変換機能の弱い私のあたま





前回のあらすじ

メリアの中に入っていたメルを取り出し
そのメルの中に入っていた記憶の一部である魂の存在が判明した。

以上

『いや、マトリョーシカじゃないんだよ。マトリョーシカじゃ。』
「なんです?それは。」
『なんでもないです』

現在、ミシュメールのことを知った二日後。
丸々二日眠っていたメルに、起きないかと思いましたと言うのはウイスだ。

『ご飯食べよ』
「ええ…え?」
『なにウイスさん、』
「ああいえ、なんでも。」

ついていくこともなく、ただメルは前を進む。
まるでこっちが正しいと思っているように。
それが余りにも不思議で、ついウイスは聞く。

「あの、メルさん?」
『なに』
「どちらに向かわれて?」
『お腹空いたから顔洗って、ご飯食べる。あれ出来てないですか?』
「いえ、構えていますが。」
『じゃ、急ぎますので。』
「あ、ちょっと!…もう」

食堂へ先に戻ったウイスがため息交じりにドアを開ける。
メリアは先に来て準備を手伝っていたのだ。

「ウイスさん、ビルス様は?」
「もうじき起き上がってきますよ。その前にメルさんが。」
「え?めるがどうし」
『おはよ、メリア』
「ああおはよ。」
『いただきま〜』
「!??!??!?!?!?!!?」

さらっと座って手を合わせた後喰いだしたのだ。
あっほんとだ美味しいねこれと言う。
もう一度言う。

サラッと座って手を合わせて食べ出した。


食べ出した。


「え」
「ミシュメールさんの影響でしょうね。
彼女の好物が丁度仕入れていましたので
試しに作ってみていましたが。」
「え!??!」
「ほら、そんなに詰め込んで食べないのですよ。」
『ふはあふうdfぢあds』
「ものを入れて話さない……」

全くというウイスに、メルは嬉しそうに笑いつつも喉に物を押し込めた。
数日前とは打って違うその姿に、唖然としていたのだ。

「おはよ〜〜〜」
『あっおはよう、ビルス様先食べてます。』
「ああうん、別にいいよ先にたべっ…?
ん???さきにたっ…ん????」
「ビルス様、困惑するのも分かりますが
身なりを整えてから来てください。」
「??????????」
「お気持ちはわかりますが。」

だってこれどういうこと?
そうメルの方に向けて指をさすビルスに
困り果てたウイスは目を閉じて頷くしかできない。

そう、ちびちびとしか食べなかったメルがだ。
あのメルが、自分で率先して食事をしているのだ。
それも人間が食べれる通常の量を、一人で平らげようとしている。

「早くしないとメルさん食べきりますよ?」
「っ急いで!!」
「ああいっちゃった。」
「きたぞ!!!」
「だあああああああ」
「流石お早いお着換えで。」

いやにしても凄い食べっぷりだなと言うビルスが席につき
手に顎を置いて、机に膝をついて言う。
ちらりとビルスの方に置いていた食事を見ては
ビルスを見てそっと目を戻したのを見ない訳もなく。

「何食べたいの?食べる?」
「おや」
『…いいの?』
「君がこんな量食べるなんて星が降ってくるくらいの奇跡でしょ。
と言うかミシュメール希望じゃなくて奇跡の華神じゃない?改名させたら?」
「ビルス様……」
『でも、ビルス様も食べたいでしょう?』
「なら分ければいい。」

こうやってと小さくもメルの元に置いたビルスが、
横に席を持っていって腰掛ける。

「どう?」
『…あり、がとう?』
「ふん、どういたしまして?」
「仲がよろしいことで。」
「煩い!!めしだめし!!」
「はいはい」

食べ出したビルスに、
メルもそっと貰った食べ物を口にする。
ふわりと広がる味に、覚えがあった。

『嗚呼、スイートピーだ』
「ぶっ」
「これビルス様!!!」

お行儀が悪すぎますよと言うウイスに、
無理だろうとビルスは叫びたくなるのを止めた。

『ウイスさんこれ華入れました?』
「いれるわけがないでしょう。
大事に育てていた子の亡骸を
こんな場所で喰うなんて以ての他でしょうに。」
『こんな場所でなければくうんだ。』
「いえそういうわけでは……」

いやどちらにせよ、

「メルさん、其処迄食べてお腹を下しません?」
『…お腹痛いかもしれない。』
「はぁ…全く、騒がしいですねぇ。」
「ビルス様!!遊びに来たぞ!!」
「っんんん!!!」
『あ、一名被害者増えましたウイスさんん〜〜〜』

いだい。
そう言い出したメルが、腹を抱える。
その間ウイスはビルスの背中を軽く叩いた。
器官から飛び出したはいいが、色々飛び出て居ないか不安の様子をベジータがちらりと見ていた。

