応答せよ応答せよ応答せよ
前回のあらすじ
大神官様と天使達にご紹介しました。
以上。
『にしてもとんでもねぇなこの世界』
花畑の中、ぼやりつぶやく。
本当にカランチュは姿を見せなくなった。
大神官様曰く、もう少し鍛えてから声を掛けろとのことで。
現在特訓の日々に没頭していた頃だ。
春先に旅立ち、早くも二か月が経過しようとしているころだ。
桜は満開に散って、若葉が生い茂り、桜等知らないくらいに変わったころ。
メルは夢の中で話をぼやく。
ミシュメールは声を掛ければ出てきてくれるが、
他の者達は全く音沙汰がない。
『深夜の一時間前って、多分11時の方だよね。』
ミシュメールのことをウイスさんから色々教えて貰った。
彼女の生きていた惑星や、その生息域。
勿論ミシュメールからも教えて貰ったりもした。
第七章ということは、恐らく七番目。
前半の数と、一時間前を考えると、
恐らく全部で12ではないだろうか。
だとしても、数が合わないのだ。
あの後、大神官に魂が見える人は此処にいる誰だと聞いた。
そうしたら天使や界王神は全員見えると言うので、
試しに全員に見て貰ったのだ。
そして全員が、ウイスさんと同じ言葉をつげたのだ。
記憶を遡れない。
魂を持っている子達は、モヤが浅く、頑張れば憶測は立てれるが、
正確には見えないから同じことだと言う天使もいた。
数からして、カランチュや私、もう一人を外していいとまで。
全員一致の言葉で、ミシュメールを入れて、10。
同時に、メリアを入れて、11になる。
11は人と人が立っているようにも見える数。
互いに立って、お互いを見て協力するようにする。
もしそれが、この形と同意義になるなら?
『仕組まれた枠の中で生きるしかないの?』
それは残酷な答えに繋がる。
死ねないとまで聞いて、絶望しかけた。
生まれ変わった華神ならば、今の枠組みに入るので
破壊神の破壊は通ずるものがあるらしい。
だが、その破壊の前に産まれた者達なら話は別らしくてだな。
破壊の言葉で綺麗に消滅しないどころか、身体が感情が変わり
厄災になりかねないからしない方がいいとまで言い切られた始末なのだから。
困ったものだ。
まぁ、メリアは断じていいと言い切っているので。
11だとしても後一人が何処に居るか分からないが。
そもそも今生きているのかどうかも怪しい始末だ。
下手すれば、一度メリアを殺さないと
『絶対ヤダ』
そんなのは考えたくもない。
彼女が生贄にと言うのも、酷く嫌だった。
それなら私が生贄になってしまいたいくらいだ。
こんな記憶を沢山持つくらいなら?
『…それもやだな』
記憶はあっていいと思った。
何故か分からない。それでも、持ちたいと思った。
そういえば
『起きよう』
思い立ったが吉日
++++++++++
「ええ、彼等ですか?」
『はい、此間居た、他の天使さんにも会えます?』
「勿論、大神官様からも仰られましたので。」
ー華神になるメルさんそしてメリアさんをお守りしていただきたいのです。
その後、ちゃんと後日の説明を含めたものを
大神官が言ってくれたのを思い出しながらウイスは答える。
ー彼女らのお願いは出来る限り聞いてあげて下さると助かります。
「どちらの方にお会いします?」
『えっとそれが…一瞬過ぎて顔も名前も分からずでして。』
「…すいません、私が悪かったですね。」
流石にあの状態でメルが
全員を覚えられるわけもないことを、
ウイスは忘れて居たのに気付いた。
「では特徴を仰って頂ければお呼びできますよ?」
『あっでも』
「お仕事の邪魔になどなりません。
差し支えない時にお呼びしますし、
それにつれてくるのが悪いなら向かうことも可能ですよ?」
『…うう』
「っふふふ、すいません。ですが貴方の頼みですし。」
それに会合が始まる前に何人か知る人が居れば
貴方も隠れる場所が出来るでしょうしと言うウイスに
メルは隠れないよと鼻を吹かせる
『メルはこんな強くなったんです!
