水底と囁く者ども
「なっ、し、しん」
「一つお聞きしても?」
『どうぞ』
「どうして死んだと認識できるのです?」
『死んだ感覚というか、無かったからね。
まぁ光が一つあって、それに縋ったのが始まり。』
その光が私の力そのものだったとは、その時知らなかったが。
『私は私を殺した。神の私を殺し、人間が残った。
だから私は人間であり人間の感情が無かった。』
「…神に作り替われば、拒絶反応を起こし、死に至ると?」
『ま、それが上に残されている情報の一部。』
言っとくが、これはあくまでも一部分だ。
『偽物ならいいが、本物ならシンお前は外れろ。』
「っなぜ」
『お前は酷すぎる。正直デンデ辺りも外したい。』
まぁ
『べ〜〜〜つに天使は似た部類だしいいだろ。』
「…まぁ、そんな嫌なんです?」
『ああ?嫌って言うか嫌ならこうしてると思う?』
「いいえ」
『んん〜似た者同士、元々無だった。
光を充てられただけの私は結局時が過ぎれば戻る。』
それは、日向に当たった人のように。
最初は温かいが、日陰に超時間いれば、
日向の体温なんて忘れてしまう。
『変わらない華は華なのだ。ま、本物ならの話。』
偽物ならいいが。そう言い聞かせる。
『そんなことより、明日はいけるかなあ。』
「どうしてですか?」
『これ華樹の力も利用しているから、人を減らすのも手かと。』
「嗚呼、力そのものの、ですか。」
『分かった奴らから外すのがベスト。』
そう思ったメルは、はぁとりあえずとため息を吐いた。
『風呂って寝るから、お前ら帰れ。』
ぱちんと指を鳴らしたメルに、
綺麗さっぱり消えて無くなり、視界が黒くなる。
「…ほんと、何故気付いて放置出来るのか、理解に苦しみますね。」
そうウイスは身体を起こし、頭を抱えた。
何人かがベットから徐々に起き上がる。
「起きましたか。」
「ええ、先程切られました。」
「すいません、彼女結構荒いところがありますので。」
「いやアレを荒いで済ませれます????」
ロウがルトラールにメルが居た方向を指さして言う。
それにくすくすと笑ってごめんなさいと言う。
「私に似すぎたんですよ。」
「いや、そうみえませんが……」
「メル様の状態がソレを決定づけることでしょう。」
「モヒイト様!!」
そう陰から出てきたのは、ロウの所から、破壊神の付き人モヒイトだ。
「そうですねぇ、確かにあれ程お転婆でしたら
コルンお兄様が黙っていないでしょうし。」
「〜〜〜〜〜〜〜」
「現在進行形で困惑していますがね。
どうです?うちの子、可愛いでしょう???」
「アレをよく可愛いで抑えられますね?!?!!?
とんでもないものを放置してどうしてくれるんです!!!!!!」
勢いでコルンがルトラールをぶんぶん振る勢いで叫び出す。
わなわなと震えるコルンに良いではないですかと彼は言う。
「アレは私が愛した子ですよ。いい子で優しい。可愛い子。」
「……まぁ、素直な上に、場を弁える子であることは分かっていましたが。」
「少々しすぎ、ですよね。」
「あの子は願いの先に行った者。完璧に隠し通していたのはそういうことです。」
選ばれるべき存在。
「ま、少々詰めが甘いのが、昔からの悪いところですがね?」
「まさか本当に等身大をかくとは本当にあの子は本当にもう」
「ああコロネ、そんな頭ふらないの。」
ぶんぶんと上下に振るコロネに、ウイス達は苦笑いを零す。
「ですが、資料を見た処、異常は全くありません。」
「此方もです。彼女の行いは寧ろ非常に良いもの。」
「ま、人間にしては変に出来過ぎたってところだがな。」
そう言ったロウに、までしょうねとルトラールは答える。
「そう言いますが、どうみます?地の者よ」
ルトラールは悟飯達の方を見て話を振った。
ゆっくりと起き上がった面々に少し考えた後悟飯が言う。
「正直、貴方がしたことは酷いと思います。」
「悟飯…」
「僕も割と、父さんに捨てられた時期はありました。
勿論愛情をくれていたのも、彼女だって分かっていた。」
だが、それは、悟空の場合どうしようもなかったからで。
「仕事を言い訳にして、
必要なことすらも言わずにするのは、
なんなら母親の方は考えるべきものではないと思います。」
「だそうですよ?」
「っルメリア様!!!」
「…ま、そう言われて当然です。」
陰からすっと、ルメリアが現れたのだ。
それに悟飯が青ざめるが構いませんと答えた。
「事実ですし、私達が事の発端でもあるというもの。」
「ん?どういうことだ?」
「悟空さん、ようは、私とルトラールが
喧嘩をしたから、あの子は
ソレを止めるために願ったのですよ。」
「いい!?」
「…まさか、それが真実ですか?」
「ま、正確には違うのですが。」
そう言うルメリアに、
ルトラールとルメリア以外全員がずっこける。
「おほほほ!ま、幼い頃を
と言いましたし其処も見たのですよね?」
「…ええ」
悟飯はぼやくようにいう。
「蹲ってました。胸に手を当てて、言うんです。」
