音果てには神様がいた




全開のあらすじ


コルン達とアルプス一万尺を歌って踊ることになった。


異常!!!


異常すぎます。
そうメルは強く思っていた。


『どうしてお二人一発で出来るんです???』
「メル様の教え方が上手だからですよ。」
『あとお二人ともプライドは??』
「外に出るのがこれしかない以上やるしかないでしょう?
それにメル様にそこまでさせておいて、
やらない他ありません。そうですよね?コルンさん。」
「う」
『……若干一名、苦しい悲鳴が上がりましたが』
「させておけばいいでしょう。」

そうプライドに任せて流すからこうなっているのです。
いうねぇ、とメルは兄からの言葉にうんうんと頷いた。

「さ、コルンお兄様もしましょう」
「ですが」
「この期に及んでしないだなんていえます?」
「う゛…わ、分かりました。」
「では私からでも構いませんか?ウイスさん」
「わかりました、
お兄様にそう言われたら、
引くしかありませんね。」

ニコリと笑い、手をとするサワアに
嫌そうな顔だったコルンだが、仕方がないと手を出した。

「メル様、歌って頂けますか?」
『はいさ!!合点承知の助!!!』
「ふふ、よろしくお願いいたします。」
『はいよ!面舵いっちょ!』

音楽スタート!そう言うメルに、音が鳴り響く。
アルプス一万尺小槍の上でアルペン踊りをさぁ踊りましょ。

「…お兄様」
「なんです?」
「恥ずかしくないのですか?」
「そりゃあとても恥ずかしいですよ?」
「でしたら何故そんなに出来るのです」
「まぁ、あのような話を聞いて
あんな嬉しそうにされたらねぇ?」

そうちらりとメルの方を見た二人
天使とあれど、これくらいの
簡単な踊りは見なくても出来るというもの。

それをも忘れているメルは、
目を閉じて嬉しそうに
右へ左へと身体を揺らして歌い続けるのだ。

そりゃあもう、口を大きく開けて
ニコニコと笑って歌うものだから、
こっちも笑えてくるもので。

「あんな姿、見たことあります?」
「いいえ、一度たりともありません」
「でしょう?なので、尚更、ね?」
「はぁ……全く、彼女であれば
我々も力を使って出ていたというものを。」
「相手が相手ですしね。」

戦闘許可を貰っている以上、
天使が3人もいるのだから
普通に外にでることなどたやすいものだ。

だが、それをせずに穏便に済ませているのは
メルのためでもある。

ここ最近笑っている顔をコルンだけではない
誰もが見ていないという状態だったのだ。

最後に笑っているのを見たのは、
アルトと一緒に旅をしていた時辺りだろうか。
アンダルシア達の元に行ったときは、
確かに笑っていたがそれも所詮人に合わせた笑い。

自ら笑って歩いてとするのは、
アルトと二人旅をした頃と、割と前の話。

本当に心の底から笑うというものでもないので、
そういう笑顔を見た者はと考えれば、
恐らくずっとずっと前になるのだろう。

そう考えたら、こうやって嬉しそうに笑って
なんなら恥じらいもせずに楽しそうに歌うのだ。
それを無碍になんてできるわけがない。

「こんな陳腐な踊りで、
あんなに楽しそうに笑ってくれるのです。
これくらいでよければ、踊りますよ。」
「…お兄様はお優しすぎます。」
「そうでしょうか?」
「ええそうです」
「まぁ、そうかもしれませんね。」

だが、まぁ

「泣いて蹲るよりかは、
笑って泣かれる方がいいですね。」
「…ええ、そうでしょう?」

+++++++++++++

『あ〜いや、笑った笑った。』
「笑いすぎてません?」
『だって〜』
「後はメル様とですよ」

コルンはそのあと、ウイスとすぐに交代でした後のこと。
メルは軽く休憩し、水を飲んで声の調整をしていた。

『流石にやる時は歌うのやめても?』
「かまいませんが」
『サワア様歌ってもらっても?』
「いいですよ」

ちょっと気になるのだ。
メルはパタパタと手の動作を確認する。
こうしてああしてと口が動く。
声に出していないものの、微調整を行っているようだ。


「できます?」
『いえす』
「お願いします」

そうして手を叩き合わせるコルンとメル
動作をしていて、すぐに思ったのが
メルのその真剣な顔持ちだった。

余裕が出るはずなのに、一切隙を見せない。
顔の表情が硬いようにみえるも、
途中から笑って楽しそうに踊ってみたりする。

声を一瞬掛けようかと思ったが、
それで間違われても困るもの。
一度で終わらせたいものなのだ。


ーこれくらいで笑ってもらえるならば、やるしかないでしょう?


