星冠の瞬き




パタパタと足音が鳴る、その中でねぇと声が上がる。

ー駄目だよ、そんな傷、はやくなおそ

ーっいいかげんにしてください!!

そう怒られてびくりと反応する。
どうしてそうお気楽に要られるんですかと言う。
強い目が此方を睨んであとずさりする。

ーあなたは、おつよい、さいごの、きぼうです!!

ーさわあ

ーぼくは、あなたをまもりたい。

貴方はと足を止めていう。

ーぼくのことを、ほんとうにわらわなかった。

そう彼の背後にふわりと記憶が浮かぶ。
小さな子供が、二人、大天使の下と、アルトの下から。
ひょこりと顔を覗き見つめる二人が。

ーまわりにわらわれた、ぼくに、てをとってくれた。

だいじょうぶだよ

そう笑っていう彼女は、サワアの手を取り遊びに誘う。
クスの元に行ったときは、よく揶揄われたもので。

ーこんどは、ぼくが、あなたのてをとるんです。

ーさわあ…でも、もし、これがほんとなら

ーほんとじゃないです

『ーえ?』

そう二人の声がはもった。大いにはもった。
一体どういうことだ。

ーこれは、ゆめなんです。

まさか、この言い聞かせる言葉は。

ーながくながく、さめない、ゆめをみている。

ーさわあ?

ーおまじないです。

大丈夫大丈夫、これは夢なの。
醒めない夢を長い長い夢を見続けているだけ。
最初から最後までずっとずっと、見続けている。
だから、醒めない夢は何時しか醒めるから。

ーどうか、まっていてください。かならず、ぼくが、あなたをよびにいきます。

ーさあ、ちゃ

ーふふ、さ、足を。

そういって強く手を引っ張り進むサワア
エフェメラルがもう精神的に苦しく、
これ以上進ませるのは難しいと判断したのだろう。

そうして、優しくも酷く、狡いおまじないを教えてくれた。

ドアの前に来て、扉をあけようとするも、高い場所に、
エフェメラルが頑張ってドアを開けようとした時だった。

ふわりと浮かぶ身体に、サワアが何かを唱える。
すると、ぱっと二人の位置が変わったではないか。

驚いたエフェメラルがサワアの名前を呼ぶ。


ーったく、変な入れ知恵を。

ーぐはっ、

ーっ!!サワア君!!!

そう叫ぶルトラールに、
今度こそ意識を失ったサワアが外の方にぽんと投げ落とされる。
それをみたエフェメラルに、サワアがぼやく。


「…駄目ですなにをするんですか」
『…サワア』

ぱたぱたと走っていく。戻っていくのだ。
逃げろと言っても、言う事を聞かない。
其処に大事な人たちがいるから、逃げるに逃げれない。

それを分かっていて、エフェメラルを放置している最悪の魔女、プラティア。

あえてルメリアを殺し、暴走させたら取り込み
暴走させなければ活かし、更に力を伸ばすつもりだったのだろう。

ニヤリと笑う彼女に、チッと舌打ちが出る。

パタパタと走る子供が、サワアサワアと声を上げて走る。
エフェメラルを保護するためにもルトラールが動くが、
プラティアに阻まれ、動くに動けない。




外近くに居た、大神官の元の下で。
自身の子供が、ボロボロになって倒れている。
バチンと音が鳴って失礼と大神官が謝罪を入れる。

それには、いつもは驚かない者達も目を見開いて固まった。


「どうしたのですか?」
「…無理もない、お怒りにもなる。」
「え、なにを」
「大神官様はお子であるサワアさんの姿をみて怒ったんですよ。」

もう息をするのも苦しい状態であるだろうに、
それでも起き上がり、駄目だと強くいう。
エフェメラルがこっちに走ってきているのが見えたのだ。

ぽろぽろと涙を流しながら、嫌だと首を横に振って。

ーっだ、めで、す、はや、く、もどっ

ーっやだ!さわあも、いっしょじゃ、やだ!!!

「…メルさん」

ーこんな、やだやだ、わた、わたし

ー…なか、ないで、くだ、さい

ね?と笑って言うサワアに、エフェメラルがボロボロと涙を零す。
此処に居るのだと言いたそうに手を取ると、ぴたりと止まる。
本当に、仲が良く、手を繋いで遊んでいた程の二人。

ーごめ、ごめんね、さわあ、わた、わたし

ーい、んです、だ、から、ぼく、のことは、

ーっやだ!にげるならだいさまにいっていく!!

