四季のある地獄
「それで、ウイスお兄様がね!」
「うん」
フィズの時間はもうウイス達が産まれた後にいっていた。
それでも兄と言うのは、彼女がウイス達の後に産まれたからで。
メルはフィズが生まれる前から、彼女の事を見つけていたというのに。
それを知れないのは、メルが力を持っていたから。
今日もフィズの話を聞いていた頃。
部屋に入った大神官にフィズは挨拶をした。
此方に気付いているのか、ちらりとみた大神官にメルの目色が変わる。
まるで威嚇しているようにもみえるその目。
此方をみるなといいたそうだ。
「フィズ、天使見習いとしても、ガイドを後々任せる身。
外に出て修行を積む時期になりました。」
「外に!?」
「(来たか、流石にこの場所を留めることは不可能と言う事か)」
「この声は?」
「過去のメルさんの脳内でしょうね。」
そう告げた大天使に、話が続けられる。
「(流石に大神官様は気付いている。
この後がどうなるかも予想がついて流すなら、
私の行動が正しいかを見極めるか、
それともただ知らないか。)」
いずれにせよ面倒なことこの上ないなと言うメル。
「(このよくわからん場所をもう5回も繰り返しているのか)」
『ごかいめ』
第5章という言葉がメルの頭に入ってきた。
「(フィズの所まで来て、よりにもよってこの場所か。
より近い場所で面倒な上この上ない。
嗚呼正直うろうろされるよりもいっそのこと外に。)」
いやでも外は少々まずいだろうな。
そう渋るメルに、フィズがこっそりと離れた彼に声を掛けた。
「ねぇメル。外なら何処に行きたい?」
「…貴方何処に行くつもりよ」
「私お姉様やお兄様に会いたいなぁ。」
「ドーナツ持って?」
「あれ、バレた?」
「貴方の兄弟愛は強いからねぇ。」
私にまで移ったわそう笑うメルに、じゃあお裾分けだねと笑う。
「幸せをお裾分け」
その言葉に、バチンと世界が変わる。
緑色の場所に、黒髪の女性が少女に花冠を渡す世界。
少女が嬉しそうに笑って何かを渡そうにしている。
口元が同じ様に動く。
しあわせを、おすそわけ!
「メル!?」
「…あ、ご、ごめん」
世界が戻り、映像が戻ってくる。
まるで現実の様に見えたあの空間を、
現実のメルは生唾を飲み込んで前を見た。
「も〜メルったら。モヒイトお兄様の所に行ってから、
そのままクスお姉様の方に向かうって話だよ。」
「え?あ、ああごめん。」
そう片手に持ったドーナツを見て、ふと目線を落とす。
きっと、彼も真実を知っているだろう。
「ねぇモヒイト様って、どんな天使なの?」
そう過去のメルが聞く。そうだなぁとフィズが答える。
「メルにしたらそうだな……知的な天才って感じかなあ?
常に冷静に、物事を見れるお兄様よ。」
「…そう、好き?」
「うん!!メルは嫌い?」
「ん〜〜〜〜〜嫌い、ではないけど、好きかと言われても。」
私話せないしねぇ。そう頭を上げるメルに、じゃあ話してよと言う彼女に
ううん!?!?とメルがばっとフィズの方を向く。
「だって私の身体に入って乗っ取れるでしょう?」
「いや私殺される未来しかみえんが?!?!!?」
「大丈夫、モヒイトお兄様は優しいから!」
「前に何度か会っていますがアレ絶対切れたら
末恐ろしく怖いタイプですよね?!?!?!?!
