なんだどうしようもない世界だ




前回のあらすじ

メルの中にあった力の核にある悪い種を取り出しました。



「という訳でして、改めまして皆さん初めまして。
まだ肉体は綺麗に取り戻していませんが、魂から失礼。
この地に華樹を司るアルメリアこと、華樹神ルメリアです。」

嗚呼こちらは今日の戦犯夫のルトラール。
そう言う彼女にはぁと声が上がる。

「それにしても」
「っ!!!」

ちらりとルメリアが向いた目線はサワアの方だ。
びくりと身体が飛び跳ね、少し目線が泳いだ。
微笑みながら嬉しそうにルメリアは言う。

「あら、まだその子を覚えてくれていたとは。
…本当にいい子なのね?サワア。」
「……お久しぶりです、アルメリア様」
「あらあら〜!別に昔の様にメアねえ様
って呼んでくれてもいいんですよ?」
「ばっ!!めっ!!!!…よ、止して下さい、
そのような昔のことを。」

例え覚えていたとしても、
皆の前で言えるわけもないでしょう。

そう茶化さないでという意味で言うサワアのか細い声に、
嬉しそうに笑って目線が別に向いた。

「ふふ、そう?クスも元気そうね。」
「ええ、この通り。」

そう跪いて話す二人に、ウイスらも跪いて話す。

「あの、これは一体、どういう」
「此処まで来て、言わないつもり?」
「…言うなら、そいつを起こしてからの方がいいだろう。」
「ルトラール様…!」
「はぁ〜〜〜お前本当によくやったな?」
「あら、貴方もよくこんな阿保みたいなこと決行させましたね?」

弟さんも困らせちゃって。
そういうアルメリアに、大神官はいえいえと首を振る。

「私も長らく戦っていませんでした。訛っている証拠ですね。」
「いえいえ、あれ程の力が出せれば充分です。」
「うぐ」
「はぁ、貴方に似たおかげで苦労します。」

本当に言う事聞かないんですよ。
そういう母に、ルトラールも頭が上がらないのか
すまないとしか言わない。

「事情は全て知っています。
曲がりなりにも私はその子の中に入っていましたし。」

まぁ目覚めたのはフィズ辺りからですが。
そういうルメリアに今度は天使ら全員がびくりと反応する。

「その件については仕方がないからいいとして。」
「…っ怒らないのですか」
「メルを蔑ろにした件についてですか?」
「ええ」
「ま、あの子のやり方がまずかっただけです。
貴方方に被はありません。」

もっとも

「事情を知っている者達の対応は如何なものかと思いましたが。」
「…処罰なら、甘んじて。」
「…ふむ、スピスさん」
「構いませんよ。何を言っても。」
「…なら、クスさん」

はいと声が続いた後の音が怖い。

「サワアさんとメルさんを頼みました。」
「はい、わかりま……ん?はい???」
「おや、出来ないとでも?」
「いえ、でき、ますが…」
「ならいいですね。」

いやそれでいいのかという気持ちが強いが、ソレを言わせずに目が向く。

「サワアさん」
「は」
「メルを、頼みましたよ。」
「…ええ、このサワア、貴方様の頼みでなくても。」

守り抜くと誓います。

その言葉にすっきりしたのか、息を吸って吐く。

「ほら、メル?幾ら先程からやらかしたことが
恥ずかしいからって、起き上がらないとかなしですよ?」
「っ!!」
『うう…だ、だって、かか、さまあ〜〜〜!』
「ふふふ、あらあら、甘えん坊ね〜〜〜」
『ああああああああ!!!!!!!!』

