まだ心は此処に在るので
危惧していたことが起きた。
彼女が来てから早くも30年が経つ。
その間、第8宇宙の華神ハシュクロード様から
立て続けに勝利の第11宇宙の華神ダブリア様
第9宇宙の風の華神ライネア様
第2宇宙の知恵の華神クライオリー様
第3宇宙の大地の華神カルルリ様が消滅さられた。
時期的には致し方が無いことだ。
彼女達は長く宇宙を司り、
そのまま達成して魂を明け渡した。
中には力無きまま死んでしまった人もいるが。
「随分と少なくなりましたね。」
その中で、彼女はまだ花を咲かせない。
まだ、花を咲かすことはないのだ。
第7宇宙の華神候補、芽瑠
彼女に魔女だと異名が走るようになる。
それに師匠であるティーナは勿論
請け負うラストリアも苛立ちを前に表す。
怒って良いのだ、感情を露わにしてもいい。
なのに、彼女は、芽瑠はしない。
前の世界では髪色が銀色の事もあり、
虐められたことがあったそうだ。
虐められるのが怖くて、
何も悪いことをしていないのは分かっていて。
だから髪の毛を黒に染め続けていたらしい。
綺麗に染めないのは何年ぶりだろうという芽瑠。
ありのままで生きれないというのは、かなりキツイ。
自分もそう、生きていたから、いや。
「(ある意味今も、でしょうがね。)」
何時までも貴方が笑ってくれるのであれば。
私は貴方の為に偽善を偽り続けるというもの。
それが私の、罪償いと、罪滅ぼしというのでしょうから。
そう思っていると、芽瑠が話を続け出す。
「大丈夫です、私はまだまだ未熟ですから。」
「…芽瑠」
「あっ、すいません、私としたことが。
卑下なんてしちゃ駄目ですよね。」
「いや…はぁ、お前本当に馬鹿でいいな。」
「なんで私貶されなければならないんです!?」
「まぁまぁ間違っていませんし。」
「ルトラールまで!?」
半泣きの彼女にくすくすと笑う。
も、束の間。どうやら今日は
第6宇宙の水の華神ウィアリス様と
第10宇宙の植物の華神シャクロラス様と
三人でお勉強会をするらしい。
…何故集合場所が第四宇宙の薬の華神、
クノフィリス様の元なのかは知らないが。
まぁ大方察しが付いている。
どうせ水と植物で生まれたものが
何か分からないから知識が豊富な
クノフィリス様に突撃しようと思ったのだろう。
我が主が。
もう一度言う。
我が主が。
「…それで、今日は休日か」
「ま、それもありますが…本題は別に。」
この案件どう思われます?
第12宇宙、継承の加護天使、アペトス様。
その場所に座っていた男性らしき者。
肌は人間の肌で、輪は上に浮遊していた。
前髪は後ろに持っていかれているも、
左右の横髪は放置しているのが、動く度に揺れる。
後ろは短く、耳後ろで切られているも、
少しだけぴょこぴょこと毛先が飛び跳ねていた。
かちゃりと紅茶を下したアペトスに、
ルトラールに対した答えを、アペトスは答える。
目を紅茶からすっと、ルトラールの方を向けて。
「それは魔女と貴方の神が言われる処遇についてです?
それとも、神々の魂が一つに辿り着いている現状にです?」
その睨むように言う彼の言葉に、
やはり継承という文字には勝てませんねと
ルトラールは首を横に振る。
「…やはりお察しでしたか。」
「ま、継承の私から言わせてもらえばですが。
そもそも我々加護天使は隠し事出来ませんし。
まぁ、それにしても厄介ですね?
貴方の力を使っても防ぐことはできない子とは…」
一体どれ程の力をお持ちなんでしょう。
事と次第によっては先に芽を摘むというのもありでは?
そういったアペトスに、流石にそれはと声を掛けたのは
円卓に入っていた加護天使の一人だった。
「流石にそれは止した方がいいでしょう。」
「リホルト」
アペトスと似たような髪型ではあるが、
強いて違う点を述べるのであれば、
横髪の毛量が少ないのと、後ろの髪が
首程まで伸ばされているというだけ。
双子と言われてもおかしくない彼だが
「本当にリホルトの方ですよね????」
「ふっははは、そうですよ?私達双子ですらないです。」
「いや頑張れば整えちゃってすりゃ
二人とも交代余裕ですよね?」
確か12と1は仲が良かったはず。
そういったルトラールに、まぁたまにしますねと
リホルトがサラッと白状する。
いやするんかいと誰かが突っ込んでくれた。
わかる。いやしちゃうんかい。ってなるわ。
クスクスと円卓の者達が笑った後、話を戻される。
「でも、それは停止の観点からのお話でしょう?