私絶対ヤダよ!??!!?!?」
「ね?」
あ〜〜〜これだめだ。絶対やりにくる。
なんとかしてフィズの状態をと観察し始めたメルに
冗談冗談と笑うフィズ。
本当にそんなことをしたら、私が消えてしまうという彼女に
天使は消えないとメルは言うのだ。
「天使はその記録に相対した、いや相応しい状態を維持している者達。」
「メル?」
「もし華神が、加護天使が、天使の種になるならば。」
もし私が、神様ならば。天使なんかの間に終わらせる人ではない。
そうメルは思いながら、辿り着いた場所に違和感を持った。
「おや、これはこれは」
「モヒイトお兄様!!!」
そう飛び込んだフィズに、片手でフィズを受け止める。
何時も冷たい目をしてるモヒイトだが、
フィズを見つめる目はとても優しく落ち着いていた。
「お久しぶりですね、フィズさん。」
「はい!モヒイトお兄様もお元気そうで何よりです!」
「ですがお二人にご挨拶をお忘れですよ。」
「はわ!!!!」
おい私の癖が移ってる移ってる
そう脳内でメルが突っ込みを入れるも
余り強く言えないのはモヒイトの目があるから。
なんならうん?と言って此方を見てきたのだ。
ぐっと力を入れて何とか見えないようにしているが、
「モヒイトお兄様?」
「…ま、いいですか。なんです?」
「お話おわりました!」
いい子?ねぇねぇいい子?そう言いたそうにふんふんするフィズに、
ええいい子ですねと頭を撫でるモヒイト。嬉しそうにフィズはする。
尻尾があれば全力で回していることだろう。
「あ、そうそう、モヒイトお兄様と、皆さんにと。」
「これは?」
「ばうむくうへんと呼ばれるものです。」
これはいつもの。ありがとう。そうモヒイトにドーナツを手渡す。
食べていきません?そういったモヒイトに、
先を急いでましてそう笑うフィズにでは
とお辞儀をしてモヒイトは彼等に分けてやることにした。
「にしてもあんな可愛い奴がいるんだな」
「…幾ら界王神であろうと彼女を取ると
あればそうはいきませんよ????」
「っと、だれがとる話をいった誰が…」
「だが素直でいい子じゃないか。何か心配でもあるのか?」
「フィズは少々、人を良く見過ぎるところがありますから。」
まるで、誰かを真似ているように。
そう言うモヒイトに、ちらりとメルは現在のモヒイトを見る。
それに目が合い、ぺこりとお辞儀をすることもなく、そっと目をそらした。
「そりゃあ心配にもなりますよ。
あの子は我々天使の中でも群を抜いて力を持っています。」
「あいつがか?」
「ロウ様がそう思うなら貴方はそれまでの存在と言う事です。」
ふっと笑うモヒイトに、怒るロウだが、シドラがなだめに仲裁に入る。
それに怒りがシドラに回り、喧嘩というかロウの一方的な毒舌にひーひーと言う。
「だが」
「ん?」
「心配せずともちゃんと成長してそうにみえるが」
「…そう、だといいのですがね。時に力は破壊を産みます。」
貴方達の様な破壊神ではない、破滅の意味を持った、ね。
「例え意図せずとも、それに呑まれ、泣いて消えるなんて見たくもないのですよ。」
「へぇお前が弱音吐くとはいがんぐ」
「消されたいので?」
「ふふおおほひふは」
そんなことが出来るんかと言いたそうに言うロウにぱっと突っ込んでいたバアムクーヘンが喉の奥に入る。
「っだが、あいつは一人じゃないから大丈夫だろって」
「え?」
そうロウが言った言葉には、見ていた全員も驚く。
「だって、あいつの隣にずっと白髪の華を持った者が守っていたじゃないか。」
その言葉に、欠けたドーナツを放置してモヒイトが席を外す。
すいませんあとは頼みましたという彼に、食べかけを食べようとしたシドラをずつく。
モヒイトが走った場所は、大神官の元であり、
「すいません、至急耳に入れて貰いたいことが」
「…何事です?」
「いえ、憶測で言うのはアレですが、その。」
「落ち着いて下さい」
貴方らしくないそう言う大神官に、モヒイトは言う。
「華神が、華神、様が…生まれ変わりが」
「…何方ですか」
「それは…」
「……やはりフィズさんですか。」
気付いた大神官が、顎に手を置く。
どうしましょうとモヒイトが続けていう。
「華神様らの生まれ変わりは処罰対象では」
「なっ!?!?」
そうなのかと聞くロウに、ええとぼそりモヒイトが答える。
「あの時のタイミングが悪かったので。」
タイミングと言うシドラに、話が戻る。
「ええ、ルトラールさんもまだペナルティーに呑まれているままですし。」
『…ると、らある?』
「メル?」
「ですが、消滅は掟を破るしか方法はありません。」
「…では」
「泳がせる、という訳にもいかない。」
報告をという大神官に、はっと言ったモヒイトが
その場からはけて報告という名の会いに直接行くことになった。
一方その頃、フィズはというと。
