いいからさ認めてくんない?
「ほら、アルト、口についてますよ。」
「〜〜〜!!!!!」
「いや、此方を見られても。」
それから、アルトが奇跡的に目覚めたことで、
フェルはその場で大泣きし、
もうしないと決めたが、アルトが自分の蒔いた種を
引き千切ってきただけだからと宥めて終わった。
その一か月足らず。
「なんでお前がここにおるんか!!!!」
「いや、家庭教師に」
「そういう手筈だったけれども!?!?!?」
私もう大学レベル出来るから!!
そういってノートを飛ばしてきたアルトに
さらっと指を使わずして何気ない顔でおやと答える。
空には教材が飛んでは止めて消しての繰り返しである。
「確かに、見るからに完璧ですね。
何処で学びました?過去です?過去ですよね?」
「むきゃーーー!!ねぇこいつ出禁にできません!?!?!?」
「何です?僕のこと会えないと辛くならないんです?」
「あああああうぜええええ!!!!」
第8宇宙は騒がしいことになっていた。
「第一、私は元々第1宇宙だったんでしょ?
この現状此処にいる意味なくない?」
「だそうですけど、コルン様どうします?」
「…ま、修行する程の量は無くなりましたし、
別に何処に行ったってかまいませんが。」
「っしゃ!!!」
「話を聞くところ、放置すれば被害があるのは
目に見えているので、もう暫く此方にいなさい。」
なんでええええええええええええええええええ
私強くなったじゃああああああああああああ
そう泣くアルトに、カミカゼはクスクスと笑う。
コルンが言うのも正しく、
確かに目覚めた後のアルトは別人だった。
そりゃあもう、コルンが目を丸くして
カップを落としたのを気付かないくらいには。
驚いたし、なんなら夢かと思って
コルンだけでなく、ウイスやらフェルやら
そこら辺に居た人間全員で彼女と戦ったが、
前に見ていた時より尋常じゃない程の威力を出していた。
寧ろメルからレッドカードを出され、
首輪をつけられたレベルだ。
「確かに強いですが、些か技量不足。
様は戦いの数が圧倒的に少なすぎます。
よってレベルの高い戦いを、数をこなしてください。」
「そんなこと言って、
本当は可愛いから手放したくおっと」
「……口を慎みなさい。」
「わぁそんな怒らなくても〜〜」
そう笑うカミカゼ。
彼もまた、アルトと共にダイブしていた人間の一人だった。
それは途方もない時間を、二人で、
二人とも、隠して生き続けたことを、知っていた。
「時の指輪が増えていないということは、そういうことでしょう?」
「…決められた定めだったと。」
「そういうこと。現にメル達だってそういうことがあった。」
「……記憶の回廊ですか。」
噂には聞いていたが、妙な話だ。
特定の動きをしていた時に、過去に戻り、
鍛錬を積んでこの世界に戻ってくる。
それはまるで、記憶を取り戻すような、
そんな、そんな、有り得ない行為。
だが、現に起きているし、何処に行っても
各界王神が持っていた時の指輪は増えていなかった。
「…まさか加護天使はそれが特殊能力だと?」
「正確には華神が、それも原初の華神がってところ。」
「アルトリア」
「いいじゃん、ネタ晴らしも時には必要でしょ?」
それをいうなら、うさん晴らしでは?
そういったカミカゼにそうともいうとアルトは笑って答えた。
「では質問ですが、」
「はいな」
「メル様はそうなればどうなるのです?」
「アレは実の子ですから。」
「…なるほど、原初に位置すると。」
原初の華神達には、途方もない時間を過ごしていた。
それを継承し、次の世代へとバトンを手渡す。
だが、それを重複していくと、思わぬミスも起きる。
「それを修正するのが、記憶の回廊ってこと。」
「いわば記憶を整理するという意味合いですね。物理的な。」
「なんとまぁ…面倒なことをしますね。」
「古い形だからねぇ。
ま、うちらが蘇生されなければこうなってないんだが。」
「(蘇生、ねぇ?)」
時の指輪には、二つの種類がある。
色のついたものか、そうではないものだ。
今回のいう時の指輪は前者のこと。
時の指輪は、本来、“過去へ赴き歴史を改竄する”という
禁忌を犯した事で並行世界が創られると生まれるもの。
それが、生まれていないということは、
歴史を改竄する行為には入らない。
あくまでも、彼女らの力はその身体にダイブすること。
ようは追体験みたいなものなのだ。
「それにしても、原初の華神達ってどうなったの?消滅した?」
「消滅って…元々華神からの加護天使は消滅対象だろ。
本来であれば、とっくの昔に消滅しているはずだが、」
「…あの、すみません話を割って入るのですが、」
少々気になることが。
そういったコルンに、聞き耳を立てる二人。
「その原初とやらは、続きが?