「なんだ飯食ってたんか!」
「お前もか」
『ども。お久しぶりですお二人さん。食べます?』
「いいんか!?!?!」
『私もうお腹一杯どころか腹痛はらいたで。』
「それをいうなら腹痛ふくつうね。まぁあってるけども。」

ため息交じりにメルの食事した皿を下げるメリアに
ごめんありがとうと告げるメル。
いえいえと答えて、席を立った。

「これを飲んで置いて下さい。」
『うう』
「それはなんだ?うまいんか?」
「腹痛用のお薬ですよ。」
「げえ」
『ぷは、ありがとうございます。』
「いえいえ。」
「よく苦いのくえるなあ……」

まぁ薬は仕方がないとメルはサラッと言う。

『飲みなれてるし、出来れば粉よりカプセルがいいけど。
錠剤なら臭かろうが一瞬で終わるしねぇ。』
「飲みなれてる?」
『え?うん、昔はよく腹を下していたから。』
「…ミシュメールさんの頃は、お腹を殆ど下していませんでした。」

その言葉にメルが固まる。
不思議と痛みは消えて無くなった。

『え?嘘』
「嘘だとお思いなら本人に聞いてみては?」
『…ほんとだ』

本人も殆ど腹を下したことはないという。
なんならこんなに余りがっついたこともないとか。
じゃあだれ?だれの、だれのきおく?

誰もの記憶でないならば、誰の?

「恐らくメルさん本人の記憶かと。」
『わたしの?』
「ええ」
「そういえばメルって名前以外覚えてないんでしょ?」
『え?ああ、うん…私のこと自体は知らない。』

なんなら、自分の名前が正しいかも分からない。
ミシュメールのように、本来の名前をもじった可能性だってある。
だが、それすらも分からない。

「なら、一つ分かったということで。良かったですね?」
『うん!!!』

++++++++++


「さて、お腹の調子も戻られたようですし、修行の続きを。
と、思いましたが、丁度いいひと達が来られましたので。」
「???」
「悟空さん、ベジータさん、少々お遊びにお付き合いください。」
「なんだ、何をすればいい。」
「悟空さんは超サイヤ人に。」
「おう!別にいいけんど。」

そう言って軽く髪色が金色になり、逆立つ彼にメルがびくりと飛び上がる。

「お」
『へ〜〜〜〜金色だ。あれ?これ普通と違う?』
「ええ、種族によりますが、彼等は気を一定以上上げると姿を変えるのです。」
「成程、気の勉強ってところか。」
「すいません、メルさんは見た処目で確認された方が飲み込みの早い方ですので。
メルさんお二人をみて気付くことはありませんか?」
『気付くこと?なんでもいいですか?』
「ええ。」
『髪の毛の色が変わったり、この周りのが濃度?物が違う気がします。』

あっていますよと言うウイスにメルは嬉しそうにあとあと、といって
悟空の後ろを回ってみたりとウロチョロとする。
それを悟空やベジータもメルを見て追いかける。

『ふんばってる?』
「まぁ力を上げる分にはある程度はなあ」
『真似出来るかなあ』
「ミシュメールさんの要領でやってもらえたら出来ると思いますよ。」
『じゃあしよ、ふっん!!!』
「いい!?!??!」
「なんだと!?!?!?」

そう言ったメルが、力んで力を入れる。
するとメルの髪色らは変化をしないとはいえど

「気が…おいおい、これは超サイヤ人ではないぞ。」
『え、違うの?』
「2くれぇか?これくれぇかな?」
『わわ!!』

ぼんとまた気を膨らませた悟空にメルがたじろいだ。
髪の毛はサイヤ人でもないメルは逆立たない。

「…おい」
『え?私?』
「メルと言ったか、お前の気は出せないのか。」
『きい?????』
「悟空さん戻って貰って構いませんよ。
お二人にはご説明しておきましょうか。」

そう言ったウイスが、事情を説明する。

「いい!?!?メルが神様の生まれかわりだって?!?!」
「加えて、魂を幾つも身体に宿しているとは、本当なのか!!」
「ええ、現に10の魂が彼女の中にいますが、
そのうちの一人が我々の元で暮らしていた
ミシュメールさんご本人と判明しています。」
「僕が選んだ破壊神候補者だからね。
これしきの気を操れなかったら破門するよ!!」
「まぁ既に死んで彼女の中にいますから、
破門も何もありませんがね。」

煩い!!!

