たったひとつ




「いや〜〜〜御見それしました。」

まさか、

「あのようなお姿を見せて頂けるとは。」
『……』
「まてまてまてまて、何処へ行くんだ何処へ。」

そう昔の付き合いというので、
わざわざひょっこり顔を出したのが運の尽き。

メルはビーデルと悟飯に用があったのだが、
流石に無理かあと思いながら
ウイスとビルスの相手をしていた。


『全く、別にいいじゃないですか。
こうして無事に生活が出来ているんです。』
「…ほんとうに?」
『っ』
「ふふ」
『わぁ〜〜〜ウイスさんったら』

嬉しそうに笑うウイスだが、この現状、ウイスは知っている。
まだ、彼女はこの夢の中にいることを。

そして、これが、現実になることも。

「予言し続けて、苦しくなりません?」
『…ま、最初はね。でも、楽しくて。』

苦しさも、ひっくるめて、楽しくなればいい。

『私は未来で待っています。エフェメラルとして』

儚い一かけらとして。

『ウイスさん』
「はい、なんでしょう?」
『あの子を、見守ってやって下さい。』
「…貴方に言われて、出来ませんとは言えませんねぇ。」

わかりましたとウイスが答える。

「このウイスでよければ、是非に。」
『…ふふ、頼みましたよ。』

私は、

『その夏に、手を差し伸べ笑えたのだから。』
「っ」


+++++++++++++

ぱちりと目が覚めた。
起き上がるメルに、起きましたかと声がかかる。

『ウイスさん…』
「ええ、ウイスですよ。」
『ここ』
「まだ本調子ではないのに、ベットで寝ずに机で寝ていらして。」

ベットに寝かせてました。
そう言ったウイスにごめんねと言って咳き込む
それに、ああいけませんと言った声が止まる。

『』
「……メル様」
『っぐ』
「メル様!!」

赤い鮮血が、白いシーツに落ちたのに、ゾッと青ざめる。
それが分かってか、咳き込みだしたメルに、ウイスが背中をさする。

「ウイス様?メルはげ…」
「っ、メル様!!!」

からんからんと食器が落ちる音がする。
駆け寄ったコルンもまた、ウイスの反対からメルの介抱をする。
たらりと鼻からも血が流れ、ぱたぱたと鮮血が広がる。

「アルト、貴方は薬草を作ってきなさい。」
「っ」
「アルト!!!」
「わ、分かりました!!」
「メル様、しっかりなさってください。息を吸って、吐いて。」

そう言われ、とにかく息を吸って吐き、咽こんでは吐血する。
その中に、はらりと桜色の光が見えて消える。

「お兄様」
「…ええ、メル様すいません、回復が出来ず。」
『(いい、大丈夫)』
「っいけません、力を使っては」
『っげほ、っごほ、ごほ』
「ああほら言わんこっちゃない!!」

先程の力の影響下なのか、想像でも、夢ですら動くのはご法度。
その大きな箱の中で、彼女は、息が出来るのか。
いや、出来ない、出来ないように、徐々に締め上げるのだろう。

このものを、消し去ろうとする、何かに。

「っコルン様ウイス様!!!」
「アンダルシア様!!そちらは…」


そうぱたぱたと足音を立てて入ってきた者は
金色の髪の毛を左右に束ねた者だった。
三つ編みがオレンジ色で、リボンを散らばめている彼女が
凛とした顔つきでアンダルシアと声を掛けた。

「事態は一刻を争います。シャクロラス!植物の用意を!
アンダルシアと貴方は回復魔術の薬草たちを!」
「っはい!!」
「わかった、行くぞフェル」
「はい!!」

息をして、そう、すってはいて。
そう言う彼女が近づいてくるのに
ぐっと二人で構えたが、いいとアルトが答える。

「その人は、まだ見ぬ人。」
「・・・まさか」
「メル様、ほら、息を吸って。そう」
「第10宇宙の原初アルカポネ様です。」



+++++++++++++


「ふぅ、ひと段落だ。助かった第8に第7。」
「いえ」
「それにしても手術の様なドタバタだったね。」

くたくただよと言うのはメルの部屋の隣で休憩していた各々だ。
現在メルは付き添いにルトラールが寄り添ってくれている。

すぐに動けるようにと、隣で言ったのはアルカポネの対応だった。

「うちらが作った薬草剤はあくまでも突発的なものだ。
正直効果が得られる保証もない上に、副作用もあり得る。」
「そんな」
「本来ならば蘇生薬に近い物は出来るが、あの様子で、
華神の力を使えば、下痢して副作用ときたら終わりだろう。」
「妥当な判断かと。」

