よろこべというのでしょう
『ん』
「おや、起きましたか。」
『ここは…』
「全王様の宮廷、その最奥にある貴方のお部屋ですよ。」
ほら、身体を起こせますか?
そう言われて、メルはゆっくりと身体を起こす。
まだ身体の感覚が分からず、ふらつくのを
ウイスになんとか支えてもらい、起き上がった。
「熱はだいぶ下がりましたね。」
『どうして、ここに』
「貴方の看病をとアルトさんに言われましてね。」
現在悟空さんとビルス様は全王様と遊ばれております。
「私達は貴方の看病にと。」
『わた、し、たち?』
「ええ」
『っう』
「メル様!」
「嗚呼、もうメル大丈夫?」
急に動き過ぎたでしょ。
そう来たのは
『び、でる?』
「ええ」
『うそ』
「嘘じゃないわ。ほら食べれる?
口に入れるでもいい。」
『う』
そう桃を一口食べて嫌そうな顔をするメルに
まだまだねとビーデルが苦笑いで答えた。
「すみません、ビーデルさん。」
「いいんです、メルったら体調
悪くなったら休めってあれ程言ってたのに。」
「だそうですよ?」
『すいやせん』
「ほほほほ、こう仰っておりますし、ビーデルさんも、ね?」
「…ウイス様がそうおっしゃるなら。」
にしても、髪の色変わったねぇと言うビーデルにえっとメルがいう
『いま、なにを』
「え?嗚呼なにって」
「そんなことよりも、もう少し寝られますか。」
『えいやでも』
「メルさん???」
『あっはぁい』
そう言って目を閉じるメルに、全くひやひやさせるとウイスが言う。
「ビーデルさん?私仰いましたよね?色の話は厳禁だと。」
「あっ、すすいません。つい。」
「はぁ……一応アルトさん達がいるとは言えど、
華神、および加護天使の協力は仰げない状態。
貴方を守れることすら、私はままならないことを
重々承知しておくように。」
「ごめんなさい」
まぁ、仕方がないことではある。
「分かればよろしいのです。
現在彼女は神と人を行き来しています。
記憶が混濁して熱を出して寝込んでいるのです。」
「知恵熱ってことですか?」
「まぁそうですね。」
正確には身体の本質が変化している途中なので
人間でいうところの成長期というものだろうか。
まぁ本質なのでそれもまた違うといえばそうなのだが。
「我々が出来るのは、身近な者がこうして
顔を出してあげるだけです。」
そう言っているウイスの声がすっと消える。
ちらりと見つめていたウイスに、メルは気付いていなかった。
+++++++++++++
目を醒ました。
次はだれもいない。
だが、かなり目ざめのいい場所だ。
『…』
まぁ、人がいないなら良いか。
そう思い、身体を動かし、何か出来ないかと椅子に座る。
仕事まではいかないが、軽く絵を描くくらいは出来る。
まだ本調子でもないため、長くは出来ないが。
『そういや、第8いけたのに3はダメだったよな。』
願いが本質。まぁその濃度が強すぎたのだろう。
暫く出禁だろうし、いや悪いことをした。
『次いくでも10はあの状態ならダメだな。
恐らく7も、下手し1とかダメだったらもう9しかないのでは?』
「それでしたら、後で私が言って差し上げましょうか?」
『うわっ!う、ウイスさん!?!?』
「ええ、ウイスですよ。おはようございます、メル様。」
ニコリと微笑むウイスに、驚きついスケッチブックを落とす。
おやと言って手に取られた時は遅かった。
「これは」
『ああ、みないでぇ』
「上手にかけているではありませんか。
此間行った第8宇宙のご様子ですか?」
笑うウイスに、そうだとメルは答えた。
其処にはアルトやコルン達と談笑しながら
食事をする姿を軽く下書きを取っていたところだった。
「よくかけていらっしゃいますね。」
『うう、見せるつもりもなかったんですけどね。
暇だったので、こうして描いてたんです。』
「みても構いませんか?」
『どうぞ』
流石に此処でダメとは言えないメル。
仕方がなく彼に主導権を渡した。
「ほぉ、これはこれは。」
『皆さんが居ないときとかで、描いてただけですよ。』
「ですが綺麗にかけていますね、清書はしないのですか?」
『流石に無理かな。色なんてねぇ?』
「おほほほ!さようですか。」
笑って言うが、それにしても素晴らしい絵である。