一時的な停止はあくまでも一時的であり解決しない。
ならいっそのこと、増大させて消してしまえば?」
「…ラスェル、口を慎みなさい。
そうなればどうなることか分かるでしょう?」
そう言ったのは第1宇宙のリホルトだ。
ラスェルは第4宇宙の加護天使
彼の前髪は鼻近くまで伸ばされ、
その髪から黒く細い黒目が睨み、
恐怖を更に増幅させるように見せてくる。
横髪は顎下程まであるのを綺麗にカットしており、
後ろ髪も首下程で少しおかっぱ寄りだが、
綺麗にカットされていないおかっぱ似の髪を
「おや」と言って揺らしながら紅茶を持って言う。
「ですが、流石にこれ以上は難しいでしょう?
それこそルトラール様のお恵みを貰ってソレなのです。」
「ラスェル」
「…いえ、此処が駄目ならばと思ってきました。
時間を停止することの可能な、リホルト様」
そしてと、ルトラール様はちらり横を見た。
「その時間を続かせる事の出来る、アペトス様
貴方方が協力して頂けるならば、と思いまして。」
「成程、それでこの組み合わせですか。」
「できますか?」
「まぁ、出来なくはないでしょうが…」
「よろしいのですか?」
「これまでして、暴走したら其処迄ですしねぇ。」
念には念をというルトラールに、妙に手を入れますねぇ
と言ったのは、第7宇宙、秤の加護天使トレイーズだった。
右側の髪が多めに落とされ、
横の髪が更に横へと跳ねている。
左は後ろに綺麗に纏められ、
長すぎるのか、くるりと一束回している。
金木犀のピアスがとても綺麗に見栄えの良く、
かちゃりとピアス特有の金属音を立てつつ
ルトラールの方を向いていう。
「貴方という立場であろお人が、其処迄するとは。
あの子が魔女以上の人間になると危惧しているのか。
それとも…お子だとでもいうのですか?」
「っトレイーズ!何方と思ってそんな」
「いいのですよ、リホルト。」
「っですが!!」
「そうですねぇ〜〜まぁ。」
そうかちゃりと紅茶を一口飲んで周りも期待の目をルトラールに向かせる。
「…食事も碌に食べない作らない手すら触れない。
飲み物一口一滴すら拒みをするのに仕事は覚え、
叱って首根っこを掴んで気絶させてでもしないと
止めないくらいの真面目が越えた馬鹿みたいな子供の
面倒を何十年も見ていると愛着以上の哀れを
覚えるというものでしてねぇ〜〜〜〜〜〜〜〜〜」
「すいません」
メルも思わずそう思ってごめんと小さく心の中で謝った。
ルトラールは息を吸うこともせずに
ため息と一緒にげんなりした顔で言ったのだ。
本当に感情豊かな人だなあとは思っていたが。
まさか、いや、そんな。
『まさか、ねぇ…?』
「…メル」
「ま、そんな消滅がお嫌なら、
いっそのこと続かせたらと言うことですか?」
「それは、」
そう言ってどもるルトラールに、
賛成しかねると言ったのは
何時も貶しているトレイーズだった。
「彼女は感情の増減を巧みに使っている。」
「あれで?」
「ええ、普通の女子ならもう少し感情が伏せる筈。
なのに、普通にして笑う等、感情がかけているか」
「もしくは悟られたくない何か、があるか。」
でしょうねぇと紅茶の中を見ながら言う
アペトスに、続けてトレイーズが答える。
「花を咲かせないという時期も既に越えている。
幾ら何でも。…もう、花を咲かしても、おかしくない。」
なのに、花は咲いたところすら見つからない。
流石におかしいと、加護天使たちが騒ぎ出した。
それを止めるように、ラスェルはぼやくように言う。
「うちの処ではこう呼んでいました。」
【悪魔を持つ魔女】ではないか。
「ラスェル!!!」
「ええ、そりゃあ勿論制しましたよ?