兄の言う通りで、これくらいの踊りで
彼女が嬉しそうに笑って楽しんでくれるならば。
喜んで、とは進んでいけはしないが、やるだけはする。

沢山泣いて、沢山我慢をして、
そのせいで感情の整理すらも
ままならなくなっているこの状況で。

貴方が何も考えずに、笑ってくれるならば。

我々はこうして手を足を使って
貴方の為に動くだろうに。
その気も、気付かないなんて。

いつもは気付くほどに、
いや気付くように、
気を張り詰めているのだろう。

そうでもしないと、
彼女はとてもじゃないが、
生きれなかったから。


忘れないように、
ただただ、その願いの為に、縋るために。
何度も何度も何度も、その感情を、守るためだけに。
その身を捧げ続けた、その対価が。

感情を鈍らせ、本質を知れなくなるというもの

それは人間であるどころか、神でも少々問題になるというもの。
気付くということをそもそもさせないというものなのだ。
気付いているのに、気付かないように鈍らせる。
そうして、本当に気付かなくなってしまうというのに。

彼女は分かってやるというなら、とんでもないことだ。


「(メル様、本当は分かっているのでしょう?)」


我々がどうしてこんなことをしているのか。
そうして、この場にずっと閉じこもっているのか。
時を止めた、この場所で、ずっとずっと、笑えているのか。

貴方はその時間を、望んだから。

煌びやかな12の時間の頂点に辿り着いた神様。
その赤い輝きを放った彼女の、本来の姿がソレならば。
それを、出さないで、居続けたいというならば。


ならば、ここだけで。
どうか、この場所だけでも、許してと。

彼女は望み続けるのだろう。


願わくば


「(この痛みを、誰も知らないまま、触れないでと。)」


彼女が望んだ時間は、酷くありふれたもの。
確かに得られると思っているもので、
でも得られていなくて、理解できてなくて。

得られるはずの感情を、別の者から貰って。
それを、ただ返す為に、彼女は走り続けた。
そうして、返す時になった途端、一緒に居続けるというのだ。

その手で、希望と絶望を、繰り返し続けると。


「(忘れればどれ程楽になるのか、知っているでしょうに)」


どれ程自身が、出来ない者か、責め立てたのだろう。
楽になる行為に、何度走っては、止めたのだろうか。

忘れたくないと、悲鳴を何故、あげたのだろうか。

知らないで良い、知る由もないだろうに。
コルンは、何故が、止まらなかった。
手を叩いてはそう考える。

必死になって、間違えないように動かす彼女。
普通にすれば、間違う訳なんてないのに。
そのままでいいのに、違うと否定して行動を変える。

だから間違えるというのに。


「(そうして、間違えながらも。笑って、前を向くのですね。)」


ーどうしてそうも笑うんですか。

ーええ?そうだねぇ、どうしてでしょう?

ーちょ、私が出来ないからですか、

ーいいえ。寧ろ貴方と一緒にいると、思い出す子がいるんです。

そう何時しかの師匠の言葉を思い出す。
手を取っては放されて、しりもちをついた此方に笑う。

ー嗚呼ほんと、貴方って子はあの子に似ていておかしいったらありゃしない!

ーちょ、私で遊ばないで下さい!!!!

ーごめんごめん、その子ともし、もしも会えたら。どうか面倒をみてもらえないだろうか。

ー私が?

ー嗚呼、君なら、あの子をきっと、見つけて手を取ってくれる。

僕はそう、信じているよ。

ーだって君も、間違えつつも前を向く、真面目な子供だろう?


