堕ちゆくのは




動かなきゃ、逃げなきゃ、でも何処に?
ぐちゃぐちゃと変な音がする。
あれ、私何をしてたんだっけ?

「綺麗にすれば、本当に可愛らしい女になったのお?」
『ふぇ?』
「っくくく、メルと申したか。ほら、此処はどうじゃ?」
『んあ!や、やあ、らあ』
「そうかそうか、良いか!」

胸をピンと弾かれ、身体が動く。
嫌だと首を横に振っても、止められる気配がない。
ベットの上で、跨がれ、その身体をねっとり見られて弄られる。

頭で考えようとしたら、また弄られて考えれずに溺れてしまう。
やだ、やだと言っても嬉しそうにその喉を鳴らす。

そうだ、フォルスの元に来たんだった。
でも処刑されたのは?私?でも生きてる。
あれでも

『んあっ!あっ、やあ、ああ、ふああ』
「っくく、敏感な身体なんじゃなあ?ほれほれ」
『あっあっあっああ、やああら』

腕は両方に、投げて、シーツを掴むくらいしか力もでない。
金色の首輪に手を掛けようとしたら、腕を上に捕まれ止められる。

「ほら、逃げずにすれば、フォルスらを解放してやろう。」
『あっ、ほ、んと?』
「嗚呼、約束だ。」
『〜〜っふ、あっ!や、でも、こん、なろ、やあら!!』

指でぴんぴんと跳ねられ、弄られて頭がピリピリとする。
股をすりすりと擦っているのを見られたのか、クツクツと音がした。

「そんなに触られたいとは、お前も可愛らしいなぁ?」
『え?まって、どこを』

ぴちゃりと音がして身体が飛び跳ねた。
ばっと起き上がった身体を押されて、その隙に音が鳴る。

『っい!あああ』
「ほぉ?初い者か。」
『やめ、やああら!やめれ、あっ、ああ、いじっああ』
「じゃがよがって気持ちよさそうじゃなあ?」
『ちがっ、かんじ、なあ、ううう、ああ』

くちゅくちゅと音を立てられ、身体に伝わる感覚が息をする度に広がる。
力が抜けて、くたりと息しか出来ないメルをみて、ご満悦そうに見る。

「本当に古伝わりし伝説の天使が翼を折って落ちてくるとは…全く、わしも運がきたというもの。」
『ふぇ、やぁあら、やめ、やめれえ』
「誰が此処でやめるか。もう少し堪能させてくれ。」

ぴちゃぴちゃという音に、恥ずかしさが波のように上がる。
身体を動かしたくても、気を集中させようにも飽和する状態になれない。
早く慣らして、首輪を壊さないと、色んな感情諸々今此処で飽和しかねない。

危機感を感じ、とにかく動こうとじたばたするメルに
いいのか?という彼の言葉にメルが止まる。

「フォルスが死んでも」
『…っひ』
「お前が逃げればすぐに首をはねられる状態で軟禁しておる。」
『…や』

酷い。狡い、狡過ぎる。そんなことを言われたら、従う他がない。
術がない、その一択以外、私に縋らせるしか、させない。
息が苦しい、怖い、嫌だ、これは物語で、現実ではない。

そうだ、夢だ、夢の中なのだから、私が逃げてもいい。
でも、これが変われば?彼女は死ぬのではないのだろうか?
ならあの子達はどうなる。私が死んでも廻ったとしても。

彼女の命は、一体何処に向かうというのだ。

「…っくく、そうだ、そうすればいい。」

従うしかない。下種の行為を、好きな相手とでも思えば。
だが、好きな相手なんていたのだろうか。
というか、そもそも好きとはなんだ。

私に好きな人など、居たのだろうか。

「嫌なら好きな奴の顔を思い浮かべていればすぐに楽になる」
『…すき、って、なぁ、に?』
「……っ!!っくくく、っははははは!!!!
そうか、すき、すき、すきが分からんか!!!!」

本当に、お前は天使なのだなあ?