そうコルンが言ったのにいいとアルカポネが言う。

「それより、急に入って指示して申し訳ない。
改めて、私は第10宇宙原初、植物の華神、アルカポネだ。」
「同じく、第8宇宙原初、回復の華神、アンダルシアです。」

以後お見知りおきを
そう第7の各々と、第8の皆に話を進める。
現在各宇宙の華神達を要請しているところだ。

「ところで容態は」
「一応命はとりとめたが、少々危ういな。」
「そんな!」
「あの状態で華がさけば、
正直助かる可能性はゼロだろう。」

ビーデルさん、そう言う悟飯に、酷いと声を出す。

「っ、どうして、せっかく、会えたのに…!!」
「ビーデルさん……」
「…あのおねえさん、しんじゃうの?」
「パン、おめぇ」
「いいえ、死にません。というか、
あの状態で行けば死ぬことはまずない。」
「どういうことですか?」

そう聞いたのはウイスだ。
死なないというのは、
レールから外れた者を指すのではない。

「華神達が死ぬにはいくつかのルールがある。
その流れにあいつも入っているようで入っていない。
あくまでも、記憶の廻廊での華は、
華もあいつが咲かせたものではないのだ。」

つまり

「あの子は一度も、華を咲かせずに、
人の身体で長い間此処にいると?」
「そういうこと。加えて魂が神で、
器との融合も遅すぎるといえば、もう。」
「そんな…」
「何か策があるのですよね?」
「…無理矢理、華を咲かせればの話だが。」

拒絶をしている以上無理だろう。
そうアルカポネがちらりと向くのは第1から来ていた

「ミユ様…」
「やめとけ。」
「っ」
「お前死にたいのか。」

そう部屋の方に手を触れようとしただけで、強い反応が出る。
すっとミユをアンダルシアが保護し、
避ける間にアルカポネが手を前に出して封じる。

「ったく」
「ひえ」
「こんな感じなので、特定の人間は近寄れば死にます。」
「いや、実演せずとも……」
「っならルトラール様って大丈夫なんですか!?」
「あの方なら心配ないですよ。」

コルンがはっきりと答える。

「ルトラール様と、大神官様であれば
あれ程の威力は充分対応できます。」
「ま、少々てこずりますがね。」
「ルトラール様!!」
「一応スピ…いえ、大神官と交代しました。
現状はっきり申し上げると、かなり危険です。」

皆さま別室に送りますついてきてくださいと言ったのに対し
貴方方もですよと言い放つ。

「原初、お前達も来なさい。話があります。」
「…わかった」
「了解」
「あの、ルトラール様、メルは、」
「大丈夫です、一応息はしています。」

まぁ、息は、の話だ。

「頃合いですね」

そう言ったルトラールがぱちんと指を鳴らす。
其処は、神々がよく使う会議室だった。

「皆さん緊急でお集まりいただきすいません。
身体を起こし、立ち上がって下さい。」

そう言って浮遊し始める各々に、ルトラール達も浮き上がる。

「みなれねぇ奴らがいるな?誰だあいつら」
「っこら」
「ま、そりゃそうですね。…原初よ!」

前に、そう言ったルトラールに、
はいと声がかかり、ふわりと前に飛び出す


「…少ないな、」
「すいません、一応声を掛けたのですが、
この短時間で探しきれず。」
「まぁ、禁忌後の復帰だから仕方がない、と?」
「っ」

圧力に、各々力を出さねば押しつぶされそうになる。
心配そうな子供の目を感じ、すぐに大人げないと思って
ルトラールは気を消し去った。

「ま、いいでしょう。すぐに回復すればあの子にも旅立出せるつもりですが。」

ことがことです。

「改めて、メル様が少々体調を悪くし、重症になっています。」
「なんと!!」
「皆様方には、この子達、所謂、原初の華神達を探して来ていただきたい。」
「して、広い宇宙の中で?」
「いいや」

