかった。


「(コルン師匠が私の感覚に気付かなくなってきた。
これもメルが言ってた通りだ。
一応此処には日本語を知る人はいない。)」

自由にノートは取れる。

アルトは部屋に帰って自由時間を堪能していた。

一応人間のルーティーンは護られるらしく、
数時間仕事をすれば解放される。
本物の天使になれば、話は別だろうが。


「(嘘は方便ってマジで恐ろしいぞこのやり口。
いや素質あるってメルも恐ろしいんだが……)」




メルは一体、どれ程の人達に
どれ程の嘘をついて誤魔化したのだろうか。


その誤魔化しの奥にあるものは、
それは、本当に覗いていいものか。




そこまでして、守ろうとする意味は、

一体何の為の、なんなのだろうか。




「(どこに行っても、あの子は嬉しそうに笑っていた)」



でも、夜になれば泣いて眠っていたのはある。
そんな時、ぬいぐるみであれば傍にいられた。
落ち着いた寝息を聞いて、安心したものだ。

ある時は石ころに
ある時は楽器に
またある時はぬいぐるみに

変わって成長を見届けてきた

彼女が人間の時間を辿るたびに、
こちら側では神様になるように動き


最期には、



「(メル、貴方こそが幸せになるべきなの)」



誰かを幸せにしたいと願う、貴方こそが、幸せになるべき。


日陰に引きこもるような子ではないはずだ。
貴方の本当の親は、それを望んでやしないだろう。


自分だけが犠牲になろうというならば、

私だって加護天使として
貴方の傍に居続けた身としても譲れない。



「私も」



貴方と一緒に地獄だって傍に居て堕ちてやろうと思う。
まあ、もしも悪魔に堕ちれば、きっとあの子は来てくれる。
手を伸ばして、そしてその手を取って、一緒に堕ちてくれるだろう。

人よりも、悪魔よりも、人らしく、悪魔らしい者に。
私達は、なってしまうのかもしれない。
神話の話以来、私は毎日の様に勉強をしている。

日本語のひらがなというものは一週間ほどでなんとか攻略した。
正直まだ「る」と「ろ」の違いや、
「あ」と「お」とか似たような形は難しいところがある。
ローマ字やカタカナを攻略したのがそれから二週間後。

現在はメルの言葉を借りるなら、
保育園児から小学生一年生といった範囲らしい。
先はまだまだ長いが、小学生3年生くらいでテストするとか。
試験は旅の途中でするらしい。

それが楽しみになっているところ、本当に笑ってしまう。
勿論勉強が分からないなりに、楽しいと思いながら考えている。
第八宇宙の神々は根が真面目というのもあるのか、
破壊や創造の話で話をしだすとその真面目さ故か、下手に手を抜かない。

そこら辺を見ていて、
私もあまり気の進まなかった
勉学すらも努力し続けるようになった。

日記は軽く書き終え、メルから貰っている教材を棚から取り出す。

「えっと、はな、はな、はな…」


そういえば、だ。
破壊神や界王神などの言葉は何処で学ぶのだろうか?


小学生とやらがどうやら
一年で数が増えるらしく、
六年で終わりだと言っていた。


花と王は一年生の範囲だ。
書き順をなんとかなぞって覚える。



「ふぇ、お宿題多いなぁ。」



コルンらからの宿題もあるので、
正直地獄のような書類の山にはなっている。

一応これ、メルの元に届けられる
移動用の荷物置き場がある。


其処に私とカミカゼは
夜にメルに渡し、次の日に返される。



範囲的にはまだまだ余裕とのことで、
難易度が高くなれば三人で
勉強会の旅を開くと言っていた。


「でも、これくらいで根を上げちゃあだめだよね。」



星々の知識はどちらにせよ
叩き込まれる可能性が非常に高い。


神の言語を知るということは、
この漢字とやらも使えるだろう。


言葉の形自体は別でも、
内容は決して無駄にならない。

アルトは漢字を書き終え、
その関連で算数や理科社会を片付ける。


人間界の仕組みを
事細かに書かれているその字はひらがなばかり。



少々目が痛くなるが、これも勉強だ。



休憩も適度に取るようにはしているが、今日は少々堪える。
はぁと声を出し、終えると
ノートを軽く投げつけ今日のノルマは終了だ。



「じゃあ明日の予習をしとくかぁ」




そういって小学生二年の範囲を解く。



国語はかなり難しいが、理科や社会は割と得意だ。
英語は文化というものが違うらしいので、
ちょっと感覚が分からないのが難点で無視している。




今は理科も社会も小学生5年生くらいの速度まで追い上げている。
まぁ文字が読めないので、半分以上はお手上げなのが悲しいところだ。




そんなこともあって、
辞書とやらを調べながら睨めあいっこ。



「んにゃ〜〜えっと、花には花びらってやつがあってぇ
花びらのなんだこれ、えっとえっと、きって奴っぽいの…ね?」



ねもと?そう目を細めつつ、
アルトは別のノートに意味を記す。



こうして次の学年に上がった時、
助けになるようにということも含めてだ。



「緑色の分かれたがくがあるのか。
ほうほう、これ花って種類あったよな。」




植物の種類によって、違いはあるものの、
殆どの植物には花びら、
がく、おしべ、めしべの4つがある。


この4つを、花の4要素と言うらしい。



へぇ〜〜〜と言いながらアルトはすらすらと書き記す。



お花やめ花に分かれていても、がくはあるらしい。
め花の小さいのは、実になったりして、
時期が来れば収穫し、食べ物として調理する。

植物でも花だけではないということに、アルトは驚いたのだ。
花があることで、ハチという動物というか虫らしきものが
受粉の助けをし、そうして実がなるきっかけになっているとか。