そう顎を取られて、弄られる場所に気を取られて
顔が歪み上手く反応出来ないメルの事が
余程気に入ったのか、ペラペラしゃべってくれる。

「好きとはふとした時に想う相手のことだ。
今この瞬間何をしているのか、
どんなことを思っているのか。
頭の名で考えてしまう相手のことを言うんだ。」
『いま、この、しゅんか、』

ずっと、ずっと考えている人はいる。
でも、そんなの考えちゃいけなくて。
なんで考えちゃいけないのか、分からなくて。

くちゅくちゅといやらしい音が部屋をかきたてて
あっあっと一音しか声が出なくて、身体がもじもじして困る。
熱を帯びる身体が変で、怖くて、怖い。嫌だ。

ふとペットボトルを持った時のことを思いだした。
胸が酷く痛んで締め付けられて、怖くて泣いたあの日のこと。
ポロリと涙を零したメルに、目を丸くした王様。

「…お前、まさか振られたのか?」
『っひ、そ、んなんじゃ』
「天で想い人と添い遂げられず、天に戻るなんて
出来ずに翼を己で捥ぎ落し、地に落ちてきたと。」
『ちがっ、ひぁ!やあ、やめ』
「忘れてしまえ、そんな男のことなど。」
『やだ、いや、わすれ、たくなんか、ないの』

思えば余計に涙が溢れてとまらない。
快楽で声が裏返りもするが、
それよりも彼のことに胸がいっぱいで苦しくてたまらない。

頭が白い髪を持つ彼のことでいっぱいになる。
傍に居て欲しい、隣に居るだけでいい。
いや、もういいのだ、諦めるしかない。

彼は遠くの場所に行ってしまった。
私は置いてしまっているのだ。

こいつの言う通り、その翼をもいで、地に落ちたというなら。
空を飛べない華樹神は、大地に降りれない
あの場所は、一体何と呼ぶのだろうか。

下を脱がされ、上も着ておらず、
全裸の状態で舐め回す様にみられる。

なんならぺろりと舐めてきて、ひあっと声が出てしまった。
くすぐったくて、でもぞわりとして恐怖が上がる。
怖い感情が頭を埋め尽くして、真っ暗闇に染まっていく。

嫌だ、折角、折角上手くいっていたのだ。
こんなところで、終わってたまるか。

彼女に貰った唯一の光を、こんな、
こんなところで落として溜まる者か。

でも、

『あああ!やああ、やめ、ちか、ぬけちゃ!!』
「落ちてきた天の子を、更に堕とす…まさに良い場所じゃなあ?」

身体がびくびく反応して、とにかく逃げる算段を考えさせてくれない。
というか人間って悟空やベジータの様な人たちばかりではないのか。
まず黄金の首輪が何故彼等の元にあるのかも不思議である。

というか、私コレ同じことしたことあるの????
待って??????控えめに言っても無理だが????