「だいさま?」
「当時言葉を覚えることが難しくて、
よく大神官の大を取られていっていましたので。」

だい様だい様!と目をキラキラさせて
しがみついて来たのを思い出す様に言う大神官。
だが、そんな気持ちもすぐに冷める。

ーだれも、みすててにげちゃうのは、もっとや!!!

ー…えふ、ぇ、め

ーこれ持ってて!

そういってエフェメラルが持たしたのは黄色のカタバミだった。

ーこれわたしがつくったちからのもと!まだみんなにいってないやつ!!!

「っ!?エフェメラル!?!?!?」
『あちゃ〜〜〜〜ばれちった!』
「ばっ貴方あの時に!?!?」

華を咲かせていたとは気付いていなかったのか、
両親が声を上げるのに、メルがそっぽを向いた。

あれまてよ、とメルはふと止まる。
そういえば、サワアの服の色がと目が合う。
ニコリと微笑み、メルは目をぱちくりとさせた。

ーなにかあれば、これにねがって?

ーっそんな、こと、すれば、あな、たが

ーふふ、だいじょう!ちいさなことなら、うけいれる!!

ぱっくんするよ!そう笑うエフェメラルに、
今度こそ意識を失ったのか、サワアが動かなくなった。

すっと起き上がったエフェメラルが大丈夫という。

ーわたし、あなたのことわすれない

『…エフェメラル』

ーでももしわすれても、このはなをたくさんさかせる

嗚呼、だから、妙にカタバミから離れられないというのか。
ムラサキカタバミを咲かせたあの時間は、此処を覚え続けると。
そう、いいたくて、咲かせたのか。

ーこのときを、わたしは、わすれたくないから

そういって彼女は今度こそ前を向いて走る。本当に逃げるつもりだ。
本来外に出るのが最善だろうが、
嗚呼なった以上魔女を下手に外に出せば大惨事である。

仮に全王様に消滅させられたとしてもだ。
同じようなものが、それ以上が出られても困るのだ。
まぁそこに行く前に、こちら側が消滅しかねない。

加えて、当時の身長からして、
空を飛ぶのも苦労していた二人にしては
高い所に手を届かせるというのは無理な話。

よってエフェメラルが取った行動は、

「…アイツ、死ぬ気だったのか」

目の前を突っ切るイチかバチかの戦法だった。
明らかに突っ込むのは死しかないが、幸いなことにルトラールがいる。
兎に角逃げるに必死で走り走り、走り続ける。

急げ急げと声が聞こえる。

ー逃げろ、逃げろ、走って逃げろ!!

それは、メルが何時しか考えた、聞こえた言葉。

ー早く、早く、早くいかなきゃ!!何処に何処に?何処にも居ないのに??

でも

ー生き抜くために、また、この場所で、みんなと、笑うために!!!

『っ』


せんせんりだつ!!

そういって空を軽く飛ぶ。それに、ぱっと取られた。


「…最悪だな」
「ええ」

ーっその子を、離せ

ーいやだね。

わあと言うエフェメラルに、
可愛らしいという彼女の声にびくりと反応する。
サワアのいうこと聞いてれば良かったと叫ぶ始末だ。

ー…あれ?

ーん?

ープラティア

ーな、なんだ。

ーおびえてる?

そう言った途端、エフェメラルが飛ばされる。
それを勢いよく受け止めたルトラール
私が、何故と言い出し困惑しだした状態に

急いでそっとその場から消した。

ブンと世界が変わり、その部屋に辿り着いた
メルが最近ずっと居続ける部屋の中だ。
当時からほぼ変わらなかったのだろう。

隣の部屋に入った。ぼたぼたと落ちる紫色の血に、ぱあぱ?と声が上がる。

ーいいこですね、エフェメラル

軽く頭を撫でる彼に、メルの目が細くなった。
後ろに手を組んで、うんと、告げる。

ーうん、エフェメラル、ないてないもん

そう涙を明らかに流した後で言う彼女に
説得力がないのだが、そうですねと
ルトラールはこたえた。

ーおねえちゃんに、なるかもっていったから

ー……っ!、ええ、そうですよ。おねえちゃんはつよく、あるべきそんざい。

そう

ークスさんのようなお姉ちゃんになりたいのでしょう?