「うまい!うまい!!」
「美味しいですね」
「へへありがとうございます。それでは私はこれで」
「もういいの?」
「…ええ。シャクちゃんも居ないってメルも言っていますし。」
「……しゃく?」
そういったクスが、メルの言葉を言う。
貴方何処でメルと言う言葉をという彼女に、
行こうとメルがフィズの手を取る。
「其処に居るのね、メル」
その言葉に、メルの身体が止まる。
「弟はずっと貴方を待っているのよ。それを放置してのこのこ出てきた訳?」
「…行こう、フィズ。」
「え、でも」
「貴方がそんな子だと思わなかったわ。」
ぐっと胸がえぐれる痛みを伴う。
胸元をあまり見たくなかったのに、
フィズが見かねてみた後、そんな酷いですと答える。
「貴方には関係ないわ」
「いいえ関係あります」
「なぜ?」
「私は華樹の記憶に選ばれしものだから!!!」
「っ!!!フィズ待ちなさい!!!」
「貴方なんて、貴方なんて知らない!!」
「フィズ」
「メルの事を悪く言うなんて、嫌いよ。」
そう泣きながら出て行ったフィズに、クスは追いかけようとするも
待てと止めたのはゴワスだった。
これ以上いっても、怒りを買うなら放置するべきと判断したのだ。
それと行き違いか、モヒイトが到着した。
「クスさん、フィズは」
「先程喧嘩別れしましたよ」
「…事情を知ったのですね。」
「…嗚呼言うしか、無かったんです。」
何よりも弟を大事にしてくれたあの子が、
何億年以上も待ち続けている彼の心を知らずに
呑気に帰って来たかと思うとというクスに、
お気持ちはわかりますがとモヒイトは話を続ける。
「フィズはその方を、メルと呼んでいる。間違いないですね?」
「…ええ」
「……このこと大神官様には、いえる、気もしないと。」
良いですよ私から告げておきます。
そう言うモヒイトに今からなのとクスが言う。
ええと答えるモヒイトがとんでもないことを言う。
「フィズは魔女対象に入りました。消滅対象です。
天使らに探させ、捕まえ大神官様の元にお送りするとのことです。」
魔女、それは、華神らが願いを叶えられなかった時の状態。
代償が綺麗に支払われなければなるとも言われるその状態は
力の大きさに比例して威力も増していくと言われている。
「華神とは…まさか、あの伝説の!?」
「ええ、先程判明しました。メルさんとはお話に?」
「姿はみえませんでしたが、感覚はありました。」
「では、やはりフィズが次の贄に。」
「私探してきます。」
「っクス様!」
「すいません、私も出ます。」
お邪魔しましたといって消えるモヒイトに、
大丈夫かのおと破壊神が言う言葉に
界王神が大丈夫でしょうと答える。
「きっと、そう、きっと。」
++++++++++
そんなきっとなんて、存在しない。
そう言ったのは現実世界のメルだ
『物語は続く何度だって最期は残酷に終わり胸をえぐって元に戻す。
まるでそれが当然の義務の様に当たり前の様に書き記されている。』
「なにを…」
「っ駄目、此処も駄目!!」
そう飛んでいたのはフィズだ。
全速力で兄や姉の目を盗んでとにかく飛んで飛んで飛びまくっていた。
各宇宙の星を見つけては身体を隠して逃げるを繰り返す。
全王宮に戻ってきたフィズが音を感じ取り身体をずらす。
「いました?」
「いえ、何処にも。気配を綺麗に消す様になりましたね。」
「褒めている場合ではありませんよ。」
いったか、と思ったフィズはとある場所を見つける。
その場所は、奥に扉があるものの、左側に変な扉があった。
その奥は確か、立ち入り禁止エリアであって。
というかこの場所も禁止エリアで、とドアを開ける。
その場所は
「きれい……」
紺色の髪色を染め上げた男性が、樹木に呑まれていた。
その姿を見て、そっと身体を近づける。
眠っているのか、こんな場所に監禁しているなんて聞いたことがない。
ふと思いついて振り返る。
「ねぇめ、る…?」
「…さま?」
「え?」
「っ」
「え!?メル!?!?」
アレそう言えばとメルの姿を見る。
紺色の髪色の姿に、顔を上げる。
メルの心情を読み取ったフィズが声を出した。
「華樹神官様?って、誰?」
「っフィズ!!!」
「あっやっば!!!っメル!?」
「ごめん。身体借りる。」
そういったメルが体内に入ることでフィズの目が変わる。
黄緑色の目をしたのに、やはりあなたでしたかとサワアが攻撃を入れる。
ソレを交わし、とんと力を使って吹っ飛ばし身体を縛り付ける。
短期戦だ。一発で仕留めなければ、自分が消えて消滅してしまう。
「(駄目だそんなの、フィズだけでも逃がしてやりたい。
その為には、此処で、華を一気に育て上げるしかない!!!)」
だがそんなことをしたらどうなるか、結末は知っている。
でも、今そんなことを考えている暇はない!!