嫌だ嫌だと手を上に伸ばしても、届かない。

助けてくれる人なんて何処にも居やしない。
こんなつもりじゃなくて、でも、考えさせてくれなくて。
波が高ぶるのが嫌だ、こんなところで、知りたくない。

憎悪が胸の中にちらついてくる。
いやだ、それにも触れたくない。

『あ、あ、あ、あ』

時々不規則にくる思考回路の停止でか、
頭が空っぽになった途端、快楽が押し寄せてくる。
髪の毛の色が、肌が色濃く出てきて、声を出してはいけない。

いけないのに、心が音を出して、鳴りやまない。

どうせなら、彼に触れてほしくて。
でも彼の居る場所はそんな我儘を言って
叶う場所じゃなくなっていて。

手を伸ばしても触れれない。
こんなところで、終われば、華を散らせば、
本当に二度と、彼の前に出ることすら、叶わない。

いや、叶えたくなくなる。
そんなのは、いやだ。でも、自分でどうにもできなくて。
ひとつの言葉が、胸に過って、嗚呼、夢だ。

これは、夢だ。夢だから。お願い。醒めて。
目がキラキラと光を徐々に帯びだす。

涙が零れる。

ー…えふぇめらる、めを、さまして

お願いだから。

その言葉に、メルは…ねぇ、お願いと続ける。


『…た、すけ、て』


もう、こわくて、ひとりじゃ、はしれないの。


そう言った声が、宙に溶ける。
言っても無駄なことは分かっていて。
ちらりと見えたあの赤は、紫は、白は、ふわりと溶ける。
消えて、モヤが綺麗に、なくなっていくのが、怖い。

嫌だ。絶対に、この一つだけは。抱いていたい。
だから、貴方だけ、たった、ソレだけ。


ーみて!綺麗なお花の冠!


子供が、子供に花冠を頭にかぶせて笑い続ける
そんな世界が、空に見えて、涙で前が霞んでいく。


嗚呼、いい、絵画だなあ。

綺麗な額縁に、飾られていくその情景が、何よりも綺麗で。
胸の痛みが、すっと冷えて堕ちていくのが感じ取れた。
その痛みが、綺麗になくなったら、私は息が出来るのだろうか。


息を、して、いられるのだろうか。


『…さわあっ』




「全く、何処をほっつき歩いていると思えば」




こんな所で、何をしているのですか。



「ああ?なんだおまっぐあ」
「ヘレス様、手加減してください。」
「嗚呼すまん。つい加減を忘れてな。」

男がメルの身体をもう少し弄ろうとした時だった。
黒髪の女性が男を横に吹っ飛ばしたのだ。
その速度やら威力やらに男も驚いたが、メルも驚いて固まる。

「……っ!!!」
『…っ、へれ、す?』
「……っ……お前、いや、貴様
一体誰に手を出したと思っておる。」

涙を流し、もう手放そうとしていた瞬間に現れた女性と男性。
ベットに入って来た彼の顔をみて、身体がこわばるも、
力が上手く入らず、身動きもろくにとれない。

『っあ、やあ、ら』
「……っ」

先程までかなり長い時間弄られていたのもあるのだろうか。
息が上がって、肩で息するしか出来ないのだ。

その姿をみて、安心して下さいと答える。

「もう、お迎えに来ましたから。」
『さ、わあ?』
「……ええ、貴方のサワアですよ?メル様。」
「っこのあま!誰をとばっぐ」
「誰を捕らえて誰を弄んでおるというのだ。この愚弄が。」

純粋で無垢で、穢れなど一滴も知らぬ、それも女子を。
綺麗な花弁に、泥を足を、腐ったものをくっつけて。

「破壊ですら愚かな行為ともとれようものを」
「ひ」
「やるなら一度くらいお前がぶてばいいものを」
「…そんな野郎の相手など貴方程で事足りるでしょうが。」

軽く白いタオルを作り出したサワアは
そっとメルの身体を包み込み抱き上げる。

本当は服も全部元に戻してやりたい
ところだが、汗やらなにやらいろんなもので
酷く混乱している処に服を入れたら
逆に感覚が狂って気分が悪くなりかねなかった。

それを考慮したうえでの行動である。

メルを優しく抱き上げ起き上がり、
背後に居た者にちらりと目線を落としてやる。

「それに…そんな奴の相手をする暇すら惜しいというもの。」
「は、それもそうか。」
「ひっ!か、かねか!そうか金がほしいのか!ほらいくらだ!!」
「……ヘレス様」
「嗚呼いっとけいっとけ、わらわの大事な大事な
可愛い子を散々痛めつけた罰を下す時じゃ。」

