それは私と夢が嗤う




目を醒ます

何時だってその場所に居る


「っめ」


いないよ

そう背後に声が響く。
振り返ると、そこは真っ暗な世界だった。


「いないよ、だれもいないの」
「…めるさ」
「いたいよいたい。痛みは忘れて居たいと望んだ。」

もう、どっちかなんて、分からない。

「……だれも救われない」
「そんな」

ーごめん、もういくね!

手を伸ばしたって、誰も助けない。
それなら、この手は首に


「っ!!!」
「悟飯」

そう言ったピッコロに連れられ、絵画の外に出た。
灰色の世界、先程、メルから強制的に離された時に
ぼそりとミユと呼ばれたものが言っていた言葉だ。


ー灰色を覚える世界がある。そこだけは気を付けて。


「あれは、灰色なんですね」
「悟飯…」
「パンが嬉しそうに帰って言ったんです。
あのお姉ちゃんみたいになりたいって
言ったら「なれないよぉ」って
笑って否定されちゃったって。」

そう、私は私だから。

「助けて欲しかったんです。たった二人の手に。」
「…僕達で」
「ん?」
「僕達で、今度は彼女を助けられないのでしょうか?」
「此処の記憶を改ざんするという事か?」
「いいえ、そういうわけでは」
「んん、多分だけどよぉ、そうしなくたって大丈夫だぞ?」
「どうしてそう言い切れる。」

そう聞いたピッコロに、悟空がだってよおと答える

「俺達のことを見ているこいつすっげぇ嬉しそうだぞ」
「なっなにいいいいいいいいいいいいいいいいい!?!?!?!?」

確かに、その絵画は少し違う。
キラキラと見つめる彼女に、早く戻れ戻れと悟空にせがむピッコロ

「こいつだ!!!こいつの」
「…いえ、これではないです。」

だがというピッコロが見た悟飯の目をみてそこを見た。
額縁が綺麗だが、他に似ていているのに、違和感を感じる。

メルはそう言う子だ
数多の中に本当を隠す者
真実は、其処にだけしかない。

白い場所に、一つだけの絵画

++++++++++


「にしても、多いな」

此方は界王神メンバー
メルの罪が全て入っているという場所で調べていた。

「じゃが、どれもこれも罪に問われるものではない。」
「そうですね、人間でもごく普通のミスばかり。」

人に迷惑をかける行為そのものを否定する彼女だからこそだろうが
じろじろ見ていたロウに、仕事をしてくださいとシンがいう。

「ふん」
「全く、貴方には彼女を救いたいとは思わないのですか」
「救われない子を救ったらどうなる。」
「え」
「あいつは時々、救われたくない眼をする。」

伊達に長く界王神をしていないロウが続けて言う。

「自分でやる自分ですると我儘な餓鬼のようにいう。」
「でも、それでも助けられたはずの力が」
「あいつは確かにドジだろうが、馬鹿ではない。」

そういってロウがふわりと身体を飛ばし、
ちらりと見えないところにあった本を手に取る。

「それは」
「嗚呼いうやつは俺みたいなのを入れるから爪が甘いと言われるんだ。」

ぺらりとめくり、嗚呼とロウは笑った。

「これは」

其処には、彼女の本来罰せられる罪の数々がしるされていた。
メルの言う通り、彼女は神であるその身体にある魂を殺したのだ。
それは、今いる彼女は、それは。

「乗っ取ったというわけでもないだろうな」
「というと?」
「ま、奴らの話も交えた方がいい。」

まだ決断は出来んが

「…ふむ」


++++++++++

一方此方は破壊神メンバー

「どうじゃ」
「だめだ」

映像部屋で各々調べを進めていた。

「あいつの決定打がどれか全くわからん!!!」
「俺様の頭脳が良すぎて、あいつの頭が何かさっばりだ!!!」
「だあああっ!!!!!」

どいつもこいつも使い物にならん!!!
そうヘレスが怒るのに、しかしなぁとジーンがぼやく。

「…逆に、此処がまずいんじゃないのか?」
「どういうことだ」
「あいつの性格上、木を隠すなら森の中。
大事なものなら膨大なものに入れるだろ。」
「まぁそうじゃな。」
「それと同時に、俺達みたいに見えるような
奴らに見せかけたダミーだったら?」

