我慢の限界もういいでしょ!
翌朝
ふぁあと声を出しながら降りてきたメルに
おはようございますと声を掛ける。
「これ、転んでしまいますよ」
『ふみゅい』
「っと、言わんこっちゃない。」
階段から落ちそうになったのを
瞬でコルンがメルの動きを止め、
浮遊させ廊下の先におろした。
そういえばここ数百年以上は
軽く二階建ての家に行っていないのではないだろうか。
いや、流石にそんなはずはないが、
と考えている間、
おはようと声が聞こえたので振り返る。
「おはようございます、アルトさん。」
「あれ、メルどうしたの?」
「いえ、寝ぼけたまま降りてこけそうだったので
今しがた、助けてあげていたところです。」
ふにゅうとふにゃけた声を出しながらふらつく彼女に
危ないというが、廊下の壁に当たってそのまま寝そうな雰囲気。
それを見かねたアルトが、コルン様と声を掛けた。
コルンもまた考えていたところだった。
「ありゃりゃ、もらっても?」
「いえ、まぁ別に構いませんが、」
「ほらほら、メルちゃんこっちですよ〜〜〜」
「いや、そんな挑発に乗るはずが」
『んんぁあああ〜〜〜〜〜』
「…………」
ち、知能が、あ、余りにも低すぎる、
いや、元々努力して何とか上げているのか?
そうコルンの中で巡る思考を、アンダルシアが瞬で止める。
「めしだぞお前ら……」
+++++++++++++
「お前達、此処にはなんできたんだ?」
『ま、視察ってところですよ。』
「それは表向きだろ」
『…調理器具をですね』
「ああ〜〜〜〜アレか。
まぁ何処の星に言っても
此処レベルのは出来ないからね。」
「知ってるの?」
そう朝食を食べ終えた後、
休憩にとジュースを飲んでいた時だ。
朝食は〜アップルパイとか言っていたアルトに
そんな豪勢なものはだせんと言われて泣いていた。
朝食は普通に目玉焼きと地下で育成していた
自家製パンを焼いて出てきたのでも
まぁかなりありがたいし、普通にうまかった。
あと目玉焼きが、いや、心なしか
ダチョウレベルだった気がするのだが
気のせいだろうか。気のせいとしたい。
そうだと言いたい。
流石に直径30センチはダメだよ。
「嗚呼、北の鉱山から採れるもので作る奴だ。
鉱石なら一応地下に保管しているので出来るが、
繊維と一部のものは枯渇していてね。」
「ならばとってきましょうか」
「そうしてもらえると助かる。」
ああそうだ、とアンダルシアが声を掛けた。
「それにしても、メルがいるならわかるけど。」
私とコルン様でしか出来ないってなんだろうね。
そう振り返る彼女に、そうですねとコルンは答えた。
「まぁ彼女の言い分はわかりますよ。
貴方未だに目的地へ到達した覚えはあります?」
「あっある…あるよ?」
「…はぁ、そういうところですよ。全く、」
ーえ?材料集め?