ーだい、じょうぶ、だいじょうぶ
「これは夢だ、っ、大丈夫だから、って」
「悟飯…」
「彼女、現実なの分かってるんです。
何度も何度も何度も何度だって、言って。
言い聞かせてそれでも突き落とす。」
ーこれはげんじつ、じごくのじかん
「首に手を当てて笑って言うんです。」
大丈夫だなんて。
大丈夫じゃないのに。
周りに助けを求めないのかと。
「求める、ねぇ。」
「続きを見ればわかるよ。」
「え?」
助けられない遠くまで走ってしまった。
彼女を追いかけては、多くを失う。
そうルトラールは原初達をみる。
「だから、すいませんが、どうかあの子を此処まで戻してくれませんか。」
頭を下げる二人が、ふっと力を抜いた。
黒い髪色に、ウイス達天使は驚くのは勿論。
「……っ」
嬉しそうに笑っていた子をアルトは目を見開いて思い出した。
優しい子
「顔をお上げください、お二方」
「」
「ぶっちゃけ、迷子仲間なので!!」
そう両手を腰に当てて言うのは
「アルト!!貴方」
「ふふ、まだその元気ならいけるね?」
「っ何を考えて」
「天使はそのままあの子の考え通りに行って。」
そうベットに腹を向けて寝るアルトに、これとコルンが言うが無視。
「悟空さん達もそのままで」
「だがこう来たらこいつらでは嘘は付けん」
「そうですねぇ、悟空さんが嘘をつけるようには無理でしょう。」
「メルさんが父さんを出さないというのは?」
「そりゃ無理だろう。」
はっきり否定したのはアンダルシアだ
「あいつの性格上、似たような者を必ず一人付けている。
まぁ例外なのは破壊神あたりか。」
「確かに、妙な編成ですよね?」
「俺は奴に面識がほぼない。」
そう言うジーンにうんとアンダルシアが頷く。
「恐らく意味はあるんだろうが、
一周回って仲良くなりたいから
視察って感じだろうなぁ。」
「嗚呼、有り得そう」
「ど、どうすればいい。」
「他の者が出てくる可能性は」
「在り得なくはないが、一応インクの換えは渡しているはずなんで。」
それに気付かれたら、可能性が出てくるでしょう。
そう言った彼に、隠します?
という声にやめたほうがいいと否定する。
「悟空の勘以上と言うんだ。
下手したらこうして言い合っているのも
知られている可能性だってある。」
「ピッコロさんの仰る通りです。
此処は敢えて彼女に任せた方がいい。」
「では、我々このまま継続、と。」
「現段階では、ですが。」
本当の罪など、彼女にあるのだろうか。
「…あの子の魂をどうみたって、
悪に染まる気配すらないというのに。」
「ウイス……」
「きっと待ってるんだろうね。」
「誰をです?」
「ん〜〜さあ?」
誰だろうね、そういってアルトはちらりとみる。
++++++++++
ふぁあとメルはゆっくりと眠る。
彼らが本物か偽物か。
まぁ、もし本物なら、夢でいい。
これは長い、夢をみていて。
あの現実に、戻るのだろう。
いつか、いつかなんて、
『こなくていいよ』
こんな場所を見なくていい。
そう月が沈む姿を見て笑って言う。
『嗚呼、朝がまた来るんだ。』
貴方は何処にも、いないのに。
++++++++++
『じゃ、今日もよろしく』
「…追い出したりとかはしないんですね?」
『この膨大な量を私一人は無理です。殺す気か。』
「いや、そういうわけでは」
各配置を命令するメルに、流石にと周りがおどおどする。
もう気付いているから、というのもある。
メルはそれでも普通にするのだからこっちも反応に困るのだ。
『ま、普通にした方がお互いの楽になるよ。いずれは。』
「どういう…?」
『それもお宿題ってことで。ささ、いったいった。』
あ、そうそう。
『コルン様ありました?』
「ええ、此方で構いませんか?」
『うっっわ、おっっっおいですね???』
「すいません、一応これでも絞ったんですが。」
そう今日はコルン&メルのタッグを組んで挑む場所は、
この家の地下にある資料室だ。実は此処私も踏み入れたことがない所。
この家の仕組みは大体大きく分けて5つ。
喜び、悲しみ、怒り、絶望、希望
この5つが区画から飛び散り過ぎて纏め切れていない状態になっている。
それを整理するというのも、私の中では一つの目標になっている。
そしてここは
『(絶望と希望がごちゃごちゃだなこれは…)』
死ぬ以外の方法を出せない状態、そして希望しか見えていない愚かさ。
嗚呼浅はか過ぎて反吐が出るところだ。暗いから顔が見えにくいのが救いか。
「にしても、この量はすごいですね。」
『…ま、0番だからね。』
「…エフェメラル様」
『なんだいコルン様』
「審判は明後日です。」
そう言われて、少し項垂れるメル。
あれから数日様子をみたくなって、
そう、怖気づいてしまったのだ。
だから、彼らも驚いたと思うだろう。
もう来ないと思っていたのだろう。
「これを見て、我々の意見が通る可能性だって充分あるはず。
自分は白だと言い切りたいのですよね?」
『…違うよ』
「ではなぜもう一度出そうと思ったのですか?