前にメル様が第五の華神様達を
最果てとやらで話をしていましたが、」
「嗚呼…あれ意味あるよね。」
「原初の華神、息継の華神、
その次が最果ての華神達です。」
「ならば、そこで終わり、
いや終わったはずだったと。」
「ええ、何処かの誰かさんが言わなければ。」
そう、そうなのだ。
この物語は終わっている話が戻ってきたもの。
現に天使は加護天使をベースに作り出されれており、
無論遠の昔に消滅したもので、
華神諸共この広い宇宙話を聞いたことがない。
「けど、あの感じ、続くんだよね。」
「…ええ、全王様の許可も頂けております。
正直な話、少々本気で本腰入れないと困るかと。」
「あは〜〜〜じゃあ第1は絶対後で行かないとね。」
書庫大変なことになってるだろうなぁ。
でしょうね、あそこ言わないと絶対いけませんし。
そう茶をすすりながら話をする二人。
「ですが、この世界は最早破壊神と界王神が管轄をするもの。
貴方方が手を出すものはないのでは?」
「そうは思ったけどね、そうもいかないんだ。」
「ん?というと?」
「華樹神は本来、華神があってこそ成り立つ。
逆に言えば、華神が居ないと華樹神はいきれない。」
「逆では?」
「栄養素と考えればいいです。
ほら、栄養の無い土地に花など咲かないでしょう?」
ましてや、花が咲く場所だって限られるはず。
「たまたまこの現状が、昔にほどほど近い状態だから。
ま、仕事量もある程度分散出来て界王達も喜んでいますし。」
「…仕事を奪うという意味合いでは気分を害さないのですか?」
「そりゃあ勿論害するどころか反省会千年分出来ますよ。」
ならば何故、
「そうですねぇ……あのお方が、それをとめるので。」
「…メル様、ということですか?」
「ええ」
「あの子が言うなら、皆腰上げるよね。」
「軽く12宇宙追加で創り出したりしてね。」
「……在り得そうで怖いのでやめて頂けます?」
まぁ、なったらそれまでだ。
現状、華神達はほぼ未完成状態。
加護天使も、見つからない以上、話が進まないのだ。
「あっそれこそ、アンダルシアは?」
「ええ?あの方ですか?
僕はそこまで得意ではないんですが…」
「アンダルシア?誰ですかそれは」
「第8宇宙の華神です。
原初の中でも一番強い方。」
「……それ、蘇生するおつもりで?」
「いやもう生まれてるはず」
「生まれているはず?!?!?」
一体どういうことだというコルンに
おって説明するとアルトは両手を見せて言う。
「華神は願いが叶うと加護天使になります。」
「えっ、ええ、それは聞いていますが、」
「加護天使になった次、基本消滅しますが、」
「が?例外があると?」
「ええ、例外として幾つかありますが、
まぁ今回はそのうちの一つ、華樹神の変更です。」
「…まさか全ての加護天使が蘇生されるとでも?」
いや、流石にそれはない。
そういったのはカミカゼの方だった。
「選ばれた原初の華神だった者達が戻ってくるだろう。
本来であれば、最果ての者達が加護天使になるはずだが、
その状態が0になった以上、選ばれるとしたら其処だろうし。」
「…つまり、経験者を呼び戻すと。」
「そういうこと。華神が生まれるという時点で、
ほぼ加護天使は生まれる。
まぁ事前に生まれるはずだが、
フェル達が生き返った
その前辺りから生まれてるはずなのよ。」
まぁ大体数千年程と言っていたので、
恐らくその時間だと、色々計算すれば
メルが11回目の時間を終わらせた辺りだろうか。
それか、12回目の途中か、
いずれにせよ近い話ではあったのか。
「そんで生まれる場所は決まり切っている。」
「ほぉ?」
「彼らが華神だった場所の惑星に涌くのよ。」
「そんな虫みたいに言わずとも……」
萎えるコルンに、まぁ聞けとアルトは続ける。
「ちゃんと理由があるのよ?