一枚めくれば、コルンがアルトを叱って説教垂れているところが見えた。
なんなら端の方ではメルも入って更に説教が追加になっている。
更にめくれば、今度はフェルとアンダルシアの姿。
ご先祖様ーと声を掛けているのが見える。
アンダルシアとフェルが背中合わせで
こちらを向いて笑っているのが描かれていて、
非常に可愛らしい姿だ。
更にめくれば、アルトとコルン達
みんなでとはいかずとも、歩いている風景が見えた
旅の途中だったんだろうか、
数枚めくると、アンダルシアと
戦っている姿も描かれている。
他は草の資料なのか、絵をかいて、
色を塗って乱雑に書かれているのがみえた。
「素晴らしい旅を過ごしてきたのですね。」
『まだ一つですよ。』
「いえいえ、次は第9ですよね?」
『まぁ、ひと月ほどは放置ですが、』
それもいいではないですかとウイスは笑う。
「メル様なら、きっと。乗り越えられると私は信じておりますよ。」
『…冗談を』
「貴方がそうおっしゃるなら、そうですね。」
『いじわる』
「どうとでもおっしゃい。」
ニコリと微笑むウイスに、本音を知り、メルはため息を吐いた。
どうせ、本気で言っているのだろう。この天使は。
『全く』
「おや、それは?」
『ん?嗚呼このスケッチブック?これはアルト達の絵だよ。』
「ほぉ、これはこれは…」
其処にはアルトやルトラールだけではない
ティーナ達のキャラクターブックと言ったところだろうか。
前の面横の面後ろの面を二ページずつ見開きで描いていた。
最後の方には、数人が遊んでいたり、闘っている様子もある。
「此方は実際にあったことを?」
『いんや、もう想像の域。最後の方の集まりもそう。』
「…この色は、想像で?」
『そう』
どうかした?そう言ったメルに、ウイスはいいえと答えた。
「本当に絵がお上手なのですね。」
『いやいや、適当ですよ。』
「そうですか?普通に頑張らなくとも
展覧会を開くなど造作もないのでは?」
『…しなくていい、それはあの子だけで。』
0番目になる、あの子で。
そう言ったメルに、そうですかとウイスは答える。
「いつか」
『ん?』
「いつか、貴方が此方に来るのを、私達もお待ちしております。」
『……ええ、勿論。』
ま
『最後の方になりそうだけどね〜〜〜!!!』
「おほほほ、末永くお待ちしておりますよ〜。」
『…ほんと、ね。』
そう目を閉じて、開く。
幻想を、空想を、描いては、閉じるのだ。
正面にいる彼らを見ては、メルは手を握っては開く。
隣に居る子供の様な少女と、いや、女性と手を取って浮遊する。
誰かが私達のことを言っているが、気にしない。
ちらりとウイスやコルン達が座っている席が見えた。
目が合って嬉しそうに笑って手を振り返す。
そうして彼女の目を見て、前を向いて笑う。
嗚呼、あの前に、あの先に、時間がある。
光を紡ぎ、声をあげるのだ。
わぁあと声援が上がる音が消える。
その音に、メルは胸に沸々とわく
感情と共に、高鳴りを抱きながら叫びあげた。
手に力がこもり、そのまま、彼女の方を見る。
黒い髪の色を持った、綺麗な黄金を宿らせる子を。
キラキラと、目を光らせた自分が見える。
嗚呼、楽しいって、きっと、こういうことを言うのだ。
黒髪の子も、また、前を向いた。
此方を見た後、笑って笑って、ただただ、
片方の手で同じように弧を描いた。
手で空を描く。その場所には、
いくつもの人達がふわりと形を浮かばせていた。
赤青黄色、様々な髪色をした者達が
自分達を囲うように浮遊する。
もうすぐ、もうすぐ、孵るんだ。
人も時も最初から。
始まりから、生まれ変わる。
この日の為に、この場の為に。
黒髪の手を放し、手を叩いて前に手を上げ、
そして祈りの姿へとかえる。
最初から最後まで。
全て全て、一つになるのだ。
この時のために、私は生きていると。
静かな場所で、声が鳴り響く。
私が神だ、神様だ。
君を、救う、人の神。
「…くす、良い夢を。」
そうウイスの手の中で、メルはゆっくりと、息を吸い上げた。
ぱちぱちとなる、その光に、うんと思った時はすでに遅かった。
+
「っ」
ここはと思えば、歓声が鳴り響いていた音が静まっていた。
どうやら武道大会、いや力の大会が、いやだが、うたた寝を?