キテラが言うのは物を隠すのは多くに紛れ込ませるが
それだとただ単に時間があり過ぎてすぐにばれる。
それなら、もし本物が紛れ込んでしまった場合の対処として

「苦手な奴らを分配したと」
「そういうことだ」
「ふむ、やらないはずじゃが、
確かにアルト様らの話を聞くに在り得そうじゃな。」

ーメルは馬鹿だけど馬鹿じゃない。

そうはっきり堂々と言うんだから
全員がずっこけていたのをヘレスは思い出した。

この話は全王様自らが
「皆メルを助けて!助けないと消しちゃう!」
なんて言われた後の始末である。

全12の神々が、一斉に一週間程
この華樹神庭ぎりぎり外にある場所に
簡易施設を設けた大きな寝室ルームでの話だ。


ーというと?

ー前に旅で言ってたんですよ。木を隠すだけではない、その感情すらも騙すとね。

そうして本質を書き換え、狂わせる。
そうしたら、間違えて言ったと誤魔化しがきくのだとか。
本質は変わらないというのに。

換えられないからそういうものだというのに。


「我々が苦手…共通点などあるか?」
「寧ろ共通点がない組だろこれ」
「隠すのがというか、探させる気すらないぞ。」

時間稼ぎが本当に彼女はうまいと、三人は強く感じた。
一応バレないようにということで、アルトの指示では
この三人でとりあえず映像をみてはみて、見尽くすということ。

だが流石に手分けしてみても、きつい。
見るだけは飽きるので、身体を動かしたいとおもうのだ。

正確には、この部屋の映像は一度入れば
最後までその人の視点しか見れない。
つまり、自分達の意思関係なしに動くし、喋るので、
じれったいったらありゃしないのだ。

そういう点で言えば、この三人の共通点と言えば
自分視点ばかりを貫き通すメンバーである
と言うことが分かったキテラが一つ提案を出す。

「いっそのこと三人で一つをみるのはどうだ」
「意見がわれそうだが」
「…いや、ありじゃな。」
「ヘレスお前どうかしたか」
「え?」

ぎょっとする二人に、何をいうと言ったヘレスに
目を指すキテラに、自分の顔を触る。

「…おや」

泣いているなんて、しかも気付かないとは。
ちらりと先程見ていた、いや


「気になる映像があっての」
「…一緒にみるか」
「嗚呼」
「っよい!そんなこと」
「だが此処は0だろ?それも強い力が立ち込めてる。」

だから、3人ずつじゃないのかとキテラは言う。

「俺達はあいつに耐えられない試練を出さないと思うぞ?」

それこそ

「三人で、仲良くかの?」
「はっ、そういいそうなやつなのか?メル様という方は。」
「ああ、確かにいいそうじゃなぁ。」

クスリとヘレスは彼女と一緒に布団で寝た日を思い出した。
嬉しそうにも、騒いで笑って走ってを繰り返す彼女。
この家でも、同じようにバタバタ走って
何度もコルンに怒られるのをみたものだ。

「心を開いてくれておったのなら、愛か、それとも騙しか」

いずれにせよ、笑って走る彼女を、もう一度見たいと思う。

それは、この小さな世界ではなく、
もっともっと広い、自分の宇宙のような場所で。


++++++++++


「終わりましたよ」
『ありがと』

ふむとメルは唸る。
それはもうシャーペンを唇の下に置いて上にあげしかめっ面である。

「何かおかしな点でも?」
『いや〜〜〜、華の位置が違う。後これじゃない。』
「ほお?」

そう言ったメルのペン先は原初や各華神達の華名を一覧で作ったものである。

『アルトや原初、まあわかるが、
ちょっと花じゃない華混じってる。』
「どなたです?」
『例えば、そうだな、アルトが出てきたから
そのまま原初の華神達を出してみるよ。』