そう言ったのは第8からだった。


「各最古の惑星達があるはずです。
そちらで、我々のように色のついた
衣服を身に纏う者がいるはず。」

そうアンダルシアが服を掴んでから周りの神々に視線を向ける。

「一応我々も探したいところですが、
この状況下で移動は避けたい所。」
「別の宇宙に華神及び加護天使が行くのは現在厳禁。
それは引き続き守っていただきますので、
皆様方は各宇宙の中で、とある星々に向かって頂きたい。」

ルトラールが神々の脳内に、惑星達を見せ始めた。

「此方の惑星に、原初が居るはずです。
見つけ次第説得し、どうやってでも此方に呼んでくるように。」

ことは一刻を争います。

「全員が集まり次第、正式な華樹神の昇格の儀を執り行います。」
「っ容態が悪い状態でですか。」
「だからこそ、です。これ以上引き延ばせば彼女の存在自体が危うい。」

下手をすれば、

「華神になった瞬間、爆発的なエネルギーで
この宇宙全てが死に至る可能性だってあるのです。」
「っ」
「以上、皆散りなさい。」

そう言った各々に、ふぅと声をだす。

「すみません人間の方達よ、会議に参加させて」
「い、いえ」
「大変ですね」
「ええ、貴方方も帰って貰って構いません。」

探索は好きになさいというが、
ウイスやビルスには命令であるのは間違いない。
第7もまた、知らない者達がいるのだ。

「皆さんを送り届け私達も探しましょう。」
「ああ」
「アルカポネ、アンダルシア貴方達は此方にいなさい。
コルン、貴方も手伝ってもらいます。いいですね?」
「「はい!!」」
「わかりました」
「よろしい」

そう言って彼らは元来た場所に戻るように移動する。
では我々もとウイスがこんと音を立ててとびだった。

「あてがあるのか?」
「あて、といいますか、皆さん
先程まで何か映像を見ませんでした?」

それこそ、力の大会のような。
そう言ったウイスに、いいえと全員が首を振る。
破壊神や界王神ですら、だ。

それに、ウイスは天使だから、
ということに気付く。

恐らく大元が華神だからだろう。

「それがどうかしたんですか?」
「いえ…そちらで12人の子達を見ましたので。」

正確には綺麗な後ろ姿で、ちゃんとした顔立ちは見えませんでしたが。

「私は勿論、各天使達が見ているならば、大丈夫です。
皆さんの誰かが知っていればとお聞きしただけですし。」
「そうですか」
「そういや、ミル、おめぇ何処からやってきたんだ?」
「私?私は惑星シュテメルンだよ。あそこは無と有が存在する。」

無と有だと?なんだそれは。
そう言ったベジータにミルがふわりと浮かびながら説明を始める。

「正確には人間と無と有の三種。
特殊な力があるか、ないか、
人であるかの三種。」

全員人ではあるんだけど、
魂の形と言うかそんな
曖昧な方面が違うんだよとミルが言う。

「天使さん達なら形をすぐに見分けることが
出来るだろうし大丈夫だと思う。」
「ええ、ミルさんをスカウトしたのも、そう言った話ですし。」

なにせ、

「(あの時既に彼女の中から8つもの魂が宿っていた、
だなんて彼らに知られては少々困りますし。)」
「だが、あの星は今禁制じゃなかったのか?」
「いえ、つい先日メル様がアルト様に告げて解禁させましたよ。」
「なに!??!?!!?」
「一応いけますが、神々のみの移動。
一応ギリミルさんが対象内ですが。」
「え」

そうなのと言うミルに、まぁ良いでしょうと言ったのは

「あの子があんなピンチになっているのですもの。
私達が人肌二肌剥がさずしてなにするってねぇ!
そうでしょとれいーずうう!!!」
「あああ、はいはい、わかりましたから。
いきますいきます、ついていきますから。」
「ですので、皆さんは一度戻られてください。」

すみませんと笑うウイスにいえいえとビーデルはお辞儀する。

「また遊びに行っても構いませんか?」
「ええ、是非。メル様も喜ばれることでしょう。」


+++++++++++++

そう

「容態は」
「悪化しましたね。」
「ちっ」
「お兄様?」

すまんと言う彼に、無理もないかと
大神官はため息を吐いた。

「一応息は出来ていますが、
一度アレが出た以上、隔離は最低限かと。」
「分かっている。今原初が対応している。」
「よろしいので?不安定な状態であの者達を使って。」
「奴らとて馬鹿ではない。あの数多から選ばれた有志だ。」

