本当にイカレてる
『ふぉおおおおおおおおおおるすうううううううううううううあああああああ』
「っはははははは!!!!!ほっっんんとお前面白いな!!!!!!」
いいいいやあああああああああ
という叫び声と共に大量の涙を流しながら空を飛ばされるメル。
それにもうこれ以上満足を越えて何も要らないと言いたそうに
満面の笑みで飛ぶフォルスが居た。
樹海の間を超高速移動でぬってぬってぬいまくって飛んでいるのだ。
正直ジェットコースターの方がまだ安心感がある。
『いいいいやあああああああああああ』
「大丈夫大丈夫、仮に当たってもアタシが回復してやるって」
『お姉さんの回復くそ遅いの僕知ってるうううううやああああ』
あと痛いのはいたいんですううううう
そう言うメルに、腹が痛そうで本当に速度を落として下に降りた。
ぜぇぜぇと力も何一つ使っていないメルに対して
力を使っているフォルスは元気一杯である。
いや、だからさ。
『私分かった。もうお空いいわ。もういい。知らない怖いのやだ。』
そもそも人間に羽根が生えていない時点で空は不釣り合いというもの。
そう言いつつ前を向かずにふんぐっと何かにぶつかってぺちぺちと叩く。
『第一、なんであれ、これおかしいな、草がうごかね』
「あ?」
『あsどふぃあsdfなそdふぁsdfかdf』
「っぱははははははは」
あ〜腹が痛い!そう笑うフォルスに、お前か、と声が上がる。
「先日言ってた異種族の奴だ。」
「異界人を連れているとは…お前本当にソルシエールなんだな。」
『ソルシエール?』
「クリミナル…お前そういうのは言うな。」
「そうですよ?クリミナ。その子は見た処神々のお使いです。」
何なら華の者と申した方がいいかしら。
そう言って中から出てきたものは、羽根の生えた女性、いや少女に近い感じがする。
『ば、え、妖精さんに、うわあいて座。』
「何か釈然としないのは貶されているということか。」
『逆かなぁ?!!?!?』
「ふふふ、面白い子を連れましたね?拉致です?」
「拉致れるなら拉致るがなぁ〜?」
絶対こいつのツレらが許さないだろうよ。
そうフォルスはメルのスマホを手にかざして言う。
通信機器が壊れていると聞いてはいるが、
これ聞こえていたらただ事では済まないのでは。
「ま、もしやるなら大事な者の前で
かっさらってしまうくらいだな。」
『…ねぇ、それ本当に壊れてるんだよね?
ねぇ本当に壊れてるんだよね????』
「っはははは!!壊れてる壊れてる!!!!」
『ねぇその言い方壊れてないやつ!!
やだよ!?!?!私帰りたくないよおおおお!!!!』
「じゃあ帰らなければいいじゃないか。ずっと、この場所で。」
額縁の中で?
嗚呼まぁそれもいいが、それだけなんて、私には向いていない。
『私は何時だって、あの透明に恋焦がれるのだから。』
「…おお、お熱いこって。」
『ええ』
「ま、中に入れ。」
そう言われてひょいひょいとメルは入る。
クリミナルが周りを気にしているのにも気づいて。
「妖精のアポイナです。」
「クリミナルだ。」
『メルです』
「外の戦争人と勘違いして撃ち落としてしまってな。」
「あら、それにしてはかなり珍しいこともあるものね?
