ずるいよいっこもくれないくせに




「ただいま」
「おおおかえり」
「…こちらは終わりましたが、」

そちらも終わったようですね。いろいろないみで。
あはは、ちょっとね。

そう帰宅したコルンとアルトの目の前には、
アンダルシアがフェルをしごきあげた後があった。
くたくたになって泣いているフェルの近くでは

「よぉ、遅かったな」
「っリキール様!よくご無事で」
「ま、3回くらいは死にかけたがな。」

アルト達が向かったあと、えらく帰りが遅いというのもあり
リキールが独断で視察に来ていたのだ。
フェルの気配を頼りに来てみれば、その風貌を知っていたのか
名も知らない奴の名前をいって飛びかかってきた彼女の力に驚いた。

なんなら何度か腹をえぐってきたが、
すぐにメルとフェルが交代で回復を行い、
それに続いてかアンダルシアが攻撃を入れる。

途中からリキール&メルVSアンダルシアの戦いが出来ていた。

「まさか此処までの低能がこの星を管理しているとは、
世も末、いや宇宙も末松だな。」
「…耳が痛い話です。」
「鍛え直してやってもいいぞ。」
「構いません」
「おい!!!!」
「リキール様、恐れながら彼女は私の力を遥かに超えたお方です。
正直彼女が華神でなく、かつリキール様のころに見つけていれば、
私は確実にこの方を破壊神へとお誘いしていました。」
「それ程か」
「ちなみに、先程は軽く運動アップ
直後の動きだから、
まぁ多く見積もっても1かな!」

さらっととんでもない話をする彼女に、
げぇと顔が変形するリキール。

「ちなみに、メル様と対峙したときは?」
「……6?」
「いや馬鹿、貴方がそんな力不足ないでしょ。
多く見積もっても5。
大体3くらいの規模でしょうが。」
「おいおいおいおい、俺結構途中本気出したんだが。」
「なんならメル様は本領発揮しておらんぞ。」
「いい!?!??」

こら、と告げ口するメルに、いっとらんのかと
アンダルシアが目を丸めて驚いた。

「こいつはまだ本来の形に至っておらん。
よって、この子はまだ未完の状態。
本当のエフェメラル様として形を成した、
本来の力がどれ程か、お前ら分からんのか。」
「まぁ、軽く数個の宇宙は消し飛ぶよね。」
『えぇ…私ずっと未熟でいいですかね?』
「よい訳なかろう。さっさと就任せい。」

やぁん。

「ったく、すまんな二人ともご苦労だった。」
「いえいえ、これしきのこと。」
「お使い楽しかったよ、しあちゃん!」
「しっ」
「これ、昔の名を呼ばすでない。
折角名前を憶えて感動しておったというのに。」
「…昔は?」
「シアちゃんと呼ばれておった。アンちゃんはそのあと。」

なるほど、二文字ずつ覚える作戦か。
まぁ私もするなとメルは思いながらも、座っていた身体をおこした。

「まあ和解したし、いいか。」
「いいのか????」
「私が良いと言っても、他の奴らはどうかの」

というと?

「ライラとエンヴィ辺りは多分大反対かとね。」
「ライラって、あの?エンヴィも?」
「誰それ」
「ライラは第12宇宙原初の華神じゃ。
同じく原初の華神エンヴィは第4宇宙。」

やつらは私よりかは劣るが、

「その願い故に、威力と攻撃は違う。」
『…ま、気長にしますよ。』

ゆっくりと

『旅を、続けながら、ね?』
「……旅、ねぇ?」

なら

「決めた、私も連れていけ。」
「いい!?!?」
「なんじゃ、悪いか?」
「いや」
「それはいいけど、このおうちどうするの?」
「定期的に帰れば問題ない。」

それに

「もうそろそろの頃合いじゃろうしな。」
「…?」
「……コルン」
「なんでしょう」
「帰るぞ。」
「かしこまりました。」

ナニカを察知したリキールがコルンを呼ぶ。
もう少々フェルは此方に住むらしく、
まぁアンダルシアの強さ的には安泰であるので
このまま退散という形に落ちるらしい。

「メル様とアルトはどうされますか?」
「私はもう少しいるけど、メルは?」
『私も。アンダルシア様』
「なんじゃ」
『調理器具を作る途中に、薬草の秘薬を幾つかご教授を。』
「……嗚呼、アレのことか。いいぞ、お主なら構わん。」
『ありがとうございます!!』
「なら、私から連絡しておきますよ。」