異論はないな?言うまでもありません。

「存分に。死なない程度で。」
「よかろう」

コツコツとサワアが歩き出した。
部屋を出た辺りでぎゃああという悲鳴があがり
それに身体がびくりと反応したのに、気付いたサワアが
大丈夫ですかと声をかける。

「大丈夫じゃないですよね…すいません、つくのが遅くなって。」
『…い、いいよ、だいじょ、ぶ。』
「その身体でも、貴方はそういうのですか。」

守ろうと、した、その身体で。

「ああいう奴の肩を持たなくてもいいのです。
どういうことをされていたのか、本当に分からないのですか?」
『わ、かるけど…でも、』
「はぁ…貴方本当に味方がどうにかなるなら
身投げも安易にしそうで目が放せません。」
『う』

現に似たようなことは先程していたので、正直何も言えないというものだ。

「通信機器が壊れて数時間経った直後、
嫌な予感がするとヘレス様が急に言い出して
華樹の樹に来てみれば。
私もヘレス様、二人とも
華樹に吸い込まれてしまいましてね。」
『え』
「メルトリア様達が様子をガラス越しに触れて気付いて
大急ぎで額縁の前に来たと思って入れそうだったので
入って来てみれば、なんという場所でしょうねぇ???」
『ひっ…ご、ごめん、なさい。』
「…ま、貴方程の力でも裁ける者でしたが、
場合が場合でしたし、仕方がないといえばそうでしょうが。
これに懲りて、もう少し人を見る目を養うことですね?」
『うう、頑張ります。』

流石にアレを何度もは嫌である。

メルは肩を落とし、そのままサワアの胸に
身体を委ねて落ち込む気持ちを落ち着かせることに専念した。

「…っくく、それ程いつも素直であればいいというのに。」
『いつも素直だよ?』
「いいえ?」
『え〜、あ。そういえば、ね、今金色の首輪ついてる?』
「ええ、ついていますが、ソレが何か?」
『サワアに触れて貰えているとね、不思議と普通に入れるの。』

なんでだろうね、不思議だねというメルに、身体が止まる。

『あれ?サワア?』
「…メル様、あいつの差し金ですか?」
『え?何の話?』
「…まさか無意識です??正気で?」
『正気っちゃいま正気ですが。』
「……いや、何も気にしないで良いです。」
『待って?!?!?!?気にするが?!?!?!?!?』


ねぇなんのはなし!?!?
いえ、なにもいっていないですよ。
いってたよね!??!?!ねぇ!!!!!!

そう騒ぐメルに、前から走って来た者達に見覚えがあった。


『っビルス様!ウイス様!!それにフォルス!!!!』
「っめ、る…?」
「お兄様…」
「安心して下さい。処罰は厳粛に、現在行われております。」
『フォルス?ウイス様皆どうしてそんな驚いて?』
「…ビルス様」
「大丈夫、軽く遊んでやるだけだよ。」
「おやめください貴方絶対に殺しますから抑えて。」
『おん???????』

首を傾げるメルに、スタスタと歩いて来たフォルスに
メルは声を掛ける前に、ぶたれて声を飛ばした。


「〜〜〜〜っこの馬鹿者が!!!!!!」
『っ!!!!』
「っふ、っうう、こ、んな、こんな、たえなくたって」
『…ふぉ、るす』
「ごめ、ごめんなあ、めるう」

そう軽く身体に頬に摺り寄せてきたフォルスに、
今まで起きたことをゆっくりじっくり思い出して
じわりと瞼が熱を帯び始めてきた。

『…っう』
「ごめ、おくれて、むかえに、いけなくて」
『ううん、わたしこそ、ごめ、ごめんなさ』
「…互いに謝るなら先に出てからにしましょう。」

先に、周りの道を広げて。

そう言ったサワアの言葉の通り、後ろと前に兵隊が現れた。
剣を持った彼等に、へぇとビルスが間延びした声を出す。

「その者を置いて立ちされ!!」
「…だ、そうですが?」
「出来る訳ないでしょう。」
「なら此処で死んでもらっ!!」
「フォルスさん、貴方…」
「別にいいさ、お前達がやっても。
だが、この熱を今発散させてもらえねぇと、
何処かに置いてきてしまいそうで嫌なんだ。」