そんじゃそこらはちょちょいのちょいです!!』
「ま、ある程度の護身術が出来る程度ですしね。」
『むう!!!』
「っくくく、ま、いいでしょう。天使が分からなければ破壊神でも構いませんよ?」
『あ〜〜〜〜、でも、呆れられる気がするのでやっぱり今度まで取っておこうかなあ。』
「おや、欲がないですねえ」
そりゃそうだろう。メルは当然の様に思って言う。
『だって欲なんて全部置いてきちゃったんだもの。』
「…メルさん」
『あれ?何か間違えたこと言った?』
「いいえ、なにも」
気付いていなければ、別にいいとウイスは思う。
時々メルは確信を付いた様に言い出すことが増えた。
特に、大神官ら神々の人間に触れてからだ。
魂の形が人型を滲みだしたというのだ。
特に第2に出会ったのか、名前は知らないが
金髪の女性だという始末だ。
『…や、やっぱり会いたい。』
「誰に?」
『あの人達に』
++++++++++
「そうして、また呼ばれましたが。」
「すいません。メルさんが貴方方の事が気になるといいましてね。」
「ほお?このわらわを?」
「第2だけではないんですね。」
「ええ、気になる人をと言えばこの人数です。」
ウイスはビルスの家である一室に彼らを呼んでいた。
第2だけではない。
『はわ、本当にいる…ねぇメリア!!天使さん沢山!!!!』
「はいはい、すいません皆さんメルのお付き合いに付き合って貰いまして。」
「いえ、大神官様からのお話も聞いておりますので。」
そうご謙遜をというか頭をお上げくださいと言っているのは
第8の天使であるコルンだった。
元々華神だったという話ならば、彼女ら二人はウイスらだけではない
ビルスら破壊神の先輩にあたるような状態である。
「にしてもメルこれは流石に暴走しない?」
『大丈夫、三つならいけるいける。』
「いやそれはいける範囲か???どう考えても無謀だろ。」
「ロウ様失礼ですよ。」
適切な言葉を継げた彼に、メルは身体を向ける。
「…全員集まりましたね。皆さん本日はお集まりいただきありがとうございます。
少々メルさんが気になることがありましたので、こうしてお呼びしました。」
「後は単純にこいつが少しでも覚えるようにだな。」
なるほどと言う者に、続けてウイスが話す。
「メルさんの分かりやすいように
各宇宙、地位ごとにご説明しましょう。」
『おねがいします!』
「では天使から。第2宇宙の天使サワアさんです。」
『はじめまして!メルです!』
「ええ、初めまして。サワアです。」
「第8宇宙の天使、コルンさん。」
「初めまして、メル様」
『わわ』
メル様だなんて、さん付けでもいいですよ。
何なら呼び捨てでもというメルに、なりませんと
コルンは続けて言う。
「貴方様の件については色々知っております。
このコルン、貴方様にそんななれなれしいことは出来ませんので。」
『あう』
「ふふ、すいません。コルンお兄様はこういう方と思って頂ければ幸いです。」
「ええ」
「第9の天使、モヒイトさんです。」
「よろしくお願いしますね、メル様」
『あう、えと、よ、よよ、……よろしくおねがいします。』
ぼそりとぺこりお辞儀をする彼女に、可愛らしいですねとモヒイトが言う。
それにびくりと反応したメルは、ウイスの背後に回ってちらりとモヒイトを見た。
「おやおや、隠れないんじゃないんですか?」
『っ…うう、でも。うう。』
「わあメル照れてるの?可愛い!」
『ぴゃう!!!』
ちちち違うもんという彼女の否定は通じない。
頬に熱が入り、なんなら耳が赤いのだ。
少し褒めただけでこの慌てように、モヒイトはクスリと笑った。