貴方これまで全員記憶を消して外に逃がしていたというのに。」
『え゛』
「色々事情があってなぁ〜介抱してやることにしたんだよ。」
「こりゃ空から槍が降るな。」
「火の玉でもありでは?」
「おい」
そう睨むフォルスに、二人はけらけら笑う。
「それにしても、まさか外と言っても華の者、
それも樹に認められし者がくるなんて。
貴方本当に選ばれし者っぽいわねえ。」
「…いや、見る方が違うだろ。」
「あら、違わないわよ?私達妖精族の言い伝えでは
人間でも選ばれしソルシエールのみがこの場所を出れる
加護を持った天使になれるって。」
「…アレはただの生贄、古臭い風習だろうに。」
『なにそれ』
そう言うメルに、人間の面倒なものだとクリミナルが言う。
「この星に居る種族3つは数十年に一度、
天才とも称される力の持ち主の子を
神に捧げるという生贄の儀式があるんだよ。」
『はえ』
「力を持ち、歳も若い子をソルシエールと呼んでいるの。
フォルスは5歳でソルシエールの称号を貰ったのよ?」
『ええ!??!?ごしゃい!?!?!?』
「ぶっ」
「っふふふ、ええ。」
はえ
「神自らの迎えなんて一度あったかなくらいよ。」
「え、いたのか」
「ええ。この星が生まれた最初の頃辺りだと
言い伝えられているけど、名前は知らないわ。」
「へぇ」
「その時は銀髪の、目が黄金に光り輝く女性と聞いていたけど。」
『ん?ぎんぱつ?』
いやきのせいか、うん。かかさま、だなんて、そんな…ねえ?
出来過ぎた話である。うんうん。ないない。
「…ま、別にいいか。」
「そうだフォルス、お前特訓の成果は?」
『特訓?』
「嗚呼こいつに色々面倒見て貰っててな。」
「この集落周辺というか、このティーフゼー自体の民が
狩人シャスール人の血が薄くなっていてな。」
『てぃ?ううん』
「どうした?」
『いや聞いたことあるようなないような。』
どんな意味だったか忘れたが、なんか聞いたことある。
まぁいいか、気のせいだろう。忘れることにした。
『というかシャスール人ってなんぞや。』
「ティーフゼーの中でもTOPクラスと呼ばれた狩人の人間よ。
大昔、この星には弓を制し者。剣を制し者。杖を制し者がいた。」
「シャスール、リッター、ゼプター。
それら全てを制する者それこそが
ソルシエールと呼ばれる者。
別名、神の子とも呼ばれる者の称号ね。」
いやまて。
『とんでもねぇな??????』
「そんな程じゃない。魔弓しか
射ってないアタシはぺーぺーだ。」
「んなこといって魔具も扱える上に
剣も中々の力を持ってるじゃないか。」
「そうそう。こんなところで腐るよりも、
天に行けばよっぽど重宝されるというもの。」
ねね、この子いいわよという彼女達に、
メルはそんなつもりじゃと頭を下げる。
「…いい加減にしろ。」
『っ』
「こいつはそんな能力だけで人を見限ったり見て判断する奴じゃねぇ。」
此方の肩を持つというのか。
メルはぱっと顔を上げた。
そこには少し嬉しそうに笑う彼女が見えた。
「アタシの不得意を綺麗だと言ってくれる奴を、
そんな周りのきたねぇ感情持ちの
クソ野郎共と一緒にしたくねぇよ。」
『フォルス…!』
「お前が其処迄とは……」
「余程お熱なのねぇ〜〜?もう結婚したら?」
『けっ!?!?!?!?!』
「ばっ!!!馬鹿にすんじゃねぇ!!!
そんなんじゃねぇし!!!!!」
「…おっと???」
「あらあら?」
ちらちらと見てくる二人に顔を何とか逸らせるフォルス。
こてんとメルは首を倒せば、ばっとまた顔が逸らされた。
「ま、この子が純粋な子だって私は見抜いているからね。」
『ん?どうしてですか?』
「妖精族の力でな、どんな者の心も魂も綺麗かどうか見れる奴なんだよ。
こう見えても元ゼプターTOPなんだぞこいつ。」
『びえ』
「なんならこの人は元リッターTOPよ?」
「お前は現シャスールTOPだしな。」
『ひぇええ』
何だ此処は、私が居て良い空気じゃねぇじゃねぇか。
「それにしてもこんな純粋に良く生きているわねぇ?
普通なら多少なりとも濁るんだけど…」
「濁りが浄化されたりしないのか?」
「ん〜〜〜できなくはないけど、近くにそんな綺麗な子がいたりとか、
元々濁りにくいとか。あとは」
そんな願いを、叶えられた、とか?