うんと笑うエフェメラルに、それ以上見れないのか、クスが顔を下に向けた。

ーなら、強く希望を持ち続けるのです。

ー…うん。

ーさて、ドアの向こうでちょっと待っていて下さい。

時間が来れば、私が貴方を迎えに行きますから。
そう言った彼に、とうさま?と首を傾げる。

ー時間がきても帰らねば、まっすぐいくのです。大丈夫、貴方は強い。

色んな人に出会い、色んな時間を見てくる。
そういって、すっと一片の花びらを口につけていう。

ーそれは時間を継げる、12の日。

その言葉に、ブンと音を立て創り上げられるドアに、
エフェメラルが、びくりと反応した。

ー約束果たし日、来る時まで、この子達を、守って下さい。

呪文を唱え、コンコンコンとノックを入れた。
そっと手に、花びらを持たせて、愛していますと答える。
ちらりとエフェメラルが上を見上げる。

泣きそうな顔で、寂しそうにも、無理して笑って
その頭に、キスを落とす。


ーエフェメラル、お前は私の子ではない。

ーえ?

急に言われた言葉に、冷たい言葉に、身体が冷える。

ーお前は【メル】破壊を産んだ、【メル】だ。

ダンと音を立ててドアを開け、その漆黒に身を投げたルトラール
ふわりと宙を一回りするエフェメラルが、声を聴く。

ーさようなら

右手を伸ばすも、遠すぎる。
ばっと落ちていく中、子供が叫ぶ。


ーとおさまあああああ!!!

ー…エフェメラルなんて、私達の子供はいなかった。

そういって、ドアを閉める彼。

ー子供は居ない、だから完成を越えた者に離れない。


ちらりと更に隣の部屋に位置する子に、残念だったなあと笑う。


ーお前は未完成のままだ!!!


バチンと音が鳴り、天使がふわりと上がる。


ー…事情は分かりました。少々おいたがし過ぎましたね。

ーっだい、しんか

ー生憎、私も言うなら、貴方を産んだことはないですよ。

さようなら。

そういって封印した大神官に、綺麗な白い金平糖が落ちてくる。

軽く瓶の中にキュッと入れて保管した。
コツコツと音を鳴らして、すいませんと大神官がルトラールの身体に回復を入れようとするが、すっと止められる。

ーですが、その傷では回復が間に合わないでしょう?それにしても華樹神様は

ーいません

ー…っまさか

ーす、いません。ほんとは、弟に、責任なんて

負わせなくない。

そういってルトラールが彼女の華を喰らう。
それと伴い、彼の身体が鎖に包まれていくのに、なんてことを大神官が叫ぶ。

ーっメル、何時か此処に辿り着いたその時、君の願いが叶うように、僕はずっと、待っているよ。

ーっなにを、駄目です、貴方まで居なくなれば、この世界は!!!

ー廻廊に、あの子達は

そういって綺麗に色を無くしたルトラールに、
隣でお父様とクスが身体を揺らす。

ーこのことは他言無用でお願いしますね、クスさん。

ー……っ、はい。


そう零す彼女に、そっと歩み寄りメルは言う。


『ま、それで終わらないのが、この物語。』

そういってぱちんと指を鳴らす。世界は黒くなり、下を見たメルに、周りもその視線を見つめた。

ふわふわと落ちていく子供が、嗚呼と言葉を零す。

どうして、なんで、と上に、手を伸ばしていう。


ーめる、すて、られたの?

「…メル」

ーああそ、か、おこ、られちゃ、ったし

なら、力を使えばいい。あの子の為に。
そうしたに広がる世界に向かって身体を向き直す。

ーもう、なにも、いらない。

だからおねがい、どうかこのせかいに、かみさまがいるならば。

ーおはなをあげた、あのこの、ねがいを。

そう告げたエフェメラルの髪色が変化する。
白く光り、金色の目が輝き下に向く前に、ふわりと声が聞こえて。

エフェメラルはふっと上を向いてばいばいと言った。

ーどうか、かなえて!華の神よ!!!


天使の願いよ、叶えてごらん。


ーエフェメラルの、片喰よ!!!

キンと音を鳴らし、其処で世界が綺麗に白から青に染まりあがる。
下には色とりどりの花畑に、小さな黒いみすぼらしい子供。

『…嗚呼、そしてここに戻るのか。』
「…メル様?」

ーあなたは?

ールメリア、貴方は私の子供で、本来ならこの子と同じ身体に入っていた子。

ーお名前は?

そう言われて、ぐっと止まるというか、何を言っているのか分からないように感じる。
心なしか、エフェメラルの目色に、光すらないようにも。

ー名はない、だから、つけて。


そういわれて、そうだなぁと子供がいう。
カランコエの花がちらりと見えて、メルと言うのに
ヒュッと息をした。


ーメル。貴方の名前は、メルだよ。

何度も廻る、その言葉。

ーでは、契りを…

ーまって。これは、おためし。

そういってエフェメラルが前に出る。流石に子供には酷だと。
大丈夫という彼女だが、きっとつらくなる。
この先ずっと一緒に居るかもしれないというのに、いいという。

ーならこのこと一緒に、居させてよ。

ー…それは

たったひとときだけ。
かみさまならば、ひとときなんて、またたきでしょ?

