ささやかでつつましいもの
「まったく、貴方と言う子は、本当にせわしない人ですね。」
そうすやすやと目を閉じ寝る彼女をスタスタ歩きながら愚痴をこぼす。
「まさか、その鎖を自らだし、そして引っ込めるとは恐れ要りました。」
願いを自分で、締め上げ、そしてそれを何度も、
「その猛獣を飼いならすではなく、溶け込ませるというのですか。」
流石に、それは看過できないというもの。
本来、彼女の状況下でなければ、即刻処分を取るレベルだ。
レッド1というのは、宇宙に危険が及ぶ華神達の一種の暗号である。
レッド3が上限で、そこに到達すれば問答無用で全王様に通達が入り、処分確定になる。
まぁ、その飼いならすという点では確かに、なくはない。
「まったく、貴方。本来の華すら咲かせないで何をいうのですかね。」
他の者達を騙せても、この私を騙せるわけがない。
その花を、目を、みてしまえばすぐにわかる。
「未だ貴方は、12を旅しても尚、貴方の願いを持った華を咲かせていないというのに。」
それが、かなりの、爆弾になると、ルトラールも考えていた。
だからこそ、この12の星を彼女に旅させていたのだ。
克服とまではいかなくとも。
その傍に、居続けても構わないと。
「早く貴方の華を見るのが、待ち遠しいというのに。」
それとも
「もう咲かせているならば、一体どれが、どの華なのでしょうか。」
最期の花か、それとも、低木かそれとも
「雑草に隠した、華なのか。」
または、雑草そのものか。
いずれにせよ、恐ろしい者ではある。
本来華神は願いを紡いで華が咲き誇り、神の力を手に入れるというもの。
逆に言えば、華を咲かせないまま、神の手に力に入るということは、
その力を手にした時、神を超越した何かに、なるというもの。
その時間が近づいていることは明白。
「…これは8の次に穏やかな場所がよろしいですね。
まぁ、と言っても、結構濃度が濃いところに行きましたね。」
流石に三か月はきつかったのだろう。
息が上がって、まだ落ち着かない。
恐らく熱が出ているのか、身体が火照っている。
「正直貴方の思っている場所は正しい。
貴方の願いの根源は【3】なのです。」
桜の匂いが、したのでしょう。
ふわりと、綺麗な桜色がちらりと目に入る。
上をみても、景色は変わらない。
ただ、感覚が違う。
歩けば歩くほど、草の上を歩いているように感じる。
「…貴方は、否定され続けた故に、否定しか述べません。
それでいいのです。そうして、何時か、肯定できるように。
私達は待ち続け、貴方を受け入れるというのですから。」
例え、あの日が、受け入れられなくとも。
「私達が、いいえ、私だけでも、貴方を受け入れるというのです。」
だから、どうか、そこを望んだままでいい。
「…帰る場所がないならば、此処に帰ってきてください。」
貴方の帰りを、待っている人が沢山もいるのです。
そうルトラールが前を向く。
其処にはそっと寂しそうに飛んできた全王様二人が居た。
「めるぅ〜〜〜」
「どうしたの〜〜」
「すみません、少々疲れてしまったようで。」
「全王様、メル様は少々病で倒れられております。」
うつるといけませんから、そういう大神官に
直してあげてという全王様に、それはしない方がとルトラールが入る。
「どうして?」
「どうして?」
「華樹神という神の地位に入るお方。
いえ、華神の前に、この子は人間の器です。」
それに、神の力を注ぎ過ぎればどうなるか
全王様ならお判りでしょう?