メルはそう机の上に大きな紙を置き、
その上に軽く手を置いて身体を前のめりにして書き進める。
その光景を見たコルンやサワアがメルの元に近寄り様子を見る。

『例えば、第8の華神アンダルシアはデルフィニウムという華を咲かせる。
これは多年草の草花なんだよ。』
「それがどうかしたのですか?」
『多年草は本来、季節が変わっても枯れることなく、
毎年花を咲かせる植物のこと。
だが第7の華神コロネは一年草』
「つまり、本来華神は多年草などの季節が変わらずとも枯れない華の種類を咲かせるのに対して、
違う別の種類が混じっていることがおかしい、と言いたいのですか?」

そういうことだ。

『一覧を作ってみようと思ってひとまずこの本に描かれたものを見ているんだが。』
「…凄くお上手ですね」
『ありがとうそれはどうも、ありがとう。』
「…貶していませんからね?」
『知ってる』

メルはコルンに褒められて棒読みで返しつつ、
アンダルシア達が描かれている絵をぺらぺらとめくり続ける。
正面、横、後ろ、喜怒哀楽、華の位置、名前の意味等など
事細かに描かれたキャラクターブック的なものだ。

そこからサラサラと品種やら何やらを出して、
ふむと、メルは一つ唸って辺りを見渡す。

「何かお探しで?」
『…いや、此処にないか?あのね、この家に野花や花の一覧本が数種類あるはずなんだよ。』
「それが必要になると?」
『念の為の確認としてね。』
「探してきましょうか?」
『ごめんそれなら人描き出す。』
「いえ、我々でもできますし…」

そう出さずともと言うウイスに、やだよっとメルはふてくされる。

『どうせあと6日しかないんだもの。』
「メル様…」
『3人は限定したい、が…ありゃあ?』
「どうしました?」
『いや、華神達を出そうとしたけど、』

変になった。と言うか、出せなかった。
違和感があるが、まぁ気のせいだろう。
きっとキャパオーバーなのだと思い込み、良しとメルは意気込む。

『どうせなら二組に分かれてやらない?』
「二組ですか?」
『そ!私はコルン様とウイスさんはサワア様と組ん、で…嗚呼いや、逆が良いな。』

うんそうだと頷くメルがやっぱウイスさん貰うねと引っ張り出す。

「別に構いませんが」
『なら此処の部屋お二人よろしく!!』
「え」
『ウイスさ〜ん!いっくよ〜〜〜!!』
「ちょ、メルさん!?」
「廊下を走らないで下さいと何度言ったらわかるんですか!!!」

コルンの叫び声を逃げるように駆け足で下っていくメルの音に気付いたのか
ガチャリと隣から扉が開く音がする。

「なにかあったのですか?」

隣で作業をしていた界王神組みのシンだ。
それに怒鳴ってすいませんとコルンが謝る。

「メル様がまた走っていかれましたので注意をと」
「ありゃ直らんから言っても無駄なのでは?」
「ロウ様!!」
「元気があっていいことだと思いますがのぉ?」

微笑むゴワスに、ええとウイスは答える。

「ではお兄様方、後は頼みますね。」
「ええ」
「勿論、貴方もよろしくお願いしますね。」

そうウイスとサワアの目が一致する。
ぱちくりとさせた互いのムラサキが、理解した。

「ええ」


もちろん


++++++++++



『あ〜おっかしいなぁ、どぉこいったかなぁ』
「メルさん!?」

何しているんですか!と言われて嗚呼とメルがごそごそしながら声を出す。

『何って探し物。』
「そんな体制で探さないで下さい。」

腰を上げて、頭は下に下げたまま中を見ようと探している体制に
はしたないと言われてもおかしくないですよと注意するウイス。

『えぇ、コルンに似た?』
「似たのではなく、貴方の行動がよろしくないのですよ。」
『お行儀良くなんてし過ぎると毒だもの。』
「…まさか、していると思ってるんです?」