「癒されてます?」
「ええ、あげませんよ?」
「まさか。」
「…ウイスさん続きを」
ああすいませんとサワアに言われて話を進める。
少しイラっとした感じがしたのをメルは気付いた。
何故イラっとしたのかは、不明だが。
気にしない方がいいと思い、戻りますよと宇宙が戻ってきた。
「第2宇宙の破壊神ヘレス様です」
「久しぶり、にしては近すぎるか。」
『メルです!』
「ああ、ヘレスじゃ。よろしくな。」
『あ』
そう手を取った後、メルが少し目線を落とす。
ん?と首を傾げたヘレスに、ねぇと声を掛ける。
『ヘレス様、前に誰かに助けて貰ったことってあります?』
「…いや、それは、破壊神になってからないが」
『なる前、いやなる直前?あれ、違うなこれ』
「メル、ごめんね。少し頑張って。」
ブンと突如出てきたミシュメールがメルの肩に手を置いて何かを詠唱する。
それに周りが巻き込まれ、世界が変化し始めたではないか。
「っなんだこれは!!!」
「ちょっと後で説明するから。…ねぇメル、前を見て。」
怖いという彼女に、いいからと前を向かせる。
ヘレスの手は取ったままだ。
胸に手を置いて、泣きそうに顔を上げた。
「……どうして」
「ヘレス様?」
メルだけではない、驚いたのは、ヘレスも、
目を見開いてその場所を見つめていた。
ぶわりと広がる、その暗い部屋の中に一人の子供が座っていた。
「ああああああああ」
その叫びに、メルも驚く。
同じ姿の自分が今度こそいたのだ。
「なんでこうなるの!?えっまって!?!?」
「なんですかこんな慌てふためっ」
し、とヘレスがサワアの口を手で止めた。
「ええ、どうして?あんな力を使ってもこうして来るの?」
『…私』
「なんで?私こんなことしたくないよお」
「…だれ?」
流石に見かねた少女だろうか、少年か、金髪の子供が
過去のメルだろうかに、声を掛けた。
「あっやっぱり私の顔見れる?姿見れる?詰んだ無理。えっ華摘むの?いや無理。」
「えらく動揺していますねえ」
そうぼそりといったウイスに、続けてあのと声がかかる。
「貴方は、神様なの?」
「え?いや、そうといえばそうだけど、貴方を此処からは出せないし、謝らないといけない。」
「?どうして?」
「どうしてってそれは…」
「なんじゃ、此処にも捕まっておったのか。」
聞き覚えのある声に、ヘレスが少し俯いた。
「おお?お主は、有翼人か、珍しい奴を捕らえたもんじゃのう。」
「っ!!!!」
「警戒せずとも、もう牢獄の中で罪のないお主を捕らえる時間は終わる。」
笑って手を出したヘレスに、彼女は首を傾げる。
「ん。手を。」
「でも」
そう言った彼女の目には、過去のメルが首を振る姿。
とても、泣きそうな顔で、ごめんとぼやいた。
ヘレスの手を取った彼女に、名前を聞くが、
何もないと首を横に振った彼女にじゃあと答える。
「「ミラ」」
現実世界のヘレスも同じ様に答えた。
メルを見て、言うヘレスに、メルはただミラの方を見ていた。
「今日からお主は、ミラじゃ。」
そう微笑むヘレスに、子供は嬉しそうに笑ってうんと答えた。
家に帰ったのか、身体を洗わせてしまえばなんということか。
「…お主、女子だったのか。」
綺麗じゃなと頬を触るヘレスに、
えっと、とミラは照れ恥ずかしくに肩をすぼめる。
白い翼が左右からぱたりと動く。
目の中に花模様が此方を見て微笑んだ。
「うん。だから、お相手出来るよ?」
「相手?」
「男の人」
その言葉に、聞いていた全員の息がひゅっとなる。
いいと言うヘレスに、でもとミラが言う。
上手に出来るから大丈夫と続ける。