加えて、かなり疲弊している状態。
ましてや、あのリコットが全力で気を使って倒れるまでを数秒。
「(もし、この子が本当の本来の地位に君臨した時)」
その時は、本当に、この世界が終わるのかもしれない。
それ程の、威力を彼女はその時に発揮したのだ。
「すみません、失礼なことを」
「いいのいいの」
「いいのいいの」
「ありがたき幸せ」
「メル遊べない?」
「遊べない?」
「ええ、早くて数か月、遅くて数年程は。」
あの状況下だったのだ、
そうそうすぐに戻っても、安静にしなければならない。
本来、あの赤黒い鎖は最終的な状態。
引き戻ってこれるというのは奇跡であるもの。
華神を配置するのは、骨が折れる。
変な話、全ての時間すらも、居れないから
この最果てに、この場所に、来たというもの。
それは、私も、かつては。
「ルトラールさん」
「…っ、すみません。これにて失礼します。」
そう大神官に諭され、そっと席を外す。
いつの間にか草原の感覚は無くなっていた。
助かったと言えば助かった。
私とて、未熟な身なのだ。
かつて、華神でもあった自分が、想いを馳せないわけがない。
だって私も
「貴方に、会いたくて。此処に来たのですから。」
そう軽く額にキスを落とす。
嬉しそうに笑って走る彼女を、ずっと見つめていた。
ずっとずっと、この、広い世界で。
大きな、大きな。木の下で。
二人ではなく、三人で。
笑いあって、何処までもいつまでも。
「…ねぇ、**」
会えましたが、会えていないのですよね。
そうぱたりと音が立つ。頬に落ちた音が。
ベットにおろし、髪を触って、手を取り頬に充てる。
嗚呼、生きているこの子は、生きているのだ。
いつかの、記憶がちらりと顔を出す。
白いワンピース姿の子供が、此方を向かずに走り続ける。
白黒の犬と共に、元気に走っては転んで、また走るのだ。
その姿を、ずっとずっと、ずっと。見続ければ。
どれほど、幸福だったか。
どれほど、遠ざかっていたことか。
「…愛していますよ、ずっと。」
だが、そんなの叶わないから、私は、此処で見守るのだ。
君を、見放した、罰を。報わねばならないのだと。
神に、言われている気がした。
「貴方の、願いを叶えたのです。」
**
ーねぇ、**!私ね、私
「来世も、私の子で在りたいと、そう言ったではないですか。」
落ちた先に、また落ちて、繰り返し走り続けて。
そうして、もどって、また、同じ場所を息し続けようと。
貴方は、どうしてそうも、あの人を、いやあいつを、願うのだ。
あの出来損ないを、神にまでして。
「…だから、大丈夫、此処にいる。いるよ?」
君が望んだ、君の時間が。
神様になっても、君が、望んだから。
天使に、神に、翼を生やして、僕の傍に、ずっと。
ずっと。
「…だから、大丈夫。」
何時か目が覚めても、
『…ぁ』
「おや、めがさめ」
『ぱ、ぱ…?』
「」
『ぱ……』
「いけませんよ」
そんな酷いことを、
「言っては、いっ、……っ」
咄嗟にメルの意識を飛ばしても、この痛みはぬぐえない。
この子はとてもやさしいのだ。酷く優しく、耐えて生きる。
だから、初めて此処に来た時、地獄だと思った。
広い長い地獄の夢を見ていると。
人助けは沢山したつもりだが、どうやら何人もの人を助けたって
その一を救うことは出来ないらしい。
神になり、子を産み、数多もの人間が消えていく中。
正直もう、次なんていらないと思っていた。
そんな矢先、似たような人と手を取り、一つの光を見つけた。
光っては消え、また光る。点滅のように、光る灯を見つけたのだ。
掬いあげる前に、躊躇した。
もし、自分の願いがそうならば。
だが、それなら、尚更、掬わねばと思った。
光を、手に取り、そうして紡いだのだ。
落ちた光も、彼女は手に取ってきて。
そうして、その場所に、戻った。
私がいや、俺が、生き続けていたあの時間にまで戻って。
最初は驚いた。
「貴方が、此処を導くなんて。」
この広い宇宙、別の世界に来てまで、貴方が来る
その間、何憶、何十、何百億の時間を過ごした。
見つけた時、驚いたし、喜んだ。勿論名前を付けた。
その名前に嬉しそうに笑っていたし、同時に捨てたのだ。
これではない、別の名前をと言うのだから。