流石に度が過ぎておりましたので。
神を侮辱するなど、合ってはなりませんからね。」
「いや、あのその…その言葉そっくり
お前さんの華神に帰って来ておりますが…」
それでもいいのか。
おい、本当にいいのか。
そう引くのは第十宇宙、先見の加護天使コピアだった。
左右の横髪は胸近くまで伸ばされており、
前髪は目上で軽くカットされているも
余りに慌てていたのか、元々の髪質なのか、
一部の前髪はぴょこぴょこと跳ねている。
後ろの髪は肩下程迄伸ばされており、
ボリュームの少しある髪がラスェルの方を向いて
風が入ったのか更にふわりと浮かんでは元に戻る。
「してどうする?彼女たちに選ばれしも我々は天使
中立から外れる華神を放置するわけにもいかない。」
「というかコピア、お前の力なら
彼女がどういう位置に行くか分かるのでは?」
「そういえばお前先見だろう?
華神と合わせればもっと正確に見れるはずだが。」
「…出来るならとっくにしていますよ。」
そう下を向いて言うコピアは、続けて言う。
「僕はあの子を見たくないのです。」
「…それは私情?それとも出来ない方?」
「出来るなら後者が良かった。」
「ということは、見えるのですね?」
こくりと頷くコピアに、でもと言う。
「僕は見ません。」
「ルトラール様の、大神官様ですらの指令でも?」
「…っ!!!そ、れは…」
「コピア」
そう優しい声に、コピアの身体が動く。
「貴方はとても優しい子ですね、
見た世界を我々が知って怖がることを恐れている。」
「っそれは!!」
「みなくていいんですよ。見たくなければ。」
「ルトラール様、それは」
「確かに危惧するべき存在です。
なので私が直々にあの子のサポートに選ばれたというもの。」
まぁ、もっともっと、も〜っと、とんでもない
嫌味が含まれてそうなんですがねぇ〜〜〜〜〜?
そう居もしない方向を向いている
ルトラールだとは思うが、
「…ふふ、それはどうでしょうねぇ?」
「…大神官様、まさか、あえて?」
思いっきり大神官の方を向いて睨み切っていたのだ。
それには思わず笑ってとぼける大神官である。
「ま、破壊はしても、既に輪廻する可能性が高い、と。」
「というか、してもおかしくない時期です。
何処に花を咲かせない華神がいるというのですか!!
「はいあそこです。」
「いてたまりますか!!」
「…何か大きなトリガーが掛かっているとか?」
「コピア?どうしたのです?」
そう聞くのは第一宇宙のリホルト。
「ええ、芽瑠様はあの感情を司る華神
ラストリア様の継承者でしょう?
感情に特化していてもなんらおかしくない。
それにしては感情を露わにしますが、
だからと言っても花が咲かないのは異常。」
「だから悪魔と呼ばれる。」
「こら!」
「彼女が止めた時間そのものが合っていれば
まぁ、話の辻褄が合うというものですが。」
「と、いうと?」
「彼女はその時間を忘れたくないのですよ。」
だから願いは力は増幅しては綺麗に華にならない。
だって忘れないという掟の中でしか
とどまっていないのだから。
そうですよね?ルトラール様。
そう言った彼、リホルトに
バレて居るとはと、ルトラールはため息を吐く。
「隠し事は通用しません。そう仰いましたよね?」
「…彼女に一度、少々掟破りですが、誓約を掛けました。」
「なっ!?」
「いや、本当によく生きてるな…」
「いやいや、貴方程の誓約っていうと、
もう軽く5回転生しても解けない奴じゃないですか?」
「まぁ一度に2回掛けたので暫くは。」
「「「「いちどににどぉ?!?!?!?!?」」」」
そうルトラール以外全員の天使が
その場を円卓に手を付けてバッと立ち上がって叫んだ叫んだ。
「えっ!?!?!?待っ!??!?!え!?!??!」
「いちどににどぉお!?!?!?
いちどに、にどぉお!?!?!?」
「一度に二度おお!??!?!
一度だけでも効果えぐいのに!??!?!
一度ににどぉお!??!?!?!?!」
「るるるるるルトラール様正気ですか?!?!!?」
「正気じゃないんでしょう?!?!
ねぇそうだといってくださいよぉ!!!!!」
ねぇあの子死にません?!?!?!
死にませんよね?!?!?!?!
我々殺人に加担とか嫌ですよ??!?!?!?!