そう言った彼女に、ええ、そうですねとルメリアがいう。

ー一つくらい増やしても構わないでしょう。ばれやしません。

「おい駄目だろ」
「ふふ、バレちゃいましたね?」

さっと父の苦労が水の泡になりかねない状態に
さっと母はそっぽを向いた。子が子なら親も親である。

ーでは契りを。

ー…君と、お友達に。

母と父の永久を願う、子供に、エフェメラルは伸ばすのだ。
二人の願いよりも、あの子の、願いをと。

そして、綺麗に泡となり、解けていく世界。








「…此処は」
「おっと、此処も知っているとは、恐ろしいですねえ」
「え?」


ーおや、それは?

そう数日たったある日だろうか、
サワアの頬にばんそうこうが貼られたまま、
辿り着いたのはルトラールの場所だった。

ちらりと目を向けた華に、んと手を伸ばす。

どうか、メルを。

ーメルのお願が、叶いますように。

神として、生きている彼にと。願いを捧げたのだ。
それが叶ったのか、黄色の花がキンと音を立てて綺麗になくなった。

その後、ニコリと笑った後、ぺこりとお辞儀をしたサワアが駆け足で戻る。

ーまたね!エフェメラル!今度はもっと強くなってるから!!

『……サワア』

ええ〜というざわざわした音に身体がびくりとする。
なんだなんだという神々に、メルは目を丸くした。



ー私無理ですって、お酒飲めないんです。

ーいや、ミユちゃんそんなこといわずに〜

『ステイ、お前らステイ。コレ記憶おっけー?』
「ですがされたんですよね?何処です?」
『だからすてい!!!!』

そう近距離でくっついて来た男の虫に、バッと杖を出して攻撃をとするサワア達にメルが慌てて止めを出す。

いやあとのめるでしょ?というのに、ふと気づいたのか、メルの単語に止まるのか。

ーあれ、まさかのめる?

ー…ね、お兄さんカクテルって好き?

ーえ?あっええ?いやまぁ?

ーじゃあじゃあ、カクテル作れる???

何をと言うサワアに、嗚呼とメルが苦笑いする。


ーお嬢さん、カクテルがお好きで?

ー好きって訳ではないんですが、カクテル言葉ってあるくらいで面白くて。

今度大学に提出しようかなと。
それ突き返されない?

そう誘ってきた男に言われるのを無視し、
バーテンダーが聞いて来たのに答える女性。

ーちなみに、どんなものをご存じで?

ーえ?ん〜名前は知らないんですが、言葉は知っていて。

ーほお?

ー【忘れないで】


その言葉を、ただ、その時間ですら、覚えているという。

ーもう何もかも分からないけど、それだけは覚えてる。

ー俺がその記憶ごとうわがっああああ

さらっと避ける彼女、ミユに、店主が苦笑いする。

ー貴方、楽器が?

ーああ、うちの相棒「ソティラス」ちゃんですよ。

くるりと回る彼女に、一曲此処で吹きませんと誘われる。
それにけらけらと笑って高くつきますよと答える。

ー高校の時バーテンダーの人に誘われて演奏していたので。

ーほお?猶更欲しい人材ですね。

ーあ、なら演奏する代わりにカクテルから言葉を教えて頂きたい。

ー構いませんよ?報酬は半分で。

ええこまるなぁクスクスと笑う二人。

ーでは、そのつもりで。

凛と音が鳴る中、ぼそりとつぶやいたバーテンダーに、メルが目を開いた。


ー…ねぇ?我らの主よ。


ばっと向いたメルの見た先に、
ひらひらと手を振ったのはリフレイの姿。



彼がこの時間に生きている筈もないのに。


ねぇソティラスと声が上がる。


ーこの世界にはね、一つのお花が咲いているの!!

『…それは』

ーそれで、天使達の元が華になってて、天使達は力を封じられる。

サラサラと書き記す彼女。それは、この物語の全容で。
赤い本に、すらすら書いていく彼女の髪色が黒くて。

ガタンガタンと隣を過ぎていく電車に、
後ろを向いてにこりと言う。



ー華の者光を貫く、一点の輝きよ。


バッと光が辺りを包む
その言葉に、メルは目を開いた。