「もうよい」
「え?でも、しないとだめなんじゃ」
「だめじゃない。寧ろ、それがだめじゃ。」
身体すら手放してでも、生きるしか出来なかった子供。
その現実に、助けれても、彼女の心に植え付けられた種が消えることはない。
癒えるのに何年の月日が経つのだろうか。
その頃には、彼女は愛おしい人に出会えるのだろうか。
手放されることになるかもしれない危機感に
ヘレスはそっとミラを抱きしめた。
何も分からずに、ミラは大丈夫と背中を叩いた。
ミラは貴方に会えて、とても心が軽いのだから。
『…っ、ミラ。駄目、違う』
「メル…」
現実世界のメルが声を上げた。
ミラの現実を一瞬で悟ったメルの中に怒りが芽生える。
無知とは、恐ろしいものだ。
「わらわが普通を教えてやろう」
「ふつう?あの場所がふつうだよ?」
「違う」
それは誰もが同じことを想った。
あの薄暗い場所で、愚弄でしかない人間の相手等、させる必要などない。
メルは焦っていた。
どうしてだと、それはつまり、記憶を引き継いでいる証拠で。
何処かの場所で、彼女は触れることすら、しなくなったのか。
それとも、ここが、原因か。
メルの目は、彼女しか見つめていない。
誰も彼も、見ないで、ミルだけを、見つめていた。
「(嗚呼、それにしても…なんか多すぎない?!!?!)」
「おおいねぇ」
「ねぇ貴方の名前は!?!?」
私の傍に居て何にも言わないじゃないというミラに
かつてのメルがうーんとそっぽを向いた後、
にぱっと笑って答えた。
「しーらない!!!!」
「っ」
「ええ、知らないって貴方ね…まぁいいか。じゃあ適当に名前決めていい?」
「別にいいけ」
「メル」
私の世界で、神様がいるんだよと言う彼女にいうのだ。
「己に罪などないのに自身を牢獄に閉じ込めた可哀想な神様。」
「ミラ、おまえ」
「牢獄出身だし、いいでしょ?メル。」
「…仕方がないねぇ、いいよ。許す。」
「っしゃ!!じゃあヘレスにも」
それはしないでそう言うメルに、なんでとミルが聞く。
「ソレは私を見れない。貴方はその身体が酷い状態だから、
私を見ているだけ。いずれ私は消えて無くなってしまう。」
「ちがう、だってこんなみえるのに」
「ミル?何を一人で話をして」
「ねぇヘレスも言ってよ!!此処に人が居るの!!メルって人が」
そう言う彼女に、何を言うという。
よせと小さな声が聞こえても、言葉は続かれる。
「何処にもそんな奴、おらぬではないか。」
その言葉に、そう、とミラが足を後ろに持っていったのに
どうしたと聞くも、良いよ大丈夫とミラは答えた。
まるでそう言うように覚えているように、流れていうのだ。
ほんとだねとミラは言う。
ヘレスに助けて貰えたのは肉体だけで。
精神的なものは何一つ変わらないのだと。
そういうミラに、メルは何も言わない。
空は赤く、青いとはかけ離れていた。
「何時だって空は暗かったのに、こんなにも光に溢れている。
なのになんでだろうね?胸はこんなにも、あいて、涼しくて。」
「ミラ…」
「ヘレスに、言うの、怖いよ。」
「言わなくてもいいんだよ。いずれ貴方は私を忘れる。」
「忘れたくない」
「ミラ、駄目だよ」
貴方は克服しなければいけない。
その感情を貴方が乗り越えないといけないの。
そう言い聞かせる過去のメルに、
現実のメルはじっと見つめるしかしない。
一言もしゃべらずに、ただ見つめていた。
見つめるしか、なかったのかもしれない。
「だって貴方は優しいもの」
「っ…だめ、ミラ駄目だよ。私は悪い子だ。」
「じゃあどうして私を牢獄から出さなかったの?
