やめてください、
「よし、これにて完成だ」
『ながかった』
それから、大体本当に三か月くらいいて、
ようやくこの調理器具、魔薬草の調理鍋を手に入れた。
後、一通りの薬剤の資料をもだ。
長いことお世話になった、メルは礼を述べる。
それにはアンダルシアもいいと首を横に振った。
「まさか家の改装から端から端まで何からなにまで
手伝ってくれるとは思ってなかったからな。」
『いや、流石に瓶から何から
何までお世話になりましたし。』
貰い物も大量である。
荷物が荷物なので、
コルンに申し訳ないがを散々繰り返して
一度引っ越しレベルの量を持って帰ることにした。
そこで第8は終了となる。
「暫く会わないのか」
『まぁ、次は第3ですし、
あと幾つかの星も見てきます。』
「寂しくなるのぉ?主よ」
『あっばっちょ、あっあるじって貴方!!!』
そう驚くメルに、よいよいと笑う。
「お前は確かに、強い。いい子じゃ。」
『っ』
「だから、その目で見てきて欲しい。」
私が、そればかりをみるように。
「本当の、お前を。この世界を。」
『…わかりました。』
「ま、その間は破壊神を好きにしても?」
「……私からは何も言えません。」
「シアちゃん、ねぇ、程々にね?」
「っくくく、まぁ可愛い孫娘の頼みもあればなぁ?」
「…………えっ、もしかして私、とんでもないスイッチ貰った?????」
そう止まったフェルに、今度こそ周りの笑いが空に飛び出した。
「いやいや、だが暫くは此処にいる。」
「わかりました、何かあれば此方で。」
コルンがそっと宝玉を渡す。
どうやらこれがコルンとの通信になるらしい。
「分かった。何かがあれば、此方も動くとしよう。」
「その時はよろしくお願いいたします。」
『では、すみません皆さん。』
「嗚呼、元気でな。」
「またね!」
そう手を振って、ふわりと上がる。
アルトはと言ったメルに、コルンが答えた。
「彼女は暫く此方で預かる身です。面倒は見ますよ。」
『へぇ〜〜いっしょう?』
「いっ!?!?!?め、っ、メル様?!!?」
『っふふふ、楽しみにしてるね!』
「貴方達と言う方々は…まったく、ご冗談が。」
宇宙旅行、というよりかは、
軽い帰還の中、コルンが頭を抱える。
『でも、とっても楽しかった。』
「…それは、ようございました。」
『ねぇコルン』
「なんですか?」
『…犬の名前に似てるとか言ったら怒る?』
「……本当に何の話です????」
怒るかぁ!怒る以前に困惑しています。
そう話すコルンに、そうだよなぁと笑うメル。
もう話が通じないのはアルトだけで良いと思う。
『ま、別に。ね、私がどうして
第8が嫌いって言ってるか知ってる?』
「…単純に、私達が貴方の心を覗くから、
的を得たことを言うから、では?」
『他は?』
そう見てくる彼女に、憶測で判断はできませんと答える。
『…そ、ならいいか。』
「それを聞いて、どうすると?」
『いいや、ただ、聞きたかっただけ。』
あの時間を、私は望んだ。
『(かつて私は、12を旅した。
それはまるで、時のように、
月日のようにも感じた。)』
一月、二月、三月。
時間ではなく、もしも、月の言葉ならば。
私は、次行く場所が、
余り気乗りしないということでもある。
まぁ、無論、八月も、なのだが。
『私だって苦手な神々がいるのだよ。』
「はぁ」
『貴方達のような、真面目はとくに、ね。』
非常に、似ているから。
あの、暑い、夏の時間に。
おいて行かれた、大きな白い雲のように。
それなら、いっそのこと、
『…魔女になって、消えてしまえれば、楽なのにね。』
「…本当にそうお思いで?」
『…そうならば、貴方は私を消してくれるでしょう?』
真面目な貴方だからこそ。
優しい貴方だからこそ。
私は惹かれたのだ。
あの時間に。
あの場に。
『私の私を、いともたやすく。』
その時を、繰り返しても。