「ほんと、似た者同士は困った者ですね?」
『ひぃ』
「お疲れ様です。」
「メル様少々体力がなさ過ぎるのでは?」
『ば、こ、これしぎ』
「休憩しましょう」

ほらお水ですよ。
そう言ったウイスに、メルが手を伸ばす。
右へ左へと振るが、メルは地面に倒れて前を見ない。
それをわかってか、ウイスは伸ばしても届かない位置で水を出す。

ニコニコと笑ってメルを待つウイスに
コルンはじっといじめられているのを見てため息を吐いた。

「ウイス」
「ふふ、いえ、メルさんが
あまりにも面白いものですから、つい。」
「気持ちはわからなくないですね。」
『びい、ああいぎがえるう』
「っふふふ」

『滅茶苦茶無意識で踊ってたけど顔どうしてました?』
「口を開けてひたすら手を見てましたよ?」
『嗚呼忘れて』
「無理ですね」
『記憶を消させて』
「駄目ですね」
『許して』
「許しません」
「…お兄様」

すみません、つい。
そうコルンに指摘されたサワアは笑って答える。
さらりと答えるものだから、メルもまた笑っている。

『も〜皆面白すぎるんだから。』
「ふふ、メル様がそうだからですよ?」
『えっ私影響力強すぎつまり神?』
「何馬鹿なことを言っているんですか。
既に貴方は神でしょうが。」

びい

『全く、ほら最後はサワア様ですよ。』
「はいはい、もういいですか?」
『さっさと終わらせちゃわないと、私癖になっちゃいます。』

こうやって笑うなんて、久しぶりなのだ。


『我儘になって、皆に迷惑かけちゃいますから。
でもどうか、今だけはこの、空間だけは許してもらいたくて。』

「そうでなくても、皆さん待っていますよ。」

貴方のその、陽だまりのような笑顔を。


『いいの、私はこうして、笑わない顔こそが完璧できれいな状態。』
「人形のように?」
『そう、それがいい。そうして、あの子を守り続けた。』
「そうしなくてもいいというのに?」
『うん』

いいの

『私はそう、願って叶えてしまいたかったから。』


手を前に出す。


『さ、踊ろう?サワア様。』

「私としましては、出来れば此処に居続けたいのですがね。」
「っお兄様」
「貴方がそう、笑わなくなるのならば、ね?」
『…狡いなぁ、ほんと、天使ってば。』
「なんとでも言えばいいですよ。天使ですし。」
『ははっ、も〜〜いつか、いつかね。』

ええ、いつか。

「お待ちしておりますよ、メル様。」


+++++++++++++


がちゃりと音が鳴る。それによしとメルが動くが、

「おや?」
「モヒイトさんですか」
「皆さんどうして…というか、メル様はどうされて?」
「外に出るつもりが、貴方が来るということをすっかり忘れていまして」
「力尽きて地面に倒れ込んだだけですよ。」

その間に、モヒイトに今までの説明をコルンが伝える。

「なるほど、そのようなことが…」
「おかげさまで少々メル様のメンタルがおかしいですが、気になさらないで下さい。」
『私全く問題ないですけれども?!!?!?』
「…確かに問題ですね。」
『なんでかなぁ!?!??!』
「ふふ、そうやって身体迄動いていませんでしたしねぇ〜。」

私としてはこっちのメル様の方が好きなので、
是非とも向こうに戻った際もそのままでいて頂きたいものです。

そう言ったウイスに、サワアも頷く。

「メル様はそのままでいて下さった方が可愛らしいですよ。」
『嗚呼可愛くないもん!!みんなが可愛すぎるんだもん!!』
「はいはい、そうですね。」
『ああん!!!』
「…全く相手にされていないこと、分かってます?」
「分かってないでしょうね。」

サワアに流されているのを見て、
モヒイトはちらりとコルンに聞く。
それにきっぱりと言い切った言い捨てきった。

「というか、問題はですね。」
『ねぇどうして私の目を隠すんです?』
「すいませんメル様、寝ていてもらえます?」
『え?なっ』
「ウイスさん」
「気絶してますよ。」