余程のもの好きでしかいない特殊な奴ら。

「今でこそ引退の身だが、本来
この宇宙で指折りの存在だったからな。」
「それはそれは、心強いですね。」
「ま、その未来の子供たちがお前の子だが。」
「ふふ、狡いことを仰いますね。」

笑う大神官に、言ってろとルトラールが答える。

「幸いなことに、回復と植物の人間だ。
回復特化型なのは間違いない。
一命をとりとめなければ
こっちが殺処分していた頃だろう。」
「おおこわい」
「お前も充分やっていただろうに。」

ま、そりゃ仕方がない。

「いずれにせよ、放置は無謀すぎる。
彼女もここで暫く暮らしてもらうし。」
「第1のですか。」
「ああ、アルトもだが、彼女らも割と良い位置に居る。」

大丈夫

「私の子達だからね。」


+++++++++++++


「ふう」
「お疲れ」
「嗚呼」

そうアルカポネから貰った水を、アンダルシアは受け取った。

「現状は」
「及第点ぎりぎり。呼吸器をつけてる程度で
済んでるのが生命力強すぎるってところかな。」
「そう、でも暫くは付きっきりね。」
「それにしてもよく破壊神や天使に会おうと思ったな。」
「ま、通信機器を私は持っていた方だし。
それに第10では割と温厚な天使に恵まれたのでね。」

なるほど、前から交信があれば話は別だ。
それに、温厚とはいえど、
彼女はすぐに血の気が上がる者でもない。

「お前のことだから、アルトの件以来、
そこらへんを魔女の山にすると思っていたが。」
「…流石にあの子みたいにはしないわよ。
ま、アルトが泣いて加えてメル様もってなれば別だが。」
「そこは同意。」

主になるのだからそういう彼女に、アンダルシアは納得した。

「それにしても、よく通信させていたな。
お前の差し金だろ。それ。」
「ええ、念の為と思ってね、
一応それが功を制したって感じ。」
「流石ぁ、用意周到焦りの神様。」
「酷いわね、事前準備が出来ているってことよ。」

社会人としては当然でしょと言う彼女にそれはそうだと答える。

「どうみる、あいつ」
「あいつって?あの子?」
「ああ、片割れとは言っていたが。」
「…まぁ、よくはないわね。」

アルトはまだ、低木、木の方だ。
それは、花がやがて植物の力を強め、木になる状態。

つまり、アルトは完成されている状態と言っても過言ではない。

彼女が華樹神官に選ばれるのは当然のことである。

「雑草は花にすら価値にならないもの。
それが幾ら増えたところで所詮雑草は雑草」
「それなんだがな、あいつムラサキカタバミなんだよ。」
「へぇそうへ……あ?」

だから

「えっま、わかっ、え???あの???あの最底辺の???
そこら辺にはびこってる、あの?????」
「ああ」
「おわった」
「だろ?生命が途切れるのも力の放出場が小さすぎる故だ。」
「どうりで、此処まで不安定な訳だわ。」

そう頭を抱えるアルカポネに、笑うアンダルシア。

「いや、あいつは結構強いぞ。」
「ええ?」
「お前はあまり暮らしてないが、花を咲かせても人の花ばかり。
だが、あいつは多分一つに及ばない。」
「…まさか、複数の花々を?それこそ伝説級じゃない。」
「願いを二つ以上なんて強欲極まりないよな?」

まぁ、それが叶えられるということは、そういうことだ。
それ相応の、力を持ち、そしてその力を扱えるもの。

「花束を捧げるとかいいそうじゃね?」
「うわぁ、言いそうというか、そういう子だったの?」
「い〜や、どうだかな。」

ああと言う彼女の声に、ちらりとアンダルシアは思い出す。
メルと話をして暮らしていた頃の記憶を思い出し、そっと目を閉じた。

「(その人に、人達に、笑って欲しかったんだろ?)」

どうか、自分の手で、こっちを見て、笑って。
花は、綺麗だから、だから、そう前を向いて。

その場所に立ち向かい続けて、すり減ったその魂に。
それでも、それでも、会いたいと願うならば。

どうか、叶えてやって欲しい。
自分の祈りが、変わったとしても。

そう、あの子達も、望んで散らせて
また戻ってきたのだろうか。


「可愛い奴だよ」
「アンダルシア…」
「ほんと、可哀想なくらいに、ね。」

純粋にそこしかみないのだ。
裏表なんて考えられる子ではない。

「そう」


そうなら、いいのだ。