やらせろというフォルスに、
ビルスは手を軽くひらひらとさせる。

彼女一人に任せるという合図だろう。

それに周りの兵士たちが此方に一斉にくるのを、
すっとサワアは避ける避ける。

メルは驚き身体をぎゅっとサワアの方に寄ろうとするも、
手はタオルの中である。
頑張って何とかタオルのすそを見つけて手を出せば、だ。

「おや、メル様?はしたないことをなさらないで下さい。」
『や、でも落とされそうで怖くて。』
「はぁ、私がこの程度で落とすわけもないでしょうに。」
『いやでも、周りの温度差がああああ』
「…これも訓練と思って下さい。
手を中に入れて身体をとにかくそれに包んでいてください。」
『だってぇ…が、がんばるしかない?』
「ええ、頑張って下さい。貴方なら、出来るはずです。」

あの場所で、ちゃんと、堕ち切らずに手を伸ばしてくれた強い貴方ならば。
そう言ったサワアに、メルは目を輝かせた後、うんと強い返事を答える。

『じゃあ、それゆけ!サワア!!』
「はいはい。」
「魔よ弓よ、華の者、共に撃ち滅ぼさんことを!!」

その掛け声に、炎の弓矢が紫色に変化し、射る方向が複数に変化する。
タタタと音を立てて敵に命中するも。

「ほお、お見事。全員急所ギリギリ、それも回復しづらい処ばかりで。」
「は、これでもソルシエールでもシャスール出身なんでな。
弓の扱いに置いては右に出る者なんぞいないんだよ。
それにしても、お前さん、滅茶苦茶強いだろ。」
「おほほほほ!おやおや、一瞬でばれるとは、貴方もお強いことですね?」
「ま、こいつらほどじゃないからな!!」

軽く足で蹴ったり殴ったりしつつ、弓を軽く射るフォルス。
ウイスが、あえてフォルスに寄せて動いているのを気付いての動き。

「それ、複数の人間を殺す以外に方法あるの?」
「ああ?ああ、これか?弓というか、種類は返れる。」

こうしたら人を追いかけるし、こうしたら、人を連続で射れるし。
そう出会い頭に実験台と言うか、実況見分みたいに使われる人々が
なんだか憐れに思い出してきたメルだったが。

似たようなことを現在進行形でやられている若干一名が胸を過る。
いやほんとに、良い奴なんだろうけどなあきっと。

「絶対にそれだけは無いと言い切れますがね。」
『あれ?そう?』
「貴方をこんなことするというか、触れる時点で終わっていますが。」
『でも相手しなかったの、私ちょっと嬉しかったよ?』
「っんぐ……メル様、そういうことは言わないで貰えますか?」
『ん?どう?』
「分からないなら猶更です。」

そうかなあ。

『だって貴方が私だけを見て私だけを助けてくれたんだもの。
それって、嬉しいって思っていいことでしょう?ね、サワア!』
「……はぁ、ほんと、もう、いいです。」
『へへ、ありがとう、さわあ』
「はい、どういたしまして。」
「いやにしても、きりがねぇな」

王宮とはいうべきか。人をなぎ倒してもなぎ倒してもキリがない。
流石に息が切れるかと思ったが、その力の源は衰えを知らない。
この子、かなりの才を持っていると見た。

『ね、フォルス』
「ああ?なんだ」
『アインマールってね、いつかって意味なんだよ?知ってた?』
「あ、なにを」
『クレアは創造、始まりの意味を持っていて、女性の名前なら
明るい、輝く、聡明って意味を持っているんだって。知ってた?』
「…メル、お前、その、目」