「ま、そんなところね。」
『(願いを、叶えられた…)』
ーねぇ、かみさま、おねがいきいて?
ーあの子を、私と、交換して下さい。
『…っ』
「メル?どうした」
『あ、たまが、いたい』
「お、おい!!」
大丈夫かという声が酷く遠い、何だ、何の声だこれは。
目の前に、黒髪の子供が現れる。
手を胸の前で合わせて首を横に振る。
叶わない、叶えられない。分かっている。
叶えられるならば、なんだってやる。
私は死んで消えて無くなってもいい。
全てを捧げてしまえられる。
ーこの私の、感情を。
「…駄目ね、声なんて聞こえないわ。」
「フォルス下がっていろ。」
「っだが!!!」
「耐えて、メル。貴方なら出来る。」
痛みに耐え続けて、また耐えろというのか。
この酷い頭痛の奥で、誰かが言う。
祈っているのだ、言葉を紡ぐ。
ーあの子の、感情と。
黒髪の子供、いや、女性が言う。
顔をあげて、その場所に言うのだ。
嬉しそうに、愛おしそうに。
ー貴方が、一等大事になったから。
こんな可愛い天使が、翼をもがれて、
地面しかいきれないなんて可哀想過ぎる。
私を救ってくれた、私だけの神様が。
もし、もしも、私の感情たった一つだけで救われるというならば。
何処かの世界全てが幸せになれるというならば。
そんなの、願ったりかなったりで。
ー私の命など、くそくらえだ。
『っ』
その目は、黒い瞳から黄金色に染まった。
髪色は黒から白に変化し、その姿を身に纏う。
まるで、今までの、私のような姿で。
私は何かを忘れているのだ。
貴方を、忘れて居る。
白い世界も、忘れて居る。
サワア達のことだって、全部全部、忘れてしまっていて。
『…どうして、そんなに、言い切れるの。』
「…メル?」
『どうして貴方は、そんなにも強く居れるの?』
分からない。どうしてこの記憶から叫ぶ声は決まって強いのか。
強く在ろうと生きて居ようと居れるのだろうか。
分からない、分からないのだ。それが、酷く、怖い。
これが償いとでも、いうのだろうか。
償えた後、私は、どう生きていれば、正解なのだろうか。
ニコリと笑った、彼女の顔は、何時か出会ったクレヨンの子供にそっくりに見えた。
++++++++++
『…ん、こ、こは。』
「ああ気が付いたのね。」
『アポイナさん…クリミナルさんと、フォルスは……』
「外でちょっとね」
外が騒がしい、何だろうと思って身体を起こす。
行かない方が良いという声の後に、怒号が聞こえた。
ー悪魔を匿っているんだろう!!!
出ていけ、この場所から、この星から、この世界から。
そういう音と、暗い外が、炎で明かりを照らしている。
メルの身体をそっと抱きしめるように守ってくれるアポイナ
身体が震えているのに、気付いたのは
アポイナの身体に触れて少ししてからだった。
大丈夫と言おうとしたのに、大丈夫じゃなかったのは私だった。
ーだから違うって言ってるだろう!!!
ーじゃあなんで会わせない!此処に匿っていると情報は漏れているぞ!!!