いつも

ええ、いつも

『ま、大分お行儀悪くなったけどね。』
「あれで良いと言えば、今度こそコルンお兄様に説教食らいますよ。」
『あはは、そりゃ困ったねぇ。…お行儀ね、よくしてもいいんだよ?』

でも、そんなことをしたって、かわりはしない。

『いい子で居るのはあの場所だけでいいのだから。』
「…過去に、戻りたいですか?」

ウイスは一階の左側、客室の本棚を見ながらメルに問う。
メルはちらりとウイスを見た後、そうだねぇと言いながら
客室の本棚に向かって起き上がり、上を少し見ながら答えた。

『戻りたいと言われたら、戻りたい。』
「…ならもし、戻れるとしたらどうします?」
『もし、かぁ。それは間違いない確実な答えがある。』
「…なんです?」
『戻らない』
「戻れない、のではなくて?」

嗚呼そうだ

『私は決してその場所になんぞ戻らない。
だって私が望んでいるのは、
その瞬間の自分だった時間でこそ成り立つもの。
もう過ぎ去ったこの現在では、戻っても無意味。』
「…未来に来てしまった記憶を消したとしても?」
『ええ、もう、過ぎた場所に私はいる。』

最果ての、向こう側に、私は位置しているのだ。

『だから私は「戻らない」。
だって私は此処で生きているのだから。』


未来に、生きている者が過去に縋っていいことなんぞありゃしない。


願いあれを葬るわけにもいかない。だから額縁に入れた。
綺麗に飾ってしまいたくても、加護天使ドライフラワーになんてしたくなかったから。
生きた時間は、生きた場所でこそ、綺麗なものだと思うのだ。』

そう、輪廻する華神達いきたおはなはその場所に居るからこそ、綺麗だとおもうもの。
それを枯らした後でも願う、加護天使ドライフラワーなんて、酷いことだと思うのだ。


『綺麗な時間を永遠にさせて、いいことなんて一つもない。』
「…でも、それを望んだ。
そして、その望んだ場所を、切ったのでしょう?」

神が変わらないということこそが、悪魔を産むものだと知って。
そう言ったウイスに、メルはそっと本を手にする。

「ルメリア様が行っていたのは、
人の願いを神に宿らせ、
その力を回し続けたエネルギーを地に戻すもの。

だから枯れても問題が無かった。
消してもどうせ、地に戻るのだから。」

『それを、私はしないと?
私がしようとすること、
わかるでしょう?』

「ええ、彼女らで区切り、
本当の永久機関を作るのですよね?」


それが、どれ程のものか、耐えれないものか


「貴方はご存じで、そうするのでしょう?」
『…ま、出来ればね。』

正直そっちの方が厳しいものだ。
私と同じ人間しかいないという形にもなる。
永遠を望み、永遠を殺した、人間が。

一体何を願い、叶わせるというのだ。

叶えられないのではない、叶えさせてはいけないのだ。

『出来ればだけど、それの下調べが此処だよ。』
「……まさかと思いますが、
華を変えさせるおつもりで?」
『正気の沙汰だと思います?』
「思っていたらどうしましょう。」

正気の沙汰ではない話だ。
華を変えるということは、想いを変えるということ。
いやまてとウイスはふと思い出す。

ーアタシ達は願いを変えたんだ。

そう言っていた何時かのティーナの言葉を。
願いが変わる、それはつまり華が変わる。

いや違う、そもそも「ダミー」だったらば?


本当の、「造花に隠された生花」があれば?


「……本当に、貴方と言うお人は。」
『ふふ、面白い話でしょう?』
「造花に紛れ込ませ、あたかも「そうみせる」という力。」

本当に、全ての華神達は全員草花で、多年草なのだろう。


ぱらりとめくり、ふと止まるメルに、どうしました?とサワアが聞く。


『……いや、別に。』

もう戻っていいよそう言ったメルに、はぁと答える。