いやちがう、これは
「おい、まて、あれは」
そう前を向いてあわあわする自身の神に目を向けた。
その目の先に、向けた場所。
白い髪の毛が、赤色に染まり、
綺麗な緑のツタに、ピンク色の
花冠を咲き誇らせている。
腰元には色鮮やかな花を散らせ、
凛とした姿から、白い翼が二つ浮遊していた
背中越しにしか見えないが、彼女の周りには、
色とりどりの花を咲かせた少女たちが浮いている。
『いけ!!!』
その声に、彼女達が前へと飛んでいく。
先に居たのは、アルトのようで、
オレンジ色の髪色が、黄緑色の光に輝きを放ちつつも、
そのリングを常に被っている所、
本当の華樹神官になりあがったのだろう。
にやりと笑った彼女もまた、
色とりどりの子達を前に向かわせる。
ダンと音を立てて動くこの場所に、
仕方がないなぁと声が上がる。
呑気なその声にちらりと目を配らせると、
「あたしたちもいっちょ、歌いますかぁ」
「そうですね、そうしないと皆さん無事死にますね。」
そう笑う彼女達に、いや笑い事ではないと
ブルマが言うのに大丈夫と笑うのだ。
「あたしたちは、華神だから」
そう言って指を鳴らし、華を咲かせる。
突如湧き出る戦闘力に、周りも声を上げた。
「お前らぁ!!所定につけ!!」
そう言った赤髪のティーナが第七に居ることに驚くが、
強い光を放っているのを見て、ウイスはすぐに納得がいった。
彼女は、この、第七こそを、願ったのだと。
7に、希望を、絶望を、胸に、強く、抱いていたのだと。
「目標、あいつらの援護及び、この場所の保護だ!!!
全員願いを捧げる準備は出来たか!!!」
うおおおおという声が上がる。
一人で叫ぶ中、数多の光が、
場内だけでも凄まじいというのに、
此処まで来ると、まぶしすぎるというもの。
「祈れ、願え、叫べ、歌え、あの日まで!!!」
「我々は、貴方に、貴方だから、手を取る。」
「目を見て笑って、そして前を歩く」
「希望を絶望に変え、そして希望へと戻す。」
「貴方の優しさを、嘘だなんて思いたくない。」
だから
「祈り願い叫び謳い、時を過ごす」
「僕らは一つに、貴方が願った」
「どうかそれなら、手を取り生きて」
「貴方が望む、その場所へ!!!」
「大丈夫、なんにも、なんにも、怖くない」
「だって貴方が其処に居る。」
「すでに分かり切っていたことで。」
「願いは最初から、叶っていたんだ」
そう言ったティーナの光が、胸から華を咲かせ、
そしてリングへと続く。
空に舞い上がり、彼女達は歌い続ける。
術を、その魂を、この者達に、捧げ続けるために。
「…恐れ入りましたね。皆さんに見せるためだけに、
本気を出させるために、魂を捧げるとは。」
「馬鹿なことをするんだね。」
「えっえええ!?!?」
「どういう」
「メル様達の気は最早貴方方人間は生きていけません。
勿論、それは破壊神レベルですら難しいのです。」
「それを、あの方たちは分かって、
目には目を歯には歯を
華神の原動力なら、華神の原動力で。そ
の暴風を打ち消すために飛び出したんです。」
「コルン様!!!」
お久しぶりですと言ってこちらに来る。
まぁと言ってもお久しぶりと
いうべきかどうか、わかりませんが
と言ったコルンにちらりと
お兄様もですかとウイスが問う。
それに、コルンも貴方もですか
と声が聞こえてくる。
ーどうやらあの子達の影響下のようですね。
ー私達も、跡を追ってしまったと、
ーでしょうね。
全く、酷いことだ。
「どうしても、私達には見せたくないようですね。」
その眠り続ける時間が、あの子には、
その願いを続けたものと、同じならば。
ふらつく中、熱に浮かされ、手を伸ばしただけだというのか。
子供が寂しがるように、甘えるように。
その手を取ったそれは、悪魔のようなもので。
それを、分かって、分かっていたとすれば。
あなたは
『大丈夫』
そう光り輝き振り向く彼女、
その目は黄金ではなく、
白く、ただ、白い光を光らせる。
『私は、此処に』
メルと言う声に馬鹿だねぇとメルが叫んだ。
『私の名前は、エフェメラルだっ!!!』
そう言ってメルが球を勢いよく投げる。
ぱちんと音を鳴らしアンダルシア達がウイス達の前に落っこちてきた。
「った」
「わぁ場外判定ばったーあおう?」
「おい、色々混じってるぞ。」
そう赤青黄色、いろんな色の子達がわいのわいのいう。
びきっと鳴った音に、騒ぐ音が止まる。
「…やるか」
「っしゃー!主が本領発揮出したいなら私らも!」
「いこういこう!!!」
「アンダルシアどっち!?」
「アタシは一応7だかな。」
な、そういってアンダルシアがちらりとウイスを見る。
それに、見たこと無い彼女にぺこりと、お辞儀をし返した。
「じゃ、あやるか!!!!」