『っ』
「大丈夫、貴方を外に出すなんてしないわ。」
あんな奴らの手になんて、染まらせる訳にはいかない。
そう強い目が、緑色の光が、誰かに見えた。
『とと、さま…?』
「え?」
「っアポイナ!!メルを連れて逃げろ!!!」
その音と同時に、ガシャンとドアとガラスが崩れる音がする。
炎の弓矢が撃たれたのだろうか、中が燃え始めた。
駄目だ、この人達の家だというのに。
水はとメルが飛び出したのが悪かったのか、
いたぞと言う声に身体が飛び跳ね、そのまま逃げる。
「っ駄目!メル!!」
自分を狙っているのだ。私が出ていかないでどうという。
メルはすぐに裏口を見つけて扉を開けすぐに逃げる。
こう見えても逃げるのは得意中の得意なのだ。
いたぞ!という声に、
この真っ暗闇を突っ切れというのはちょっと無謀だが、仕方がない。
彼女達のこれ以上迷惑になんて、なりたくないのだ。
『っは、はっ、はっ、は!!』
息を切らしてもとにかく走り続ける。
光りが見えたらすぐに暗闇へと軌道を変えて走る。
その繰り返しで、地を蹴って、樹木へと足を切り替えてあげる。
ダンという音に振り返る暇を見つけてはいけない。
前を向いて、とにかく逃げて逃げて、逃げまくる。
此処で自分が変に動けば、この物語を改変しまいかねない。
それだけは避けるべきということは、私は逃げる一択。
身体が小枝や葉に切り裂かれたって構わない。
痛いなんて考える暇も、隙も見せてはいけないのだ。
とにかく前を、向いて、走って飛んで、更に向こう側に!!!
バッと飛んだ先は、何もない。
外に出たのかと、思ったが、どうやら原っぱの方に来てしまったらしい。
樹海にも確かに似たような空間はあるだろうが、湖のある場所らしい。
余りこっちにいきたくないというのも、迷子になった時が困るのだ。
加えてこっちは光を灯さずに走り続けなければいけないハンデがある。
光りがこっちに向かって来るかもしれないが、
身を樹の上の視界に入りそうにない真上に飛び、姿を隠す。
後から声が聞こえてきた。
心臓の音だけがその身体を打ちつけてくる。
早く降りろと、その身を渡せば全て楽になると
恐ろしい声が聞こえてくるのを、耳を塞いで無視するしかない。
身体を丸めて、耳を塞ぎ、
とにかく時間が過ぎる為に息をゆっくりすって吐く。
此処に自分はいない、何処にも居ない。誰も居ない。
そう言い聞かせて、気配を押し殺す。
あれ、前も同じことをしていた気がする。
二回、同じことをした。
一度目も、二度目も、思い出せないのに。
二つとも、誰かが傍に居てくれていたのは覚えてる。
三度目は、誰もいないのだ。
誰も私を助けてくれる人なんていない。
だから、私は私を助けなければいけない。
『(そうだ、丸まっているだけでは話にならない)』
この世界の登場人物になるべく関わり過ぎるとまずい。
だが、彼女達の真相が分からなくなるのも嫌だ。
ではあいつらはどうする?というか、私はこの世界に干渉しすぎているのではないのだろうか。
…此処は一度撤退すべきだ。だが、帰り道は何処だ?
『…っ』
帰れない恐怖がぞわりと背筋を伝った。
そう言えば、あんなに走ってきて、
今更樹海に戻り、彼女達と合流する確率は?
敵が何人いるかどうかも分からない今、
下手に動くのは余りにも無謀すぎる。
加えて今手持ちはゼロ。
スマホも壊れて使い物にならない上に
置いて来てしまっているのだ。
嗚呼本当に阿保たれだろう。
帰れるように額縁を念じれば出来るかと思ったが、
流石に精神が不安定になった今、それをして戻れても
本当に帰りたかった世界かどうかの
確証や保証なんて何処にも存在しないものだろう。
『…っはは、つんだなあ』
とりあえず身体に神経を張り巡らせる。
イメージは、暗視カメラのように、黒と薄い黄緑色の色が広がる世界だ。
自分の場所が地面からどれ程離れているか、
人はサーモグラフィーの様に熱反応として感知させる。
独りで生き抜くにはどうすればいいか考えろ。
誰もが敵だと思え、己ですら、敵だと思ってしまえばいい。
そうしたら、動く者は全て攻撃で己を守れる。
動く音と、熱に、身体を動かす。
動け身体よ、今は独りで生き抜くしかない。
タッタッタと軽快な音を立てて空を飛ぶ様に蹴り、
空中をくるりと一回りして、枝に飛び更に枝へと飛び移る。
どうせ動くなら、偵察といこうじゃないか。
「ん?なんだ?今の音は」
『んにゃ〜〜〜お』
「…なんだ魔猫か」
なんだ魔猫って。怖いんだが。
がさりと音を立てて地面に伏せたメルの音に、
何事かとこっちに来ようとした人たちの気を他所にうつすためにも
メルは咄嗟に猫の鳴きまねをしてみた。
いや猫って何処にでもいると思うじゃん?
