耐えるか、絶えるか
「ええ!?50年も人に会わずに修行!?」
「ええ、芽瑠様は沢山修行をお積みなられました。
そろそろ次のステージに上がればと思いましてね。」
「ティーナ様達もしたんですか…!?」
「あ?嗚呼、確かに似たようなことはしたなぁ。」
そう芽瑠のお祝いって言えばお祝いに駆け付けたティーナに
芽瑠が彼女の時はどうだったのかと不安気味に覗き込みながら聞く。
それに二カリと笑って答える。
「まぁ、アタシは千年だったがな!」
「せっ!?」
「まぁ最初だし甘めに見られたんじゃねぇのか?」
「ティーナ様…お戯れを。」
いいよいいよ、そう笑うティーナに芽瑠は寂しそうに俯く。
「芽瑠」
「なんふっ」
「寂しい時は食え。怒る時も食え。楽しむときも食え。」
「ちょっと待って下さい!それずっと食べますよね!?」
「食べれば満たされる。何時かを、忘れる。」
「…ティーナ、様?」
「お前憶えているか?最初に来た時のこと。」
「ええ、消えちゃった、華神様ですよね?」
「嗚呼。お前は痩せてるからな、
寂しさで食が減って死んだら
アタシは誰に顔を会わせるんだ。」
絶対怒るからあいつ絶対怒ったら怖いから。っていうか怖いぞ。
そう言ってくる彼女に芽瑠は分かった分かったと答える。
「にしても50年って此処に来て30年だから…げ80年もいるのぉ?」
「なんだ文句あるか」
「はぁい!!ないです!!!」
「心配すんなって、悩みならずっと付き人がいるし。」
「あっガチの一人じゃないのかぁ、よかった〜」
「まぁ私も離れる時は離れますから実質孤独ですね。」
「お前…言うな?」
「まぁ程々ですが。」
「だがそれが終わればまた会えるぞ!」
「っそうですよね!!」
「嗚呼!鍛錬してねぇとどういう目に合わすか分かっているだろうなぁ…?」
「ひ」
「っくく、まぁいい。精々生き延びろよ。」
++++++++++++
「よく言えましたね、あんな出まかせを。」
「言ってろ、本当の嘘じゃねえだろ?
アタシだって千年耐えた時間はある。」
そう芽瑠に告げられた現実を宥めるために
ティーナは芽瑠に色々と課題を置いて
自身の星に帰っていく途中だった。
「あいつは誰よりも見込みがある。
アタシの星の華神候補に爪の垢を煎じて
穴と言う穴に滝の様に注ぎ込みてぇわ。」
「…お言葉が過ぎます。」
「っはは、いつものことだろ!
そんなことより、アレは進んでいるのか?」
「…ええ、それでも良いのですか?」
「嗚呼。アタシはあいつらが望んだと同じ意見だ。」
深くは言わないがな!まだ消えたくねぇし!
そう笑うティーナにリフレイは告げる。
「先日彼から聞きました。
どうやら誓約を結んだとのこと。」
「っ!!それは本当か!?」
「ええ」
「そうか…其処まで、すること、か。」
「彼女の花は咲きそうですか?」
「いや点で駄目だ。
人が死にかけようが誰かが死のうが
絶望しようが何してもだめだ。」
そう言ったティーナにそうですかとリフレイは答え前を向いた。
「だが」
「ん?」
「もし、花を咲かせるなら、
どんな花がいい?って聞いたんだ。
そしたらあいつ」
ームラサキカタバミってお花がいい!
ーあ?そいつは野花だろ?花にすらなれねぇぞ?
ーそんなことない!も〜ママとパパもそう、やっ、て?
あれ?そう言ってたっけ?
「加護天使の目のように、光り輝いていたんだよ。」
「…」
「あいつが、心から願う感情を、
アタシ達は…奪っているのか?」
アタシ達が、生きるために、あいつの感情は犠牲になるのか?