人前でこういうのは恥ずかしがらないのにねえ〜〜〜〜
そう言って笑いながらメルを抱っこしてくるくる回る華樹神に
周りもぼけっとみていた。

『ううううう』
「余りちゃんとした形で抱きしめてやれなくてごめんね?」
『いいですよ、それも代償として引き渡しましたし。』

まぁそれら全部引き返されたというか、投げ返されましたが。
そういうメルに、おほほほほと笑って濁すルメリア。

『ま、貴方がそう言うならそうします。
極力なるべく、善処します。』
「あら、えらく消極的ね?自覚した?」
『ばっ!!!!じっ!!!!!!』

先程の事を思い出して、
我ながらとんでもないことをしてしまったと思う。
隠し通すつもりでいるので、というかだ。

『わ、私はまだ、仮にも11番目ですよ!!!
12全て揃えるまでそんな甘ったれた考え
出来るわけがないというか出せません!!!!』
「あらあら」

そうだ、記憶の廻廊は本来ルメリアと
メルの魂が綺麗に戻るというもの。

今回の件で少し傷付きはしたものの、
それでも未完成ではある。

下手したらそんじゃそこらの人間より脆い身体なのだ。
この状態はあくまでも魂が頑張って肉体を作り出して
視えるようにしているだけであって、
正直鍛えない人間の肉体より全然劣る。凄く劣る状態なのだ。

『そっ、そもそもですね!?!?!?
わっ、わた、わたしがそ、その、えと
あ、あの、ああもう!!!煩い煩い煩い!!!』
「ふふふ、誰も何も言っていませんよ?
嗚呼それとも、言った方が分かりやすいですか?」
『〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!!!』
「ルメリア、泣きますから止めなさい。」
「っふふ、だって〜可愛らしいのだもの。」

そうルトラールの後ろに逃げて頬を膨らませ怒るメルに
その頬をツンツンとつついて嬉しそうに笑う彼女。

「いやそれにしてもほんと育てば育つ程
コルンに似ますねえ…スピスまさか貴方
手を加えてませんよね?」
「まさか、魂がそのまま育っただけですよ。
というか貴方が育てた子はそうなるのでは?」
「っくく、いいますねえ?」
「ええ」

そうクスクス笑う三人に対し、
メルは頬を膨らませていたのを止め、
笑う三人を見て毒気を抜かれて笑ってしまった

「…さて、メル」
『はい』
「11と聞いていますが、貴方廻廊は?」
『お姉さんご存じでしょうが、入れてません。』
「なら廻廊に入ればいいのでは?」
『…………ああ!!!!!』

指を鳴らしそれかとメルは言う。
だが其処って危険ではというメルに、多少はという。

「ですがあの動きが出来たら充分やっていけるでしょうね。」
「今度こそ一人旅、ですか?」
「まぁフラッシュバックに近いでしょうがね。
私はこの場所に少々とどまります。」

安心なさい

「此処には充分過ぎる戦力がいますから」
「…っ!おやおや、私もですか?」
「ええ。お姉様も勿論、ね?」
「っだ、大天使様!!!」
「お久しぶりですね、ルメリア姉様」
「此方こそ。息災様で本当に良かった。」

貴方が倒れたら私呪いの華樹に変える。
あらあら、困りましたね。
そう笑う二人だが、内容が全く持って笑えないのである。

メルはそのままそっとコルンの隣にちょこんと正座する。
膝を立てるよりも、こっちの方が慣れているのだ。

「ところで、勝手に見習いにしましたが、よろしいので?」
「よろしくなかったら拒絶しています、といいたいのですがね。」
『?』
「華樹の種もちゃんと育ってたのに気づくのが遅くてもう取れません。」

幸いなことに、魔の手は弾いて何とかしましたが。
その言葉に嗚呼とメルはぼやく。

『成程、アレちょっと間違えたら新しい華樹の種が魔女の種になってたと。』
「そういうことですね。」
『こういう紐とかで縛り上げて殺してたら何とかなると思ってたんですが。』
「それはあくまでも時間稼ぎというものです。
貴方の力は確かに強く、良いものですが、限度がある。」

似たようなことを聞き覚えは?
あ〜〜〜〜〜〜〜〜〜りますね〜〜〜〜〜
とメルはウイスを見つけてはははとから笑いした。

「決定打になると思うことは?」
『…肉体をそのまま贄にするとかですね。弾くには無理でした。』

現にあの紐を作ったのは正直したくなかったというもの。
並々ならぬ想いを凝縮し続けた無限の紐なのだ。
威力は一定かそれ以上を持ち、それが解けるのは三択。

メルが死ぬか、メルの願いが変わるか、
それか、メルの意思で解くかのどれかなのだ。

『私が死んでも魂をそもそも再生成させる時点で不可。
かと言って願いを変えたくないからカランコエを作ってでも
力と魂を中で分離させ、形を維持させるので手一杯でした。』
「記憶は力に紐として縛り上げていて、そもそも助けを求める術すらない。」