「…ええ、言われずとも。叩きのめしますよ。」
『その時は頼みますよ』
「その時が来ないように、頼みますよ。」
『っはは、それはそうだ!!』
嗚呼、本当に、上書きし続けなければならないなんて。
ほんと、酷い世界に来てしまったものだ。
『(…3月)』
桜が、咲き始めるころ。
それは、始まりであり、終わりの時間。
次の時間は、酷い時間になるだろう。
それでも、私は、生きなければいけない。
会いに行かねばならない。
あの私を、取りこぼし続けた時間を。
今度こそ。
『嗚呼、会いたいなぁ』
「…メル様」
『失礼』
そうぼそりと声が出るのも、仕方がない。
だって次は、私が一番愛した時間なのだ。
始まりの、終わり。
最果てが、詰まった場所。
其処は私が、確かに。
『(いかなきゃね)』
望んだ、完璧なる、時間なのだから。
+++++++++++++
「では此方が最後で」
『ありがとうございました』
「いえ、また遊びに来てください。」
貴方とあらば、歓迎します。
そう微笑むコルンに、ええとメルは笑顔で返した。
「お帰りなさい、メル様、それにありがとう、コルン。」
「お師匠…少々長くお借りしたこと、お詫びします。」
「いやいや、あの引きこもりが、ずっと。
外に出るとは、些か私も感動したので。」
『う゛』
こっそり部屋に入ってったメルに、
ルトラールはクスリと笑った。
「嗚呼ところで、コルン。貴方あの子に、
アンダルシアにお会いになったようですね?」
「ええ」
「強かったでしょう?」
「……ええ、そりゃあ、もう。」
「久しぶりに今度、やります?」
「…手ほどきを。」
そう来たら話は早い。
後で大神官にも伝え、
何処かで休息を貰うことにしよう。
「次は第3ですよね。」
「はい」
「…コルン」
「なんでしょう、ルトラール様」
「貴方は、あの子を神と言えますか?」
「…それは、いまの、ですか?」
それとも
「どちらとも」
「…正直、前の私では許可をしませんでしたね。」
「ありゃ」
「ですが、あの方達と出会い少々会心しました。
人は、人で在るからこそ、その真意が神を優に超すと。」
華神が、加護天使になり、そして巡り巡って、
その時間を、終わらせるために、破壊神達を
天使達を創り上げたというのに。
その華神達を、蔑ろにした。
我々を、許し、今度は一緒に
手を繋いで歩こうと誘うなんて。
そんなこと、出来るわけがないというのに。
それでも彼女は、彼女達はいう。
「人から学ぶものも、あるのだと。」
「…上出来ですね。」
「貴方ほどではありません。」
「ま、破壊神達のレベルが低いのは確かですし。
力の大会、今度やってみますか?」
それも、人ではない
「まさか…人に鑑賞させるのですか?」
神と神の戦いを
「ええ」
「…全員ぶっ倒れますよ。」
「ご安心を、一応その作戦を検討しています。」
ま、
「彼女達が、了承したら、の夢物語です。」
これはまた、後日談。
+++++++++++++
「メル様、もうすぐ此方に向かわれるそうです。」
『あらら』
「ええーもういくのー?」
「いっちゃうのー?」
そう整理をして、全王様に手渡し少し遊んでいた頃だ。
大神官から、第3の天使がもうつくと知らせが来て
全王様の機嫌が少々悪くなる。
『ごめんなさい、一応約束ですし。』
「ええー遊ぼうよぉー」
「そうそうー遊ぼう遊ぼうー」
『そうしたいのはやまやまですが、
今度は面白いものを手に入れてこようと。』
そうにやりと笑うメルに、えっなになに!?と全王様たちがはしゃぐ。
『なんと、映像をそのままカメラにうつし取ってこれるものです!』
「かめら?」
「なにそれぇ」
「カメラ、とはその場所の風景を映像として切り取る機械にございます。」
『それの、映像版。なんならその場所に入れるらしいんだよ〜〜』
ねぇねぇ欲しくない?欲しくない???
ほしい、ほしいほしい!!!