「それなら」
「なりません、
あの子をお守りするのだと、
お決めになられたのでしょう?」
「…それは」
「貴方の心は花は何と仰るのですか?」
「…嗚呼そうだな、帰って飯にすっか!」
「ええ、久しぶりに振舞うとします。」
それから、10年
「本日は此処まで。」
「っ、あり、がとう、ございました!」
「お風呂に入っておいでなさい。」
「はい!あ、そうだルト」
「なんでしょう?」
そう振り返ったルトラールに芽瑠はサラッと聞く。
「好きな色とかある?」
「色、ですか。」
「いやほら、星見とかで創造する時に
自分の色だけじゃ流石に飽きて来ちゃって。」
「嗚呼そう言うことでしたら…私は青が、
そうですねぇ、特に、紺色が、好きですよ。」
「え〜〜私そこは紫って言うと思ったのに〜〜」
「ふふ、ええ勿論ムラサキは好きですよ?」
ですが、そう言って芽瑠の腕を掴み
引き寄せ身体にぴったりとくっつける。
腰に手を回し、持っていた杖を
消してまで彼女の顎を上に上げて見つめる。
「青い瞳に光る紫が、私はとても好きなのです。」
「〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!」
「っふふふ、まだまだ感情の制御が足りませんね?」
「〜〜〜おふろ!!!」
「はいはい」
彼女は閉鎖された環境にはとても心を穏やかにしている。
あと40年はかなり短くなる程に、
感情の揺れは少なくなった。
宇宙の均衡も落ち着きを取り戻している。
やはり、彼女は
「…認められし継承者、とでもいうのですか?」
あの純粋な子を。
華樹は選んだとでもいうのだろうか?
小さな虫に驚きつつも
一緒に見て喜びを得ようとするその姿
花を踏みつぶされ、怒りを露わにして
周りの火や風、水を使おうとして攻撃をする姿
小さな暗がりに身をひそめて、
帰りたいと泣き続ける姿
一喜一憂とはまさにあの子のことを指す様な言葉で
一つ一つに感情を乗せるようになってきた。
だからこそ、彼女は独りぼっちが好きなのだと思う。
一人ならば、誰にも迷惑はかけない。
皆幸せで、私も幸せ。
そう、彼女は言うだろう。
だが、それを許す訳がない。
周りも勿論、私も。
「あの子は認められない、認められては…いけないのです。」
私が優秀だから?
いいえ、彼女の本質がそうさせるのでしょう。
愛らしい彼女が、
何処までも笑って居られたらと思うのです。
++++++++++++
「そう言えば先日ティーナ様と
何をお話になられていたのですか?」
「もし咲かせたい花があれば何がいい?って」
「…それで?」
「ムラサキカタバミ」
「…まぁ、呆れた。花ですらないではありませんか。」
野花と呼ばれる部類で、
何処にでも咲いている花だ。
それに師匠と同じことをいうと
頬を膨らませ不機嫌を表す。
「いいじゃん!でも、これじゃないとって思ったの。」
「何故ですか?」
「分からない。…分からないの」
そうしょげる彼女に
少し哀しみを抱いたルトラールは
芽瑠の傍に腰を下ろし頭を撫でる。
「最近、どんどん忘れる気がする。」
「そんなことはありません。
現にこうやってお喋り出来ているではありませんか。」
「ね、華神って天国にも地獄にもいけずに
輪廻転生するとか何とかって言ってたよね?」
「それがどうなさいました?」
「それなら私、ルトラールにまた会えるね!」
そう言って笑う芽瑠に、
ルトラールは目を丸くして驚いた。
嬉しそうに笑って答えるのだ。
それが、どのようなことなのか、
貴方は本当に分かって言っているのか?