黄緑色に輝き、髪色が紺色に染まり切った、メルが言う。

『フォルス、それは二つの意味がある。事実に反する。
誤った、正しくない、偽りの、真実ではなく、本物でもない
偽造された、まがい物という存在。』

ねぇ、知ってる私。知ってるの。

『不可避の、必然的な、力。ねえ、フォルス。私知ってるよ?』

君の本当の、お名前の意味を。

『綺麗に偽った、何時かの始まり。孤独に生きていた、魂。』

華樹の記憶、廻廊、第4章の者。

『フォルス・クレア・アインマール』

私は貴方を、迎えに来たの。

『本当はこの樹海に、深海に眠らせておきたい。
貴方のお友達と共に3つの輝きを止めていたい。』
「メル…お前」
『でもね、私、貴方にもっと広い世界を見せてみたいの。
この樹海も確かにとっても綺麗で好きで、私良いなって思った。
それ以上に、貴方と共に、サワア達が居る世界も見て欲しいって。』

ね、今度は私の知る世界を、見て欲しいの。

『貴方が私にくれた、ひんやりした魔法みたいな、優しい魔法を。』

貴方にも、かけてみても、いいかなぁ。

そう笑うメルに、毒気を抜かれたのか、
肩の力をぬいて、クスクスと笑い始めた。

「あ〜〜〜〜ほんと、お前と居ると
面白いことがあり過ぎて
腹が幾つあっても足りないからなぁ。」
『あれ?そんな面白いこと言ったと思う?サワア』
「そうですねえ、確かに面白いかもしれませんね?」
『おんやまあ』
「もとより、あたし、や…私は、
貴方に付いていくつもりでこの身を継げるつもりだ。」

そう言ったフォルスの首元には、
紫色のベル状の形をした
プルモナリアが咲き誇り始めたではないか。

『っフォルス!その華!!!!』
「正直咲いたり閉じたりして
くそ面倒な上に華の匂いでか動物も集まるんで
良い獲物狩りに使わせて貰えていて助かったが。」
「お、お前…神々の力をそんなもののことに。」
「おや、そんなものだなんて、なあ?メル?」
『生きとし生ける者、食べ物は大事だよ、ビルス様。』
「じゃ、還るか。」

え、そう言うメルに、なんだ帰らないのかというフォルス。

『いや、かえるにしても、額縁ないし。』
「おや、知らないのですか?というか気付かなかったというべきか。」
『え?』
「何度か額縁が見え隠れしていたのを。」
『え何処で?!?!!?』
「ヒント言っちゃう?サワアさぁん」
「…その言い方はどうかと思いますが、まぁ別にいいんじゃないですかね。」

全員到着しましたし。

そう言ったサワアの隣にドンというとんでもない音が聞こえて
思わずメルも『うぉおお!?びっくりしたあああ!!!』と低い声が出て飛び跳ねてしまった。

まぁ腕の中で一応とどまっていはするが。

「すまん、遅くなった。」
「殺していないですよね?一応この絵画の中ですし。」
「一応瀕死で留めておいてやっとる。ま、何かあればこっちにくればよかろう。」
「それもそうですね。」
「ひ」
「じゃ、還るとするか?」
『いやだからどうやって。』
「おや、気付いていないとは…お前も苦労するのお?」
「全くです。」

こんなに近くに居るというのに。

「見てもくれないのですから」
『……』
「うわっ!!びっくりしたああ!!!!」

ブンと音を立てて額縁が現れたのに、フォルスが飛び跳ねる。
あというメルの声で、さ、と声が上からする。

「かえりましょう。元の場所へ。」

++++++++++


「おかえ…おかえ????」
「ただいま戻りました。」
「貴方が…」
「第4章、フォルスだ。以後お見知りおき。」
「ああどうも、ってそれどころじゃないのよそれどころじゃない。」
「メル?え?メル???」
『あの、サワア?』
「なんです?」
『元に戻してくれないの?』
「今戻せば同じことを繰り返しそうですし。ねぇ?フォルスさん?」
「嗚呼間違いないだろうな。風呂場は何処か知ってるか?」
「存じあげています。お連れします。」