願いを捧げた場所で、叶え、
そして帰る場所がないなら、
ちゃんと叶えた場所に
転生させてあげようという粋な計らい。」
「加えて外部から余程の攻撃を受けない
安心安全区域ってところです。」
「…それを知って、過去でその影響を?」
「いや、流石にそれはむり!!」
私の頭がそんな超天才だと思います?!?!
…威張るほどのことではないでしょう。
そうため息交じりに、紅茶を飲む。
一応味は良いのだ。味は。
「ま、簡易ではありますが、星の保護をはずしましたし。」
「…待って下さい、何時ですか?」
「つい此間です。それこそアルトリアが帰ってきたころ。」
「ひと月前ですか!?!?」
「フェルの住んでいた惑星な上に、あんなことあったんだもの。」
あれからというもの、フェルは萎れた花のようにしょげている。
少々元気づけたいが、流石にすぐなんて無理な話。
ひと月は時間を置いた方がいいというアルトの判断である。
まぁそれは妥当だとはコルンも思った。
「ですが、そう保護をはずしていいのですか?
時間を止めていたとかの話では」
「いや流石に私でも無理だったから、バリア的なのはっただけ。」
「ただ、アレ軽いって言いますけどね?
リキール様ですら見つけられなかったんですよ?」
なんなら、コルンでも割と苦労した方だ。
カモフラージュされた星を割っても
何をしても現れない。
それは、幻の惑星達と名付けてもいいレベル。
そこを破壊しようとするものならば、
ナ二かの思念で遮られる。
例えば、急にお腹が空くとか、
違う用事を思い出したとか。
何かしらの現象が起きて、破壊出来ないのだ。
徳があるだけましだと思えばいいに越したことはないが。
「それを軽いバリアと、私はてっきりかなりの
手慣れた神がやっていたと思っていましたが…」
「あれ、予想外だった?」
「ええ、というかこの宇宙は24とか言ってましたよね?
まるでさも元々24あったと言っている感じでしたが、
元々20だったはずでは?」
「それは貴方が、大神官様が生きていた時代の、話です。」
「その前は元々24あった。まぁ正確にはもっとあったらしいけど。」
流石に管轄が難しいというのと、全王様の不敬で消え去った星々だ。
24より前は覚えていないが、
アルト達原初の華神達が生きていた時は
既に24もの宇宙が存在していたらしい。
「では、昔はもっと他の華神様達もいたのですか?」
「いたっっ、ちゃ、いた…けど」
「ん?なんです?はっきりと仰ればいいでしょう」
「…あの、コルン様、そうは言いますけれども、
今の破壊神や天使のように決まりきったものではないのです。」
というと?
「元々華神は物の様に作りだされては捨てられたからね。」
「…アルト、おいたがすぎますよ。」
「だってそうでしょ。作られ栄養を取られ、使えたら更に上に。
使い過ぎたら捨てるのは人も神も同じものだと思う。」
それが魂であるか、本当の物であるかの違いだろう。
「ま、本当の物を知らない奴らが淘汰されてったって話で、
私の知っているとんでもない強さを持った華神達は全員で12人。」
無論私も含めての計算だ。
流石に私を含めないのは、なんだかね。
力がある以上、引けるのもなんか悪い話なのだ。
「正確には13といったところだけど。」
「えらく歯切れが悪いですね。」
「いや私を含めてカミカゼも入れたらの話だけど、
当時カミカゼは加護天使の身で入ったのでどうしようと。」
「…コルン様の前で悪いですが、
一応散々申し上げました通り、私はあくまでも
元々華神として選出される身であったもの。」
それを貴方という面倒で
陳腐な奴の世話役をつけられたんですよ。
そう私が強い余りにね!!!