だから、つけた。
エフェメラルと、つかぬ間の、一瞬を、夢見て。
君がいつか、好きだったキャラの名を。
「馬鹿だねぇ、ほんと。」
だから、大丈夫。
「此処にいるよ…都佑」
君の名前。
「僕の愛し子よ」
何処に居ても、何をしていても、愛される子で。
誰かを救える子で、ありますようにと。
願った子は、天使の様に可愛らしくて。
そりゃあもう愛でたが、放置をしたこともあった。
その報いと言うならば、これは、救わねばならない。
「だから、大丈夫。」
君は僕もあの子も、此処にいる。
「だからどうか、今はまだ、醒めないままでいいよ。」
いつかきっと、その日が来た時。
「僕は君に声を掛けるよ。」
いつかいっていた、おまじないのようなことば。
「一緒に、走って競争をするその時まで。」
+++++++++++++
コンコンとノックが入る。
はいと声を掛ける。
「おや、コルンさんに、アルトさん」
「すいません、メルの様子をと聞かなくてですね。」
「いいんです、あの子にはついていて欲しいですし。」
そう言って席を外すルトラールに、コルンが声を掛ける。
「はい?」
「その…あてられましたか?」
そう言われて、ちらりと視線を逸らす。
其処には
「…っと、すいません。」
何時の間に変わっていたのやら、修行が足りないようだ。
紺色の髪色を見つめたのは、久しぶりだ。
黒色の髪色とはいかなくも。
「いえ、此方こそすいません、お忙しいであろうに。」
「いやいや、それよりも、例の件は?」
「…ええ、念の為、皆さんにご協力を仰いでおります。」
そう言われて、よしと声を掛けた。
「では、かの者を呼びましょうか。」
「はい?」
きて、
だっだろ!!
んん、頭が痛いと思いながら、目を開けゆっくりと起き上がる。
「ああ、いけません、そう無理に身体を起こしては。」
『っだ、いいっ〜〜〜』
「だから言ったでしょう。」
「メルさん大丈夫ですか!?!?」
『っだい、じょ、え?』
まてまて
『なんで皆いっん????』
なんかメンバーおかしくないか?
そうメルは痛い頭を手で押さえていたが、
ゆっくりとウイスにベットへと寝かされた。
「まだ顔色が悪いですね、ごゆっくりなさってください。」
「ちょっと、ウイスさん!ウイスさんの力でこう何とかならないの!?」
「ブルマさん、流石に神のお方とあらば話が別です。
それに私が修正していいものではないのです。」
中立から外れますし。でもねぇ。
そう言う声が聞こえる。
「ごめんね、気持ちよく眠っていただろうに。」
『……いえ、』
「熱は引いたか。いやでもまだ熱いか。」
「メルの体温は通常36ぴったりですので
まだ38もあるからダメですよビルス様!!!」
「これ、静かになさい。」
そう今度はコルンがアルトをひっぺ剥がす。
それをちらりと見つつも、笑わないメルを見て
流石に本調子とは無理かとビルスがため息を吐く。
加護天使一人の力を奪い取ったと言ってもおかしくないその力。
それも、熱が出ているということは、気が足りなかったということ。
大量の気を注がれてもなお、足りない。
加えて、その正体は、まだ、未完成。
「…見ての通り、騒がしい。おいお前ら!ちったー静かにしろ!」
「ビルス様、貴方が一番騒がしいですよ。」
「んぐ」
『…ふふ』
そう軽く笑うメルだが、本調子ではないだろうに
ゆっくりと起き上がろうと動く。
それにはビルスもどうしていいか分からず手がわたわたと宙を舞う。
「メル、ダメだよ、そのまま」
『大丈夫、ひえぴたはるだけだし』
「ひえ?」
「」
『あれ、どこだったかな、眼鏡、いやいいか。』
そう虚ろな目で、ふらりと起き上がる。
『お父さん帰ってくる前にご飯食べとかないと、お薬も飲まないと。』
「っめる」
『あれ、このへやどうだったか、こんなんだったか』
「違うよ、メル、ねぇもう寝よう?」
『…そう、ねる。』
ぼやける意識の中、そっと抱き着いてくれた人の体温に目を閉じる。
「るっ」
「し……すっ」
そう静かにと指を指したあと、息を吸って声を掛けた。
「**、こりゃ、なにしてるんだ。」
「わっぬご」
『…あ、ごめん』
「あれ程ベットで寝ておけと言ってただろ?ほらいく。」