助かるという言葉にうん?うん?とメルは声を上げる。
よいしょっと身体が落ちていたのを上げて、
サワアの身体にまた近づいて身体がびくりと跳ねた。

「おや?今更緊張しているのですか?」
『ば、そ、そんなこと………ないもん。』
「…っくく、そういうことにしておいて差し上げましょう。」
「ね、ね、どゆこと?メルどうしてこうなってるの?」
「白いタオルに包まれて帰って来たんだけど。」
「フォルス、これにしたやつのこと知ってる?」
「知ってはいるが…」
「わらわが処罰してやったわ。」

ま、あれもまだ可愛らしい程度なんじゃが。

「予想以上に下種で汚らわしくて思い出したくもないわ。」
『う…ご、ごめんね、ヘレス。』
「ん?」
『その…手、よごし、ちゃったでしょ?』
「ぷっ、ふふふ、そのようなこと、お主が気にすることじゃないわ。」
『わわ、ちょ、ヘレス手やめてよ!』
「いいや、お主はわらわの天使に抱かれながら風呂場に直行するのみじゃ。」
『ん?待て、その言い方まるで君も入るみたいな話じゃない?』
「おや、違わんぞ?」
『いやまてい。違え。私は一人で入りたい。』


いやいや

「誰が入らせるか。あの下種が触った処隅々ありとあらゆる処上書きさせるべきじゃろう。」
「ヘレス様お言葉が過ぎます。」
「そういうが、お主が一番あの中で怒っておったくせに。」
「なっ!!!!」
「寧ろメルがお主の目で怖がって泣かないか心配じゃったわ。」
『あ、そりゃないない。』

ないんか

『だって助けてって言って助けに来てくれた人だよ?』

どんな形でも、どんな姿だって、私は嬉しくなった。
その感情を、捨てずに、今も、持ち続けて居られる。
そりゃ助けて貰わずに自分で助けれるように強くならきゃだけど。

『例え冷たい目だとしても、私を見てくれた天使さんだもの。』

怖がるなんて、しなくていいじゃない。

「………ヘレス様」
「なんじゃ」
「これで式場こないのきつくないです?」
「嗚呼そうじゃなあ。きついなあ?」
『お姉さん?そっち側に入らないでもらえません?』
「神父何処ですかね。」
「その前に恋のキューピッドじゃない?」
「いやもう刺さってる刺さってる。致命傷越えてる。」
「死んでんじゃん。終わりやん。」
「まず救急車から?」
「ちょっと誰かAED出して!!」
『お前ら私の記憶から漁って言い出してないだろうなあ?!?!?!』

きゃーにげろーという彼女達が、ばっと下に降りてったのを見て、全くとメルはため息を吐いた。

「メル」
『ん?』
「落ち着いたら、また来て欲しい。」

今度は、深海よりも深い、樹海に、招待しよう。

「優しくて酷い、時間を。」
『…ん。その時はまた、手を繋いでいこうよ。』
「…っ!嗚呼、約束だ。」
『ん!約束。』

そう手を出して小指を前に出す。
おや、約束はこれかと言われてそうだよとメルは答える。

『ほら指切りげんまん嘘ついたらはりせんぼんの〜ます、指切ったでしょ?』
「いや怖いなそれ」
「とんでもない契りをかわすでない。」
『ええ?まぁ指切は江戸時代に、
遊女が相愛の客への誠意の証として小指を切って、
その誓いとしたことから始まったものだしねぇ。
言わば、一種の契約のようなものだったから、
契りという意味では間違ってはいないんだが。』
「…そうですか。」

なら、あの日の約束も、はりせんぼん呑ませないとですね。
え、まって何処の約束!?お兄さんとしたっけ!?!?
しましたねぇ〜しましたしました。

そう言ってサワアは廻廊から足を出す。
白い世界が、いっきに色鮮やかに変化を遂げた。