はぁとコルンがため息を吐いた。

「皆さん思っての通り、上のお題が変化しています。」
「今回は8つですか。」
「ええ、肩車や誰かが抱っこをするという内容はまだいいですが」
「名指しと来ましたか。」
「うち3つはどうにかなりますが…」
「問題は後の5つですね。」

そう、今回のお題は8つ

・誰かが誰かを肩車する
・誰かが誰かを抱っこする
・全員で温泉に入る
・全員メルに10か所キスをする
・一人一度メルと性交をする
・性感帯を5つ増やす
・メルを大小問わず50回いかせる
・全員が満足する


「なんとも悪趣味なお題ですね」
「どうします?全員で強行突破してみます。」
「寝させている間にそうするしかなで、しょう!!」

そう言ってコルンが力を使い威力を最大に上げて攻撃をするが、
綺麗に修復させられるドアに、舌打ちを打つ。

「ならば、二人同時はっ!!」
「ダメ、ですか。」

全く歯が立たなそうな形に、コルンはウイスに指示を出す。

「ウイスさん、メル様を出来るだけ遠くに置いてきてもらっても?」
「わかりました。バリアも張ってきてから戻ります。」
「頼みましたよ。他の皆さんは全力で力を出しましょう。」

そう言って杖を持った各々が戦闘態勢に入る。
その間メルを姫抱きで遠くに移動しているウイス

『んんっ、』
「すみません、少々力業ですので、もう少々眠って頂けると助かります。」
『う、いす、さ?』
「これでダメなら、貴方には少々酷なことが待ち受けてますので。」

ご容赦下さい。
そう言って目覚めたメルの身体に手刀を入れ
もう一度意識を飛ばさせた。

ウイスはそっと立ち、メルの身体の傍で杖を三度叩く。
かなり強固なバリアを創り上げ、仕方がありませんねとぼやく。

「貴方をこんな場所で汚すなど、全天使が許すわけがないのですから。」



そう言ってウイスはメルを置いて、元来た道を戻る。
念の為、方角をちゃんと覚えてきた上に、気配を辿れるように物も置いて来た。


「戻ってきましたか」
「お待たせしました…だめ、そうですか。」
「ええ、この三人でやっても無駄ですね。」
「やりますか。」
「お願いします。」

そうウイスが杖を取り出し、力を注ぎ始める。

「一応全員で一度にあのドアの中心を狙いましょう」
「わかりました」
「ありったけの力を込めて下さい。」

コルンの言葉に、全員が力を兎に角溜めにため込む。
これ以上出して、力がなくなるほどに。

「正直こんな威力を出せば、メル様に危険が及びそうですが」
「それ程柔なバリアを張ってきたのですか?」
「するわけがないでしょう?一応かなり強度の高いものです。
前にキャド様から秘伝のバリアを教えて貰いましてね。」
「嗚呼あの原初である守護の華神様ですか?」
「ええ」
「なら大丈夫そうですね。」
「私語は其処までにしてください。」

そう言ったコルンに、ウイスやサワアは黙る。
更に力を籠め続けること、数分。
全員が一致したその頂点に一点を解き放つ。


その場所自体に、爆風が上がり、すぐに軽くバリアを張り耐える・・・が


「駄目、ですか」
「するしかないと、」

ブーというブザーのあと、8の数字が10に変わる。

「っ…ドアを破損させた為、罰として加点すると。」
「チッ、また厄介な。」

・誰かが誰かを殺すこと※ただし死んだ後華神の力は扱えるようにする
・2人一組でメルをいかせること※必ず全員が入り、全員メルと手を繋ぐこと。

なんなら各お題にも詳細が付け加えられる。

「これ以上破壊、強行突破は止めた方がいいですね。」
「ええ、増える内容がメル様に対してです。」
「ただでさえ酷い内容、正直壊してでも出たかったですが…」
「こうも酷いと…謝っても許される行為をするものではないのですが。」
「ウイス、すいません、彼女を。」
「…分かりました、戻してきます。」

そう言ったコルンに、ウイスは答え、そっとその場を後にする。

「メル様にどう説明します?」
「とりあえず土下座しますか。」