ー嗚呼、此処に書いている一覧を全部持って帰ってきて欲しい。
そう言われて、コルンに手渡された用紙には
いくつもの材料が書かれていた。
ーこんなにもですか
ーまぁついでのお使いが幾つかあるが、
その中でも丸を付けているものを取ってきて欲しいんだ。
ーわかりました。
かさりと音を立てて用紙を見つめる。
内容を見ても、数十は軽くあり、
必要材料だけでも普通に多い。
加えて殆どが鉱石な為、
荷物要員兼保護者という形で
コルンを付けてきたのが正しいのだろうが。
まぁそれは全員一致で許可が下りた。
どうやらアルトの迷い癖は古く昔に生きていた
あの最強とも謳われたアンダルシア様ですら
強く同意をしたのだから。
「それに、フェル様は久しぶりの同族で
指導を頂けている貴重な機会ですし、
メル様も原初の華神様のご教授に忙しい身。」
我々だけで充分と言うことでしょう。
そういって歩くコルンに、
そうだけと、とアルトは言う。
「それとも、私とは嫌ですか?」
「嫌、そういう、わけでは……」
「…ま、嫌われてもおかしくない。」
逆に聞きます。
そういったコルンに、
アルトは立ち止まる。
「貴方は私が憎くないんですか?」
「…それは」
「私が傷付くから、と言って
嘘をつくのはおやめなさい。」
正直に聞きたいのです。
「…そりゃ、破壊神がした行為は酷いよ。」
願いを華を、踏みつぶす行為と同等である。
それを中立だからと言って、放置しすぎた天使にも。
それをじっと見つめて聞き続ける。
「私はアンダルシア様だったら、
もっと怒っていたし、制御出来なかった。
メルとの間に入ったのだって、一種の賭けだった。」
本当はあの時、死んでいてもおかしくなかった。
「でも…それでも、清々しい気持ちだった。」
「清々しい、ですか?」
「うん。私沢山失敗してたから、
カミカゼもそのせいで迷惑かけちゃってたし。」
「ああ、言っていましたね。」
「でも、私なりに努力して前を歩いたから、
それに対しての後悔は何一つない。」
ああでも、後悔がもし、もしもあるというならば。
「私、あの破壊神達とも、もっともっと、
話してみたかったなぁ。」
「っ…貴方と言う子は」
「馬鹿でしょ、私もそう思う。」
そういってでもね、と此方を振り返る。
オレンジ色の髪色に、姿を変えながら。
彼女は、素を表してくれるのだ。
誰にも見せないと言った、その姿を。
華神が、華神であるべき、その本来を。
「いつか皆が笑って暮らせたらと、それが出来たならと。」
私はそう、おもうんだ。
「…お優しすぎます」
「そうかな」
「ええ、そうに決まっています」
「そうかなぁ」
「ええ、誰もがそう言います」
「そうじゃないかもよ?」
「誰が否定するのです」
「私が否定する」
「…アルト」
「私は優しくない。」
優しいというならば、
私はあの時、カミカゼの手を切ってでも止めた。
感情を暴走させ、その願いに犠牲を払い、淘汰させた。
そしたら、誰もが傷付かないで済むから。
そう知っていても、無駄だとしても、あがいた。
これは、私の種であり、末路なのだ。
だから
「みんなが謝る必要なんてないし、怒ることもない。」
「…人を、責めないのですか。」
「責める道理なんてない」
「あるではないですか、貴方を蔑ろに」
「それはそう思っただけ。本当は?」
ほんとうは、みえているの?
「それも見えない状態で、よしとは私、したくないの。」
「……っ、ほんと、貴方と言う方は、強いですね。」
「ふふ、コルン様の方が強いよ?」
「言いますね」
「へへ!!!」
そうだと思うから、そういうのだ。
「ところで、もう一度メモ用紙見てもいい?」
「構いませんが、心当たりがあるのですか?」
「いいや、でもある程度の予測は付けときたくて。」
「わかりました。落とさないように」
「いやいや、するわけないって、」
そう言われつつ用紙を見てみる。
彼女の字はとても綺麗で、
此処の言語とは違う、神の言語で書かれていた。
今回必要なのは主にいうと5つ。
灯輝石
虹輝石
ジウライ結晶
リプニウム
アスモデルの花
この5つを取ってこいというのが、主な目標
その他は取れればまぁ楽勝と言った所らしい。
一応一応と言って、アンダルシアがコルンに直接
この惑星で触ってはいけない危険物の資料を渡している。
一応目を通してから出発はしているので、
まぁアルトが危険行動をしないとは断言できないが
指摘できるようにはしてきているのだ。
「それにしても、結構な量使いますよね。」
「ええ、調理器具と言ってもかなりの質が高いそうです。」
なんでも、大神官様達が使用している
調理器具も似たようなものらしいですよ。
へぇ〜〜〜
そう指を立てて想像を掻き立たせる。
「魔女の窯とか、割とそういうので出来てたり…」
「…アルト」
「はぁい」
彼女達は未だ不透明な存在。
確立されていない状態で、変なことを言って
そのまま、何処か遠くに行かれては困る。
「あまり粗相をしないように」
「分かってますよぉ〜〜」
お師匠が、そういうので。
そういってこちらをのぞき込んでくるものだから
もうため息を吐くしかできない。
全く、自分の師匠といい、彼女といい、
本来自分は結構言いたいことは
はっきりと言う天使ではあるのだが、
こうもはっきりお伝えしたい内容が多すぎると
言いたいことも言えなくなって不完全燃焼してしまう。
「ああため息つくと幸せ逃げるんだよ」
「誰のせいだとお思いですか、誰のせいだと」
「っふふ!私〜〜〜!!」
「はいはい、ならその用紙を」
そう手渡そうとした瞬間だった
ボッと燃えた用紙に、二人して手が止まった。
「「…………ん????????」」
いま、え、き、えた?
