摘んでしまえばお前のものだ




『(にしても今何時だ)』

前回のあらすじ、ウイス達が来て、コロネにプレゼント貰って遊んで疲れて寝た。


いじょう!!!!



『(下手したら数日眠ってたかな)』
「ご名答、軽く3日眠ってましたよ。」
『(わぁ!大神官様に皆さんは…)』
「第5宇宙の面々です。」

そうはいってきたのは、第5宇宙の神々だった。

「よ、顔色は前と比べてかなりいいな。」
『てぃ、っげほっ、ごほっ』
「嗚呼こら、お前無理して話さなくていいんだって。」
『(まって第5っつーことは、何処だ!キャド!!!)』
「はいはい、言われずともいますよ。なんです?」
『(私君に言ってなかった!?まだくんなって!!)』
「ええ、なのでこっそり様子を見に来たら貴方が起きちゃったんですよ。」
『(私の睡眠盗み見にくるなっつってんだろ!!!!!)』

な、なんか、元気だな。
そうですね。

そう破壊神であるアラクと、界王神であるオグマが冷や汗をかく。
顔が青く、死にかけだったという噂を聞いてくれば、
どうやらかなり回復しているらしい。

『(というかお前前もそうだったよな?!
どうして私の寝ている間しか見に来ないんだってば!!)』
「貴方がそうテンションを上げるからです。
私は貴方と話がしたいのですが、時間が合わず…」
『(私ルメリア様から聞いてるからね!?
貴方ルメリア様の時も寝起き寸前しか来ないって!!)』
「チッ」
『(あああチッつった!お前言った!!ねぇ言ったって!!!)』
「はいはい、メルちゃんよしよし」
『(棒読み!!!!)』

ほんとにそこまでにしとけ、そうティーナの言葉に、大きくメルは息を吐いた。
如何せんまだまだ不調ではある身体。
あれ程の力で数日寝込むとは本当に体力が落ちたというもの。
食事は後でするとしてもだ、いやまて。


『(なんか大神官様いるの嫌な予感しかせんのだが
とりあえずなんで貴方おるん??????)』
「おや、嫌な予感だなんて、私はただ貴方が心配で見に来ただけですよ?」

たまたま、第5の者達が謁見したいと仰っていましたので。
そのついでに連れて来ただけです。そう言った大神官に、
それならいいがと、今度こそ肩の力を抜く。

『(まぁいいか、にしても謁見って何様?)』
「惑星フィアトスを覚えていますか?」
『(嗚呼アルトが止めていた一つ、最古の惑星のことでしょう?
それがどうかしたの?キャドさんや。)』
「あの惑星で華神になりそうなものが出ましてね。」

その言葉に、メルの身体がばっと動く。
やめろという声が聞こえたが、そんなのかんけいない。

『…お前、それがどういう、いみか、わかっているのか……!!!!』
「ええ、なのでこうしてご相談に来ました。」
『っ!!!』
「メルっ!!!」

急に力を発揮したので、身体をばたりと地面に堕とすメルに
ティーナが声を荒げて駆け寄った。

「まだ発芽未満ですが、可能性がかなり高いです。摘みますか?」
『(命をか、それとも記憶をか?)』
「メル…」
「その権限は現在貴方にあります。エフェメラル様。
お忘れですか?ご自身の身分を、その場所を地位を。」

もう、華の者達はいないのだ。

「お父様とお母様はおられないのです。
貴方自らが決断をして采配を下さねばならない。」
『っ、はっ、はっ、はっぐ、っ』
「嫌だというのですね、ならそのままに」
『っまっ、だっ、ごほっごほ』
「無理すんな、っおいキャドお前煽るな!!」
「最果ては黙ってなさい。」
「っ!!」
「少々時間がないのです。これでもう一度、なんてしてみなさい。」

分かっている

「同じ過ち、いえ、それ以上の最悪が、居座りますよ。」

分かっている、でも

「…それでも、貴方は摘みたくないというのですか。」

その子は、無害だ。

無害なのだ、花は全て、無害で芽吹く。
そこがたまたま、望まれぬ場所だっただけで。

「大神官様達が言わないので私が言います。
メル様、いえ。エフェメラル、
貴方このままでは新たな華樹神の子が生まれますよ。」
「っキャド!!」
「その状態で長くて数十、いえ、数年。半年未満には回復しないと難しいでしょう。
あまり言いたくないですが、枯れた種の末路はわかるでしょう?」

そう、彼女の言う通りだ。
この理の中で、力の強い者が消えるということは
位置につけない、それは魔女に途中で枯れる対象に入るということ。

それ即ち、もう戻れない本当の終わりを意味するのだ。

「厄災になろうなら、最初から摘むべき」
「…おまえ、何を考えて!!!」
「なにとは、至って通常通り。」

その子を殺します

その言葉に、ティーナの華が胸で咲き誇る。

「んなことやってみろ…あたしが、絶対殺させねぇ!!!」
『てぃ、なっ、だ、めっ』
「駄目なもんがあるか!!お前はメルトリアの時から見てたんだろうが。」

アタシたちを、お前自身が、
そっと鏡に触れるようにみてくれたのを、
何となくだが気付いていた。

そう言ったティーナに、メルはそっと目を開いた。

「お前は確かに病弱で、力も弱いし、食べねぇし弱いが。」
「サラッと酷いこと言ってないか?」
「だがお前は、何よりも優しい心を持っているし、
アタシたちだけじゃねぇ、メルトリアすらも、お前を見た。
その芽を自分で摘めないんじゃねぇ、摘みたくないんだろう?」