植物にも種類があり、
ウリ科とかそういう言葉が沢山あることを知る。




「…あ、前にフェル様が言ってた花だ。」





そうして、見つけた花にへぇと目を輝かせる。
ノートを上にあげて、おおと感動した。
こうやって、前の知識が糧になり、今に活かされる。

それに気付いて目を輝かせた。




「…すごい、わかる、わたしでも、わかる!!」





理解をするとは、こんなにも楽しいのだろうか。


これを共有したい、だが、そんなのはかなわない。
メル達に早く会って、いやこんなのまだまだだ。



もっともっと、出来るようになって、
彼女たちと沢山の知識を知るのだ。




そうして、いつかコルン師匠の様に立派になるのだ。




そうと決まれば、コルン達の見ている
ひたすら小難しそうな書物にも手が出そうになる。


いやだが、メルから言わせてみれば
ここは基礎も基礎と言っていた。


彼女から言わせてもらえば、
貰ってきた辞書を頭の中に
叩き込まされているに等しい情報量を
こんな長い時間やってヒィヒィ言っている
この現状が阿保らしい。

なんなら、彼女は数重の記憶を維持してあの状態を得ている。

いや、普通にどうして
魔女になって戻れたのか不思議でしかない。
華神として生きれたのは、本当に奇跡だと思う。



「うわぁ……まだまだたくさん、でも楽しみ。」


一応、コルンの目を騙せているのだ。


そう、埃を拭かなかったのは「あえて」である。
着実にメルの知識を共有するアルトは成長していた。

しかも、かなりの急激な成長である。
だが、流石にそれはキャラがまずいと言われたので。

こうして時々ドジをあえてして、演じているのだ。
まぁ本当に間違えたりもしているので、嘘ではない。
嘘に本当を交えることで、不思議がっても騙せるのだ。



恐ろしいことを知って、
少々申し訳ないが、
これは致し方がないのだ。



知識は武器になる。


コルン達が此方に来ないのも、
何か策略があるかと思うが、
今はお言葉に甘えておいておく。


メルと会った時、この知識が生かせるようになれればと思う。
アルトは嬉しそうに笑ってベットに突っ伏した。

「今日も沢山勉強したなぁ・・・ふぁああ」







そうあくびをしておやすみなさいと言って目を閉じる。















すやすやと寝息が聞こえだしてから、まったくと声が出る。


「いつの間にこの量を勉強していたのやら。」

そういったのは、最近あまりにも
普通でおかしいと気づいていたコルンだった。


アルトの勉強している言語は、
正直下界の人間が使う意味不明な言葉。


あまり考えても無駄だと思っており、
注意しようとは思っていたが、
少々様子を見てからにしようと思っていた。




そう、思っていたのだ。




「こんなになるまで努力をして、
全く、そこまでこっちに似なくていいんですよ。」



コルンが来たら飛び起きるなりなんなりしていたのに、
今ではぐっすり寝て朝まで起きないとまできた。



天使は睡眠など不必要なものなのだが、
彼女は元々人間だった存在。


その前は加護天使か何かだったとは聞いているが、
仮に天使だったとしても、つい先日まで人間だった
癖というものが染みついて外せれないのだろう。

疲れた時には人が来ても眠り続け、意識を飛ばしている。
正直叩き起こしてやりたい気持ちにもなるが…


すやすや寝ている彼女に、
このことは内緒にしておきましょうとコルンは考えた。


「貴方も努力をしていますしね。」


というのも、彼女の努力は本当に素晴らしいものだった。

雑務は嫌と言わず、コツコツとするし、
神々の言語もちゃんと勉強をし、
テストをしてもまぁ悪くはない成績。

掃除も手を抜いていなくもないが、
力の下限も分かってきている。


武術は点でダメなのが
少々困りごとではあるが、
まあここまで努力していてだ。


更に加えて、
この棚に入りきらない程の量を
頭に叩き込み続けている。


その膨大な量を見て、
流石のコルンも呆れて物が言えない。
これを隠し通せていると勘違いする彼女も彼女。



「ほんと、努力家とは聞いていましたが、此処までですか。」



これでは叱るに𠮟れない。



やることをやったうえで、
彼女は更に勉強をしている。



メル達と、一緒に旅をすればするほど、
この部屋は小さくなるだろう。




「部屋の広さも変えることを視野にした方がよさそうですね。」



それか、彼女専用の書庫を作ってあげるのも手だ。
それはそれで、リキール様に声を掛けねばならない。
まぁそこら辺は此方で良い様にすればいい。

最近努力しているし、ちゃんと本も読み続けている。
書庫をプレゼントするのも考えていたことだし、それがいい。





そう思ったコルンの行動は早かった。