そう片言のアルトに、コルンは気配を察知し嗚呼と納得する。
「どうやら此処の植物が悪さをしたようですね。」
半径1mに入ると、用紙系は全て殺処分とのこと。
なお、処分した量によっては白用紙で戻ってくるとか。
なにそのエコ環境に特化したみたいな処分は。
「ま、一応覚えておりますし、構いません。」
「ひぇ…ご、ごめんなさい」
「構いませんと仰いましたよね?
こういうこともあろうかと、
念のためとして、予備もあります。」
それに、記憶に留める程の量でもあるのだ。
何も気にしなくて良いと断言したコルンに
頼もしいと手を合わせて神頼みのアルト。
「全く、一天使が、いえ元加護天使と言うべきですか。
貴方と言う子は、就いていた華神も嘆かわしいですよ。」
「…うん、でも、とっても、とっっっても、いい子だったんですよ?」
そう歩きながら笑って話を咲かせるアルト。
彼は自分のことを知らないだろうとまでサラッというのだ。
気付かれなくて、いいのですかと聞いたコルンは
野暮だったと気付いた時が遅くて。
「ううん、それが、それで、いいんだよ。」
「…アルト、」
「いいの、いいんだよ。」
寂しそうに、そう後ろに手を置いて言うのだ。
もし、もしも、
「記憶を有していれば、貴方はどうするのですか」
「どうって…どう、だろう?ん〜〜」
「その記憶を消し去る、とはしないのですか?」
「まぁ、加護天使ではなくとも、天使でも可能でしょうが、
それをしたところで、彼ら彼女らには通用しません。」
「思い出すと?」
「ええ、きっと。」
いつかきっと
「その想いを胸に抱いたその瞬間に。」
「…だから、此方からは手を出さないと。」
「そういうこと。それにね、あの子は完璧だったんです。」
貴方みたいに。
そういって笑うアルトに、ええとコルンは答える。
「加護天使は完璧であればあるほど、
過去を忘れ、今を見つめる中立存在ですよね?」
「そうですよ、と言っても、例外はありますが。」
「例えば?」
「わたし、みたいな。」
「…話を戻しますか。」
ええ酷いというアルトに、コルンはですがと聞き返した。
「貴方つい先日飛んだばかりでしょう?また飛ばないと確証は?」
「ないけど…」
「なら話をしないのが順当なことでは。」
「まぁ、でもこうなるものだから、仕方がないでしょう?」
「んんん、まぁそう言われたらそうなりますがね。」
中身のない話を永遠としても無駄だ。
「あの子は貴方の様に、完璧だから。
だから私は何年も何億年もあの子の隣に居続けれた。」
「…それは、その子が、貴方の様にならないと断言出来たからですか?」
それとも
「貴方が手を出す程、脅威ですらないと。」
「…ま、そうでもあるかな?」
「…本当に、末恐ろしい方ですね。」
「ひいた?ねぇねぇひきました???」
「ええええ、とっても引きましたよ。」
あああ絶対引いてない!いいえ引いてますよ。
そう押し問答を繰り返す二人。
「ところで、その姿を誰かに見られるとまずいのでは?」
「まぁ、別に今の状況下では大差ないってのが建前」
「本音は?」