ぱんぱんと音を立てて攻撃が降りかかってくる。
本当に容赦がねぇなあと思いながらも、
コルンやウイスの攻撃を避けては受け止め受け返しとする。
サワアを先に飛ばしたのはこれ以上彼に触れるとまずいと思ったから。
今彼に悟られる訳にもいかないが、あの顔をみて悟っていない訳もない。
「そこまで」
「…っ」
「フィズさんから離れて貰いましょうか。」
「…だい、しんかん、さま」
「」
その目に、嗚呼もうだめかあとメルは観念し空に自身を投げ出す。
それに大神官が指をはじきメルの姿を外にも見せれるようにした。
浮遊したまま、鳥かごにはまったメルに、フィズが声を上げた。
「っメル!!!!」
「動かない!!!!」
両手をコルンに抑えられ、怒鳴られたことでびくりと反応する。
「…泣かないで。ごめんね?」
「っふ、ひっ、うう、め、る」
「天使の貴方を、私が選んだのが馬鹿だった。」
「っ」
「ううん、私が貴方の傍に居続けてしまったから、駄目なのね。」
「なん、で」
「人に近い天使なんて、不必要になる。」
種がある時点で摘むべきであり、それは、処分対象だ。
大神官やサワアの方に目を向けない。
もう、諦めるというのか。
「…ねぇメル、私おりこうさんだったでしょ?」
「…フィズ?貴方なにっぐ」
「っお兄様!!!」
「なら、ねぇ!メル!!私も連れてってよ!!!!」
「っいけません!フィズ!!!」
「華よ神よ、願いを継げよ!代償与えて、お願い、聞いて?」
それは、ミシュメールやミラと同じような響き。
キンと音が鳴り響いた後、華がぶわり咲き誇る。
「”どうか貴方がこの時間を続けられますように”」
代償は、私のこの今の、命を引き換えに。
その言葉に通じたのか、風がぶわりと吹き上がり、
その場所辺り一面花畑に変化するではないか。
ミシュメール、ミラと、同じ様に。
淡い白の花が、花かんざしが、咲き誇った。
胸元の華に、メルは力が入り、駄目と答える。
ぼっと胸が青に光り、蔦に縛られる。
無理矢理メルは牢獄から脱出し、フィズに足でしがみ付き、手に力を籠める。
「”花よ華よ願いの元よ!!華の者真の願いの者!”」
「っおやめなさい!!」
「っ黙れ!!殺したいのか!!!」
「っぐ」
「”戻れ戻れ真実戻れ、願いを戻せ神の子よ”」
これが効くかどうか分からん、でもやる価値は十分にある。
メルは勢いで叫び声を上げた。
「”花よ華よ願いの元よ!!華の者真の願いの者!!”」
蕾よ蕾、まだまだ咲かない華にすらなれない。未熟な子。
どうか我の願いの元、華のもの取り下げ、種を取りだせ。
そう言うも、ギンと音が出て、メルの身体を軽く切り裂いて来た。
血を吐いたメルが、地面に倒れる。真っ赤な鮮血に、近くに倒れていたフィズが見える。
反対に倒れていたのか、頭の上はフィズの足だろう。顔が見える。
「ふぃ、ず、ご、め」
ごめんなさい、天使に産まれた貴方が可愛らしくて。
ずっと居たら種が出来て、戻れなくなる。
そう分かったというのに、それでも見続けた。
見てしまった其処に辿り着いた私が駄目なの。
ごめんというメルに、いいよとフィズが笑う。
「め、ね、た、のし、かた?」
「…っフィズしっかりしなさい!!フィズ!!!」
「コルンさん」
「っ大神官様ですが!!!」
「華神に選ばれた者は、天使から外れています。」
それ即ち、命がある、死んでしまうという事実に、手を下す。
「ごほっごほ」
「っフィズ」
「こ、わ、くな、いよ、あな、たは、わ、るく、ない」
「…わ、るいこ、だよ?わたし、や、ぱ、わるいから」
だから、あの人も眠ったままなの。
そう涙をぼろぼろと流すメルに、フィズもまた涙を流す。
天使に会いたくて、ただその時間を過ごした。
そういった言葉に、メルは隣をばっと振り返った。
其処には、今にも死にそうでいるフィズが立ち尽くしていた。
その死にかけをずっと見ながら。
「貴方の目を見てすぐに分かった。嗚呼ルトラール様のお子なのだと。」
『ふ、ぃ、ず?』
「確信した。この場所で死ぬのが、貴方にとって、一番の幸せなのだと。」
ごほっと言った言葉にメルは元の場所を見る。
過去のメルが告げた言葉が成功したのか、フィズの身体からツタが消え、
綺麗な華が咲き誇り始めた。それに、フィズがそっと花を千切る。
「っ」
「ほ、ら、おは、な」
「っば、か、あな、たのぶんが」
「へへ」
メルの身体は癒され、メルもまた身体がふわりと浮かび上がる。
フィズの願いが通った証拠なのだ。それはつまり、フィズは消えて無くなり、メルは生きるということ。
「っ許さない!!!貴方の願い、叶えさせない!!!!」
「出来ない癖に」
「っ!!!!」
「ね、いいよ、もう。」
また、次に行こう?そういったフィズに、メルは涙を流しながら嫌だと首を横に振る。
「はな、かんざし、いみ、わか、るでしょ?」
「〜〜〜〜〜!!!やだ、もう、いやなの!!!!」
「メル……」
「一度目も、二度目も三度目も、貴方達は皆誰かを活かそうと死んでいく!!