そういって突きつける指に、アルトはまぁまぁと手を挙げた。
「現状は第8原初の華神である
アンダルシア様こそがと言いますが、それも昔の話。
加えて今生まれたと比べれば話が少々変わるでしょう。」
「まぁ徐々にランクも上がりますからね。」
「で、どうするの?いく?いかない?」
「寧ろ行っても構わないか、という話です。」
あそこの薬草はとても貴重なのだ。
コルンも割と知識は得ている方だが、
かなりの量をあの星はため込んでいると見た。
加えて外部が入れないのだ。
神とは言えど、気にはなる。
まぁ
「私は流石にパスかな」
「アルト……」
「だってもとはと言えば私が原因だよ?」
星を閉じ込めた私の過ちだ。
それをおいそれと足を運ぶなど、禁忌であろう。
元凶が足を向けるなんて、そんなのしてはいけない。
「…まぁそれは、そうでしょうね。
星の方達からすれば貴方のした行為は
死んでも償いきれないこと。」
「っコルン様!!!」
「ですが、それはあくまでも仮想論の話です。」
コルンは紅茶を置き、話をするに前を向く。
目の前には、アルトがちょこんと座っていた。
「少々はっきりお伝えしないとわかりませんか?
原初の神々も言うほどの者ではないということですが。」
「っ」
「…ま、それすらも、理解しているならば、話は別です。」
ソレ、つまり
「…彼らの、願いすらも、束ねてした、と?」
「ふっ、分かっているではないですか。」
ほれみたことか。
そう言いたそうに、紅茶のお代わりを入れる。
「貴方は最初から分かっていた。
もしも数多もの人間が神に選ばれ、
そして花を咲かせるなら。
花は花でしか選ばれてはいけない。」
それは、多くがそうだからではない。
花というものに意味があるから。
「では、まがい物はどうされるのです?
例えば、植物でも雑草、だとか。」
「っコルン様」
「アルトさん、私は貴方を馬鹿だとは思っていましたが、
とても賢いものだと、ふんでいました。そうでもなければ
このコルン、貴方を弟子にするわけがない。」
凛とした顔持ちで話を続ける。
それに、頷きもせず、じっとただ見つめる。
それは、まるで、あの時のように。
敵を見つけた、あの場所のように。
「…貴方は気付いた。
花より遠くのものが、犠牲になる可能性があると。
それが、もし、大事な人たちだったら?」
もし、自分のせいで、壊れてしまえば?
「だから貴方は行動に移した。
幸いなことに、貴方はガラクタだったから。
花ではない、雑草でもない、木に。
一番遠くかけ離れた神の生贄に相応しかった。」
それに気付いて、行動に移すものは、馬鹿と言うべきでしょう。
ですが、見境なしに、という意味の話。
「誰かが犠牲になり、泣き出すならば。
己が犠牲になり、身を粉にしてでも尽くそう。
そう…それが、貴方の、真の願いとしても?」
「……っふ、ふふふ」
クスクスと笑いだしたアルトに、コルンは違います?と聞く。
一口飲んでいる間に、そうですよと返しがきた。
目を開くと、そこには先程まで見ていた彼女はいなかった。
ただ、綺麗な、オレンジ色の髪色をした女性が胸に手を当てていたのだ。
「私は確かに、植物ではありますが、選ばれなかった。」
「………っ」
「でも同時に選ばれた。それが、何よりも嬉しかった。
嗚呼、これで誰もが悲しまずに済む、私が、私だけが。」
呪われ、嫌われ、嘲笑えられればいい。
そう紫色の色が変わり、黄緑色の光が照らされる。
「最初気付いた時はもう絶望しそうになりましたが、
すぐに軌道修正したおかげでなんとか生き延びました。
まぁ正直死にたくて死にたくて消滅の手を何度も考えたので
軌道修正なんぞしなかったらよかったとどれ程考えたことか。」
「…あの、ある、と、です、よね?」
「ええ、アルトですよ。」
私は、アルト。
「アルトリアです」
ルトラールの母親ではない、正体は、隠されていた真実。
「初めまして、第8の天使よ。」
私は
「原初の華神、切望の華神アルトリアです。」
以後、お見知りおきを。