そうしたら、今度こそ終わってしまうから。

「お前は諦めたくないんだ。その願いを。」
『そっ、な、こと』
「違わない。なら何故神としてこんな場所で力を生成させ続けている?」
『っそれは』
「人間として生き続けたい気持ちを持つのは
アタシだってよくわかる。そうだよな、そう生きたんだ。
急に神になれるよなんて言われて、受け入れるわけねぇよな。」
『っ』
「加えてそれが今まで見ていた夢物語が現実になって。
何度も何度も現実だった世界が夢の様な遠い場所になる
その時間どれ程怖かったか。」

嗚呼、だから、私はこの人を尊敬してやまないのだ。
こうやって抱きしめて、大事なことを言い聞かせてくれる。
大事に、見つめあって、見てくれてくれる。

助けるのではない、寄り添ってくれるのだ。

「お前を助けられる力はねぇし、お前が歩くしかねぇ。
だがアタシもあいつら全員それが出来ると知っている。
確かに時間はかかるし、なったらしゃーない。だが、」

お前はずっと

「其処を諦めずに、今もいるじゃねぇか。」

此処に、此処に、其処に、此処に。

飛び越えるのでもない、額縁に飾ったまま、手をかけたまま、止まっているだけ。

それを、我々は背後を見続けるだけなのだ。

『…った、しね?』
「嗚呼」
『ず、っと、てぃ、なさ、まに、ききっ、たかった』
「……ああ、なんだ?」

声に出して、吐血したって構わない。
なんだか今日は、声が出るような気がした。
いや、出さないといけない。

声は時に、心以上のものを伝えるものだから。


『どう、して、わた、しを、みてく、れたの?』
「…お前がアタシを見つけてくれたからに決まってるだろ?」

そう涙ぐみながら、ティーナはメルの頭をとり、おでこを付けて話す。
軽く目を細くするティーナを、メルは見続ける。

「お前がアタシと話をしてくれた。
何処かも知らない場所ばかりを見続けた。
お前が、ルトラール様に連れられて修行した。
だって、だってな?記憶の廻廊であるお前を、
本当の最果てに連れていかすわけには
いかなかったからなぁ。」

嗚呼、ばれていたのか。

「流石にアタシを舐めんじゃねぇよ?
ハシュクロードもそれに気付いてお前に願った。
他の奴らも、お前の存在に気付いて願いを変えた。
古い主より新たな主へ仕えろって上が言うんだから。」
「おや、仰いましたかねぇ?」
「嗚呼」

そうだよと振り返って大神官に答えたティーナ

「アタシたちはあるべき最果てに姿を変える。
だが、新しいお前以上の神なんて仕えるつもりはない。」
『てぃー、な』
「だってお前みたいなやつはみたことなかったんだもん!
自分の願いを越えた想いを、願う馬鹿みたいなやつなんてな!!」
『…嗚呼(ほんと、この人は狡い)』

その通りだ

私は、あの子が望んだ両親の手を望んだ。

小さなピクニックで笑いあう彼女の存在。

その子の手を、望み、そして、その子は手を私に向けた。

私は、もう幸せなのだから。

こんどはおすそわけするのだと。

まだ叶ってもいやしない願いの中で言い切るのだ。

ほんと、馬鹿で、馬鹿だから、蔓延った。

その色の違う、雑草を。

その手に、委ねて笑って泣いた。

あの時間を。

『…あなた、は、ず、るいね』
「…メル、おまえ」
『ずるい』

そう言われたら、あの子に謝らなければいけないではないか。
いつか、いつかここに、連れてきたら、きっと連れ出される。
あの場所に、戻った時が、私の一番の終わりだろう。

戻りたくなんてない、戻りたいと思いながら。
酷い、矛盾を抱えたものだ。

だが

『流石に、かんか、だめ、だよね。』
「メルさん、先にお伝えしておきますが、
確かにキャドさんの仰ったことは事実です。
このままでは貴方は枯れ大きな魔女、
恐ろしい、大魔女へと進化するでしょう。」
「大神官様…」
「そうなれば私の力でも敵う相手ではない。
全破壊神そして界王神、華の者達全員を合わせ戦ったとしても、
貴方に立ち向かえる勝算は正直0に等しいもの。」

それ程、自分の培った力はとんでもない威力を持っているということだ。


「なので、貴方を今この段階で消し去るか、
それとも神として歩みを進めるかの決断を
貴方の声で、お聞きしたいと思いまして。」
『ああ、やっ、は…わるい、じゃん』
「そうでしょうか?」