第3は何時でも可能だそうなので。
そう言われて、はっとカメラの話を思い出した。
いけないいけない、居てもそうだな一週間か。

いやできるか???
そう思っているとではと提案が入る

「三か月ほど滞在は?」
「それならうちで面倒みきれる。
まぁ調理器具の量によっては
それ以上の時間がかかるが、」
「その手筈で。」

コルンの頷きに、アンダルシアも了承したのか、家に帰る。
今度こそ、コルンとリキールは惑星に帰ることに。



「…」
『どうしたの?』
「……いや、なんでもない。」

びゅんと飛んだあとを、じっと見つめていたアルトだったが、
そっと聞かれたメルの言葉で、見ないふりをした。

この感情を、私は気付いてはいけないと。
そう、言い聞かせながら。

+++++++++++++


「そういやお主達、力の操作は?」

そう聞かれたのは、風呂に入った後だった。
髪の毛を乾かしているフェルとアルトの声を聴きながら
メルはアンダルシアから声を掛けられていた。



『えっと、それは華神の?それとも、フェル達としての?』
「両方と言いたいところじゃが、後者のほうかな?」
『うううん、フェルのご先祖様ならわかると思いますが、
貴方方は主に回復特化の魔術者ですよね?』

つい数日前、対峙したときも、昨日もそうだったが、
闘っている間に、回復を常時かけているようなその力。
それを身に着けていなくもなかったが、如何せん不完全状態。

それでも、メルは身に覚えがあったのだ。

『私ですら彼女の力を扱えなかったですし、攻撃は不得意で。』
「そうじゃな、私も当時は攻撃方面では点でダメじゃったし。」
「ええ!??!?!アンダルシアダメだったの!?!?!」
「おお?気付いておらんかったか???」

かくしていたわけではないのだが、
そういった彼女に、アレでああなるのかと
アルトはあわあわと過去を思い返していた。

当時といっても、アルトが見ているのはすでに強くなった後。
その前を知らないので、ま、仕方がないというところ。

「就任した時以降に子供は産んでおるしな。」
「え」
「その前は普通に魔術も出てこない餓鬼だったぞ??」
「わあ」
「敵の飛んできた球を受け止める処か吹っ飛ばすくらいじゃったし。」
『わぁ。なんとも身に覚えある話ぃ。』
「……そこまで遺伝しなくても、良い気がするんだけどなぁ。」

そう頭を抱えるフェルを、横目に、メルもから笑いする。
リキールがフェルの家の前で倒れていたのを介抱していた時だ。

彼が少々回復した辺りで、特訓の付き合いをしていた途中
さらっと飛ばした気球を受け止める処か吹っ飛ばし、
なんならかき消した時もあった。


「リキール様の身体吹っ飛ばしちゃったときとかね。」
『あれはわらった』

あれは傑作だった。
リキールが傷だらけで飛んで来たのに
風を利用して受け止めればいいものの

その風に追加で草まで
はわして受け止めるかと思ったら
勢いよく攻撃魔法の練習で
つい炎が出て焦がしながら
空に逃がして飛ばしてしまうとは。



割とあれは傑作だと思っている。




「そんなことをしとったのか。」
『そうですよ』
「ほぉ〜〜〜〜遺伝はするもんじゃないな」
『前科あったのかお前からか』
「っくくく、そうだと言ったら?」
『いやフェルの操作を私が出来るわけないでしょうが。』
「っははははは!だろうな!!!」


流石に、記憶の廻廊とはいえど、血には勝てない。


『いや、でもあれは流石にやばいって。』
「さ、最近は改善した…もん。」
「そうですね。まぁコルン様曰く
少なくとも攻撃する時に焦って
背負い投げするのは上手になられた
とかは言ってたよ?」

そう前にコルンが言っていたことを、
アルトは思い出しながらアンダルシアに答える。

それに、フェルが目をぎゅっと閉じながら
いやそうにポンポンと両手でアルトの腕を叩く叩く。

苦笑いで軽く腕を前に出して
すみませんと謝っているが、
普通にニコニコと笑う処、
どうやらわざと言ったと思う。



というか、私はどちらかと言うと
アンダルシアが投げた可能性が気になるのだが。


誰を投げたんだ。誰を。


彼女は一体、誰を背負い投げしたんだ。



あとそいつ、いきてる????