「まぁ、生まれ変わりかどうかは別に置いておきまして。
そういう訳でメルさんの力はあまりにも未知数。」
「成程、ウイスさんの元で暴走されてもたまらん。
宇宙を壊す可能性の因子を躾ておくということか。」
「そうですねえそうなります。」
『え私星壊せちゃうの?』
「ミシュメールがそうだったからねぇ。」

あの子に関しては花すら壊せてなかったけどね。
そう言ったビルスに、メルは
人を殺したわけではないのかとほっと溜息をついた。

だが、破壊神はそういう者達。
複雑な気持ちになったメルに、ウイスが言う。

「あくまでも力が異様だったので、
スカウト兼候補者という様子見として
私が引き受けたのです。」

本来破壊神がいるのに候補者なんておいそれとするわけないですよ。
そう言ったウイスに、本気で破滅を望ませることはしていないことに
メルは落ち着いてきた。それと同時に、気も綺麗になくなった。

「ミシュメールさんは何と仰っていますか?」
『んん、”私の力使ってもいいからウイスさんにある程度教えて貰えって”
いやでもミシュさぁ?それなら私じゃなくても良くない?』
「いんや、お前の身体の中で一生居るつもりならお前がすべきだろ。」
『ええこれって此間みたいにウイスさんぶっ飛ばしちゃう奴でしょう?』
「ぶっ!?!??!!?」
「お、おめ、め、メル?おめぇ、ウイスさんを?」

俺達ですら、中々歯が立たないというのに。
そう驚くベジータにええとウイスは言う。

「なんでしたら殺し合いまでとはいきませんが、
護身術程は全て身に着けて頂きます。」
『はわ、できるかなあ』
「出来るのではなくやるのですよ、メルさん。
ミシュメールさんらと一緒に居たいでしょう?」
『いたいです』
「でしたらすべきですね。」
『あう、できるかなあ』
「…あいつが、俺達の上位互換」
「複雑だろうけど、事実だよ。」

そうビルスは冷や汗を流しながらぽんとベジータの肩を叩いた。

「見た処奴自体に気は見当たりませんが…」
「なんなら気すら分かってないのに発動しやがったからねあいつ」
「…」
「信じれないだろうけど現実だよ。
現にミシュメールの力しかあいつは出してない。」

それに

「人の気を自分の様に操れるその技量が
どれ程繊細でとんでもない力なのかも、
あいつは気付きすらしやしない。」


気付いた時、一体どんな力を繰り出すのか、
計り知れないその力に、背筋がゾクリとした。


「…だから、無理矢理にでも引き寄せたと。」
「ま、破壊は出来ない対象外だしねぇ。」
「だけんど、気があるだけあって、
やり方がわかんねぇと。」
「そういうこと。ま、今は脅威ではないよ。」
「今は、です、か。」

そう、今は。

慌てふためくメルの隣でメリアが説明をする。
それに泣きそうな顔をしつつもコクコクと頷き話を聞く。
ウイスが説明すると、そっちの方に顔を上げて同じ様に仕草をする。

「なんか、嬉しそうだなビルス様」
「まあね」
「否定しねぇいだっ」
「煩いことを言うからだ。全く。」
「…組手をさせるのですか?この俺達と。」
「後々はね。泣かせたらただじゃおかないから。」

地球を破壊で終われるか困るくらいだ。
そう言ったビルスに、少し震えたベジータのことなど知らないメルはというと。


『びええええええ』
「っ」
『むい!!むいだよおおお!!!!』
「泣いてるんだが」
「…アレは論外」
『お空やっぱ怖い!!怖いよ!?!?!?!』
「ほらほら、メルさん戻ってきてください」
「…ウイス、アレしちゃったんだ。」
「あれ?」
「前にミシュメールが生きていた時に
ウイスと一緒に同じ速度でって言いだしてね。」

まぁ想像の通り、ミシュメールはギャン泣き。
普通にトラウマを植え付けてしまったのだ。
ウイス自体は願いを叶えてやったつもりで。

その記憶も綺麗に引き継いでいるらしい。
なんともまぁ厄介なところまでくっつけてくるものだ。

『ううううう』
「加えてみての通り臆病だから話が中々進まないんだよっと」
『ぴぎゃ』
「おかえりなさい」
『〜〜〜〜〜〜〜!!!!!!』
「悲鳴にならない声を上げているが……」
「両手を掴まれて逃げようとしても無駄なんだけどねぇ。」

ウイスの両手はメルの両手が。逃げようとしても力を籠めるので離れない。
ふわりと浮かぶウイスに、メルは引っ張られているだけだ。

「だからゆっくり飛んで差し上げると言ってるでしょう?」
『あああそうやって弄って飛ばしたことあるのメル知ってる!!!』
「ああやって一人称まで変わるくらいパニックになるからねぇ。」
「…大変ですね」
「ああ」
「ほらほら」
『ううううう…え?いやでもなぁ。』