そう騒ぎだす加護天使に大丈夫ですよとけらけら笑う。
「あの子タフでしょうし」
「そうい〜う、もんだいじゃ、ぬぁい!!!!」
あのと、手を上げる天使に、大神官が何ですと聞く。
「誓約とはなんでしょう?」
「嗚呼、華神らは今でいう天使、破壊神、
界王神それら全てが一つに纏まった存在でした。」
その為余りにも強い力を持つので、
加護天使だけでなく、私や華樹神官が決まり事をつけ、
その行動を制限していたことのものですよ。
そう説明をする大神官に、へぇと周りでも声が漏れた。
「まぁ誓約の上限や濃度は各々で決めれるものです。」
「ちなみに破るというものは」
「存在します。濃度によりけりで魂ごと
綺麗さっぱり消滅しちゃいますが。」
「いい!?!?!?」
「ちなみに彼の一度は魂が消滅しないで
転生し続けても誓約が解けないものですから。」
「嗚呼、だからあんなに叫んだのですね。」
「…無礼を知ってお聞きしますが、大神官様。
貴方様でも現在お使いに出来ると?」
「物にもよりますが、まぁできますよ?
彼程ではありません。精々一度や二度程の誓約です。」
『いや、それでもできるんかい。』
そうメルが突っ込みを入れる。
ええできますよと言う大神官が手を出す。
「なんならしましょうか?」
『いいえ、けっこうです。』
「ふふふ」
ま、という声に話が戻る。
「勿論その後ラストリア様にこっぴどく叱られました。
ですがその時にも言われていたのです。」
ー果てしない時間を望む彼女を、見捨てないで。
「私はあの子を見捨てるなんて鼻から出来ません。
あの子はかつての華神達が望んだ最期の華神。」
「ま、さか」
「ええ、古の華神である、原初に位置する存在。
それどころかあの開花を起こす可能性が非常に高い。」
「っ開花ですって?!!?」
そう席を立ったリホルトに、周りも固まる。
唖然とする周りに、天使らも首を傾げた。
呆れたと言って腰を下ろす者達。
「る、とらーる、さま、しょう、きで?」
「ええ、あの子はそれほどの素質がある。」
「…開花、それ即ち、全ての華を覆すというもの。
それが華樹神になれば、全ての華神が、いや違う、
この基盤そのものすら覆すことになりかねませんよ?」
最果てに眠り続けるその樹木が、
もう一度芽吹きするというのか。
じっと見つめるルトラールに、成程と声が上がる。
「だから先に誓約を掛けた。
そうしたら暴走してもある一定ラインまでは
踏みとどまる時間が出る。」
「ええ、その通りです。」
「では何故此処に?」
「彼女と会うのを暫く止めて頂きたく、お願いに来ました。」
そう言った彼に、周りの目が丸くなった。
「彼女はかなり精神を不安定にさせています。
このままではよくお遊びになられている方だけでなく
自身の感情も暴走して破滅しかねません。」
「それはそれでいいのでは?次の華神が」
「彼女の中に他の華神達の願いが入っているとしたら?」
「な」
「…恐らく一人ではありません。
下手すれば、今までの華神様達全員の」
「そんな膨大な願いが一度に爆発したら…」
「恐ろしい本当の悪魔が誕生してしまう。」
それだけは、止めてほしい。
「…あの子はかつて、迷ってきたのです。
ただ帰りを待っている、幼い子供です。
そんな何も悪いことをしていない子が
何故罰せられる方に行かなければならないのですか。」
「ルトラール様…」
「何も悪くない、何も酷いことしない。
なのに仕返しなんて考えつきやしない。
そんな子が、どうしてこんな定めに居るというのです。」
守ってあげたくもなるというもの。
ただその場所で、腰を置いて、上を見つめて。
その手を受け止めるだけに伸ばしている子を。
どうして悪者扱いに仕立て上げなければならないというのか。
「無理を承知でお願いします。
どうか、華神ら共々、
彼女に会うのは出来るだけ差し控えて頂きたい。」
「それ、は、別に…構いません、が」
「本当にいいのですか?」
「寂しがって泣いてしまうでしょうね。」
「では」
「それを乗り越えないと、次にいけない。」
そうでしょう?そういったのはコピアだった。
覚悟の決まったような顔つきに、ええとルトラールは言う。
「華は一度その寒さや熱さに耐えれなければ枯れてしまう。
でもそれは単に枯れるのではなく、その時間を待ち続けるというもの。」
「コピア?」
「貴方はあの子を信じているのでしょう?