そう言って声を変えたルトラールがメルを前に押す。
それですんなりベットの方にいくものだから、凄いと思う。
「ほら、また仕事にいくけど、何か欲しいのは?」
『…もも、あとわんわ』
「……はいはい、わかったから。おやすみ」
『おやすみなさ、ぱぁ、ぱ』
そうすやりと眠りだす彼女に、はぁと息を吐いて指を鳴らすルトラール。
メルの場所のみ、綺麗なベールに包まれた。
「皆さん声を出していいですよ。」
「ば」
「息まで止めろとは言ってませんでしたが」
そう酸素ボンベを出して吸うアルトを横目に、
すみませんでしたねとルトラールが言う。
「にしても華樹神官様おでれぇたぞ」
「はい?」
「メルのおっとうかなんかか?」
「ちょ、悟空!!」
「ええ」
「え」
「前世の、と言えば、分かりますか?」
そうちろりと、紫色の目が、緑色に変化する。
それに、悟空がぞくりと背筋を凍らせた。
「ま、その子も気付くというか気付いているのを
必死でなかったことにしてるようで、
今回反発がおきたのでしょうが」
「今回って」
「鎖と言えば、一部の者はわかるのでは?」
そう言った彼に、周りの者がざわつく。
トレイーズに至っては、顔を青ざめ、わなわなと震えていた。
「っな、そ、いや、そんな」
「現にリコットはもう暫く復活は見込めません。」
ピンク色に染まりあがっていますし。
そう言った彼を呼び出す。
浮遊しつつも、目を閉じ、力がないようにも見える。
「かなり影響を注がれました。
まぁ、犠牲が伴うのは仕方がない。
いずれ戻りますし。」
「どういうことだ、これは」
「…メルさんが暴走したのですよ。
私達はいわば、お見舞いと言う名の
監視と言ったところでしょうか?」
「察しが早くて助かります。第7よ。」
といっても、忠告もあるのですというルトラールに
どういうことだと声を出すのは悟空だ。
「この子の願いは3の時間。つまり春先の時間です。
願いが強くなる時期に力をもたらす。…第7よ、気付きませんか?」
「…まさか、いや。」
「どうしたウイス。」
「いえ、ビルス様、私達が見つけた時は何時だったか覚えていますか?」
「確か、寒い時期から暖かくなってただろ?」
お迎えにあがったのは
そう言った彼の目が開く。
「春先、または夏間近の間が、
彼女の危険視とされる時間帯。
特に3の時間には注意しなければいけない。」
「それは、彼女以外にも、ということですね。」
「ええ、こうも長い間生きていても良いと言われた以上、
事の重大さを貴方方にも知らせた方がいいと思いまして。」
人間を巻き込んですいませんが。
そう彼が、ルトラールがお辞儀をすると
ブルマたちもぺこりとお辞儀をし返した。
「ま、正直第7もまずいっちゃまずいんですが。」
「というと?」
「大体上から数えて3番目なんですよね〜〜〜
それも気付いたら増量でして〜〜おほほほほほ!!!」
「それまずいんじゃないのでは!?!?!?!?!?」
「…ま、夏はまぁまだというべきですかね。」
あの子の願いは夏ではないのですが。
「そう思い違うことにより、貴方方と居続けれた。
いや、居るしかなかった。現に3番目の時間は
かなり短い時で終わらせています。」
…ミラのいた時間だ。
その時には、確かに短いとは聞いている。
だが、それが、本当に、三番目ならばの話だ。
「え?」
「彼女は賢い。馬鹿ではなく、
寧ろ馬鹿と思わせて勘違いさせている。」
そうして、自分の力を制御しているのです。
「本当の時間を、見つけた時。
暴走して誰もかれもを失いたくないから。」
だから、メルはこうして眠るのだ。
「ふぅん、じゃあ早く元気になってもらわねぇとな。」
「ちょ、おま、悟空!!」
「だって、目覚めた時また俺達が居なかったら寂しいだろ?」
折角生まれ変わってきたんだ。
どうせなら沢山遊ぼうという悟空に
そうですよねとビーデルが前に出る。
「メルにはうんと教えて貰いたいことがあるんです。」
「…ほんと、ずるいですねぇ、第7は。」
「おや、そう思われます?」
「人間レベルから何からなにまで。」
「…それ、貶してる?」
いいや、
ーねぇわかんなぁいいいいいいい
「ふふふ、いいえ、ずるいと思っていますよ。」
ーおしえてよぉ
「ほんと、ねぇ?」