ほんと、酷い人たちだ。

「大神官様」
「なんでしょう」
「その、もし、もしその彼女が」
「消された時の話しですか?」
「っ、え、ええ」
「消えるさ」

そうティーナが答える。

「あたし達より、先にフィズらが枯れに入る。」
「っ!!」
「…我々が現在最もメル様に近い位置ですからね。
ご安心下さい、一応我々も華の道を歩むもの。」

自らの願いを手折るなど、造作もない。

「ま、折れたとしても浸食は早い。
アタシ達最果てに続いて、リフレイら息継ぎが。」
「そして我々息継ぎから、原初であるキャド様まで枯れるでしょうね。」
「それまさか」
「ま、暴走して全員魔女になるってことだ。」

そう言った意味で、勝算がないというのだろう。
大神官が言うのは、魔女にならない者達のかなり少数人数の話。
奇跡的にその時間が遅く、魔女になりにくい存在達の話だ。

一定数そういうのが生まれるとは聞いてはいたが、
それも奇跡を願うもので、
正直全員突如として魔女になるだろう。

「そうなれば、この宇宙は全部終わりだ。
その前に、芽吹けないなら摘むしかない。」
「…つまり、彼女を、この場で消すと。」
「今なら幸いなことにルメリア様が復活をされて間もない。
新たな華樹神の子を創り出し止めるだけのこと。」
「メルは無かっただけになる。」
「っそんな」

嗚呼、だろうなとは思った。
黒く塗りつされた一つの絵画を見つけて。
私は笑みを浮かべた此間の記憶を漁って笑った。

『…私、神様いやなの』
「メル、お前」
「……」
『人間に産まれた、人間で居たかった。触れれなかった。』

触れたい子がいた。なのに触れれない。
私は映像を見ていた。触れない子の記憶を。
なのに、それは違っていた。

私が映像の中の人物だった。

其処が現実だった。

触れれない子が空想だった。

触れれない子が神だった。

私は、人間なのに。

感情という言葉を落っことして産まれたのだ。


『ただ、あのこの、手が、欲しかった、だけ…』
「…メル」
『私、まだ謝れてないの。』

ねぇ、ミユ、ごめんね。
私貴方の名前の様な人に成れない。
成れるわけがないのに、私は貴方の名前に相応しくない。

私が居たから?私が、いや、違う。

『あの子と私が居たから、二つが一つの名を得られたのに。』
「…お、まえ。」

綺麗に花畑で眠る小さな少女
みすぼらしい彼女の胸に刃を当てて
それでも、殺せない殺せるわけがない

だから、私は私を殺したのに

君が目を醒まして、望まぬ願いを胸に抱いて。


そうしてこの時が生まれたのに。


ーどうか、どうかこの子を、殺さないで!!!


世界を恨んだ、貴方が泣く、そんな世界を。


『何時か神になる。』

でもなりたくないの。
だってあれは人の時間。


『ドクドクではなくチクタク
時を刻み歩んだ私ではないの。』


あの子こそが、神に相応しい存在。
神であり、神ではないあの子。


『スピスさん』
「…はい」
『私、天使になれますか?』
「メル…」
『私、良い子で入れました?』
「それは、何時の得でしょうか?」

そうスピスと呼ばれた大神官は目を閉じて聞く。
両手を未だ後ろでとめたまま。

『12、11、10…いや、1ではない。』

0番目

『ルメリアと交わした、あの子といえ、
ミユに触れられなかった
あの、私と、あの子のです。』
「…そう、ですね。1番目辺りはわかりますが、
貴方の記憶そして情報があれば、判断が出来ます。」
『…そっ、か。』
「徳が無ければ殺していいというのですね?」
「っ!!」

そう言った大神官に、メルは嬉しそうに首を縦に振る。
わかりましたと大神官は告げ、コンタクトを取る者達を絞る。

「ですが、少々時間がかかります。
そしてそれは貴方に酷く負荷がかかる。」

あの時の裁判を

「あの場所に戻すことになります。それでも?」
『はい』
「…決意は固いようですね。わかりました。
一週間後場を用意します。」
「大神官様」
「キャドさん、華の主がそういうのです。
それに、見積もってもアレは数年持ちます。」

今すぐにとはできません。
そう言った大神官がああそうそうとメルに振り返り言う。

「徳があれば神にもしも無ければどうされます?」
『どうとは?』
「この星で新たな人間として産まれたい、なんて考えていませんよね?」

嗚呼、ほんと

「っできるのですか!?」
「可能です、ただ、もうこの場所には二度と、来れないことになりますが。」
『…ええ、それで。』
「…分かりましたではそれで。」

ぱたりと閉じたドアに、どっと力を抜かすティーナ

「お前酷いことかわすね」
『え』
「徳というのは数多の人間がお前に票を入れることだ。
その時に、良いと思わない者達の方が多いというのに。」
「っ!!!」
「お前、何を企んでる?」

さあ

なんだろう。

そうニコリと笑うメルに、ティーナは舌打ちする。