ひとっこひとり、自分の願いに振り向きすらしない!!!」
「でも、おねがい、かなえ、て、くれ、るで、しょ?」
「……っ。」
「メル様、こう、図々しく、申し訳ない話ですが。」
彼女の願いを叶えてあげて貰えませんか。
そう言ったのはモヒイトだった。
「なんで」
「彼女は優しく、ただ強い力を持ってその身を殺しかねない状態でありました。
貴方の事も我々はかいつまんで聞いてはいます。」
貴方が悪い存在ではないことも。
でも、決まりは決まりなのです。
貴方を見つけ次第、消滅させろと。
なら、今殺してと言いたくとも、フィズの願いは決まっていて。
だから、それなら見なかったことにするというのか。
「なんで」
「すいません、お小言は貴方に次出会った時にでも。」
甘んじて受け入れます。
そういったモヒイトに、私もと頭を下げたのはウイスだけではない
其処に居た天使達が皆彼女の方を向いて頭を下げる。
いたたまれなくなったメルは、指を鳴らし、サワアを解放する。
「…いいんだね、君たちの愛おしい妹を奪うということになる。」
「ええ」
「大神官」
「…仕方がありませんね。いいでしょう、見送って差し上げます。
ですが、今この状態、華神らの暴走、魔女は頻繁に起きています。」
正直天使でも対応が難しく、破壊神らに知られるのは時間の問題でしょう。
そういった大神官に、メルはそうと答える。
「ごめん、頑張って早く戻ってくる。」
「ええ、お待ちしています。貴方が希望の一筋であることを、どうかお忘れなきよう。」
「…っそれ、って、さ?私、死んじゃ駄目って、いってるじゃん!」
泣きながら言うメルに、ええと大神官は答える。
嗚呼酷い、酷いことを宣告するのだ。
あの眠った男性の前で、私に言わせるというのか
「嗚呼そんなの、ただの地獄でしかないのに」
「…すいません。」
「いいよ、その地獄を、愛せるようになってくる。」
だってこれから、どんどん悲惨になるのでしょう。
そうならば、卑下するよりも受け止める方がマシだ。
そういったメルが胸に力を込めた。
今度こそ彼女は消えて無くなるのだろう。
嗚呼そのまえにとふわりメルが向かったのは、
「ねぇ、覚ましてよ」
「っめ」
「こっちをみて?フィズを連れてくから?悪い子だから寝ているの?」
ごめんね、悪い子供で。
そう言うメルに、何人かが声を漏らす。
「…おき、ないよね。そりゃそうだ。」
そういうしきたりなのだから
そう言ってメルはそっと離れる間に
「貴方を待っていますよ、忘れずに。」
「っ!!!!」
振り返っても、彼は言葉を零さない。
夢だ幻だと言い聞かせ、今度こそメルは笑い嗚呼と空を見上げる。
空はまだ、青々とした世界なんて見せてくれない。
「華樹の記憶、廻廊に基づいて。
第5章、天使の時間を生きた華神
フィズですよ、メル様。」
『…ほんと、馬鹿だよ。』
すいませんと言ってメルの身体を抱きしめるフィズに、
バチンと音が鳴り世界が変わる。
「っなんだ」
「な、メル。お前は強い。」
そう言った赤髪の女性が白髪の子にいう。
赤い目の人が、いつかと言う。
「お前が華神になった時、アタシはお前を迎えに行ってやるよ。」
『てぃ、なさま』
「え?」
『連続でそんな』
物語が始まりだすとは思わなかった。