それは私がまた閉じ込められて酷いことされるって
気付いたからじゃないの?」
「……っ。」
「ほらあたった。ねぇ、メル。私頭がおかしいままでもいいよ?」
貴方が見えるならば。私は頭がおかしくなったって構わない。
そう言う彼女に、過去のメルは駄目だと告げる。
ヘレスに普通を教えて貰え、彼女はいいひとだとメルは言う。
「あの人は間違いなく貴方の助けになる。
気の持ち合わせもかなりの量だし、貴方に持っていない全てを」
「いやだよ」
「ミラ……」
「普通を知って貴方を忘れて消えて無くなるくらいなら。
私は普通を知らずに貴方の手を取って永久を選ぶ。」
その目は、メリアと同じ様に、きっと見つめていた。
じっと、その場所だけをみるようにいうのだ。
「だって、貴方は私を見てくれた、神様なのだから。」
「っ」
「…メリア」
ミラも同じ様に、メリア、ミシュメールの様に言うのだ。
同じ言葉を、違う環境でも、違う場所でも、告げて、手を伸ばす。
何時だって何処だって、メルのその手を、取ろうとする。
「駄目許さない」
「なら、呪ってくれる?」
「え?」
「普通になれなければ、貴方を忘れないなら、呪ってよ。」
どうか私だけを、そういう彼女にメルは続けて言おうとして止まる。
ヘレスに呼ばれる声が聞こえだしたからだ。
いけというメルに、ミラは続けて降りて言う。
「おお、おったか。部屋にはいっておれ。」
「なにこの騒ぎ」
「少々戦になりそうでな。」
バタンと閉じられたドアに、遠くから叫び声が聞こえた。
暫くして、がちゃりとドアが開く。
無事に帰ってきた彼女の腕に、傷がついていたのだ。
「ったいへん!!!」
「よせ」
「でも回復しなきゃ」
「いい、お主のデメリットがでかすぎる。」
デメリット?そう言った者に、ヘレスが答えた。
「そういうことじゃ」
それは、男性に手を伸ばすミラのことであり、
下種の極みだなというリキールの言葉に嗚呼とヘレスは言う。
「本当に、奴はいい子じゃった。何を言うにしてもくっついてくる。」
「ヘレス様…」
ミシュメールの言葉に、前を向く。
まだ話は終わっていないというのだ。
「じゃあミル、貴方を守る。」
「っ」
「要らぬお前は」
「ミルは貴方に恩がある!!有翼人の力を侮らないでよ!!!」
弓なら、特に得意なの。
そう言う様に、彼女に弓を持たせてみたら
「なんと」
「百発百中…」
「どう?」
「なんで黙っておった。これを言えば外に出されていたじゃろうに」
「寧ろ殺されたか、良い様に洗脳されそうだったから。」
「…お主、まさか最初からあの場所を?」
生きるにはそこしかないと道を見つけて走り出した。
ミラは分かっていたのだ。その行為が無知ではないと。
知っていても尚、それに縋るしかなかった。
その選択肢しか、選ばせなかったと言った方が、正しいのだろうが。
「ミラ」
「何を言っても言う事聞くつもり無いよ?私はヘレスの後に弓を射る。」
「だめじゃ、お主の力であれば皆がお主を選ぶ。」
一人と一人の戦いならまだしも、
大勢の目がミラに合えば必然の事が起きるのは目に見える。
ヘレスは言うも、絶対いやという。
「なんなら此処で誓って自害するくらいには、覚悟あるよ、私」
「ミラ…」
「私は貴方に助けて貰えた。それだけで充分くらいの理由なのに。」
一度すらも、お願いはきけないの?