周りの者も流石にその嬉しそうな彼女の顔を見て目を背けた。
また、同じ様に、彼女は出会ったのだ。
後か先か、それは、確実に。
フィズの時間に、彼女はその目の前で、息を、引き取った。
「…芽瑠様、悲しいお知らせが。」
「なに?」
「我々加護天使は選ばれた天使故、
貴方方が望まぬ死を遂げぬ限りは消滅してしまいます。」
「なっ!?じゃあ寿命とかで死んじゃったら…」
「まぁ来世では会えませんね。」
「はわ……そんなぁ。」
「ま、望まぬ死を遂げれば話は別ですが。」
故意的なという意味だ。
誰かに殺されることが主とされ
庇ったりしてもアウトだ。
「ねぇ、ルト」
「なんです?」
「もしお花咲かせるなら、何色が良い?」
「…まさか、だからムラサキカタバミですか?」
「へへ!」
「そうですねぇ?それなら虹色とか如何です?」
「……ゲーミングPC」
「なんですそれ」
理解が出来ない彼に芽瑠は告げる
「意味もなく光り輝く七色ってこと。
なんなら光り続けるよ?永遠に。」
「永遠に?」
「そ、永遠に。」
「それはまた面白そうですねぇ?」
「無いからね?最早花ですらないし。」
そう笑う芽瑠に、ルトラールはくすくすと笑う。
「あ、憶えてる?誕生日聞いたの。」
「ええ、勿論。天使の日だから
此処に連れてこられたのでしょ?
って仰られておりましたね。」
「それで、えと、その…」
「…6月23日。人間の日付であれば。」
「!!!」
おやすみなさい。そう言ったルトラールに
芽瑠はおやすみと告げて宙を舞って消える。
全く寝る前に運動とは元気なことで。
「…私も随分と肩入れしますねぇ。」
貴方がそんな純粋だから。
こっちも毒気を抜かれてしまうではないですか。
++++++++++++
そう、気を抜いたらいつもこうなのだ。
舌打ちをしたティーナの前には、恐ろしい程の憎悪が込めた魔女が居た。
加護天使を喰らい、それでも足りないと前を向いて攻撃をしてくる。
今の戦力は7のラストリアと5のティーナ。
1のコファ12のアラナと共に外で戦っているし、
4のクノフィリスは6のウィアリスと共に魔女と戦っていた。
10のシャクロラスは選ばれたとは言えど、
12の中でも一番最後に選ばれたまだまだ若い芽である。
なんなら候補者達も戦力に入れたいくらいだが、
その圧倒的な力の差にコバエが寄ってたかる
くらいで終わればいいくらいで。
近寄れば綺麗に魔女に変わり、
その力が増えるのは目に見えていて。
「っティーナ様!!」
「シャクロラス」
「はい」
ふわりと此処まで魔女が来るのは見切っていたティーナは
芽瑠に黒紐を外して軽く結ってやった。
「お前はこいつを連れてとにかく逃げ続けろ。」
「っ嫌!!私もティーナ様の」
「黙れ!!!」
びくりと反応し、その声に泣きそうになる。
「お前はアタシが育てた中でとびっきりの弟子だ。」
「てぃ、な、さまあ」
「大丈夫。アタシが死ぬなんて世界が基盤ごとひっくり返ったってありゃしない。」
「いやそれはそれで怖いんですが」
それはそれでちょっとどうかと。
さらっとそう怖いもの知らずなのかシャクロラスが
冷静に突っ込みを入れる。
「ほら、だから泣くな!アタシの炎が消えてしまうだろ?」
「うう、ひっ、う、い、え、ないも!!!」
「ごめんなぁ?一緒に居てやれなくて。」
そう抱きしめるティーナに、芽瑠は涙をぼろぼろと流す。
ソレを見かねたラストリアが芽瑠と声を掛ける。
「ティーナに名づけしてもらえればいいではないですか。」
「な、づけ?」
「…おいラストリア」
「私の考えと貴方の考えは一致しているはずです。
私の言葉よりも、貴方の方が強く残る。」
「…感情は炎に劣るとでも?」
「いいえ?でも、貴方を何処までも信頼している。」
「それでも、その名づけはお前のもんだ。」
だからアタシはこれくらいでいい。
そう言って紐を手に取り其処にキスを落とした。
「少しだけ覚えているだけ、大事にしてくれたらいい。
そうしてどうしても手放さなければならない時に
その場所に置いて消し去ってくれるくらいが丁度いい。」
「てぃーなさまあ」
「っふふ、お前のことが、いっとう好きだよ。芽瑠。」
ちゅっとリップ音を立てて額にキスを落とすティーナ。
其処をそっと手で触れる芽瑠の目がぱちくりとする。
「ふはっ、ほぉら、魔法が掛かった。」
「〜〜〜!」
「涙が止まったな。なら今度は走る番だ。」
「っ駄目!!シャクちゃ」
「っ!!」
流石に生かせませんよ、そういった声が背後に聞こえる。
誰だと言ったティーナが、炎を出して芽瑠達を逃がそうとしたが、
「きゃっ」
「ふびゅ!!」
「可愛らしい力を逃がすなんて、するわけがない。」
「…最悪の展開だな。」
「ティーナ、私は前を。貴方は後ろをお願いします。」
「ったく、名付けくれぇさせてくれよな!!!!」
大事な大事な愛弟子の出発くらいゆっくりさせろ!!!