ん?何を話していると思ったベジータだが、
何処か肩に何かが乗っているのを見つけて目が合う、気がした。

『分かったよお、こう?』
「そうですよ〜お上手ですねぇ」
「…中でも言われているのか、あいつは」
「だろうね。」

外ではウイスに責められ、中ではミシュメールに責められ
メルは解放される術など持ち合わせていないことに気付いたベジータは
憐れだなとため息交じりに鼻で嘆いた。

『わわわ、そらそらそらそらそらそら空飛んでる!!!!』
「ええ、お上手ですよ〜手放しますよ?」
『だめだめだめだめだめ!!やだやだやだやだ!!!』
「あらあら〜〜」
「あちゃ〜嬉しそうだな、ウイスさん!」
「ああやって最近遊んでるんだよ。」
「男性らを相手していますので、癒しが必要なのですよ〜」
『えっまって手放しちゃやだよ?ねぇウイスさん?
はな、えっはな、さ、ないよね?え?放さないよね?』
「ええ放さないですよ〜」

空中大よそ10m程まで上がった二人だが、
勿論声が届かない訳でもない。

「もう少し均等に維持をして下さい。
それでは波があり過ぎて浮遊も不可能です。」
『ううでも、こわいよお」
「手放しませんから。」
『絶対に?』
「ええ、誰に誓えば貴方は私を信頼してくれるのですか?」
『私に?』
「…っ、ふふ、お冗談がお上手ですねえ、貴方という方は。」

誓いますよ、貴方に。そう言ったウイスに、うんと頷いたメルは目を閉じた。
前に空を飛んだらどうなるだろうと考えたことはあった。

身体を風に纏って、浮遊を試みる。

「それだと気と風が入って風のない所では通用しません。」

否定され、徐々に風を無くし、ふわりと浮かび上がるものを想像した。
ゆっくりと浮かんで、消えてしまう、儚いもの。

『あ』

「おや、出来るではありませんか。」

ただ、徐々に上昇するのは仕方がない。メルの想像したものが、想像したものだから。
浮いて上がり続ければ、何時か綺麗に消えて無くなってしまうのだろうか。
消えた時、記憶に残りすらしない程、小さな思い出も?

「ソレの様になんてさせませんよ。」
『ウイスさん……』
「大丈夫です、私がついていますから。」
『…ん。』

大丈夫大丈夫と思い続ける。
止まる感じを考え続け、静止を試みた。

「本当にお上手ですねぇ、呑み込みが非常に早い。
知れる範囲、いえ、貴方が想像した範囲内なら尚の事。」
『できてる?』
「ええ目を開けてみればわかりますよ。」
『えっこわいんだが』
「手放しますよ?」
『えっ待って待ってまっ』

目を開ける。両手はまだ、ウイスさんと繋がったまま。
身体が縦ではなくゆっくりと横に、後ろの方に動いて。

空が見える。

青々としていない、紫色の空が、ピンクよりの、色が
非現実を物語っていて、でも。

『なんで夢だと思うんだろう。』
「メルさん?」
『何を元に、私は現実ではないというんだろう。』
「…それもまた、いずれ知ることになりますよ。」
『怖くないの、夢だと思えば怖くない。』

ほらと手を放したメルに、ウイスおおと声を上げずにも驚く。

『ふわふわして、くるくる回れる。夢だと思えば、そうできる。』

でも、とメルは意識を変える。とたん身体がガクリと落ちる。
気を綺麗に消したら重力に逆らうことなど出来ない。
メルは身体を投げて手を伸ばす。

『でも現実でやらないと駄目…そうでしょう?ウイスさん。』
「…ええ、ええそうですよ、メルさん。」

流石に身投げするのは褒められたものではありませんが。
そう言われてへへとメルは言いつつ抱きしめられた身体を地面に降ろしてもらった。

「メルなにを」
『ミシュメールも生きていた。貴方も生きている。私は?』
「メル?」
『私は死んだの?生きているの?何処に居るの?』
「此処にいるよ?」
『いないよ?どこにもいない。』

振り返るメルの場所には、何もない。だというのに、向こうだと言うのだ。

『もし華樹の記憶、廻廊が貴方を巻き込んだ続きだとしても。』
「…っ」
『私は生きているの?死んでいるの?』
「そ、れは……」
『大丈夫だよ、まだ、まだ…此処に居てあげる。』

振り返った場所に尾を引かれる思いだ。
それでも取り繕い、この場に維持する。
それは、何かの約束を、果たす為なのだろうか。

それとも?

「…それ程の気を扱えるだけ、合格、と言ったところでしょうか。」
「ん?なんの?」
「メリアさんはメルさんと一緒に舞空術の練習をしてきてください。
お二人は私がお相手しますよ。」
「ほんとか!?ウイスさん!!!」
「ええ。ある程度出来れば次の段階を説明しますので。」

そう言われて、手を引かれつつも、メルはウイスの方を向いていた。
まるでそこが、帰る場所だと言いたそうに。じっとずっと、見つめて。