「……貴方しか、此処に生き物いないでしょ?」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「貴方と言う方は、本当に一体何処でそういうことを」
「ああ!!ついたよ!ねぇねぇねぇねぇねぇねぇ!!!!」
「だまらっしゃい!!分かりましたから!!!」
そう悶えていたコルンの苦労をつゆ知らず。
アルトはコルンの腕を引っ張る。
服の方を引っ張るので、引っ張るなと声を掛けるも
全く言うことを聞きゃしない。
「此処が、洞窟ですか。」
「わあ広い!!」
白やら赤やら青やら緑やら
各々の鉱石が光輝いている。
その中でも、緑と白、そして青の三色が今回の目的である。
他の品は別にとってもいいが、まぁ適量と言ったところだろう。
「採掘を開始しますか。ではどうぞ。」
「ってなにこれ」
「なにって、ピッケルですが。」
「掘れと」
「ええ」
「素手では」
「掘れるわけがないでしょう。」
力を使って飛ばすと面倒と言っていましたよね?
何それきいてない。
貴方と言う子は全く本当に。
「だから私がついてきたというのですよ。
全く、天使というものが」
そう説教が始まったころを見計らい、アルトは姿を消した。
「全く、コルン様も頑固だよね。」
はぐれるなとは言われているが、これほど広くとも見える範囲。
それならはぐれもしないだろうと思い、
アルトはしゃがんで緑色の鉱石をトントンとピッケルで叩いた。
ポロリと落ちた鉱石を手に取っては鞄に入れていく。
一応四次元鞄を貰っているが、流石に量が限られている。
そういうのもあり、ある程度取れたらコルンと合流
そして量を測ってから、ひと段落すれば休憩を挟みつつ帰宅する手筈。
「にしてもいっぱいあるなぁ」
この中の幾つかを使って、新しいもの作れるのでは。
そうは思ったが、必要以上は流石に怒られる。
まぁもっとも、それをさせてくれる程、
コルンは甘くないのだが。
「ふふ、メル達も頑張ってるだろうし私も頑張らないと!」
手に少し力を入れて、右手で破壊し、左手で回収及び鞄に収納し続ける。
周囲を取り過ぎれば、別の所に移動してはまた同じ繰り返し。
綺麗に取り過ぎると、鉱石が生えてこないのだ。
種の芽を取る行為に似たようなもので。
「にしてもあるねぇ」
「とれますか?」
「ええ、量ってどれくらいです?」
「一応私も採掘をしますので、ここら一体を
ある程度採掘していただければ。」
「わかりました。」
「怪我のないように」
「わかってますって」
そう笑ってまた採掘に戻る。
正直コルンが採掘というのも意外過ぎることで。
彼はどちらかと言うと
人を使ってことを進めるイメージが強かったが、
案外動くのが好きなのか、人任せにするのが嫌なのか、
「(私が心配だからって言われたら、
いや、きっと喜んじゃ駄目だよね。)」
きっと彼のことだ。
そんなことを考えるから貴方は未熟なのです。
等と説教が始まるきっかけにならない。
「(でも、もし、もしも、それが叶うなら)」
そうであってほしいなぁ。
とは、ほんの少しだけ思ったのだ。
これを、人は期待と言うのだろうか。
それともまた別のもの?