何故ならその助ける感情は、紐として縛り、その場所にないから。
だから記憶を取り戻すと、こうして中に居た魔が出てくるというもので。

『いやにしても良く色々嚙み合いましたね?』
「軽く死んでますがね」
『うぐ…あれは、仕方がないというかですね。』
「そうでしょうね。
サワアが動いて貴方を庇えば貴方魂ごと
華にして千切って喰って死んだでしょ。」
「っえ!?!?」
『え』
「恩返しする貴方の事なので知る人なら
当然のようにしましょうね?
ま、彼にしたら無意識だろうけど。」
『あの、お姉さんすいません、もういいです。』
「反省しているなら精進なさい。」
『はい』

これ以上言われると本当に追いかけられない。
いや彼のことだから駄目って言ったらちゃんと守って。
まも、え、守ってくれるよね???え???するよね???

「とは言っても、私はほぼ完成されているものですし。」
『ん?』
「じゃないと貴方のこと肉体ごと引き受けれませんでしたし。」
『えマジか』
「寧ろ貴方の魂の方が欠けているんですよ。」

気付かなかった。割とガチで。
えっと思って自分の中を探し、彼女と照らし合わせる。
いや本当にマジじゃん。うっそだあ。

てっきりあとちょっとだと思っていたが、こっちだったか。

「まぁ肉体が何処にあるかもわかりません。
私は何とか維持していますが、
貴方が先程なったようになりかねませんし。」
「だから此処に?」
「…とは言っても、ほぼ交代ですからねぇ。スピスさん」
「はい」
「例の部屋って、空いてます?」
「……ええ、空いてますよ?」
「なら私は暫く其処に保管してもらえませんか?」
「っ!!!」

フィズの時に死んだあの場所を彼女は言っているのだろう。
いいんですかというスピスに構いませんという。

「新人に此処を任せる機会ですし。」
『うぐ…頑張ります。』
「よろしい。ではまた、肉体がありそうな場所の時まで。」

と、言いたいのですがね。

「リア姉様」
「なんでしょう?」
「早速お願い事があるのですが…」
「あら、なんでしょう?」
「抱っこして頂けません?」
「「「「だあああああああ」」」」

あらあら〜いいですよ〜
という彼女に、そう言えばとメルがぼやく。

『そうか、華樹神になったら外出れないのか。』
「気付く速さは父に似ましたねえ、そうですよ。
この空間の外では自身の足で降り立つ等
不可能になります。」

ましてや、その空を自由に飛ぶこともね。

そう言ってひょいと大天使の腕に入るルメリア。
こういうことは恐らく何度もさせているのだろう、
そうでなければこんな大勢の前で姫抱きなど言えない。

少なくともメルは絶対嫌だと思った。

「ふふ、一応一人で動けなくもないですが、
蔦を生やして力を余分に消費しなければなりません。」
『あの』
「はい?」
『後悔、したことないんですか?』

ルメリアとて、華樹神は元人間だったはず。
ルトラールが人間だったというよりかは、
人間に一度なってみて経験し、その場所を作ったに過ぎない。

ルメリアは、正真正銘、
人間からの生まれのはずだとメルは踏んだのだ。
それは的中しており、そうですねと話す。

「後悔していないと言えば嘘になります。」
「え」
「でも、それらひっくるめて、愛おしく感じるのですよ。
貴方がそう、想っているように。」
『…っ』
「ではこれにて」



失礼と言って、大神官と大天使に連れられて行った彼女に
メルははぁと声をあげて肩を下した。正座はそのままである。






『あ〜〜〜〜〜本気で死ぬかと思った』
「違います。死んでいるんです。」
『一度?二度?』
「正確には一度ですね。」
「おわった?」
『嗚呼ごめん終わったおわっだああああ』
「あああああああああああああ」