そう言って剣を創り出したティーナが敵に向かって攻撃を入れる。
黒い装束の者がこんな程度ですかというのに、
ばっとティーナが逃げる。
不味いと判断したのは正解で、服を切った場所が綺麗に黒く燃えて消えた。
あの中に入れば間違いなく魔女に変えてくるもので。
「あのお方の選んだ者がアレですか。」
「…お前まさか」
「でもまだたったの2回程度しか変わっていないとみた。
確かにこれは早とちりでしたねえ。」
「っ!!!」
「加えて現在は何でしたっけ?最果て?終わりの先に近づいていてこれとは…いやはや」
「っらあ!!!」
繰り出す炎の中にツタを出して攻撃を繰り出す。
草と炎の相性は本来悪いが、ティーナが創り出した力は
その相性をかき消し、見たこともない様な気を練って出すもので。
「力の素質はまぁあるも、程度がしれている。
加えて最後があの忌々しいクローバーとは。
嗚呼もう本当に全滅しないと話が変わりませんね。」
「何の話をしてんだ、さっきからぁ!!!!!」
「お前らの未来の話しですよ、ねぇ?」
メル?
そうこっちを見て言うので、メルがゾクリと背筋に悪寒を感じて数歩下がる。
「何時か貴方の元に我らの主が辿り着きます。
貴方が全てを知り全てを理解した時に。
審判は下され、この世界全ての根本を叩き壊す。」
「っだれがさせるか!!!」
「貴方に言っているのではない。未来のあの子に言っているのです。」
「何処を見て言う!!此処にいる!!アタシを!!!」
見ていわんか!!!
そう言ったティーナが力を凝縮し、髪色が白くなる。
目は赤く燃え上がる様な熱さを見せ、華が色鮮やかに咲き誇る。
「ほお、これほどまで高められるのですねえ?
確かに話している、ひつ、ようが、ないです、ねえ!!!」
「ぐあ!!」
軽くはじいた後、がっと腹に一撃を入れ飛ばす。
下手したら魔女になるだろうが、そんなのは願ったりかなったりだ。
「まぁ廻廊の人間なのは此方も明白。
我々は密かに身体を潜めて
貴方を此方側に取り込むためにも狙い続けます。」
貴方が堕ちたその先の奥が、どんな混沌を引き起こすことか。
「一応言っておきますが、
感覚でこうして話をしているので貴方方の言葉は分かりません。
今何を言っているのかも知りませんが、大方検討がつきます。」
ひとつ教えて差し上げましょう
そう言う子が、フードを外して姿を現した。
「我の名はアイビー。不滅の魔女、とでもいいましょう。」
『あいっぐ』
「ふふ、ま。私の名前を言えばすぐに貴方を特定できる。
…流石に口をふさがれてしまえば、効果はないですが。」
メルが言おうとした瞬間、
ばっとサワアが飛んできてメルの口を塞いだ。
じっと睨むサワアと、何故か目が合う者。
「ま、未来の私がこんなところでヘマをすると思っていないでしょう。
見ていたらと思って過去からもプレゼントを出したのですが。」
成功していたら、いいですねぇ?