「まぁいい、髪はこれくらいでいいか?」
『ありが…いやいいんです???』

そう乾かして貰っていたのはアルトだけではない
メルもまた、アンダルシアに髪を乾かしてもらっていた。

なんならついでに、軽く結わえてもらっていた。
いつもは後ろに結ぶだけで終えていたが、
朝する予定が面白くてとおさげを作ってくれていたのだ。

「すっきりするじゃろ?」
『いやそうですし私もしますけど寝る前。』
「ある程度の髪の毛なら、この程度した方が楽じゃしなぁ。」
「そういや、薬剤の書類を希望だったろ?部屋に行くか?」
『いく』

そう言い出したメルは止まらない。
二階に上がっていく二人に、アルトは付いていく?
とフェルに聞くが、良いと答えた。

「私達は明日のことも兼ねて寝ましょう。」
「あいあいさー」















「此処が私の部屋兼、資料室じゃ。」
『わあ』

そう入った場所は、二階でも最奥にある場所だ。
バタンとしめた音よりも、その書庫と言われても
おかしくない本の密に圧迫される。

「左側が主に回復。右側が攻撃の魔術薬草じゃ。」
『え、攻撃あったんですか。』
「おぬし此処に入ってないのか?」
『いやぁ、私この土地の文字ほんと苦手で!!!』
「だあああああああっ!!!!!」

ずっこけたアンダルシアに、
じゃあどうして文字がかけたんじゃと怒鳴られる。
いやぁそれも自分としては意外だが、

『清書するだけですし、一応読もうとしたんですよ?
当時のままであれば、フェルの部屋には
私が頑張って書いてた解読文字もありますし。』
「ったく、一通り読めるとおもうて、此処へと入れたが、ほれ。」

のめと言わんばかりに魔薬を出される。
心なしか悲鳴が聞こえるがこれは

「それを飲めば此処の住人と大差ない感じになる。」
『おおいただきま』
「まぁ飲んだ後は下痢するが。」

その直後、外に出て行ったメルに、
けたけた笑われる。


『そ、それをはやくですねぇ……』
「っくくく、腹下しは我々華神のルール、じゃからのお?」

お主も作っておればわかるじゃろう?下痢。
いや確かにっていうかアレが通常なの???
なんなの華神ってそういうところで均衡保つの???

いや酷いよね、どうあがいても使う物全部
下痢に最初なるってどういう仕組みいれたんだよ。

「すまんすまん、お詫びと言ってはなんじゃが、
この部屋にある全てを持って行っても別に構わんが。」
『さらっとやばいこといってません?』
「管理出来るならの話だが、出来る?」
『やる』
「ならいい。コピーする?」
『する』
「此処に来る用のテレポートあるけどいる?」
『いる』

そう二言で答えるメルに、此処にもしコルンがいたならば
恐らくコルンは盛大なため息を吐いたであろう。

真顔でいうものではない。

もう此処に来るには、コルンの手を使っても
全く問題ないと言うのに、彼女は今回だけで
終わらせようとするもんだから。

「ちなみにどんな薬作りたいとかあるか?」
『ん〜炎を創り出したりとかあります?』
「単に気を練ればいいとか言われないか?」
『まぁ言われますが、私個人としては、
攻撃手段として着火出来ないので。
一応防衛措置として作りたいなと思って。』
「ほぉ?」

その言葉に、アンダルシアは声を上げた。
通常であれば、気を使っての着火は至って簡単。
魔術もしかり、要は想像出来れば安易なことなのだ。

だが、彼女は違うのだ。

想像が出来ても、気も考えも全く同じ。
だというのに、攻撃手段として繰り出そうとすれば
どうあがいても、その火を出すことが出来ないそうだ。

ならば、火を出せないなら、
火の耐性を上げると言い出したのだ。
確かに火力が出なければもし万が一が出た場合、
防御に徹することは今後起きるだろうし。

なんなら起きないことの方が不思議な状態。

その作戦として、まず炎を出すというよりも
そもそもの仕組みを理解して、
防壁から得られる知識を紐解きつつ、
攻撃を繰り出すヒントを貰おうという魂胆なのだ。

それにはアンダルシアもおおと唸ったものだ。


『で、どう?』
「まぁ、それなら幾つか作れるぞ。
恐らくだが、燃え盛る花と閉ざされた蔦、
あとはエスクロロクロムコアの欠片を使った奴だろう。」

威力とかその他もろもろ此処にあるから。

そういって探し出すアンダルシアに、メルは流石と声を上げた。

「にしても良く考え付いたな。
普通だと其処をするのが面倒だから
と言って無理矢理火力を伸ばすものを。」
『そうも言ってられない状況ですし。』

貴方のような、ね。
そう本を受け取るメルに、嗚呼とアンダルシアは答えた。

確かに自分のような人間が今後、
10人は出ると思えばそうなるか。


アルトやアンダルシアはすでに、彼女に賛成なのだから。

「そういや、この言語はお主の身近ではあるのか?」
『あるんですよ』
「ほぉ?それを紐解けばいいのでは」
『ドイツ語だからさあ〜〜〜〜〜〜〜〜』

ドイツ語がどれ程簡単でも、
英語と同時は流石に無理があるのだ。
そう棚をダンダン叩くメルに、
いやすまんと宙で止めた
アンダルシアの手が、どこも行けず困っている。