そう言う彼女に、今回だけじゃと言うヘレスだったが。
「…お主本当に凄いな。」
「全員急所を全て外しています。」
次の戦いでミラを出せば、8割ほどの武力を圧倒したのだ。
その弓の威力に、ヘレスは教えてくれるかという。
「お主が其処迄強くなるのは秘訣があるはずじゃ。」
「でも私ヘレス程じゃ」
「いやいやいや、充分にお主の方が強い。圧倒的じゃ。
だからそうじゃのお、ああ、そうじゃこれがいい。」
なぁと言ってミラに向かっていう。
「お主を助けた、わらわを助けてはくれるのか?」
その技術を、救いを。
そう言うヘレスに、ぼんと音が立つ。
おお?というヘレスに違う違う違うというミラ。
昔から口説くのはお得意でしたかという
サワアの横腹を叩いたのは現在のヘレスだ。
「これはこう、それでこっちだけみる」
「成程、これは難しいが…いける。」
それから、ヘレスの特訓が始まった。
気の扱い方はメルが教えていたのだ。
「いい?絶対に願わないこと。」
「なんで」
「貴方はその素質がある。それは私が此処にいるのはそう。」
「願えばどうなる?」
「絶対的な願いが叶う代わりに、叶えた後の者が絶望を知る。」
だから、この力は消滅しないといけない。
そういう昔のメルが苦しそうに胸の服を掴んでいう。
「絶滅して無かったことにならないといけないの。
こんなこと、繰り返したら本当に悪しかないとしか思えない。」
「…メル」
「手を伸ばさないこと。華を咲かせない。祈らない。
それをしなくても、貴方は充分な力がある。」
私は貴方を失いたくないそう言う彼女に分かったという。
そう、分かったと、言うだけだった。
次の戦い、ヘレスは窮地に立たされていた。
敵が圧倒的に強く、ヘレスは愚か、ミルでさえ苦労していたのだ。
「ヘレス逃げて!!」
「だめじゃ、これ以上はっ」
見つけたというかの者に、ミルではない者が恐れた。
「…駄目やめて」
「メル?」
現実のメルはソレを見て、何も思わない。
ただ、過去のメルは絶望を見つめていた。
黒いフードを被ったような、白い装束の人間だ。
「約束は果たされる、全ては元に戻さねばならない。」
「なにをいっておる」
「お前はこっちだ」
「っミラ!!」
「私のことはいいからヘレスそっちやって!!!」
そう空に飛びあがったミラに、ヘレスも装束の人間に立ち向かう。
重い力に、圧倒されつつも、弓を使いつつ距離を取って打ち続けるも
近距離に持っていかれてナイフを取り出した。
その時だった、ミラの顔が下がる。
嗚呼駄目と声が空から上がり、空の上に居た過去のメルがミラに手を伸ばす。
ミラはその手に取られずに、敵の身体を地面に飛ばしながら手を伸ばして落下した。
ヘレスという言葉に、ヘレスが振り返る。
それと同時に、ミルの肩に矢が一つ刺さりながら身体を落とす。
「……み、ら?」
ミラ何をという彼女に、やったかと装束の人間が騒ぐ。
「しっかり、しっかりせえ!!!」
「だ、め、だった、か」
「なにを」
ヘレスの背後からしゃくりと音が鳴る。
心臓を一突きしたのだ。
撤収すると騒ぐ者達に、まてと声が上がる。
血の流れる間、ヘレスはミラを庇いながらも立ち上がろうとするも、力が出ない。
嗚呼とミラが言う。
「これじゃ、たり、ないよ。」
「ミラ、お主だけでも逃げろ。それくらいなら、わら、わをっぐごほっ」
「ねぇ、私。忘れない。貴方の記憶と共に、ヘレスの普通を抱きかかえて全部を纏めればいいでしょ?」
何をいうてというヘレスの目には、少し起き上がったミラの姿。
その髪は、いつもと違っていて。
「み、ら?」
「どうか、貴方を、忘れるから、与えるから、叶えてよ。」
それは時間が止まったかのように見えた。
その時間が、華を咲かせて、
引きちぎり、喰らって言ったのだ。
彼女もまた、髪色を白く染め上げて、黄金の目が花に色を灯す。
光りを帯びた身体に、違和感を覚えるヘレス。
「なにをだ、めじゃ、にげ」
「華よ神よ、願いを継げよ。
代償与えて、お願い聞いて。」
それは、ミシュメールと同じような響き。
キンと音が鳴り響いた後、華がぶわり咲き誇る。
「”どうかこの人を救ってよ”」
代償は、私のこの今の、命を引き換えに。