「(…期待、なんて、とうの昔に捨てたハズなのに)」
先程言っていたように、本当に戻ってくるものだ。
同じように繰り返し続けるこの奇妙な関係。
私達華神と加護天使は、一心同体。
破壊神と界王神の魂が二人で一つのように、
華神は加護天使にそしてまた、華神へとサイクルが戻る。
のが、本来の華神の仕組みではあるのだろう。
まぁもっとも、それが出来る程の上の力が、
あればに、越したことはないのだが。
「やるか」
そう意気込み、それ以上考えることは、やめた。
+++++++++++++
「随分取りましたね。」
「なんとか」
あれから小一時間、いや二時間が経過した所で止めが入った。
アルトはコルンと外に出て、軽く休憩を取っていた所だ。
「これくらいでしたら、おつりが少々来たところですね。」
「じゃあ後は戻りながら収穫していく感じですかね。」
「ええ」
「よし、ならもう少し休憩して出発しても?」
「構いませんが、疲れたのですか?」
そういうわけではないが、どうにもこうにも体力がないように感じる。
「なんかだるいというか、いや弱音ですよね」
「いいえ」
「え?」
「あれ程の場所で、力を抜いての作業をしたのです。
ある意味修行と同等いえ、それ以上のことをしたとあれば話は別。」
疲れるということは、それに適応していないということ。
「もう少しゆっくりしてから出発でも私は構いませんよ。」
「……コルン様」
「なんで、、すっ、と」
急に足蹴りを喰らいそうになり、瞬で避けたコルンに
何をするんですかと怒られあれぇとアルトが声を上げた。
「ううん、やっぱちがう、、???」
「っと、ちょ、アルトさん!!?」
下から上へと攻撃を入れ、
左右からも逃げさせないように動きを変えてくる。
数回それを行って、うんよしとアルトがいう。
「コルン様だうんうん」
「ぎゃ、逆に私ではないと思ったのですか???」
「ええ、こんな優しいこと普段言わないでしょ。」
ここら辺に幻覚系の花が生えてませんでしたっけ。
いやまぁ確かになくはないですが
「その類とおもいまして、つい」
「ついにしては本気でけり上げましたよね???」
「あはは、コルン様なら一発目と二発目は
難なく軽々避けると思いまして。」
「…避けなければ?」
「ああ」
その心臓を骨の髄まで砕きながら尋問しようと。
そう目を見開いたまま、
流れるように身体を捻じ曲げて話をするものだから
コルンですら、ゾクリと背筋が凍る思いをした。
「ま、結果コルン様本人ですし。」
「…幻覚でなければ、構わないと。」
「へ?」
近付いて覗き込むように身体を曲げて話すコルンに
そういえば、組手は確かにするが、此処まで何もない時に
近付いて話なんてしなかったな、とアルトは思った。
「ふむ、」
「え、あ、な、なん、です?」
「いえ、貴方方の様な種族はましてや神々は間近で見ないと思いまして。」
サイヤ人とやらの様な怒りで力を発揮し、
髪色や目の色が変化する者はいましたが、
「似たような部類ですか?」
「そう言われてみれば…星々で確か種族も違います。
単にそういう仕組み、という決まり事に近いと。」
「なるほど、ではいずれ貴方もそうなると?」
それは、華神に、ということだろうか。
「…まあ、上によりますが、そうなるでしょうね。」
「怖くないのですか?」
「怖いですが、昔よりかは、ずっとずっと、ましですよ。」
カミカゼが自分を呪って、罰を受けた後のことを思い出す。
夢の様な時間で、でも夢ではなくて。
選ばれてしまったことへの罪悪感と、
選ばれて誰もが犠牲にならないことへの幸福感が
その身体を駆け巡った不安を、思い出す。
「アレよりは、随分、楽になりました。」
アレを、あの子は何度も何度も繰り返した。
そうおもえば、こんな痛み、ちっぽけでもなんとでもない。
「私達は、何度だって戻っては繰り返す。
例え種族を世界を越えようとも。」
「…なら、ちゃんとしっかり、
前を向いてもらわねばなりませんね。」
せめて
「迷子にならない程度には、ね。」
「〜〜〜っ」
「参りますよ」
そっと近づいて囁いてきた彼の言葉を思い出しながら
もうと言って後ろではなく、隣に立って話をする。
そのことに、コルンが少し笑みを浮かべたことを
アルトは知る由もなかったのだった。