そうサワアの方をギロリと睨む彼に、
じっと見据えて止めないサワア。
ぽんぽんと叩かれ、手を外したサワアと同時に
アイビーと言った彼もまた前を向いた。
「我々魔女は全部で6人います。
そのうちの1人であり我らが主は
現在忌々しい大神官に封じられてますが。」
『(まじか!!!えっまさかフィズがうろちょろした
あの左じゃなくて右ってまさか!!!!)』
「何処に居るかは知りませんがねぇ?
ま、12全員揃った時が待ち遠しいです。」
「そうさせるわけがねぇ!!!」
ダンと青白い光を入れた炎を入れて言うティーナに声が出た。
「魔女が12とかとんでもないこと言うんじゃねぇ。」
「おや、13の方がいいです?不吉ですし。っと」
「馬鹿!!!」
ぴっと出した攻撃にティーナが叫ぶ。
時間稼ぎにしてもこれ以上は無理だと思いつつも
何とか攻撃を出しては行かせないようにする。
「安心なさい、今あの子を魔女にするには惜しい。」
「は????」
「カレンデュラ!!!」
そう言った彼に、カレンデュラと呼ばれた者がぱっと出てきた。
「なんです?」
「撤収だ」
「ですが」
「あの新人に任した私が馬鹿だった。」
「おや、まだ蕾ですらないと?」
「ええ」
まだ芽生えてすら、間もないというアイビーに
それは残念ですねとカレンデュラは答える。
「力の無い子は魔女ですら忌み嫌われるものというのに。」
「っひ」
「カレンデュラ」
「安心なさい、全力で力を抑えていますので魔女になりませんよ。」
その器用さをもう少し別の方にですねぇと
頭を抱える彼も、きっと苦労しているのだろうなと
メルは一人で内心思っていた。
「…それさ、逆に今しちゃわないの?」
「っおいおいおいおい」
魔女が3人とか、阿保じゃないのか。
そう言ったティーナの目には、更に奥から出てきた者。
「…あ」
ばっと落とされた二人の身体に、芽瑠は見覚えがあって。
遠くに落ちた身体の元に、芽瑠が走り出す。
ソレをじっと見ていた魔女に、ああと声を上げた。
「たしかにメルだねぇ!聞いていた通りの子供じゃないか。」
「…は?」
「大事な者なら身体が死のうとしてもその足で走っていく。
主が言っていた通りだ。へぇ〜なんとも健気な子なことで。」
確かに華樹も喜ぶことだろう。
そう顎に手を置いて頷く彼女に声がかかる。
「サキョワ、お前モネアとビオランテはどうしたんだ。」
「嗚呼、ビオランテはもうすぐくるよ。折ったって聞いた。」
「お」
「モネアは神官の元に行ったんじゃない?