魔女にすらなれない希望しか見ないそう、
華樹に選ばれた唯一無二の存在であると。」
「…ええ」
「なら猶更我々もその指示に従うというもの。」
「いいのですか?」
「先を見なければ私はなんだっていいですよ。」
「仕事放棄したな」
「煩いですね」
ムッとして紅茶を一口飲むコピア
それにてがいだす彼等を見つつ、
ルトラールは思った。
嬉しそうに笑って、走り回る芽瑠。
その笑顔がどうか、何時までも続けばいい。
願わくば、その白い髪の毛が紺色に染まれば。
その場所が、何よりも望んだというのに。
現実は非常に残酷であってだな。
「暴走して自身の花を破壊したら最期、
願いが飛び出し、それに呑まれ
悪魔のような力を得た違う者が生まれるからな。」
「…そうなれば今度こそ破壊対象でしょうね。
加護天使だけでなく、彼等天使の力をも使っての攻撃になりましょう。」
「ええ、その為にも、同類の戦闘は禁止させないように
彼等には言い聞かせていますし。そこら辺は大丈夫でしょう。」
特に、魔女や悪魔というものに関しましては。
勿論天使も悪魔に変わった時点で、処罰対象ですが。
「それに全王様にお力をお借りするなんてねぇ?」
「いやそれはそれで流石にだめでしょ。」
「まぁなんにせよ、言いたい事は分かりました。」
ただでさえ泣くことが少なくなり、毎日笑っているのだ。
これ以上悪い方に向かうなんてことは是が非でも避けたい。
「それにしても驚きですね、彼女にそんな力が」
「底知れぬ力ですよ。感情その者を扱えると思ったのですが
どうやら違うらしく、なんなら疎いとまで来ましたし。」
「あはは、それはそれは……」
「ですが一つ追いかけて止まないのです。」
「…それが、トリガーになる可能性があると?」
だから、ルトラールは芽瑠に誓約をかけた。
彼女の意志とは関係なしに。
全ては宇宙の、中立の為に。
そうして、戻ってくる場所の為にも。
「何故、迷われてきたのでしょうね。」
「ルトラール様…」
「あの子と傍に居れば居る程、分からなくなります。
嬉しい悲しい苦しいが分かるんです。怒りも全て。
でも、それでも、愛情だけは途端に分からなくなる。」
まるで見たくない顔を切り裂くように。
絵画の一部を手でもぎ取ったかのように、分からなくなる。
それが怖くてたまらない。
確かに受けていたその心が、綺麗にくりぬかれる。
それは、同時に決まりきった答えであって。
どうかそうでないといいたいのに。
愛情を綺麗に捧げ、その華樹の中に
置いていったというものであって。
それが出来る者なんて、一人しか知らなくて。
「力を知れば知る程、器を力の使い方を理解します。
でも、でも幾ら何でも、早過ぎるのです。」
「器はあるし、力もある。…が、その使う精神が伴わない。」
「だから停止する。一時的に、存命を期待して。」
「馬鹿馬鹿しいですが、
あの子はまだ、帰ろうとしています。」
私は言ったのです。かえれないと。
そしたらあの子は何て言ったと思います?
「いいよ、私は此処で。それでも帰りたいのだと。」
「…まさか」
「ええ、あの子は自身の願いごと全てを止められるのでしょう。
だから、愛情などの一瞬の感情に、頭も心も理解が追い付かない。」
「では」
「それでもその先に破滅以外方法がないことも、
きっと賢い彼女は知っていることであって。」
でも、止めなければならない。
我々はその位置にいるのであるのだから。
「帰りを待ちわびている幼子なのです。
そんな子が、悪魔だと力に呑まれて消される
優しい心を持った素直な子が。何を、したのですか。」
「ルトラール様」
「ちゃんと約束は守っています。恐ろしい程に、守る子なのです。」
だから告げた。
「怖いことは忘れなさいと、笑って居続けるのだと。」
「っ」
「力が力ですし、ルトラール様ではなくてもこの場にいた全員が
貴方のような手段を選んだでしょう。ですが」
「これはほんの序曲だということを、お忘れなく。」
「え?」
「だって彼女は選ばれたばかりの存在。
まだ回っていないのですよ?」
「た、しかに…まさか」
「この時間でこれ程の威力。
本来であれば消されてもおかしくありませんが」
「決められた者、華神は
いかなる場合でも故意的な消滅は許されない。」
それが全王の力だとしても。
「ええ、だからこそ彼女達は
力を使い宇宙を司ることが可能になる。
何せ考え続ければ永遠的に
力を使い続けることが可能ですからね。」
「封じるにしても出来ませんし、
いやはやどうしましょうね?」
「そこで会わなくなるというのか。」
「だがどういう考えだ?」
「私、彼女に会って考えたのです。」