その言葉に通じたのか、風がぶわりと吹き上がり、
その場所辺り一面花畑に変化するではないか。
ミシュメールと、同じ様に。
淡い白の花が、オレガノが、咲き誇った。
「馬鹿本当にお前も馬鹿だ。」
「…嗚呼、お迎えが来たのね?」
「何を言って、待て、なんで傷が」
「ねぇ私の神様、代償を」
そう嬉しそうに笑って泣く彼女が空に手を上げる。
それに、頭を撫でて、頭にキスを落とすしかしなかった。
過去のメルに、待てとヘレスが言う。
駄目だと、置いていくでないと。
「貴方は強くて生きていける。ねぇヘレス」
「駄目じゃわらわはお主がお主と共に」
「いつかきっと、貴方に会いたい。」
っ、飲み込んだ言葉に、ミラは笑う。
「貴方の苦痛を、取り除いて、救ってしまえ、華の者よ。」
「…華樹の記憶、第3章」
その言葉に、世界が終わることを知る。
背後にある気配は、この散った者その者で。
「華樹の記憶、廻廊に基づいて。
第3章、奇跡を願い告げた華神、ミラ。」
ねぇ、神様。
「約束、果たしに来たよ。メル。」
『…ほんと、皆馬鹿だよね。』
「私だけだよ馬鹿で良いのは。」
『私何も覚えていないの。貴方がこうして見せてくれたくらいで。』
ふわりと世界がビルスの部屋の場所に戻る。
ミラはそのまま世界にぽつりと立ってメルの背後で手を出していた。
ぱっとヘレスの手を放して、後ろを向いた。
其処には、先程見ていた彼女の姿が見えていて。
「私はヘレスに肉体を救ってもらった。
メルには精神を救ってもらった恩がある。
だから私はヘレスに肉体を救い、
貴方を精神丸ごと救う義務がある。」
『そんなの貴方が決めたこと』
「だからいる。私は貴方が神様だって、
希望を奇跡を連れてきた天使だと思ったから!!」
「っ、み、ら…なの、か?」
そう言った言葉に、ミラは顔を出した。
そうだよと言う前に、ヘレスがミラを抱きしめる。
この馬鹿者がという声は、涙声で。
「ねぇ、ヘレス言ったでしょ?もう一度会えるんだって。」
「ぐずっ…ミラ、じゃが」
「私はずっとメルの元に生き続けると決めてた。
貴方が悶えたあの日あの時間から、ずっと。」
『…どうしてみんな、私を見るの?』
私にそんな力なんてないのに。
そう言うメルに、あるよとミラは決まって言う。
「だって貴方は私を私達を見てくれる。
その行動は時間は裏切らない。」
『っだとしても、だとしてもあれはない』
「でもヘレスに出会わせてくれた。それも二回だって。」
「ミラ…」
「奇跡を繋げてくれる、優しい天使さん。」
天使じゃないよ。ただの天使好きなだけだよ。
そう言うメルに、ううんとミルは首を横に振る。
「絶望した瞬間を救った貴方は神以外というなら、天使だよ。」
「…っ、成程、そういうことでしたか。」
「サワア?」
「貴方がどうして強い意志を持つのか、漸く理解出来ました。
どうやら彼女の時間が続いてる場所は、我々天使がみても
記憶がそもそも存在していない対象になるようですから。」
「お主…」
えらく強いので、どうしてかと考えて探ったが
全く見れないというか、もやですらない。
「綺麗に切り取って、演技するとは、末恐ろしい方ですね?」
「へへん!ミラは何時だってヘレスの味方だもの!!!」
「死んでしまっては元も子もないがな。」
「うぐっ」
「っくくくく」
そう笑うミシュメールに、メルも笑った。
さあとメルが両手を広げる。
『ならおいでよ、この中で』
貴方が生きると決めたこの場所で。
そう言うメルに、うんとミラは覚悟を決めて
ヘレスの腕の中から離れる。
大丈夫と言って
「何度だって貴方に会える。」
「ミラ、おまえ」
『…きえちゃった、あ、ねえ』
「っメル!!!」
「ご安心を、気を失っただけのようです。」
なんだなんだこいつはと言うのはロウだ。
フラッシュバックの一種にしては妙に現実で。
過去に飛ばされたという判定にはならない。
「メル様、貴方は何度人をお救いになったのです?」
「サワア?」
「…いえ、なんでもありません。ウイスさん」
そうメルの身体を抱き上げウイスに渡す。
この状態ならまた一週間ほど寝たきりになりそうだ。
仕方がないですねえとウイスはため息をついた。