『僕ドイツ語ほんとに苦手なんです!!!!
何で共通語じゃないのですかここも!!!!
あとこのお薬苦い上に下痢するし!!!!!』
「じゃが効果は聞くじゃろ?
一応次の日までには読めるぞ。」
『……後であいうえお順に書き殴りますので
暫くお薬をですね。』
「っくく、分かった。手配しておこう。」

すいません、いやいや。

そう話が進む中、そういえばとメルが話を戻す。

『一応魔術系は特異的な言語に偏りますし、
どうにもこうにも、記憶が引き継がれるとは言えど
同じ言語というわけにもいかないので。』
「まぁ加えて隔たれた環境の星での移動じゃなしな。」

それゆえ、特化されたものはしゃーないのだ。

「まぁ仮に、宇宙共通語で書かれていたとしても
かなり質の良い魔術を皆が使えば、どうなるか
お前も何となくだろうとも、分かるよなぁ???」
『うんしってるけど!!!でも何でドイツ語!!!』

待て、そう顎に手を置いて椅子に座り話す。

『あれ、確かコルンってドイツ西部で
生産される蒸留酒のスピリッツからだったよな。
あれ、ってことはそれ含めたらまさかだが、
此処の言語ドイツ西部系にまとまってる?』

さらっとブツブツ言うところ、彼女の世界に入ったのを知り、
アンダルシアはラジオのように聞き流しながら制作に入る。
メルがご希望なのだ。あの下痢入り翻訳魔剤を。

『確か私が出て来たあの12番目の場所も
アルトの家の下の方がっつりドイツ語だったけど
あれまさかあの土地の薬草結構紐解いたら
不味いこと分かる?』


「……いま、なんと?」

『え?』

「アルトの、居た場所とは、まさか」



そう目を開くアンダルシアに、ええとメルが答えた。



『惑星ハイマットですよ。アンダルシアさん。』
「……そこで、あったのか。」
『ええ、髪色は白と紫色の目でしたが。』
「最初から?」
『ええ、最初から。』
「………そうか。」

なんだなんだ

『なんですか』
「いや、まだ知らなくてよい。」
『まだっても〜でも不思議だったんですよね。彼女』
「え?」
『だって私に華神の服を渡してきたんですよ。』


ーこれ、おばあちゃんが言ってたの。


『いつか来るときに、これを使える人が現れる。
だからその人にこれを全部渡してあげなさいって。』
「〜〜〜〜〜〜〜〜っ」
『アンダルシア様?』

どうされました?
そう俯いた彼女に、メルが覗き込むから、手を出して止めに入る。

「いや、すまん、この薬は目に染みてな。」
『うっわ確かにきついですね、すいません』
「いや、いい。いつもこう、じゃからな。」

そう涙を流すアンダルシアに、メルはそっと避ける。

『幾つか本を借りても?』
「ああ、今日はもう遅い、
私もこの薬を一晩は寝かせなければならんし、
終わればすぐに寝る。」
『わかりました。おやすみなさい。』

ああおやすみ、と手を振って暫くしてアンダルシアはぼろりと涙を流した。


「………っ、馬鹿、ほんとに。」


ーこれは?

ーお前ま〜た私の所に荷物放置してただろ。ほら着替えじゃ着替え。


そう言って彼女の衣服を一着どころか一式作り直したことがあった。
アルトの身体からしたら、少々ぶかぶかにも感じるだろうが、
成長したらきつくなることもあるだろう。

まぁ、止まった成長を、動かすなんて、そんな未来ないのだろうが。


ー移動するときは必ず放さず持ち歩け。

ーわぁ次ね、12宇宙に遊びに行くんでついでに持っていきますね!

ー奴に?なんのようじゃ

ーへへ、ひみつ!!!


「……置いてくれば、後で使うこともできんというのに。」


だが、それでも、彼女は紡いでいったのだ。
最初を、最後へと、バトンを、渡して。


「…ばか」

衣服を着た、最初であり最後の華樹神と、
それを渡した、出来損ないの元華神である元加護天使が。

仲良く旅をし続けたと。

彼と同じように、いろんな場所に、点々と。
歩いて、廻って、沢山を見て。


「……そうして、繰り返すのか。」


私達は、私達も。


「…優しいの、ほんと。」


使えないからではない、使って欲しかった。
力を持つ、心優しい貴方に。

「誰が一番着て欲しい奴に渡せと言ったんじゃ。誰が。」


願わくば、一番愛されるはずだった幼子にと。
アンダルシアはアルトに手渡していたのだ。
またあのお方の分は作ればいいからと。

そう、思っていたのに。

「………馬鹿」


ずるい、ずる過ぎる。


いっこだって、私はお前に与えれないくせに。


私はお前に、何度救われたことか。


いっこだって、くれないくせに。



「何を渡して、おるのだか」