『調理器具は出来ましたし、レシピもたんまりもらいました。』
「ええ、重宝します」
『第3宇宙のお話、またお聞かせしますから。』
だからいい子でね。そう笑うメルに、
じゃあいってらっしゃいと声を掛けられた。
「……本当に、素晴らしいですね貴方と言う方は。」
『そう?』
「ええ、あの全王様を一言で変えるとは」
ああなると、正直大神官でも難しいらしい。
結構な機嫌の悪さを感じ取ったが、
その気をいとも簡単に変えたのは、凄いとのこと。
軽く宇宙全体を救った話に、大げさとは思ったが、
まぁ彼らはこの世の理そのものと言ってもおかしくない存在だ。
ありえなくはないか。
『ま、次は難産ですが』
「…何を生むつもりですか。」
『っふふ、さあ?』
第三、
ーアマレットか。久しく見ていないが、奴も強いぞ。
ーえ
ー恐らく知恵では奴に勝つ者はいない。
『何を、でしょうね、』
ー人は彼女をこう呼ぶ。
魔女を産む、華神
『わかりません』
にやりと笑っていると、前から人が来た。
ぺこりとお辞儀をされて、私もお辞儀をし返す。
「お待たせしました。」
『お世話になります。』
「いえいえ、此方こそ。」
「頼みましたよ、カンパーリさん」
そう目の前に来たのは、
オールバック姿のオレンジ色を基調とした天使、
第三宇宙のカンパーリだった。
お久しぶりです、と大神官にお辞儀をし、
メルの隣に居たルトラールにも礼をする。
「彼女は次なる神のお方。粗相のないように。」
「ええ」
『いやそんなかしこまらなくても、私まだ神様では』
「ですが、仮とは言えども此間儀式を執り行いました。」
貴方は現在、神と言える立場です。
そう膝まづく彼に、慌てるメル。
くつくつと笑うルトラールを、メルが背中を強く叩いた。
「いっ、笑っただけでしょうが」
『ふん!!』
「っくく、では、頼みましたよ。」
「わかりました、ではメルさま此方へ」
『ええ、ルトのお土産もってこないから』
「あらあら」
「っべつにいいですよ?それ相応のことしますし?」
『う゛』
どうせできもしないくせに、まったく。
そう消えたメルをみて、ルトラールは笑う。
「…いいのですか?第三で」
「何がです?」
「…いえ、良ければいいのです。」
彼女は、気付いている。
そう言いたいのですか?と聞いたのはルトラールだった。
「…ええ」
「そうですね、間違いなく、気付いています。」
「なら危険では?」
「中立ならば、立ち入れない。」
そうでしょう、そっと目が細まる彼に、勿論と大神官が答える。
「ですが、あの子は貴方の子と言っても
過言ではない。心配しないのですか?」
「心配しないと言えば嘘になります。
ですが、あの子は強いですから。」
あの状況下で、生き抜いてきた者。
「数多の記憶を、走り続け此処に辿り着いた。」
ほんとはね、沢山いたんですよ。
「数えきれない人が、その中に
堕ちて堕ちて、堕ちていったのに。」
あの子だけは、あの子は特に、輝き続けた。
その暗やみで、ずっと、ずっと、絶えず灯した。
たとえ、その灯が、消えたとしても。
いや、消しても消しても、光り出すのだ。
「あの子は、生き抜いたそれ程の力があるのですから。」
「…なるほど、ならば、あそこにいっても、大丈夫だと。」
「ええ、それに、気付いているなら猶更というもの。」
あの子はきっと、
神を越えた、何かに到達する。
「…私達は、それを、見守るだけ。」
「もう二度と同じ過ちを、繰り返さないために?」
天使が、人に、堕ちた、その時が、終わりだと。
だから、過ちを犯した天使を消滅しているこのシステム。
それは、メル達が言うように、一種の救済措置だったから。
消えて無くなった方が、罪を罰を、償わずに消えられる。
それこそが、本当の、救済なのだと。言い聞かせて。
「ええ」
+++++++++++++
「改めまして、メル様。初めましてですね。」
『ええ』
「第3宇宙の天使を務めさせて頂いてます、カンパーリです。」
『メルです。お願いします。』
先日というか、前はお世話に、ああ
此方こそと前にも似たような会話をする。
これはあと二回はするなとメルは肝に銘じた。
「それにしても、お強かった。
あの時正直我々は確信していましたので。」
『自分達で捕まえられると?』
「ええ、まさか透明になられるとは思いませんでしたし。」
誰も、捕まえられないとは恐れ入りました。
そう言ったカンパーリが浮遊する。
どうやら此処から第3宇宙へと旅立つようだ。
桜の匂いが鼻に突く。
おかしい話だ。
「どうしました?」
『…いや、行ってください。』
此処に桜の木はないというのに。
行くところにすら、存在しないというのに。
『そういえば、カルルリ様達は元気ですか?』
「ああ、華神の皆様ですか?ええ、モスコ様曰く、
非常に面白い方だと仰っておりました。」
『あら』
「それに、彼女達は非常に強い。
他の宇宙に引けを取らないでしょう。」
『まぁ、うん…カルルリ様は
下から数えた方が早いレベルだけどね。』
「っと」