まあ新人だし能力綺麗に把握してないだろうけど、
あいつなら綺麗に消えて逃げれるのは明白。」
「ならいいか。」
「っクノフィリス様!!ウィアリス様!!しっかりしてください!!!」
付き人はという芽瑠に、首を横に振ったクノフィリス
それは彼等に殺されたということで、涙がまだ戻ってくる。
彼等もまた、芽瑠を見てくれていたものであって、
優しい彼らがこんな残酷な殺され方なんて酷いと泣く。
流石に魔女の強さには死なない加護天使でも効果はない。
元々華神だった華を見つけ、
ソレを枯らされれば元も子もないのだから。
「ひっ、うう、ひっ、んぐ」
「め、る。なか、ないで」
「うぃ、ありすさあ」
「っが」
「…しゃ、く?」
何とか回復をと思って動こうとした身体が止まる。
背中に落ちた温かい液体に振り返りたくない。
血の匂いが充満して、赤くて、世界が、何処までも赤くて、怖い。
「ひゅ、っ、ごほ」
「しゃく、しゃくちゃ!!!」
「弱すぎますねえ」
「流石に華樹神の留守ですし、弱くなるのも当然かと。」
「っ今かいふく」
を、という前に、芽瑠の腕を取ったのはシャクロラスだ。
逃げろという口の動きに芽瑠は全力で首を横に振った。
「第4、第6、第10はもう助かりませんとして。」
貴方もですねそう言ったアイビーが軽く手を振る。
ラストリアとティーナもシャクロラスが居た所で倒れる。
一度に回復する術なんて知らない芽瑠は慌てふためくも
一人だけでもとシャクロラスに手を付ける。
彼女が回復出来れば、他も可能なハズで。
「…本当に健気だね。死なないとでも思ってるのか。」
「っひ」
「恐怖を余り植え付けると後が伸びませんよ?」
「ああ?でもよ、ある程度のストレス掛けないと繁殖できなくなるだろ。」
「ね、ねぇ!!」
そう震えた声で叫ぶ芽瑠に、魔女と呼ばれた者達が振り返る。
「こ、こんなこと、もうやめてよ!!」
「芽瑠、だ、めだ」
「みんな、みんなが、あなたたちに、なに、したの!?」
確かにティーナさますっごく怖いけど!!
おい
「それでも私やその人のことちゃんと見て言ってくれる優しい人だもん!!!」
恨まれる事したら私が謝るもん!!!
そう泣きながらも声を上げる。
怖くて腰が抜けて動けないのは分かっていた。
「なんで、なんで…命を千切るなんて、酷い……!!!」
「…お前ら、華神の回りを教えてなかったのか?」
「それこそ酷いなぁ」
ばっと周りを囲むように見る魔女に、
芽瑠は恐怖で胸にシャクロラスの手を
腕ごと抱きしめて震える。
「破壊行動も経験させてそうな威力だが…
何か吹き込まれてるだけで、
ちゃんとしたのは経験してねぇのか?」
それとも
「【ナニカ】の方に全てを振って、お前は自由に生かしているのか」
「な、に、いって」
「…これは面白いねぇ、確かに此処で一度切ってやった方が良いことになる。」
「そうでしょう?どうせ無意識下で働くでしょうしね。」
ストレスはその力を防ぐというものでもある。
「貴方が最初にしたことが、
これから先無意識下で働くように、
呪いをかけて差し上げるというのです。」
「…そ、したら」
「ん?」
「そう、したら…みんな、みんな、たすかってくれる?」
「っ!!!!!」
「馬鹿!!!!!!」
「わたし、いがいが、わらって、くれる?」
そうくいっと人差し指で顎をあげられていた顎を戻して言う芽瑠に、
ぷっと上げたアイビーが笑いだして距離を少し取った。
「はっははははは!!!!
はあ〜〜〜〜〜〜〜純粋を越えた何かですね貴方。
本当に気に入りました。貴方名前は?」
「言わない!」
「芽瑠、いえ、メルですね?
貴方の身体の中の子と貴方との名が
同じだからそうしてられる。違いますか?」
「っ、」
「…無言は肯定と取ります。ですが困りました。
気に入ったので、ううん、此処は取引と行きましょう!」
「…とりひき?」
目を見た芽瑠のその目が変わりつつある。
ええと言うアイビーの目色に、変化しつつあって。
震えていた手がいつの間にか止まって、腕を下ろしていた。
「貴方は私の元に来て、その代わり
我々はこの世界に危害を加えない。」
「っだめ、だ、める、き、くな」
「彼女達貴方が出会う人々は幸福を得られる。
貴方はそんな人々の笑顔が見られる場所に行ける。
どうです?悪い話ではないはずです。」
心優しい、天使の様な彼等の、子ならば。
そう芽瑠の片腕を取り、腰に手を回して耳元で囁く。
もう連れていかれる寸前で、口を開けようとした時だった。