メル大丈夫と叫んで突っ込んで飛んでった
もとい、拉致らた彼女。
その悲鳴交じりに彼女を追いかける数人。
苦しい苦しいと言っても聞かない一人である。

「生きた心地しませんでした?」
「勿論」
「おや、否定しないんですね。」
「あんなの二度とごめんですから。」
「でも、殺さなくて嬉しかったですよ?」
「…っ。」

ー貴方なら、私、死んでもいいのに。

「それにしても、あんな殺し文句、よく耐えましたね?」
「…っお二人して、ご冗談が過ぎますよ。」
「ふふ、貴方が可愛らしい反応を一々しますので。つい。」
「…記憶、戻った、んですかね。」
「まだ未完成でしょうがね、殆どではないでしょうか?」

貴方に軽く手を振った、アレよりかは劣るでしょうが。

「…もし、殺したら、どうなったんでしょうか。」
「…!……そうですね、きっと、あの子のことです。」

ー嗚呼、やっと、これで、終わるのね。

「死ぬほど喜んで、その身を華に散らしていたことでしょう。」
「…死ぬというのに?」
「ええ、それ程、ということですよ。サワア?」
「…精進します。」
「頼みますね。」

本当に、可愛らしくすくすく育つというもの。
メルはミラ達に囲まれ、軽く怒られて手を挙げて困る。
それは彼女達がちゃんとメルを見てくれている証拠であって。

そのカタバミは、ちゃんと、その腰に…胸に、咲いていて。

「…例え、雑草だとしても、選ばれるというのですね。」
「ルトラール様?」
「なんでもありません。じゃ、皆さん。
今日のことを胸に、精進してくださいね?」

下界の人間らの相手の戦闘を禁止しているのは、
そのルールが崩れるからという理由もあるだろうが。
魔女に関しては消滅しても出来ない管轄に居る可能性が高い。

何としてでも中立を保つというのであれば。
その中立に背く者達を先に排除するということ。

++++++++++

そう、つまりは、だ。

「へぇ、そんなことがねえ。」
「正直歯が立ちませんでしたので、
暫く定期的にお兄様お姉様達と
組手することになっているんですよ。」

なるべく疎かにはしませんので、ご報告を。
そう言うウイスに、分かったとビルスは言う。

「にしても天使の中立がそんなところから来てるとはね。」
「…頭が上がりませんでしたよ。動きも出来なかった。」
「君もそんなことがあるんだね。」
「ええ」

なのに、彼は、動いてその手を取ろうとした。
まるで、当然かのように、動こうとした。

「(あのお兄様が涙を流す程なんて、
余程大事にしていたのでしょうね。)」

えふぇめらる、と言ったのは、
恐らく彼女の本名なのだろう。

嬉しそうに笑ってしまっていたのは、
きっと聞きたかった言葉だから。

そりゃあ、最期の最期に、愛おしい人の胸の中で、
大好きな自分の名を呼んで、もらえて。
その命を惜しまれるのは、相当嬉しいことだろう。

まるで夢の様な、時間だったのだろうなとは思うが、
正直あれは現実であって、
デモンストレーション以上のことだった。

あの状態が、本当の魔女と、撃ち合うと思えば。

嗚呼、そうだ。

「アレはまだ種…華を咲かせれば……
いや、考えない方が良いですね。」
「なんだ?なんか言ったか?」
「いえ、お食事のお代わりをお持ちいたしましょう。」
「え?どうして」
「ウイスさあん、飯くれえ」
「ふふ、分かりました。丁度ご用意をと思っていましたので。」

そう言って食事をとりに歩く。

種であの威力、華を咲かせたその末路には、
きっと、それ以上の厄災が広がっているだろう。

ま、そんなことにさせないように、
教えて貰えたというものであって。

本当に、あの家族して、優しいのだから。困った者だ。

その家族の仲を、割いた、その天使も。

「(同族とは考え難いですね)」

何故割いたのかは、不明だが、きっと何かが働いたのは事実だろう。

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