『でも、あの場所で生き抜いた奴らは非常に強い。』
彼らの言う、強いはあくまでも戦闘力だ。
戦闘力を競い合い、上に頂点に立つ。
力が全て、のこの世界。
それは仕方がない、だが。
私達華神は違う。
想いの強さで、戦闘力だって飛び越していく。
その希望が、絶望に変わったとしても。
それを、繰り返し続けた先に待ち受ける、
場所を、望まなくとも。
それでも、私達は強くなってしまうのだ。
変わらず、絶えず。変えられず。
『暫くお世話になります』
「いえいえ、此方こそ。そういえば前回はどちらに?」
『第8へと行っていました。アルトが心配というのもあって。』
「嗚呼、時期天使でしたか。兄上も困ったことでしょう。」
『あっ、ああそうですね』
いかん、さらっと流したが、普通に彼の方が上に見えるが
一応、一応カンパーリはコルンの弟である。
どちらかというと逆なんだが、何なら上が上なの癪に障るが。
そういつか行く奴の事を想像していると、
前からくすくすと笑い声が聞こえた。
「失礼、兄上も手を焼いていたことでしょう。」
『まぁ、でも、強くなりましたよ。彼女は。』
彼女達は。
『少々行きたい場所もあります。』
「最古の惑星、スピリアルですよね?」
『おや、もう情報が?』
「一応兄上、いえコルンさんからの情報です。」
早速か、流石手が早い。
「次の宇宙が決まり次第情報共有との旨も伝えて貰えています。
手が早いですが、次の宇宙はどちらに向かわれる予定で?」
『それがまだ決めかねているんですが、一応候補としては
第10か、第11、あとは第2辺りを考えています。』
「ほぉ?というと、何か考えが?」
そう聞いてきたカンパーリにメルは答える。
『ハシュ、いえ、元華神らの様子が気になるので。』
あと単純に行きたくない候補を一部外したというのもある。
勿論、行きたくないのは言わなかった全てではない。
これはカモフラージュではある。
「なるほど、そういうことでしたら、第10などはどうでしょうか?」
『ま、一応第一候補でしたし、その予定では。というと?』
「時期を見計らって連絡をと思いまして。」
『すみません、お手数をお掛けします。』
「いえいえ、逆算して、一応先にアポを取ります。」
まぁついてから、になりますが。
そう言ったカンパーリに礼を述べるしかない。
『全く、優秀な天使さん達には頭があがりません。』
「っふふ、何を仰りますか。それは此方のセリフというもの。
貴方様の様な方には、我々天使一同頭が上がりません。」
『いやいや、こうして移動しないと
私、迷子でどこ行くかわかりませんよ?』
それこそ、天使の、いや神の笑いものだ。
「いいではないですか、それに、我々は嬉しいのですよ。」
『え?』
「そうして頼ってくれることに。」
本当は、迷子になんて、
「なるわけがないでしょうに。」
『…………たった今第3も嫌いになった』
「おっと、これは失言でしたね?」
はぁほんとこまったものだ。
迷子なんてなるわけがない。
もう、決まりきった場所に、私は生きている。
それを、彼らは分かっていて、
そして、分かっても尚、
私をこうして迎え入れてくれるのだ。
それこそ、頭が上がらないというもの。
『天使に』
「んん?」
『天使に、なれて、私は楽しかったですよ。』
そうフィズの頃を思い出す。
彼はあまり接することがなかったが、
それでも目を合わせたことくらいはあったし、
普通に会話を楽しんだことだってあった。
『貴方にも、あえてね。』
「…嬉しいことを仰られる。何も出せませんよ?」
『出さなくていいですよ。其処に居るだけで。』
私は、もう充分なのだから。
「…つかぬ事をお聞きしても?」
『ええ』
「メル様は元々人間で間違いないですか?」
『…ええ、神の心を持った、人間です。』
まぁ、事情が変わったのは、アレだが。
「では、その片割れは」
『人の心を持った、神の子です。』
「…だから、そのような形を。」
そう、そうだ。
『なので第1なんて行くつもりはありませんよ。』
「おお」
『アレは、最後ですら、許されない。』
最後から、二番目。
『最後に行く場所は最初から決まっています。』
「ほぉ?」
『第3』
「…あの、これが最後の旅で?」
違いますよと答える。
あくまでも、それは、元々の話だ。
カメラをと言ったのは第8の者達だが、
その次にと決めたのは私の方。
『最初は、第3を最後にしようとしたのです。』
「それは、何故ですか?」
『…そこが、私の、始まりだから。』
そう、桜の匂いが、鼻から離れない。
この狂いたくなるほどの、匂いが、私を、狂わせない。
狂わせて、くれないのだ。
『私、3って数字が好きなんです。』
「ほぉ?それはそれは」
『一番でも二番でもなれない。三番が。』
そこだけでいい、それでもいい。
『私には、思い入れのある、数なので。』
どれ程願ったか、どれ程祈ったか、
遠ざかる時間の中、どれ程伸ばしたか。
『なので、出来れば好きで居続けたいのです。』
「…それ程褒めて頂いて、何もないとは言えませんね。」