まぁその作戦無事勝ちましたが。つんよ私。
「それにしても、あのTOPが全員グルだったとは驚きだよな。」
「嗚呼、明日の朝太陽が昇った直後に処刑するとか聞いたぞ。」
『(は?なんだその話は聞いていないぞ)』
「神様もあいつらを見捨てた悪魔だってさ」
「あ〜もうこの世界に神様なんていやしないんじゃないのか?」
…駄目だ、そんなのいけない。
猫の鳴きまねをしているからかしらないが、
後をつけてくる感じはしない。
捕らえられて、朝日が昇るまでに殺される。
それなら、その場所に行って、私が代わりに殺されるのがベストだろう。
恐らくだが、この世界、ちゃんとした自分の肉体が死んでも帰れる感じがする。
というか、肉体を切り離してしまった方が早いかもしれない。
あれだ、早い話脱皮みたいな感じ。セミの脱皮みたいな。
え?いやだ?いやほら、分かりやすいじゃん?
それとも、もっとやばい話する?あっしない。ごめんなさい。
そう誰かに謝りつつ、メルはこの世界の位置を確認する。
何かとてつもない特殊能力に目覚めた気がするが、
気にしては負けな気がする。
時間にして、どれくらいかは分からないが、月夜も見えないこの樹海。
大体早くて三時間、遅くて五時間と思っていたのが悪いか。
『(妙に明るい気がする)』
暗がりが明るくなり、夜が明ける感じの、
ふわりとした明るみに身体が動いた。
何処だ、何処だ、何処だ。
違う、闇雲に探すな。感じろ。
この世界にある、
華の者の力の根を感じて探し出すしかない。
華は、とても素直で。
『…どこ、何処に居るの?』
ねぇ、
『フォルス・クレア・アインマール』
その言葉に、線がピンと光る。
赤い糸に、方角が見えた。
『っこっちか!!!』
その糸に走り、とにかく身体を動かし続ける。
途中居たぞという声が聞こえてもその横を突っ切る。
『っフォルス!!!』
「…おいおいおい、お前、本当に呆れる程馬鹿野郎だな。」
断頭台、その言葉が頭の中を埋め尽くされる。
後ろから手を掴まれ、ぐっと引っ張られて取り押さえられた。
別にいいのだ、私はこのために、此処に来たのだから。
「のこのこ現れ寄ったな、忌々しい悪魔め。」
『そいつらを放せ』
「嗚呼?どのぶんざっ」
『聞こえなかったのか?もう一度言おうか。』
【その者達全員 汚らわしい手で触れるな】
メルの言葉に、ヒッと周りの奴らが距離を置く。
掴んでいた奴の手も離れようとしたが、
気を取り戻したのか、ぐっと強く掴まれて痛みを感じた。
ついぐっとなったのに、怒ったのかフォルスが駄目だという。
「お前は早く逃げろ!!帰り道はもう見えているはずだ!!!!」
『はっ、誰が帰るか。』
「っ馬鹿!!!死ぬぞ!!!!!」
『いいよ、別に死んだって。』
この場所は、偽物ではない。本物であるのに。
「嘘つき魔女が、悪魔を連れて匿っていると報告があったが。」
どうやら、本当のようだな、と太った下種と言われてもおかしくない程
油たぎった身体で頬を掴んで上にあげる。
その腐った瞳で、
こっちを見てくるなと強い目で見ると、
その頬をぶたれた。
パンという音に、野郎という声が聞こえて炎の光が見えたのにメルはやめろと答えた。
『貴方がそんな力を使える程、相応しい者ではない。』
「ああ、その通りだあ?俺はこの国の王であり神だ。」
『…神も堕ちたものだな。』
ま、私も同類か。
小さな子供一人すら、救えずに。
なんなら、その子供に救われて、
私はこうして今を生きているのだから。
そう言ったメルに、フォルスは目を見開く。
「悪魔と魔女を処刑する良い機会だ!!!出せ!!!」
『っフォルスを解放する話じゃないのか!!!』
「嗚呼?誰がこの機会に逃がすか。」
『〜〜〜〜っ下種が!!』
「言ってろ。お前にはこの首輪がお似合いだ。」
『っ待って、なんでそれをっやだ!!!』
逃げようとするメルの身体を取り押さえる奴らと
逆の方向からかちりとした音と、
ひんやりした温度に身体がぐらりと倒れる。
息がずっと重くなり、頭の中が空っぽになる、
この感覚は何時だっていやだなぁとは
考える暇くらいあるらしい。
「メル!!!メルしっかりしろ!!!」
「安心しろ、意識はある。まぁ?