いやそもそも、どうして貴方は分かってコレを?」
『…分かっていないよ。』
分かっていたら、もう少し上手に出来るはずだ。
私なら、私であれば。私の力ならば。
良い方向に向かわせれたというのに。
それをしなかった。
それは、知らないに等しいこと。
「…そう、ですか。……」
また静寂が訪れる。
そういえばこういう静寂が嫌いでつい話していたな。
あの時は若かったし、音の無い場所は地獄と勘違いしていた。
懐かしいなと思う。もう無い場所を想うだけ。
まだこの時間よりかは、楽だと、思いたい。
メルはそっと赤い本を軽く抱きしめた。
熱を持って温かいと思うのは、自分の体温が伝わったから。
この本に熱なんて出るはずもないのに。
まるでこれすらも、生きていると思いたくなる。
嗚呼弱い、心が、何よりも弱い。
だから殺し続けて来たというのに。
殺した後の産まれた私が一番強いと思っていたから。
でも、生き続けた方が何よりも強いのだ。
色んな事を知っている私だから。
『(こんなことを言っても貴方には聞こえない)』
ちらりと向いて想うメル。
此処の空間は彼らに言っていないが
ちょっと特殊な形に収まっており、
天使ですら思考回路を読めないようにしている。
最初は読めるようにしていたが、
それだとこっちが読めないというのが困る。
それならもうシャットアウトさせればと思ったのだ。
彼らが気付いているかは知らないが。
今なら、今この場所なら、私は私を維持できる。
人が人で、在れる場所。
それがこの場所なのだ。
「おっとしつれい」
ことんと落ちた本を拾うコルンに、いやいやとメルは答えた。
パンパンと本に付いた埃を叩いた後、うん?と声が出たコルンにメルが振り返る。
『どうした?』
「いえ…この本、題もかかれていませんね?」
『…貸して』
そう言ったメルに、コルンが赴き手渡しで本を渡してくれた。
礼を言った後、ふわりと身体を浮かせ、彼に見えない暗さに飛ぶ。
幾つかページを開いて、嗚呼とにやり笑ってしまった。
「お望みの本でしたか?」
『…違う、でも、これも必要かなぁ。』
「そうですか、お読みしても?」
『別にいいけど……怒って力使わないでよ?』
「…?そんな酷いことを書くものでもないでしょう。」
さも不思議のように言うコルンに、いいけどと言ってメルは手渡しして返す。
軽く読んだ為、本としては3冊程しかこの場所から引き抜くことはないだろう。
先程も言ったが、この部屋は希望と絶望がごちゃ混ぜになっている。
希望ばかりを述べた本から、絶望しか書いていない本まで。
カタカタと周りの本棚が揺れ出すのに、ちらりとメルが見つめた。
『コルン』
駄目だよ。
そう言ったメルに、ダンと強く打つ音が聞こえる。
「…メル様、いえ、エフェメラル様」
『なに』
「此処にある資料は嘘偽りないと断言できますか?」
『出来るよ。此処は私の妄想ですら消されるからね。』
何度かしてみたが、嘘を書けば綺麗にかき消されたり、修正されたりした。
一応絵とかも線を引いて書き換えようとしたが、それも出来なかった。
もうできたものは、書き換えることは不可能だということ。
それはつまり、実際起きたことがそのまま移されているということで。
「…貴方は、これを知っているのですか。」
『…一部しか知らないよ』
「嘘ですね。声のトーンを探らずともわかります。
貴方は怒りと言うものを知らないのですか?」
『置いて来たよ、そんなものは。』
必要ないと、悟ったからこうなっているのだ。
怒っても世界には通用しない。
それなら、その開いた口を塞げないならば。
この首ごと締め上げた方がいっそのこと
「おやめください」
『…何もしてないよ』
「そうですね。」
顔の見えない私に、彼らは優しい。
いや、顔をみたくないのだろう。
この姿を、否定したいのだ。
今もなお、否定、したいのだろう。