身体も心も全て置き去りになっているがなぁ…??」
ぐちゃりという音が近くで聞こえる。
それが何かとまでは、分からない。
こてんと首を傾げたメルに、ほぉ?と声が漏れる。
「よく見れば可愛らしい女じゃないか。
頬が切れているが、きちんと直せば上玉だ。」
「…お、まえ、何を考えている。」
「俺の所にくれば、あいつは考えてやってもいい。」
『…い、けば?』
「……メル、ダメだ、駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ!!!!」
「っ王!駄目です持ちません!!!」
「煩い!こいつがどうなってもいいのか!!!」
そう言ってメルの身体を掴み、引き寄せる彼に、フォルスがぐっと止まる。
ぐったりとしているのは何も、身体だけではなくて。
虚ろな目をしたメルの姿を見て、自身の身体が冷え切った感じがした。
何処も、見ていない。何も、見ていない。知らない、知れない。感知すら、しない。
数時間前までの光はない。キラキラと外をみていた、あの綺麗な眼は。
何処にも、存在しない、それどころか、元々無かったかのようにも見えて。
あいつは、だれだ。
「にしても、見れば見る程可愛らしいなあ?
白く、細く、華奢で…まぁ、少々胸が小さいが。」
『…っあ』
「……貴様、触れていい者ではないことくらい、分からないのか。」
「ああ?お前も触れたいのか?だが残念だなぁ?」
『あ、あっ、や、やめ、やめて』
身体に力が入らず、手を抑えるしかできない。
目に涙が溜まり、少し上を向くメルにゾクリと感じたのか
クンクンと鼻で匂いを嗅ぐ王に、メルはきゅっと目を閉じた。
「…いい匂いだ。」
「〜〜〜〜〜っ貴様あああああ!!!!」
「っと、こいつの首が心臓がどうなっても?」
「っ」
フォルスが飛び出し王の心臓を射ようとしたが、叶わず。
メルの胸に指を置いた彼の手には、黄色い気が見えた。
ちょっと頑張れば、メルの胸を貫くつもりだろう。
「ほら、ちょっとこねくりまわせば」
『…っ、あ、ああ、やあ、やら、あ、あ』
「っくくく、気持ちいいだろう?そうだろうそうだろう。」
軽く胸を触られ、弄ってくるのに、なぜか快感が伝わる。
足に力が入って、ピンとなり、腹の底がうずうずしてしまう。
身体がおかしい、おかしくなってしまったのか。
余り頭が働かない。動けと思っても、力が綺麗に入らないのだ。
「処刑は後回しだ。良い褒美を神からどうも貰えたらしい。」
「…っメル!駄目だ逃げろ!!」
「もう声なんて聞こえとらんよ。」
「なに?」
「華を持つ者唯一の弱点。この星に代々伝わる古の、
黄金に輝く首輪をつけたのだからな。」
力を全て、飽和させ、その身体に相応しい力に染まり続ける者。
「身体の力が抜け、その思考回路までも染色する者とは
…少々喰らえばひとたまりもなかったが。」
「…っお前!!」
「眠らせておけ。もう少し遊んでからにしておこう。」
その言葉に、兵士たちが集まり、フォルスを囲む。
同じような首輪をされ、フォルスも視界が歪む。